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全日本チーム ミレニアム年越し合宿を取材!
伊豆稲取年越し遠足日記 - 5


朝練習のサーキット

■風光明媚なクロスカントリーコース

12月31日、大晦日。1900年代最後の朝。8時半に玄関前に集合。昨日、ゲーム大会の横で眠りこけていた和田は膝が痛いとつぶやく。長時間の練習と、山道を長い距離走らされているからだろう。本日も、とりあえずクロスカントリーの5キロコース。宿舎から坂道をしばらく下ったところにあるコースを走る。近くには数年後に予定されている静岡国体の会場になる体育館。風光明媚な(でもキツイ)クロスカントリーのコースを本日も選手たちは走破。お疲れさまです。それからサーキットを何本も。今回の合宿にはお金がないとの理由でナショナルチームに専属のトレーナーが同行していない。そのため、マッサージも応急措置も、すべて自分たちでまかなわねばならない。自費でコーチ役を買って出、合宿に参加してくれている太田拓弥がフリー58の関川にマッサージする。関川は腰が悪く、テーピングを張り巡らした状態。「体に悪いことばっかりしてますよ、ぼくらは。」と呟きながら太田はマッサージを続ける。

▼朝練習が終了し、クロスカントリーのコースから、宿舎へ戻る坂道を歩く。「昨日、イビキひどかったぞ。」と小柴から注意を受ける和田と横山。「寝言は言ってないよね?」「歯ぎしりは?」などと自分が寝ている間にたてていた物音を妙に気にする。ストレス抱えてさらにくたびれてると、いびきとか歯ぎしりが多くなるからなあ。

■1900年代最後の夜はボイラー室で

▼お昼を食べてから今夜休む場所を確保する交渉。ロビーでもどこでもよいので、休ませて欲しいとお願いする。すると「申し訳ないけど、ボイラー室に泊まってください。宿泊代金はいらないので。」と親切な申し出を受ける。申し訳ないのはこちらです。満室なのを知っていて、無理なお願いをしているのですから。ボイラー室と言うと聞こえが悪いが、正確にはボイラーの宿直室。ちゃんと布団のあるベッドがあって、電話もテレビもある。ありがたいありがたい。 ▼取材前に軽い兆候は見えていたのだが、どうやら本格的に風邪をひいたらしい。昼間、買い物へ出かけるという太田拓弥の運転する車に便乗させてもらい、薬局へ向かう。海辺の町中まで降りてきて、薬局に入る。薬剤師さんに、風邪をひいているのだが取材なのでどうしても動かなければならないから眠くならない風邪薬を、とお願いすると栄養剤と風邪薬をくれる。胃腸が調子悪いと訴える私に、紙コップに水を入れて持ってきて、サービスで胃腸薬まで飲ませてくれた。弱っているときに親切にされると本当にほっとする。

■程度を知らない川合の余裕

永田克彦▼午後3時くらいから練習。試合形式のスパーリングをするから、とコーチが指示してアップに入る。そのとき、国士舘監督の朝倉さんが「川合がやりたがってますよ」と連れてくる。川合は夏からずっと腰が痛くて練習を控えめにしている。五輪出場資格をすでに獲得しているので、とにかく故障個所を治すように皆が気を使っている。今回の合宿でも、腰に悪いからと朝のクロスカントリーは免除、当然、午後のマット練習もほとんどやらずにいる。その川合がどうしても試合をしたいという。しかし、本人が言うから腰は大丈夫だと思ってはいけない。なぜなら、この川合達夫は「ほどほど」という言葉を知らないのだ。軽く打ち込みを、と言われても思いっきりタックルを切って見せ、相手が自分より半分くらいの体重の時でも全力でタックルに入り吹っ飛ばしてしまう。適度な調節ができない。だから、治りかけた腰をまた、痛めてしまう。コーチも彼のそんな性質はよくわかっており、全力を出させないように常に気を配らねばならない。そんな周りの心配をよそに試合したいだとぉ?その言葉を耳にして呆れていたら、すかさず「おまえ、腰痛いんだから、休め。」と赤石コーチから注意が入る。

▼コーチにとどめられ、試合をするのをあきらめた川合、手持ちぶさたにマット脇で体を動かしながら「みんな疲れてて機嫌悪いですねえ。自分はやらなくていいから楽なんですけど。」他の選手の前じゃ聞かせられない言葉だな。(^-^;

和田貴広 ▼アップ終了後、試合形式のスパーリングが始まる。54kg級の田南部vs長尾や76kg級の小柴vs小幡など、全日本選手権決勝戦の再現もあり。54は田南部の、76は小柴の圧勝。あらら、小幡、テクられてるよ。(テクニカルフォールを取られることを「テクられる」といいます。)体力はあるかもしれないけど、やっぱりポイントを取るテクニックがなさすぎるなあ。シニアの大会、それでうまくいくかな?それにしても、川合が言うとおり、みんな疲れているから機嫌がわるいよ〜。(^-^;

太田拓弥ポートレート(片山貴光撮影) ▼練習後に太田拓弥のコメント撮り。ビデオで撮影。「オリンピックはいいもんですよ。何回でも行きたいですもん。でも、三つも手術せんならんところ抱えてますしねえ。」全日本での小幡との試合について尋ねると「教え子と試合するっちゅーのは、いやあ……これは、その立場になってみんとわからんもんです。嫌なもんですわ。」などとレスリングとオリンピックへの断ち切れない思いについて話してもらっている間、片山が私の一眼レフカメラで太田拓弥を撮影。いい男にとれてますか?


 

伊豆稲取年越し遠足日記
→6「ミレニアムは川合のかけ声とともに」

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レポート&写真:横森綾