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PANCRASE 2000 TRANS TOUR 8月27日(日)梅田ステラホール大会

セミファイナル 10分1本勝負  
高橋義生
(パンクラス東京:無差別級ランキング6位)
判定3-0

30-26,30-26,30-26
矢野倍達
(RJW/CENTRAL)
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 ケンドー・カシンのマスクをかぶり高橋は入場してきた。かつて、レスリングマットの上で戦った石沢常光が、同じ日の夜、梅田から数百キロ離れた西武ドームで素顔となってプロの試合をする。リングの上で久しぶりに見た高橋の姿はずいぶんと大きくなっていた。西武ドームの石沢より重いかもしれない。90kgとコールされていたが、100kgくらいはあるように見えた。対峙する矢野が小さく見える。

 矢野倍達の場合、そのレスリングの実績からレスラーとしての試合での優位性を説かれることが多い。だが、レスラーであるだけで有利だったのは過去の話である。レスリング以外の技術を十分に学習しないままリングやオクタゴンへ上がり、不本意な結果に陥っている選手は少なくない。矢野自身が今まで、数度そういった目に遭っている。レスラーが本当に優位に立つのは打撃を学習した後であるというのがいまでは定説になり始めている。
 矢野は、実はタックルが苦手だ。レスリングの選手、しかも矢野くらいの実績があればタックルが得意だと想像する人が多いかもしれないが、レスリング選手だからといって皆がタックルをするわけではない。フリースタイルではなくグレコローマンスタイルが専門だから、とか、重量級だからという理由ではない。タックルはレスリングの基本技ではないからだ。
 そもそも、レスリングに基本技はない、と言い切っても過言ではない。基本といえるのはみずからの身体をも含めたボディコントロールの技術であって、あとはすべて応用だ。タックルにしても、使う人が比較的多い技の一つに過ぎない。しかし、レスリングの基本技術であるボディコントロールの方法は、そのままでは打撃もあるルールに対応できない。

 試合開始直後、空を切った矢野のストレートをかいくぐり、高橋が両足タックルからテイクダウンする。ボディと頭に小刻みにパンチを入れていく。矢野の首まわりを中心に腕でプレッシャーをかけつづけ、支配下においたまま移動させない。その間にも絶えず頭とボディを交互に打ち続ける。技術プラス身体の大きさで矢野を圧倒する高橋。このまま、為すすべもなく試合が終わるのかと思いきや、やっとの思いでグランドでのプレッシャーから矢野が逃れスタンドへ。しかし、与えられたダメージは非常に大きく、スタンドでも打撃を入れられ続け、高橋にポイントが追加される。

 スタンドからコーナーへ高橋が押し込む。矢野がボディにパンチを入れるが効かない。高橋が膝を入れて反撃する。前屈みになった矢野を高橋がとらえ首を極めにいく。しかし、矢野はするりと抜け出す。そして逆に上を取る。が、明らかに高橋より消耗が激しく、十分な攻撃ができない。

 試合終了後、矢野の顔は左側を中心に腫れていた。一方、高橋の顔はきれいなままだった。ボディコントロール+打撃は、さらなるボディコントロールへ発展する。新しいステップへ進んだ高橋と、まだそこへすすめない矢野の力の差がはっきりと現れた。



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レポート&写真:横森 綾

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