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PANCRASE 2000 TRANS TOUR 8月27日(日)梅田ステラホール大会

メインイベント NEO BLOOD TOURNAMENT決勝 15分1本勝負  
× 渡辺大介
(パンクラス横浜)
13'22"

レフェリーストップ(パンチによる切り傷・出血)
星野勇二
(RJW/CENTRAL)

 二人がリングに対峙した瞬間、その大きさのあまりの違いから予想した試合展開はこうだった。レスラー出身の星野がタックルからグランドに持ち込もうとするが、そこから試みられるボディコントロールを渡辺が力で跳ね返し押し切る。身長で10センチ以上、体重も実体重で5キロは違うであろう二人の体格差はそれほど歴然として見えた。決勝に来るまでに大きな相手を倒していないわけではない星野だが、それは一回きりの幸運だととらえていた。なにより、パンクラシストを2人つづけて破った星野を渡辺はどうしても破りたいだろう。スタイリッシュであることなどかなぐり捨てて来るに違いない。ところが、試合は予想しない展開を続けた。

 星野がタックルを試みる。両足、片足と繰り返す。そのすべてを体格差を生かして渡辺が押しつぶし、切る。ここまでは予想の通りだった。しかし、その先は違った。星野の打撃が予想外にダメージを与え続ける。渡辺よりリーチが短いはずの星野のパンチが頭部を何度も打つ。しかし決定打に至らない。じわじわと星野が渡辺を追いつめ、このまま優勢勝ちへ進むのかと思われたとき。

 渡辺が星野の顎に一発を放つ。脳味噌が揺れて星野の気が遠くなりそうになっているのが傍目にも分かる。なんとか踏みこたえるものの、グランドで下のポジションを強いられる。レスラーだからガードポジションが苦手云々の問題ではない。これだけ体格差があると、下になることは致命的に近い。重すぎるのだ。しかし、星野はその窮地を乗り越えた。

 今まで見てきたレスラーは、たいがい打撃をもらったショックから立ち直れずに混乱したまま試合を進行し、さらに打撃をもらって負けるというパターンが多い。星野も打たれる恐怖に戦くのかと見ているものも、その一撃を出した渡辺も思ったはずだ。しかし、星野は引かなかった。ボディコントロールなら、相手より体は小さくてもアマチュアレスリングをしていた自分に一日の長があると自負がある。上のポジションを取り返す。スタンドに戻ると、リーチを気にせずパンチを繰り出す。


 渡辺の出血がひどくなりドクターチェックが入る。試合再開。テイクダウンを奪うのが難しいことを分かりながらタックルを繰り返す星野の果敢な攻めに対し、渡辺の気力が次第に萎えていくのが見える。今までタックルも切りながら次の展開へ動かそうとしていたのに、なにもしようとしない。切るだけで精一杯になっている。そしてふたたび出血がひどくなりドクターチェック。また試合再開。
 三度のドクターチェックの結果、試合続行を止められた。渡辺はリングに突っ伏しセコンドとともに号泣する。優勝が決まった星野は感極まり、コーナーポストにのぼると胸を叩いてみずからの勇気を誇示した。

 出血によるドクターストップは、不本意だったかもしれない。それでも二人ともネオブラッドトーナメントにふさわしい、基本姿勢を貫き通した。戦うことは前へ進み、動き続けること。星野も渡辺もこれからさらに前へと進む。


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レポート&写真:横森 綾

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