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Report

新日本キックボクシング協会 "The Star Fleet"
5月27日(日) 東京・後楽園ホール

メインイベント 日本フライ級選手権/5回戦 
同級王者
深津飛成
(伊原)
判定0-1

48-49,48-48,48-48
同級1位
建石智成
(尚武会)

1位の建石智成が王者深津飛成に挑戦したフライ級選手権は、昨年3月、ダウン応酬の激戦となった試合の再戦。またも波乱の展開となった。

昨年の試合は、王者深津の2度目の防衛戦として行われたのだが、1Rいきなり建石がダウンを奪う。すると直後に深津がダウンを奪い返し、激しいパンチの応酬の末、さらに2R深津がダウンを追加し、判定で王座を防衛した。
深津は軽量級離れしたハードパンチと卓越したプロ意識でフライ級の枠を飛び越えて今や団体の看板の一人にまで成長した。最近はパンチだけではなくミドルキックにも磨きがかかってきている。
一方の建石は日本一スリリングな打ち合いをするソリッドなパンチャー。ここまでの2敗はいずれも王者深津に喫したもの。昨年もタイトルマッチ後は国内2試合と試合数こそ少なかったが、6月に同級の下位ランカー、12月には一階級上のランカーを下し1位の座を守り抜いてタイトルマッチ連続出場となった。連敗しているとはいえ、その実力とカウンターパンチャーという相性のよさもあって、唯一深津に対抗出来る存在とみなされていた。
あれから1年と2ヶ月。両者の差はあれからどれだけ接近し、あるいは離れたのか大きな興味を集めた試合だった。

試合開始から激しく打ち合った昨年に比べ、どちらかというと慎重な立ち上がり。両者ともに回転の速いパンチを持ち味とするが、互いにカウンターを警戒してか手数はそれほど出ない。
それでも両者消極的では決してなく、建石が深津の左に右を合わせ、左右フックの連打で畳み掛けようとするが深津はハイ、左右のローでプレッシャーをかける。建石のカウンター狙いは明白で、これに昨年苦しめられた深津は今度は足技、ミドル、ハイを軸にした組み立て。パワーで上回る深津、ガードの上から攻撃を叩きつけるだけでも十分効果がある。それを察した建石も怪しげな構えでパンチへの誘い水としたいが反応したのは一部の観客のみで深津は動じず。

3Rに深津がチャンスを迎える。深津の左右フックがヒット。思わず後退した挑戦者に首相撲からの膝蹴りで追い討ち。さらに建石の右アッパーに右フックを合わせる。建石それでも下がらず果敢に前進。すると深津、右フックから左を上下上のトリプル。なおも畳み掛ける王者の前に建石の足はもつれるがそれでも変なアクションで強がって見せた。しかしこのラウンドは明らかに深津が支配。
ところが4R中盤、なおも攻める深津の顎に建石の必殺の左がカウンターとなってジャストミート。深津ダウン。形勢は完全に王者に傾いていただけに観客驚愕というより唖然とした雰囲気。深津のダメージは明白で、建石が攻めようとするとクリンチで逃れるしか術がない。ところが建石もそれを振りほどけず、残り時間が90秒も残っていたのにも関わらず有効な攻撃を与えられることが出来なかったのが悔やまれる。

最終ラウンド。これで試合は一気にわからなくなった。ノリノリの建石、ワンツーから右クロスで攻める。しかしこの直後またしても王者の意地が炸裂。深津が左ミドルを放つと建石ガード。ダウンで2ポイントのアドバンテージを得たとはいえ、3Rのポイントを奪われているのは確実だけにこのラウンドを落とすわけにはいかない建石だが、この後全く攻撃が出なくなってしまう。深津の攻撃に顔をゆがめて逃げ回るのみ。試合後にわかったことだが、なんとこのミドルで建石の手首は骨折してしまったのだ。結局攻勢に転じた深津が左フックでスリップダウンを奪うなどポイントを奪取。ダウンの失点を挽回した。結果は一人は建石を支持したが後の二人は同点で深津のドロー防衛。建石にとって、すぐそこまで来ていた政権交代のチャンスは、思ってもいなかった深津の左ミドルによって打ち砕かれてしまった。

意地と意地、技術と技術が交差した好勝負だったが、戦った両者にとって不本意な内容なのは明白だった。タイトル以上に打倒深津を果たせなかった挑戦者は「もうちょっとだったのに・・・」と言ったきり、悔しさと怪我の痛みで絶句。
深津は深津でうつむいたまま「建石が強くて自分が弱かっただけ」と繰り返すのみ。試合内容に加えて今年に入ってこれで3連続ドローという結果も拍車をかけて最後まで表情が晴れる事はなかった。

ドローという結果もそうだが深津がここ1年でダウンを喫したのも2度の建石戦のみ。建石が深津にとって相性が悪い、というより両者のスタイルが噛み合いすぎるのだろう。
しかしつくづく思い知らされたのが王者の底力。建石との距離は結果だけ見ると縮まったようにも見えるが、逆に広がっている気がする。あるいはその差が薄いように見えても、とてつもなく強靭。建石がこれを打ち破るには、現在の彼にはない、もう一つ決定的な何かを手に入れる必要がある気がする。
3度目の防衛に成功した深津はこれで39戦27勝(16KO)9敗3分。7月に国際式の元世界王者ナパ・キャットワンチャイ(タイ)と対戦するという情報もあるが本人によるとまだ流動的。

敗れた建石は14戦10勝(4KO)3敗1分。3敗は全て王者深津に喫したものだ。

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レポート:新小田哲  写真:薮本直美

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