ラムナムムーンはルンピニーの元Jライト級王者。王座陥落後4連敗し、それがいずれもパンチによるKO負けだったため「顎が壊れた」という噂も流れたが現在は復調、ここ2戦はイサラサック(現ルンピニーフェザー級王者)、レェームボーヂウという強豪相手に2連勝。未だその実力が健在であるところを示した。
ラムナムムーンは基本的に首相撲の選手。ムエタイでは首相撲はポイントを取るための技術だと見られがちだが彼の場合はそこからの膝蹴り10連打でKOを奪った事もあるという。
ゴング直後の前蹴りで佐藤をいきなり吹っ飛ばす。その佐藤、フットワークで細かい出入りを繰り返しながらローをこつこつ当てていく作戦。
「日本の冬は寒くて減量が大変でスタミナがあまりなかった」というラムナムムーン、それでも佐藤を首相撲に捕らえると面白いようにぽんぽん投げ捨てていく。そして要所要所でハイキックや前蹴り。強さの質があまり見えにくいタイプのラムナムムーンだが、それでも彼の技の確固たる正確さ、力強さは少しづつ伝わってくる。なによりどんなに攻撃を受けても体の軸にまったくブレがない。
佐藤はこれに翻弄されつつも必死のガード。前蹴りでのけぞり、首相撲でいいように体をコントロールされながらも離れ際にローキックやボディブローを当てるなどして食い下がる。
そして最終ラウンド。佐藤の得意とする左ハイキックが初めてタイ人の首筋にクリーンヒットし場内が沸きあがる。しかし動じないラムナムムーンは首相撲からの膝蹴り、ミドルを連打の猛攻。これをなんとか凌いだ佐藤、長かった最終ラウンドのゴングをリングの上で立ったまま聞いた。
結局判定は大差でラムナムムーン。佐藤、健闘という名の完敗だった。しかし試合後の佐藤の表情には充実感が漂っていた。「やるだけのことはやりました」。佐藤の頑張りにラムナムムーンも「スタミナがあるので驚いた。ボディがよかったと思う」と賛辞を送っていた。
佐藤はさらに自分の体調について「脊椎分離症」という病気にかかり、完全なものではなかったことを告白。「腰椎が二つに割れていて、左半身に痺れを感じる。普段の生活には支障ないけれど、ミットを打ったりサンドバッグを打ったりすると痛みがある。医者には手術しないと永久に治らないと言われた。去年の暮れぐらいからこの症状は感じていたけど、もう試合が決まっていたから...」
これが名古屋JKFの、そしてNJKFの現状。鈴木秀明がリタイヤして確固たるエースがいない現在、満身創痍の佐藤に頼らざるを得ない。もちろん佐藤が出場をOKした以上、それは彼の責任であり、誰を攻めることもできないのだが、それでもしかし、なんとかならないだろうか、という思いは残る。
昨年10月の興行で名古屋勢は1RKOされた佐藤を筆頭に、タイ人の前に壊滅状態だった。それでいて今回も強豪を招いてのマッチメイク。タイ側のプロモーター、ソンチャイ氏がラジャに移籍した影響で、強豪選手しか残らなかった、という事情があるにしてもだ。
妥協のないマッチメイクはファンとしては歓迎だが、その一方で選手は消耗品ではないという思いもある。
3月にはまた名古屋興行が行なわれる。まだカードは決まっていないが、佐藤孝也はまたも強豪タイ人と対戦という噂もある。立嶋篤史がかつて言ったセリフ、「選手はキックボクシングという鉋(カンナ)で命を削って生きている」という言葉が頭から離れない。佐藤の戦績はこれで34戦19勝(9KO)13敗2分。
第5試合 バンタム級/5回戦
NJKFバンタム級3位 NJKFバンタム級5位
弘中史樹(ウィサラックレック) 対 新美友恒(大和)
勝者:新美友恒 KO 4R2分03秒
第4試合 MA・NJKF交流戦 ライト級/5回戦
MAフェザー級4位 NJKFライト級7位
稲葉直樹(早川/MA) 対 松本竜大(名古屋JKF)
勝者:松本竜大 判定0-3[49-50,48-49,46-50]
第3試合 日本キック・NJKF交流戦 フェザー級/5回戦
中岡秀夫(大阪真門) 対 竹村健二(名古屋JKF)
勝者:竹村健二 判定0-3[48-50,46-50,46-50]
第2試合 K-U・NJKF交流戦 ライト級/3回戦
松田佳央(截空道) 対 宮本勲(大和)
勝者:宮本勲 判定0-3[28-30,28-30,28-30]
第1試合 フェザー級/3回戦
大山和也(闘真) 対 にしだ☆マン(大和)
勝者:にしだ☆マン 判定0-3[29-30,28-30,27-30]