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Report


新日本キックボクシング協会
"THE REMATCH〜HEAVEN or HELL" 2001年1月21日(日) 東京・後楽園ホール
 

第8試合 セミファイナル 日・韓国際戦 59.5kg契約/5回戦 
× 前日本フェザー級王者
小野寺力
(藤本)
2R2分38秒

KO
韓国ライト級王者
朴炳圭
(韓国)

韓国ムエタイ協会ライト級王者の肩書きを持つ朴炳圭が名実ともに日本を代表するスター・キックボクサー、小野寺力に痛烈なハイキックでKO勝利する番狂わせが起こった。
まさに予想外だった。昨年9月大会でライト級王者石井宏樹と壮烈なパンチの打ち合いの末、分のいい引き分けに持ち込んだ朴の実力を低く見ていたわけではない。とはいえ、それでも小野寺の勝利は固いと踏んでいた。
ところが、試合が終わってリングに横たわっていたのは小野寺の方だった。

初回は細かいパンチのやりとりから小野寺がローを的確に当てていく。やや後重心のスタンスに構えた朴の手数は少なく、カウンター狙いなのか左フックをしきりに合わせようとしている様子。差はほとんどないが、どちらかというとペースとしては小野寺優勢で初回が終了した。
2Rになっても相変わらず小野寺のペース。だが左フックとローキックが軽快にヒットする中、独特の構えとリズムで朴がじりじりと前進。パワフルなワンツースリーや唐突に繰り出す左ショートが小野寺にヒットする場面が時間を追うごとに少しずつ目立ち始め、いつのまにか朴に対し小野寺が後退しはじめる。朴はこうして小野寺にプレッシャーをかけていき、最後は朴のワンツーを小野寺がかわし、反撃しようとしたところに飛んできた朴の左ハイキックが小野寺の首筋にジャストミート、小野寺大の字。失神状態の小野寺を見たレフェリーは即座に試合をストップ。小野寺は意識を取り戻した後も、呆然として自分に何が起こったのか、事態の把握が出来ない様子だった。

倒した朴は大喜び。
「韓国では日本人と5回やって全部勝っています。小野寺の事は知っていました。石井よりやりにくいって聞いていたし、意識してましたから、緊張してファールカップつけて準備した後に3回もトイレ行っちゃいましたよ(苦笑)。フィニッシュののハイキックは作戦です。前回の石井戦で、パンチの選手だと思われてると思ったから」。
ちなみに子供の頃にテコンドーのキャリアが4〜5年程あり、黒帯も持っているという。勝ち星にこそ恵まれなかったものの、その戦いぶりからもともと評価の高かった韓国ムエタイ勢。それがこんな形で爆発するとは・・・。これで朴は21戦18勝(14KO)2敗2分。次の登場が楽しみだ。個人的には新日本キックプロモートで対タイ人との試合も興味深いのだがどうか。

小野寺は控え室に戻った後も、飛んだ記憶が戻らないのかしきりにフィニッシュをセコンドに確認していた。そして「最後の攻撃は見えなかった。もちろん勝つつもりでいたし、コンディションも悪くなかった。年の始めに大きな負け?・・・そうですかね、なんだかもう・・・」。小野寺はこれで33戦23勝(1 4KO)7敗3分。

この敗戦は小野寺にとってある意味で決定的なものであるような気がする。タイ人以外の選手に初めて負けたのはともかくとしても、少なくとも小野寺の敗戦という事実はこの日から事件ではなくなった。そして、1月の藤藪戦(初回KO勝ちも先にパンチでダウンを奪われる)、3月のペットボーライ戦(パンチで一方的なKO負け)に続く今回の敗戦で、これからは好戦的なファイタータイプに弱いという認識もされることになる。相手に勢いよくこられると熱くなって打ち合いに応じ、顔面の防御がおろそかになる傾向があるということか。もっともこれは、小野寺が生粋のファイターであることの証明にもなるのだが。同時にまだファイターとして未完成でもあることも。
あるいは油断はなかったか。ハイキック勝利のシナリオは昨年10月大会で小野寺自身が演じたそれだ。今回もその再現を狙っていた考えるのは記者だけの妄想だろうか?

昨年の小野寺はいい事と悪い事の落差が激しかった。年間通してみると4勝1敗だが、3月には一方的なKO負けの上に負傷欠場、自ら「会心」という10月のハイキック勝利の直後に負傷でラジャ遠征を棒に振ってしまう。そして今回、その10月の内容を受けていい方向に向きかけた流れを復帰戦で断ち切る結果となってしまった。
幸い、今回はダメージもそれほどなく、反省さえ忘れなければ次の試合には支障はないと思われる。
この敗戦をバネにより逞しく蘇るのか、さらなる泥沼に落ち込むのか。どんな流れになるにせよ小野寺本人にかかっている。

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レポート:新小田哲  写真:菊地奈々子

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