そのトリッキーなスタイルと破壊力抜群の攻撃でデビュー以来7戦全KO勝ちでセンセーションを巻き起こしつつあった酒井秀信が初めてタイ人選手と対戦。しかし持ち味を発揮出来ないまま初のKO負けの屈辱を味わった。
サッダム・ギャットヨンユットは酒井より10歳年下の17歳ながらキャリアは10 倍の79戦。現在はランキングに入っていないが、ルンピニーのバンタム級のランカーだった経験がある(ちなみに、全日本の発表では元4位だが、本人によると最高位は2位とのこと)、現役バリバリのムエタイ戦士。ゴング直後「練習していた大技」というバック宙しての蹴りを披露、場内を沸かせる酒井。しかしその後は全くと言っていいほど手が出ない。構えもガードこそ低いがいつものサイドに構えずオーソドックスなスタンス。
サッダムはスピードはそれほどないが重くてキレのあるワンツーやミドルをテンポよく打ち込んでいく。じりじりと後退していく酒井。
3R、サッダムは酒井をコーナーに追い詰めまずワンツーでダウンを奪う。酒井は接近戦からの右アッパーで打開を図るが今度はボディを効かされ、テンカオ(膝蹴り)、そしてボディへ左右フックを入れられ続けざまにダウン。3ダウンでKO負けを宣告された。
「始めから相手の雰囲気に飲まれていたところがあった」という酒井。骨折休養開けということもあり「試合間隔が開いてカンが掴めない部分もあった。特にムエタイに対してリベンジしたいという気持ちはない。お客さんが楽しめればそれでいい」酒井はこれで8戦7勝(7KO)1敗。
一方のサッダムは「アッパーがちょっと効いた。バック宙キック?別になんとも思わなかった」。あくまで結果論だが、時期尚早なマッチメイクだった。これで酒井の実力を見限るのは酷すぎるだろう。もっとキャリアを積んで独自のスタイルと持ち前の破壊力に磨きをかけてから、今日の様なムエタイ選手や海外の強豪といった相手との対戦をみてみたい。まだまだ酒井は未来のスター候補の座から滑り落ちたわけではない。
新世紀、この屈辱をバネに幻想の呪縛から解き放たれた悪魔王子の再飛翔を強く期待する
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