BoutReview Logo menu shop   Fighting Forum
Report

全日本キックボクシング連盟 「LEGEND-VIII」
2000年9月13日(水)東京・後楽園ホール

第9試合 セミファイナル 全日本フェザー級ランキング戦/5回戦 
× 全日本フェザー級1位
立嶋篤史
(RIKI)
判定0-3

44-50,44-50,45-50
全日本フェザー級2位
遠藤慎介
(不動館)

 2年前の立嶋と遠藤の一戦の結末は衝撃的だった。わずか50秒でハイキックによる遠藤のKO勝利。あまりにも一方的な敗戦に、立嶋には限界説が流れたものだった。しかしその後の両者は対照的な道を歩むことになる。1年前、久々の勝利で低迷を脱出した立嶋は、ローやパンチに以前ほどのキレはなくなり、防御、特に距離感には相変わらずの危なっかしさは残すもののそれを補う接近戦の首相撲から肘、膝といった攻撃。そして何よりも以前にも増した勝利への執着心に活路を見いだし破竹の5連勝。昔日の勢いを取り戻しつつある。再戦での強さには定評のある男だけに、遠藤にはすっきりと昔の借りを返しておきたいところだろう。親交のある国際式の元世界王者、辰吉丈一郎氏とその家族も見守る中、リベンジマッチに挑む。

 一方の遠藤。立嶋戦で一躍名をあげたものの直後の増田博正戦で1RKO負け。その後1つの黒星と1つの引き分けを追加、99年4月の大宮司進戦を最後にリングから姿を消してしまった。佐藤孝也、鈴木秀明、金沢久幸など、「立嶋に勝った選手は出世する」という奇妙なジンクスが一時流れたこともあったがその中でも遠藤だけが浮上出来ずにいた。そして巡ってきた立嶋との再戦話。もう一度リング上で一花咲かしたい遠藤にとっても、この一戦はチャンスだった。

 開始早々、いきなり遠藤が仕掛ける。めまぐるしいショートパンチの連打。これが次々に顔面にヒットし立嶋ぐらつく。たちまち悲鳴に包まれる場内。早くもロープを背負った立嶋、組み付いてローを狙うが遠藤それを許さずアッパーで突き上げさらにラッシュ。組み付く、というよりもはやしがみついている感じの立嶋を突き放すと右ストレート、左ハイで後退させる。サウスポーから繰り出される、素晴らしく速い回転の上下の打ち分け、パンチと蹴りのコンビネーション。こんないい選手がなぜここまで低迷していたのだろうか?

 2R、遠藤は前蹴りで立嶋のマウスピースを飛ばすが、立嶋なおも前進。右ストレートから組み付き、肘、膝を試みる。しかし立嶋のその執念を断ち切るかのように遠藤の前蹴りが再び顔面に炸裂、立嶋尻餅をつくようにダウン。このチャンスに遠藤、ショートアッパーから前蹴り、飛び膝とたたみかけるが、立嶋口から血をしたたらせながらも踏み止まり、ローを返していく。

 3・4R、遠藤ステップを駆使して時折カウンター気味のストレートやハイといった攻撃を出すがやや手数は減る。立嶋はひたすら前に出るが、なんでもない攻撃をもらっても効いている感じ。

 最終5R。まず仕掛けたのは立嶋。ポイントでは負けているのは明白だったが、この男にはそんなことは頭になかったろう。とにかくぶっ倒してやるとばかりに左を振るって直進、遠藤の胸に頭を密着させてボディを打ちつつロープに押し込む。遠藤たまらず足を使い下がりつつ前蹴りや首相撲で凌ごうとするが立嶋さらに左フックをダブルで遠藤のボディからテンプルにヒット、初めて遠藤クリーンヒットをもらいぐらつく。これで立嶋右ストレート、左アッパー、肘、さらにオーバーハンドライトでたたみかける。ついさっきまで瀕死状態だったこの男のどこにこんな力が残っていたのかという猛攻に場内もわれんばかりの立嶋コール。初めて迎えたピンチらしいピンチにようやく決意したか遠藤、頭を付けての打ち合いに応じ、左右フックで応戦。さらに距離をとって左ハイ。前のめりになりながらも必死に右を繰り出す立嶋。双方打ち合いが続く中、最終ラウンドもあと十数秒となったところで、ロープ際で放った遠藤の左ハイキックが立嶋の首筋にジャストミート。くの字に折れ曲がりダウンする立嶋。カウント途中で試合終了のゴング。勝負は判定に持ち越されたが、結果は誰の目にも明らかだった。

 ミスターキックボクサーのリベンジを阻止した遠藤は「これでまた一線で戦えるきっかけになれば」と語る。キャリアの少なさ(これで13戦目)のわりに遠藤も実は30歳。このチャンスを逃したら、次はないだろう。そういう意味で彼も崖っぷちだった。中盤にはスタミナ切れから手が出なくなり、最終回には守りに入り、危うく逆転KOされるところだった。しかし攻めに入った時のアッパーや左ハイに代表されるシャープな切れ味は魅力的。最近、大月晴明、前田尚紀、嵐田茂といったイキのいい新人が続々と台頭しつつあるフェザー級戦線、その中で遠藤は自分のポジションを今度こそ確立することが出来るだろうか。

 そして立嶋。今度こそダメだろう、という状況から、彼はいつも這い上がってきた。今回もそうなのだろうか?それとも今度こそ…? 今日の試合を見ると、序盤の、成す術なく相手の攻撃をもらっていた弱い立嶋と、終盤の信じられないような強さ−攻撃力とかそういったものを超越した−との落差を見るにつけ、どうにも判断に迷ってしまう。いや、それは我々が判断することではない。ノーコメントで控え室に消えた立嶋。労いにやってきた辰吉丈一郎氏に、もつれた口調で「僕は大丈夫ですから」と繰り返し訴える声が耳にいつまでも残った。

結果一覧に戻る
← 前の試合  / 次の試合 →

レポート:新小田哲  写真:菊地奈々子

TOP | REPORT | NEWS | CALENDAR | REVIEW | BACKNUMBER | STAFF | SHOP | FORUM


Copyright(c) MuscleBrain's All right reserved
BoutReviewに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はマッスルブレインズに属します。