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全日本キックボクシング連盟 「LEGEND-VIII」
2000年9月13日(水)東京・後楽園ホール

第8試合 日本・ニュージーランド国際戦 ライト級/5回戦 
全日本ライト級1位
金沢久幸
(TEAM-1)
4R2分36秒

KO
ISKAニュージーランド・ムエタイライト級王者
デビッド・ガーン
(ニュージーランド)
×

 全日本ライト級1位の金沢久幸が、小林聡と引き分けたニュージーランドの猛犬デビット・ガーンを圧倒。痛快なKO勝利を収めた。
 格闘技に三段論法は通用しないというが、まさにそれを証明したかのような一戦だった。
 デビット・ガーンは5月大会で全日本ライト級王者小林聡と対戦。無骨なローと重いフック、そして肘で追い込み、分のいい引き分けに持ち込んでいる。その後もハワイでタイ人の現役ランカーに勝利、カンボジアでも試合をするなど精力的に試合をこなしており、今回がなんと今年12戦目。
 金沢はその小林に2戦2敗。強引に前に出てくるパンチャータイプを苦手にしている事を考えても、今回の対戦は金沢にとって厳しい戦いになるかと思われた。

 金沢は半身に構えて広いスタンスで重心を落とし、左のガードを極端に下げた奇妙な構えをとる。ボクシングで言うところの”デトロイトスタイル”といえば分かるだろうか?
「いや、あれは空手の構えです。相手はパンチが強いのでその対策。それに、元々僕はこういう構えなんで、初心に帰る意味で」。
 そう、立嶋篤史と対戦した時の金沢は確かにそういう構えだった。
 相変わらず単発だが力強いパンチとローで攻めるガーンの攻撃をバックステップでかわしつつ、フリッカーな左ジャブや内股へのインローを飛ばして牽制する金沢。それ以外は特に動きがなく、このまま両者様子見でラウンドが終了するかと思われたが、1Rも残り1分を切ったところで金沢が唐突に繰り出した右ハイキックが、「全く見えなかった」というガーンの首筋にヒットしダウン。なんとか立ち上がったもののダメージの残るガーンをロープに詰め、飛び膝からパンチの連打でまたも前のめりのダウンを追加する。このあまりにも急かつ一方的な事態の展開に、場内一気にヒートアップ。
 なおも左ストレートで追い打ち、飛び膝で追い込む金沢をなんとか凌ぎ1ラウンドを生き延びたガーンだが、金沢の優勢は誰の目にも明らかだった。

 しかしさらに事態は急転する。2Rになっても例の構えでハイやミドル、さらにバックブローで攻めたてる金沢。ローくらいしか出す手(足だが)のないガーン。しかし思わぬところに落とし穴が待っていた。金沢がミドルを出そうとすると顔面のガードががらあき、そこにガーンの右ショートを合わせられ、金沢ストンと腰を落としダウン。「あれは完全に油断してました」。
 ダメージはそれほどなかったが、勢いに乗ってワン・ツーで攻め立てるガーンの攻撃を以降バックステップでやりすごす。

 しかしこの流れを金沢自身が断ち切る。3R、金沢右ハイでまたもカウント8のダウンを奪う。「これも見えなかった・・・」(ガーン)。
 さらに金沢ロープに詰め右ストレート、バックブローでラッシュするがガーン懸命のガードで凌ぐ。

 そして4R。このままでは負けになるのが分かり切っているから果敢に打って出るガーン。それに対し金沢も正面から打ち合いに応じる。激しいパンチが飛び交う中でも右ストレート、ハイキック、飛び膝のコンビネーションを出す辺りがいかにも金沢らしい。そして右ストレートがヒットし思わず後退するガーンにさらに右を追い打ち、4度目のダウンを奪うと今度こそ立ち上がって来ることが出来ず10カウント。コーナーに駆け上がり喜ぶ金沢。昨年11月以来、久々のKO勝ちだ。

 怪鳥、復活。このところパッとしない試合の続いていた金沢だが、これで完全に以前の輝きを取り戻したと言っていいだろう。旧ジムから脱退し、7月大会から自ら興した「TEAM-1」の代表として、最高の内容で飾ることが出来た。
「代表の方は清水(潤也)君にまかせて。選手の方に専念することにしました。構えも昔の空手の頃に戻して。テーマは初心に返る、ですね」
 今回の試合はダウンも喫するなど課題は残ってはいるが、初心に返った新スタイルで新境地を開拓したのも事実。これからまた世界の強豪との対戦、小林の返上したライト級王座獲りへと、視界が拓けたことだろう。

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レポート:新小田哲  写真:菊地奈々子

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