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NJKF "MILLENNIUM WARS 5"
2000年7月7日(金) 東京・後楽園ホール

第7試合 トリプルメインイベント第1試合 NJKFバンタム級王座決定戦/5回戦 
× NJKFバンタム級1位
中島昇
(大和)
判定0-3

49-50,48-50,48-50
NJKFバンタム級2位
桜井洋平
(岩瀬スポーツ)

※桜井がバンタム級王者に。

 長らく空位となっていたNJKFバンタム級王座は、何から何まで対照的な二人によって争われることになった。
 桜井は182cmというバンタムとしては希にみる長身の選手。ミドルキックの距離でパンチを入れられるというとんでもないリーチを持っている。無敗のまま5戦目でタイトル挑戦となった新鋭。
 中島はデビューして9年、21戦のキャリアを持つベテランであり、NJKFバンタム級の初代王者でもある。身長は164cm。桜井が挑んだ王座挑戦戦ではでこのリーチに対戦相手が苦しまされるのを見ているだけに、この試合も”間”で争われるだろうと思われた。

 1Rから高いガードを取りながら押してくる桜井。対して、回りながら打っては下がり、を繰り返す中島。桜井のヒザを含めたコンビネーションにつかまるとやっかいなのを中島は承知済み。上体を揺らし、いっときも止まらない。

 2Rに入ると中島はフェイントを交えた動きからボディへのストレート、ジャブを囮にしてローからミドルのコンビネーションを繰り出す。じわじわと中島がペースを寄せ始めている。ロープを背負いながら周り、”点”を作り出しては当てていく。桜井も左ローやジャブで連打のきっかけをつかみたいところだが、間合いを詰めさせてはもらえない。中島はこれでダメージが溜まるのを待つのか、精神的な揺さぶりをかけて後半一気にペースチェンジをはかるのか。どちらが優勢とまで差がついていないここまで、王座の行方は見えない。

 だが紙一重のちょっとした出来事が試合の展開を変えてしまうことがある。

 4R開始直後、「もう我慢できない」とばかりに桜井が突進、ついにロープまで中島を追いつめ、覆い被さるようにしてパンチの雨を降らせる。中島はこれを凌いで押し返すがこのとき<左額>をカット。ドクターチェックが入る。チェック中、中島はじれったそうにキャンバスを踏みつける。ここでストップが入って終わってしまっては悔やんでも悔やみきれない。中島からそうした焦燥が見える。

 続行可能と判断され、再開されたあとは中島が前進し、これまでとは逆に桜井が下がるようになってきた。フック、アッパーと懐から突き上がってくる攻撃を桜井は押し返し、下がりながらローを叩き込んでいく。それでもつっこんでくる中島の首を抱えロープに押しつけたところでブレイクがかかる。どうやら桜井は距離を置いて戦うようだ。中島も突進しては距離を置く。お互いの攻防戦の間は短くなり、長くなりを繰り返した。
 やや上向きに放たれる中島のストレート、叩きおろすような桜井のフック、二人の身長差があらわになってくる。カットした額から血が流れ、中島の顔は赤く染まり鬼気迫る表情に見えてくる。最終ラウンドは更に激しく打ち合いが展開された。5Rにもチェックが入り続行されたが、いつストップになってもおかしくはなかった。だが止めさせない迫力が、中島から発せられていたのも事実だ。桜井は打ち合いながらも冷静に自分の距離を守り続ける。長いリーチだけではなく、短い距離でのヒジ、ショートのパンチも放っていく。

 客席からの声援が鳴り響く中、5R終了のゴングが鳴る。
 判定が桜井の勝利を告げた。

 新チャンピオンが「生きてきて最高の時」と顔をほころばせるとき、中島は「この一戦に賭けてきた。これから会長と進退を相談します」と引退の意思を見せた。一つの王座決定がNJKFのバンタム級戦線の新しいページをめくった。”バンタム級規格外”の新王者の誕生により、今後ランカーの勢力図は微妙に書き換えられることになるだろう。

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レポート:薮本直美  写真:菊池奈々子

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