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kick 00.1.23 新日本キックボクシング協会「DOUBLE IMPACT」後楽園ホール
第12試合 メインイベント 日本ウェルター級タイトルマッチ/5回戦
ラジャダムナンスタジアム認定ウェルター級4位,日本ウェルター級王者
武田幸三
(治政館)
判定3-0
50-49
50-48
50-48

日本ウェルター級2位
北沢勝
(藤本)
×
武田は日本チャンピオンにとどまらずタイのメジャースタジアムの現役ランカーとしても名を馳せている。日本人選手が強くなったと言われても、こうして「肩書き」を手に入れているのは、武田と、昨年12月に現地で新タイトルを獲得したNJKFの鈴木秀明(名古屋JKF)の二人だけである。そんなチャンピオンに挑戦する以上、北沢にとって「負けられない」試合であった。わざわざ引き立て役になるために、タイトルに挑戦する者はいない。

試合開始ゴング後、グローブタッチを両者拒否。いきなりローキックの相打ちで試合は始まった。武田はローで攻め込んでいくがこれを北沢はブロック、前に詰め、払い、武田を転ばす。北沢は武田の攻撃を受けながらもフック、ストレートのカウンター出す。武田は細かいフェイントから左右のローを入れる。見るどころかいきなり切迫した攻め合いへ。 両者とも、フットワークはほとんど使わない。激しくフェイントが入る。武田はパンチを交えはじめる。いきなり3Rのような最初のラウンドが終わる。


2Rもフェイントからのさぐり合いの攻防である。北沢の左フックをダッキングでかわし、距離を詰め武田が左右のフックをとばす、そして最後はローキックへ。北沢はローをもらいながら冷静にカウンターを合わせていく。武田といえばKOの印象が強いが、こうした探りあいでも強さは際だつ。単発ではなく、効果的に出すことができるからこそ決着の一発が生きる。ここから武田は攻撃を上下に散らし始める。
北沢は、タイミングよくカウンターを放つ。これが防御壁となって武田の侵攻を防ぐ。的確な作戦だ。北沢の目の光は強い。チャンピオンが崩れるまで何ラウンドでも待って、倒してやる・・・爆発や鋭さとは別の種類の”怖さ”が挑戦者から漂っている。
しかし、武田のストレートがヒット、北沢はミドルからのコンビネーションで前進していくが、有効打を取られた印象は否めない。

3R、北沢が出た。右ストレートのパンチを放ちながら距離を詰めそこからヒジとパンチを狙っていく。武田はそれをダッキングでかわした直後、左ストレートを繰り出す。この左が北沢の顔面にヒットしはじめる。徐々に、チャンピオンがポイントを積んでいく。


4R北沢は、前半のカウンターから、ローからパンチのコンビネーションへ。武田も引きはしない。左右ストレートの連打が北沢の顔面を捉える。だが見れば、武田の左目の下は腫れている。手数ではまったく互角の両者。じわじわと武田が北沢を突き放していくようにも見えたが、いつこれはひっくりかえるかわからない。一発で、ラジャダムナンのタイトル候補がマットに沈むかもしれない。倒すのは武田か北沢か。

左右のロー相打ちする。二人は互角のまま最終ラウンドへ。

5R、武田の左フックから右ストレートが再三北沢の顔面を捕らえる。北沢の顔がのけぞる。しかし、倒れない。武田の右をもらった直後、北沢は笑った。ただの一つのダウンもなく、武田の優勢のまま終了のゴングが鳴った。

判定は武田。防衛成功である。


 
おそろしいほどのタフネスぶりを示した北沢を、チャンピオンは称えた。
「あれだけ当ててたら、普通なら倒れるんですけど、根性ですね」

同時に自分への反省点を口にする。「もらっちゃいましたね。でも、ちょうどよかったのかも。浮かれたままタイトル戦に臨んだら、やられちゃってたかもしれない。タイに行くより勉強になりました」

北沢の前進していく気迫と応えた武田にリング全体が呑み込まれた試合だった。武田の「次」へのステップとしては、快勝よりも意義ある試合となったかもしれない。

(薮本直美)



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取材:薮本直美・新小田哲  写真:薮本直美

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