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Report
 
k1 99.10.3 K-1 GP'99 開幕戦 大阪ド−ム
 
第2試合 K1 ル−ル3分5R 
レイ・セフォー
1R 2'14"
KO
(3KO:右ロ−)
サミール・ベナゾーズ
×

黒豹、ホ−スト2世を粉砕


 
  ックのスペシャリスト2人による、玄人好みのハイ・レベルな技術戦。この対戦カードからは、そうした戦前予想が浮かんでいた。大男同士の一撃必倒という、これ以上ないくらいの明瞭性がK-1の最大の魅力である一方、世界最高の技術を持った選手同士の火の出るような凌ぎ合いに注目するコアなファンもまた少なくない。
 対アンディ・フグ戦の連敗のために、レイ・セフォーの実力はK-1ファンに若干軽く見られているように思える。しかしK-1参戦以来の彼の試合を見ていると、間違いなく一戦一戦着実に実力アップしているのが感じられるし、いわゆるK-1新世代と呼ばれる選手層の中ではセフォーが頭一つ抜け出しているのは間違いないだろう。一方K-1初登場でサム・グレコと正面からの打撃戦を演じ一躍注目選手に名を連ねて、名古屋でのK-1予選でいきなり本戦出場権を手にしたサミール・ベナゾーズも、鉄壁のガードと的確な技術で非常に通好みの選手だ。90kg前後という体重は本格的にK-1戦線に名を連ねて大型選手と渡り合うには、まだ不安を残していることは否定できないが、その体重でグレコと渡り合っても決して一方的に押し込まれなかったことは筆者の印象に強く残っている。


  が残念ながら、この対戦はベナゾーズの体調不良という喜ばしくない事態によって一方的な展開に終わってしまった。リングに上がったベナゾーズの右目の上には大きな絆創膏が貼り付けられ、よく見ると左目の瞼もむくんでいるのが見て取れる。「一週間前にヘルペスが出て、抗生物質を身体に入れたりして、体重がかなり減ってしまった。(オーバーワークのせいですか?)その通りです。」
 それにしてもアーネスト・ホーストといい、よくよくボス・ジムの選手は試合前の調整失敗に祟られる。そういえばボス・ジムでのトレーニングを終えて帰国した直後のK-1 Japan GPで中迫剛も全く身体が動かなかった。オランダ・キック界でボス・ジムと双璧をなすチャクリキ・ジムのノブ・ハヤシが大会2週間前にスパーリングで脇腹を痛めて今回のGPに参加できなくなったのは、既に皆さん御存知の通り。オランダのジムは試合前でもお構いなしにハードトレーニングを行う、それでも生き残れるタフな選手だけがトップに登ってくるという話はしばしば耳にするが、そういったシステムのデメリットもまた改めて感じた。

  はいえベナゾーズの不調を割り引いても、セフォーの状態が優れていたことは間違いない。体調差もあって試合開始時点で既に前に出ていく身体パワーでベナゾーズを上回っていたが、ベナゾーズの堅いガードを正面から右ストレートで打ち抜いたスピードとコンビネーションはやはり一級品。2度目のダウンも、焦って前に出てくるベナゾーズの左ジャブを逸らしておいて一瞬貯めてから出すカウンターの右。これまた天性の目の良さと反復練習で身に付けた技術がなければ打てないパンチだ。ベナゾーズも自分のディフェンスには自信を持っていたから、試合後も「まさか右を貰うとは思っていなかった。」
 そこからは最早セフォーの独り舞台。最後はプレッシャーに負けて後退するベナゾーズの左脚にローキックを叩き込んで、会心の勝利を得た。

 さてこの結果をどう読むべきか。ベナゾーズの力がいつもより下がっていたのが主因か、セフォーの実力が大幅に上がっているのか、それとも最初から両者の間にはこのくらいの開きがあったのか。もしセフォーの力が伸びているのがこの圧勝劇の原因だとすれば、12月のGP決勝、セフォーにはダーク・ホースとして充分に注目していなければなるまい。そして今回一つミソを付けてしまったベナゾーズの方も、このままで終わってしまうには惜しい選手だ。両者の次の一戦に注目したいと思う。


次の試合:3.ジェロム・レ・バンナvsマット・スケルトン
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レポート:高田敏洋 カメラ:井田英登