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[パンクラス] 5.28 後楽園 (全試合レポ&写真):美濃輪、本当に大丈夫なのか?

パンクラス "Sammy Presents PANCRASE 2002 SPIRIT TOUR" 5月28日(火) 東京・後楽園ホール

 観衆:2,300人(超満員札止め)
 レポート:石動龍,BOX-T(偶数試合)  写真:飯島美奈子

  【大会前のカード紹介記事】  [→掲示板・パンクラススレッドに投稿お待ちしています]

メインイベント ライトヘビー級(-90kg) 5分3R
×美濃輪育久(パンクラスism/2位/83.4kg)
○佐藤光芳(パンクラスGRABAKA/4位/89.7kg)
判定0-2 (廣戸30-30,岡本29-30,梅木29-30)

 3月の百瀬戦がまさかのドローに終わり、PRIDE出場のチャンスを逃した美濃輪。引き分けながらも内容的は敗北同然のものであったため、今回の試合で出直しをはかる。対戦相手はGRABAKAの実力者・佐藤光芳。地味な印象は否めないがレスリングをベースとしたねちっこい攻めには定評がある。佐藤にとっては完敗した近藤有己に続いてパンクラスismのエース格との連戦となる。

 前日計量の際に美濃輪は、「コンディションはいい。いつも言うように体重差は関係ない。お客さんを満足させるような“プロレス”をしたい」と普段通りのスタンスを貫いた。一方の佐藤は「美濃輪戦がどうのこうのというより、自分は前回の試合までと変わったんですよ。もう周りを気にしなくなりました。『佐藤は負ける』って思う奴は好きに思えばいいという感じです」と、1月の近藤戦の敗北の後、吹っ切れたような心境でいることを明かした。双方とも前戦が不本意な結果に終わっているため、今回はきっちりした勝利が欲しいところだろう。

 気合十分の表情で入場した佐藤を尻目に、美濃輪は突如南側の客席から姿を見せると、もみくちゃになりながら駆け足でリングに飛び込む。圧倒的な“華”でファンを熱狂させ、自身の語る“ワールド”に会場を染め上げていく。

 会場の興奮状態が冷めないままゴングが鳴る。美濃輪が打撃で攻め込むと佐藤はタックルでテイクダウンする。かねてから「ポジショニングは気にしない」と美濃輪当人が公言しているとはいえ、あっさりとパスガードを許す姿に、客席から不安とも諦めとも取れるようなため息が漏れる。早くも百瀬戦の悪夢が観客の脳裏をよぎったのか。美濃輪は下からのアームロックと足関節で反撃を試みる。だが「菊田さんにいつもボコボコにされているので負けるわけにはいかない」と語るように、国内最高レベルの寝業師が揃う環境で揉まれている佐藤は、冷静に逃れると細かいパンチで着実にダメージを与える。

 菊田は「美濃輪クンは“ミラクル”の人だからゴングが鳴るまで気が抜けなかった」と語ったが、満員の観衆も同じ思いだっただろう。しかし最後までミラクルが起きることはなかった。試合終了のゴングと共に佐藤は拳を天に突き上げ、美濃輪はマットに手をついたまま立ち上がらない。判定を聞くまでもなく、勝者は明らかだった。

 さらに試合後の美濃輪を待ち受けていたのは尾崎社長じきじきの強制休養命令。「前回の試合の直前から(美濃輪は)体調が良くないようだ。検査、療養を含めて三ヶ月は休ませる。本人は納得しないかもしれないが、納得させる」と社長は語り、すぐに美濃輪本人に休養を通告した。

 一方の佐藤について、社長は「近藤、郷野、佐々木は他団体主催の国内大会に出場させる。美濃輪を破った佐藤も当然メンバーに入ってくるだろう」と語ったように、この試合で確実に選手としてのステップアップに成功した言える。

 休養命令とステップアップ。まさに明暗のはっきり分かれる結果となったわけだが、美濃輪に明るい材料がないわけではない。

 明るい材料、それは“折れない心”。敗戦後とは思えない、いつも通りのスタンスで美濃輪はコメントを出した。言葉の端々に悔しさをにじませながらも、終始前向きな発言に徹する。“後退することは死ぬことと同じ”。この言葉が真実なのか、それともただの強がりなのか、審判が下されるのは復帰戦が行われるであろう三ヵ月後である。

 今回の敗北も休養も、大輪の花を咲かせるための栄養だった・・・願わくば三ヵ月後にはそう振り返りたい。美濃輪の起こす革命の行く末を、もうしばらく見守って行こうと思う。(石動龍)

◆美濃輪のコメント
「結果は負けたけど、次やって勝てばいいです。相手は判定勝ちで喜んでたけど、僕は 一本勝ちで喜びます。
(PRIDEの試合が流れてモチベーションは下がった?)まず、その言葉の意味が分かんないですね。モチベーションとか体調が悪いとかケガしたとか言う人がいるけど、皆さんも体調が悪くても仕事するわけだから、自分もプロとしてやってるので関係ないです。結果は結果なんで。
(判定については?)30-29って、僕は引き算もよく出来ないけど、他人が決めた事だから関係ないし、次に勝てばいいし、ドンドン試合したいです。
(次の目標は?)決めてないけど、革命に向けて大きな事をしたいです。(今日の負けで革命が後退した印象があるが?)自分の中では、今日の負けは後退だとは思ってないです。後退は死と同じなんで。 (佐藤選手の印象は?)よく分かんないです。自分と戦ってたんで。
(入場曲が変わったことについて?)軽い、簡単な革命です。大きな革命の練習みたいなもんで、お客さんからパワーをもらえて良かったです。(なぜ入場曲を変えた?)自分はアンダーグラウンド・キングを卒業したので、PRIDEに向けて、自分で作曲してたんですけど、間に合わなかったので、好きなパンクの曲を使いました。 」

◆佐藤のコメント

「やっぱ『PRIDEに出る・出ない』と言ってるレベルの選手で、パンクラスのエースである美濃輪選手に勝てて嬉しいです。自分はずっとレスリングをやってきたので、基本的にレスリング主体の選手に負けるわけにはいかないので、プレッシャーがありました。
(回転しての足関節を狙われたが?)郷野さんによくやられたので、余裕で逃げれました。(相手の効いた攻撃は?)2R初めにタックル入ったらヒザを喰らって、クラッとしました。もう少し深かったら危なかった。(うまくリフトされないようにしていたが?)レスリングの経験があるので、自然と対処法はわかりました。相手を持ち上げると客が盛り上がるのは分かるけど、あんまり意味ないと思うんですよね。疲れるし。
(目標は?)他の人はUFCとかPRIDEとか言ってるけど、自分はパンクラスでランキン グを上げて1位になりたいです。菊田選手がチャンピオンのうちは挑戦する気がないの で、決められた試合を頑張りたいです。(グラバカの強さの秘訣は?)菊田さんが世界 に出て、ボコボコになりながら掴んで来た技術を使ってるから、負ける筈がないです。(最後に)石川英司を野放しにしないように、どっちがボスだか分からせるために、今日は頑張りました(笑)」




セミファイナル ライトヘビー級 5分3R
○佐々木有生(パンクラスGRABAKA/3位)
×ジョン・グローバー(アメリカ/I.F.アカデミー)
2R 1'19" 腕ひしぎ十字固め

 試合開始直後、グローバーは前蹴りやハイキック、佐々木はパンチで打ち合う。佐々 木は右ストレートをグローバーの顔面にヒットさせると、胴タックルでテイクダウンを奪う。パスガード・横四方・マウントへ流れるように移行するが、グローバーが長い両腕を使って、なんと下から肩固めを仕掛け、脱出に成功する。佐々木が ガードポジションをとるが、グローバーはあっさり立ち上がり、両者スタンドに戻る。

 グローバーは後ろ回し蹴りを見せるが、佐々木は的確に右ストレートを顔面にヒットさせる。グローバーが負けじと右ハイを出すがバランスを崩し転倒。すかさず佐々木が 上をとりパスガード。左横四方に移行し、左腕のギロチンで嫌がらせをしながら腕ひしぎに行くが、佐々木が寝転がる動きを読んだグローバーは佐々木の方に体を反転させる事で腕を抜き、両者スタンドへ。佐々木は右ストレートを的確に顔面にヒットさせ、グローバーも粘り強くキックで応戦し、そのまま1R終了。

 2R開始直後、佐々木が片足タックル・テイクダウン・横四方・マウントと着々と移行し、パンチ連打から、肩関節へ行くと見せかけて腕十字をとり、グローバーは堪らず タップした。GRABAKA陣営のセコンドによる、質の高いコーチングがあった事も見逃せない試合となった。

◆佐々木「パンクラスのリングに来たお客さんが、僕のテクニックを見て驚いてくれればいいです。風邪と下痢で体重が減ってコンディションは良くなかったです。(相手の印象は?)良い選手。遠くアメリカからわざわざ来るので大変だと思った。ハマリ技を持ってる感じが怖かったです。1R目は慌て過ぎて取れなかった。2R目はセオリー通りでした。(次の目標は?)上に行きたいです。パンクラス、UFC、PRIDE。出れれば出たいです。尊敬してるムリーロ・ブスタマンチとは彼がチャンピオンの内に戦いたいです。(佐藤 vs. 美濃輪戦の結果について)嬉しかったですねぇ。(佐藤は)それだけの力があると思います。」(※全試合が終わった後で佐々木選手のインタビューが行われました。)

第5試合 ライト級 5分3R
×佐藤堅一(士道館ジム/MAウェルター級王者)
○矢野卓見(烏合会)
2R 0'55" 三角絞め

 “東洋の神秘”こと寝業師・矢野卓見と、“魔人”こと現役MAキック王者・佐藤堅一の異色の対戦。
 矢野はいつも通りの半身の構えから、いきなり間合いをつめて組みつく。コーナー際で佐藤の首を抱え込むと全体重をかけてぶら下がる。奇妙な体勢に会場から笑いと拍手が起こり、「いいぞ、エセ骨法!」の声が飛ぶ。
 2R開始後寝転んでグラウンドに誘う矢野だが、佐藤は付き合わずに猪木−アリ状態からローキックを放っていく。ブレイクしてスタンドで再開後、佐藤の右フックが矢野の顔面にヒット。チャンスと見た佐藤は倒れこんだ矢野に追撃弾を浴びせようと飛び込む。だがガードに入った瞬間に矢野が三角絞めで佐藤を捕まえる。しばらく耐えた佐藤だが無念のタップアウト。鮮やかな一本勝ちを見せた矢野に会場から大きな拍手が送られた。

◆ヤノタクのコメント
「顔にもらっちゃいました。やばいですね。向こうはチャンスだと思って突っ込んできた分、スキができたというか・・。最後は身体で覚えた動きが出たというか。自分の格闘技歴に救ってもらったという感じですね。
 最初に組んだ時点でダメそうな気がしたんですけど、今日は自分に運があったなあ、と。(最後のパンチは)ちょっとヤバいと思ってたんで、あの三角が極まらないとシャレにならなかったなあと思います。パンチをもらってちょっと余裕がなかったですね。キャリアで勝たせてもらいました。キャリアを積めば佐藤選手は俺なんかより強い選手になりますよ」

◆佐藤のコメント
「総合で一番やっちゃいけないことをやっちゃいましたね。相手がグラッときて次に体が本能的に突っ込んでました。今回はデビュー戦でしたから打撃のまんまのスタイルでいっちゃって・・。いい勉強になりました。僕は今回負けましたけど、キックのデビュー戦も負けましたからね。本当に悔しいんでこのままじゃ終わらないですよ」

第4試合 初代ウェルター級王者決定トーナメント一回戦 5分2R
○國奥麒樹真(パンクラスism/ミドル級王者)
×岩崎英明(ストライプル)
判定3-0 (廣戸20-19,岡本20-19,梅木20-19)

 國奥が岩崎のパンチをかい潜り、胴タックルでコーナーに押し込み、しばらく膠着し た後、なんとかテイクダウンに成功する。國奥が片足を抜いて、ハーフガードの状態の岩崎にパンチを打ち下ろしていく。最初は様子を見ながら打っていたが、最後は10数発まとめて打ちつづけた所でゴングが鳴る。
 2R目も国奥が1Rと同じ動きでテイクダウン。岩崎が三角を狙うが、国奥に逃げられ、両者スタンドへ。またもや国奥がパンチをかい潜り、胴タックルでテイクダウン。一瞬、マウントを取りかけながら、岩崎の顔面にパンチをヒットさせるが、 勢い余ってそのまま上を通り過ぎてしまい、岩崎が素早く立ち上がりバックを取る。

 国奥も素早い反応で、前転して膝十字を狙うが上手くいかず、岩崎が立ち上がり、猪木アリ状態でタイムアップ。判定で国奥が勝利したが、1,2R共にラウンド終了間際以外は盛り上がりに欠けた。両者ともKOや一本を狙う技術力の乏しさを改善してほしい。

◆國奥のコメント「半年ぶりの試合で、しかも階級も下がった事でナーバスになってました。とんでもない試合内容で納得いかないけど、次に行けるので良しとしたいです。(ウェイトを落とした影響は?) 今日は膠着した動きが多かったので、もっと動きのある試合をしないとわからないです。今までやってきた調整法と違うので、後々この経験が活かせると思います。」

第3試合 初代ウェルター級王者決定トーナメント一回戦 5分2R
○大石幸史(パンクラスism)
×割田佳充(チームPOD)
判定2-0 (廣戸20-19,岡本19-19,梅木20-19)

 パンチの打ち合いで試合が始まる。割田の右ストレートが大石を捕らえかけると大石は打撃戦を避け、タックルでテイクダウンして強烈なパンチを落とす。2R開始早々割田の右ストレートで大石は鼻から出血するが、またも鋭いタックルでテイクダウン。割田も下からのアームロックで反撃を試みるが、大石のパンチを止めることはできない。上を制し続けた大石が判定勝利を収め、トーナメント準決勝へ進出した。

第2試合 初代ウェルター級王者決定トーナメント一回戦 5分2R
○長岡弘樹(ロデオ・スタイル)
×太田洋平(A3)
判定3-0 (廣戸20-19,岡本20-19,梅木20-19)

第1試合 ヘビー級 5分2R
○ジェイソン・ゴドシー(アメリカ/I.F.アカデミー)
×多田尾秀樹(RJW/CENTRAL)
1R 1'37" チョークスリーパー

 開始直後のタックルでゴドシーがテイクダウン。すぐにパスガードし、さらにマウントを奪ってパンチを落とす。多田尾は反転して逃れようとするが、ゴドシーのスリーパーに捕まってしまいタップアウト。ゴドシーが格の違いを見せ付けた。

パンクラスゲート ライト級 5分2R
△富山 浩宇(P'sLAB横浜)
△西野 聡(和術慧舟會東京本部)
時間切れ

パンクラスゲート フェザー級 5分2R
×カツオ(ロデオ・スタイル)
○大場 裕司(P'sLAB東京)
1R 3'58" アンクルホールド


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Last Update : 06/14

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