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[パンクラス] 3.25 後楽園 (レポ&写真):美濃輪、PRIDE参戦前に大苦戦

Sammy Presents PANCRASE 2002 SPIRIT TOUR 3月25日(月)後楽園ホール

レポート:石動 龍(メイン、5、3、1試合),井原芳徳(その他試合)

メインイベント ライトヘビー級 5分2ラウンド
△美濃輪育久(パンクラスism/2位)
△百瀬善規(禅道会)
判定0-1 (20-20,19-20,20-20)

 プロレスラー・美濃輪育久の三ヶ月ぶりの試合の相手である百瀬は柔道歴20年。禅道会主催の大会で優勝経験があるとはいえ、プロのリングは未経験の選手だ。美濃輪はPRIDE出場を目前に控え、自身の語る“大きな夢”を実現するためには、ここで立ち止まるわけには行かないだろう。

 だが試合はそんな状況とは裏腹に百瀬の健闘ばかりが光るものとなる。柔道出身の腰の強さを生かして簡単にはテイクダウンを許さない。アームロックを極めかけられてもバランスよく反転し脱出し美濃輪の顔面にパンチを落とす。百瀬はデビュー戦の緊張を全く感じさせない動きで美濃輪と互角に渡り合って行く。

 2Rに入っても百瀬が試合をコントロールする。マウントを奪い、バックを取ってチョークを仕掛けるが美濃輪は反転して逃れる。美濃輪は不利なポジションになってもしつこいアームロックで反撃を試みるが、スタミナが切れたせいかなかなか形にはならない。パンクラスの尾崎社長が大会後明らかにしたところによると、実は美濃輪は大会直前に風邪をこじらせていたという。美濃輪本人はこのことをマスコミには隠したが、いつものパワーファイトが鳴りを潜めていたのは、単なる体重差だけでなく体調も影響していたようだ。
 だが百瀬も押し気味に試合を進めるが決定的な攻撃を出せず、そのまま試合は終盤に入る。ブレイクが入ってのスタンド再開後、美濃輪ががむしゃらなパンチラッシュで反撃に糸口をさぐる。さらにハイキック、そしてドロップキックまでも繰り出しこの日一番の美濃輪らしい場面にホールが沸く。しかしどの攻撃も百瀬に大きなダメージを与えることはできずそのままタイムアップ。

 判定は廣戸20-20、岡本19-20、梅木20-20。読み上げられると観客から疑問の声が漏れ、同時に百瀬コールが起こる。パンクラスのファンは決して美濃輪びいきにならず、百瀬の強さを素直に認めた。

 試合後の会見ではいつも通りのスタンスを貫いた美濃輪だが、PRIDE出場を前にして痛い引き分けであることは間違いない。昨年一年を通して素晴らしい試合をこなし、自身の評価を高めて来た美濃輪にとって、久しぶりに不満の多く残る試合になってしまったかもしれない。
 しかし入団テストに落ちた身から、ネオブラッドトーナメント優勝を経てパンクラス入りし、実績を重ねついにはライトヘビー級タイトルに挑戦し、さらに幾多の名勝負を演じて今の地位を築いた美濃輪なら、今回の挫折もきっと大きな糧として、さらに自身の理想に近づいた姿を見せてくれることだろう。

 大会後、パンクラスの尾崎社長は美濃輪のPRIDE参戦について「6月でもいいかな」と語り、4月のPRIDE.20への参戦を見送る意向を示した。これは今日の美濃輪の試合内容を見てというより、むしろPRIDE側との交渉の難航が原因のようだ。PRIDEとの交渉は「第3案までもつれこんだ。こんなに難航するとは思わなかった」といい、今週末にはカードが明らかになるという。菊田は参戦がほぼ確定しているようだ。

◆百瀬コメント
「本当は白黒つけたかったんですけど。(同じ禅道会の)秋山(賢治)さんからは聞いていましたけど、美濃輪選手のスピリットは素晴らしかったです。技術面というより気持ちの問題というのが分かりましたね。今日がプロデビュー戦だったんですけど後楽園ホールという素晴らしい会場で美濃輪選手という素晴らしい選手と試合ができて最高でした。自分はまだまだ強くなれると思うんでこれからも精進したいですね。今後のことは全くわからないです。美濃輪さんと試合できたことさえもまだ夢のようなものなので・・」

◆美濃輪コメント
「とりあえず勝てなかったんで残念です。自分なりのワールドは見せられたかなぁ、と思うんですが・・。(体調は?)悪かったからどうだってものでもないので・・。
(体重差がありましたが?)ウエイト差は僕には関係ないんで。禅道会の方は芯が強いですね、
(PRIDEのことは影響したか?)試合が急遽決まってこっちに集中してたので気にならなかったです。自分の目標とか夢は今日引き分けたからって終わるわけではないので一歩一歩やろうと思います。僕は絶対に逃げないですし。僕は勝とうが負けようが最終的な目標にたどり着けばいいと思っています。
今日の試合で自分の足りないところが見えてきたので、また少し落ち込んだり悩んだりするかもしれないですけど、そういうのがあった方が人間が強くなるかなと思います。だから今日はすごくいい経験でしたね」

セミファイナル 初代ウェルター級王者決定トーナメント一回戦第1試合 5分2ラウンド
○伊藤 崇文(パンクラスism)
×港 太郎(K.I.B.A.)
判定3-0 (20-19,20-19,20-18)

 パンクラス初参戦、プロでの総合2戦目となる港。セコンドには阿部裕幸、植松直哉、後藤龍治がつく。
 港の蹴りにあわせて、レスリング出身の伊藤がタックルでテイクダウンに成功すると、足関節をつかみにかかる。だが港は上体を巧みに動かし脱出。猪木アリ状態となり港がローを放つ。この展開が繰り返されるが、港が逆に足を取りに行ったり、下から三角を狙ったりと、自分から積極的に関節・絞めを狙う。結局最後までこの展開が繰り返されたが、港の総合格闘技への適応力の大幅な進化が感じられた一戦だった。
 伊藤はマイクを持つと「ウェルター級のベルトは絶対取ります!」と力強くアピールした。

◆伊藤のコメント
「目に見えるものが欲しい。優勝とかじゃなく、ベルトのように形のあるものがね。目を怪我して、復帰してから、苦しいことを耐えられる気持ちが増えてきた。いろんなことがちっちゃく見えて、はっきりと欲しい物が見えてきて。
(港の感想は?)もっと思い切って立ち技くる思てたんですけどねえ。僕が入るのを待ってましたね。打撃もっと思いきって出していいんじゃないですかね?
 今回(道場が統一して)ismになって、石井・謙吾・山宮とか打撃のうまい選手が増えてきたんで、凄くいい練習さしてもらいました。(ならば港対策は?)万全ですよ。極めは僕が下手っぴやっただけで。あんだけチャンスがあったのに。下手したらあの後いいのをもらってたら負けてたかもしれないですよね。
(勝ち進む上での課題は?)極めですね。一発で倒して一発で極める。試合になると焦って極めが雑になりますね。前からの課題なんで。もっと練習して、自分のプロレスで勝ちたいですね。グラウンドで顔を蹴られたときは気持ち良かったですよ(笑)。下から殴られましたけど、逆に切れて流血したほうがカッコいいかなと思ってたんで。それで負けたら僕がプロレスラーとして弱いだけで、それでもケロリとして立ってるのがプロレスラーです」

第5試合 ミドル級 5分3ラウンド
○ネイサン・マーコート(アメリカ/コロラド・スターズ/ミドル級1位)
×三崎和雄(パンクラスGRABAKA/ミドル級7位)
1R 0'29" TKO (ドクターストップ)

 三崎がパンチでけん制し、一気にマーコートに組み付く。差し合いから投げの打ち合いとなるが、マーコートが制してテイクダウンに成功する。だが倒される際に右手をマットに突いた三崎は左ヒジをひねってしまい脱きゅう。いわばDEEPのドス・カラスJr.戦での謙吾と同じ状態となる。マーコートがハーフガードの体勢からパンチを連打したところで、三崎の異常を察知したレフェリーがブレイクするが、負傷してなお気持ちの折れていない三崎は、左腕を垂らしたままマーコートにハイキックを放つ。結局ドクターストップがかかってしまったが、脱きゅうしながらも戦い続けようとした三崎の闘志には光るものがあった。

◆マーコートのコメント
「(三崎が)脱臼したのはわからなかった。厳しいトレーニングを積んできたので、短時間で試合が終わってしまいとても残念だ。今後はもう一度ミドル級のベルトを取って、その後でライトへビーに戦場を移したいと思う。」

第4試合 ライトヘビー級 5分2ラウンド
×石井 大輔(パンクラスism/ライトヘビー級7位)
○石川 英司(パンクラスGRABAKA)
判定0-3 (19-20,19-20,19-20)

 右ストレートで突進してきた石井を石川はタックルでテイクダウン。石井はオープンガードで脱出のチャンスをうかがうが、寝技はGRABAKA石川が何枚も上手。石川はあっさりパスガードするとポジションを入れ替えながら優位に試合を運ぶ。バックマウントから石井の首を狙う場面も。上を取ればパンチを落とし、石井は顔から出血しはじめる。
 2Rも石川がグラウンドで主導権を握る。マウント→バック→スリーパーと王道パターンで攻める。石井にひっくり返され下になるが、決定的なパンチを許さない。スタンドに戻ると、石井が石川をがぶって持ち上げ、脳天から叩き付けるように落とし観客を湧かせたが、石井はトップポジションからの攻め手に欠く。
 判定はグラウンド戦を優位に進めた石川に軍配。大将・菊田に促されるようにマイクを持つと、テレ臭そうな仕種を見せながらも「5月11日、大阪で渋谷さんとやることが決まりました。ほんと、ぶっつぶすんで、覚悟して待ってて下さい!渋谷さん!」と挑発的なアピールをして見せた。
 なおこの試合の結果、石川英司がライトヘビー級5位にランクインした。石井は7位のまま。長期不参戦のオマー・ブイシェが6位から10位に転落したのに救われた格好だ。

◆石川のコメント
「(2月の大阪での)近藤さんに続いて石井さんと聞いて、辛いのが続いたんですけど。雑誌では郷野さんとか佐々木さんが僕をおちょくってますけど、『いいんじゃない?経験になるし。一つ勝てば大きいよ』って言ってもらって。先輩を信頼したから勝てたと思うんですよ。佐々木さんに怒られながらパスガードの練習をしてきて、それが出せたし。今日は密接に見てくれてた先輩方のおかげです(菊田さんに『GRABAKAでノーランカーは君だけだよ』と言われたそうですが?)僕はずっとわかってたんですけど、練習の時に『気が付いたら、君だけだよ〜』と言われて(笑)。僕もGRABAKAの看板をしょってるんで下手な試合はできませんから。(今日は作戦どおり行きましたか?)向かい合うと作戦で考えてたこともパーンと飛んじゃうんで、みんなに言われてたことを勝手にやってただけですね。(今までと気持ちに違いがあった?)これまで格闘技をなめてたと思うんですよ。近藤さんと戦った後、佐々木さんから『試合でビビって緊張することは誰でもできるんだよ。何で勝てるか考えれば道は開ける』って言われて。僕はそこまで佐々木さんとかが考えてるとは思ってなかったんで。ハートの部分で変わりましたね。去年は負けてばかりでクサってばっかりでしたけど、そんな時でも佐々木さんは『クサらずに地道に行こうよ』って言ってくれて。先輩方には感謝してます。」

第3試合 初代ウェルター級王者決定トーナメント出場権獲得試合 5分2ラウンド
×北岡悟(パンクラスism)
○大石幸史(パンクラスism)
判定0-2 (19-20,20-20,19-20)

 元RJWでレスリングに勝る大石が再三テイクダウンを奪う。下になる北岡だが、パレストラに所属していた経験を生かし、足を効かせて有効打を許さず、アームロック、三角締めを狙っていく。時折スタンドに戻って打ち合いになるが、大石は打撃面での成長を見せ、鋭いパンチを北岡に命中させる。
 結局、打撃とテイクダウンで上回った大石が判定勝ちを収め、ウェルター級王座決定トーナメントの出場権を獲得した。

◆大石のコメント
「考えすぎですね。練習で北岡さんにやられるイメージが強すぎて、防御に回ってしまいました。トーナメントのことは全く考えてなかったですけど、出ても負けるんじゃないですかね。こんなんじゃ全然ダメです」

第2試合 ライトヘビー級 5分2ラウンド
○KEI山宮(パンクラスism)
×小谷野澄雄(烏合会)
1R 0'31" KO ※右アッパー

 開始早々飛び込んで来た小谷野に、山宮がパンチ連打。小谷野がふらつきながらしがみつくと山宮は膝をたたき込む。最後は右アッパーで山宮がKO勝利をおさめた。試合後の山宮は「GRABAKAに二連敗したことが良かった。『目覚めさせてくれてありがとう』って感じですね」「東京道場がなくなって寂しかったけど、道場が統合されて鈴木さんがいろいろ言ってくれるのが大きい」などと語り、気持ちも環境面でも充実しつつあることがわかった。GRABAKAへのリベンジにこだわらないという山宮だが、GRABAKAが席巻するパンクラスマットにおいて、今年後半のキーパーソンとなることは避けられないだろう。

◆山宮のコメント
「勝ったのが半年ぶりでうれしいですけど、勝ち負けは別として全力出せる試合をしたかったので、できて良かったです。ただ、今日の勝ちで満足してないので。あのGRABAKAの二連敗が良かったです。負けて気付いたことがいっぱいあったんで。変に勝ったりしたら、今年30歳になるんで引退のほうに気持ちが行っていたかもしれないですけど、今凄く燃えてるんですよ。ほんとに『目覚めさせてくれてありがとう』って感じですね。中だるみしていたのが一気に吹き飛んだ感じで。
 で、(道場が統一して)ismになって選手がいっぱいいて、凄くいい刺激なって、いい環境です。東京道場無くなって寂しいけど、僕はこのism、大歓迎、うれしいです。(具体的に良い点は?)変な言い方ですけど、鈴木さんの存在が大きいですね。言ってくれる人がいなかったんで。高橋さんは着いてこない奴は放っておきますけど、鈴木さんは細かいことまで言ってくれるんで。(今日は技術的に試したかったことは?)技術的なことよりも、ダッシュを意識してました。お見合いを無くすことですね。今までダラダラ試合してて、やってる方も終った時ドヨーンとして、見てるほうも『何で行かないんだ?』っていうのを無しにして。これからはパンクラスを盛り上げる戦力になりたいですね。去年までははっきり言って戦力になってなかったんで。僕はパンクラスの中を盛り上げたいですね。(やっぱりGRABAKAにリベンジをしたい?)それもありますけど、それ以外の相手でも、パンクラスを守るために戦いたいです」

第1試合 ヘビー級 5分2ラウンド
○高田浩也(RJW/CENTRAL)
×山本孝夫(禅道会)
判定3-0 (20-19,20-18,20-19)
※2度のローブローで山本のイエローカード1

 1R開始早々、ローブローで山本に注意。再開後、高田が胴タックルからコーナーに押し込み細かい打撃を当てていく。そのまま目立った動きはなく試合は進むが、終盤に再び山本がローブローを放ってしまう。二度目のためイエローカードが出され山本に減点1が課せられる。2Rも同様の展開が続き、減点も響いて高田が判定勝ちを収めた。

パンクラスゲート ウェルター級 5分2ラウンド
△小沢 稔(V-CROSS)
△飯田 崇人(A-3)
2R 時間切れ引き分け

パンクラスゲート フェザー級 5分2ラウンド
○和知 正仁(Team Roken)
×平山 英明(P'sLAB 横浜)
1R 0'13" KO ※バックブロー

Last Update : 04/09

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