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[PRIDE.20] 4.28 横浜アリーナ (レポ&写真):格闘界頂点対決は緊迫の内容に。怨念の一戦に“金的ルチャドール”出現

ドリームステージエンターテイメント "PRIDE.20" 2002年4月28日(日)神奈川・横浜アリーナ
総入場者数:18926人(主催者発表)
レポート:井田英登,井原芳徳  写真:井田英登  コメント編集:石動龍

(7) シウバ vs. ミルコ (6) アレク vs. 菊田 (5) ニンジャ vs. スペーヒー 
(4) ヘンダーソン vs. アローナ (3) 今村 vs. ホジェリオ (2) 佐竹 vs. ジャクソン (1) 山本 vs. サップ

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メインイベント 特別ルール 3分5R
△ヴァンダレイ・シウバ(ブラジル/シュート・ボクセ/ミドル級王者)
△ミルコ・クロコップ(クロアチア/クロコップ・スクワッドジム)
時間切れ
※特別ルール:判定決着無し。グラウンド状態の相手への膝蹴りが可能で、その他は去年のK-1 vs. 猪木軍でのルールに準ずる。

 K-1 vs. PRIDEの格闘技界頂点対決。両者ともストライカーのため、ヘビー級のミルコ優位の下馬評が一般的だった。大会6日前のシウバの会見では体重差に関する質問も飛んだ。だが試合当日を迎えてみると、ミルコは97.2キロに絞り込み、逆にシウバが0.4キロほど上回るという、ほぼ同体重のシチュエーションとなった。
 この試合には「猪木ボンバイエ」と同様、1ラウンド3分、膠着は徹底してブレイクという、ストライカー向けにシフトされた特別ルールが採用された。通常のPRIDEの試合とは違い、グラウンドの攻防や首相撲の場面で流れが分断されてしまう。試合経過をご覧いただければ判る通り、総合ルールも4戦目となり、技術的に進歩をみせているミルコは、このルールを十全に活かして“逃げ切った”格好だった。
 シウバは試合後「ミルコには今回特別ルールで合わせたんだから、次にもし戦うとしたら、純粋なプライドルール以外では受けるつもりはない」とこぼした。一方のミルコも「今年はもうPRIDEに出るつもりはない。自分の力が発揮できるK-1に専念したい。シウバとは次はK-1のリングとルールでやりたい」と“無傷の総合撤退宣言”をしている。ミルコの格闘センスの高さは今回も随所に感じられた。だがこの日はある意味、その心境を反映したような安全圏での戦いに終始していた気がする。

<1R>
 試合開始直前、顔をつきあわす二人。シウバの睨みに、視線を外さず逆ににらみ返すミルコ。ゴングが鳴ると、小刻みに肩を振りながらシウバは右に回り、ミルコは中央で動きを見る。シウバが遠い間合いでローを空振りすると、ミルコは自分の太ももを指さして挑発。そして大胆に距離を詰め、思い切りのよい左ハイを放つ。ガードされると、続いて左ミドルをシウバのわき腹にぶち込む。シウバはこれをキャッチし、ミルコはすぐに突き放す。大振りのフックを振りまわしながら距離を詰めたシウバは、そのまま抱きつき足払いでテイクダウンを奪う。
 下になったミルコが蹴り足でシウバの押さえ込みをかわすと、シウバのサッカーボールキックがミルコの頭部を襲う。ミルコはスネを蹴ってシウバをコカして難を逃れたが、そのままシウバにおおいかぶられてしまう。一撃必殺の素早い攻防に客席が湧く。
 両腕を抱え、がっちりクロスガードをとるミルコ。島田レフェリーは膠着と見て早々とブレイクを命じる。スタンドに戻って、距離を測りあう両者。じわじわとプレッシャーをかけてくるミルコに対して、シウバは左右のストレート連打で前に出たが、ミルコはダッキングでかわす。シウバはそのままロープに押し込み、得意の膝を放つ。互いに決定打は無かったが、中身の濃いあっという間の3分間だった。

<2R>
 ミルコの左ローに合わせ、シウバはカウンターの左右を振り回す。コーナーに詰めたところを突き飛ばされマットに転がるが、ミルコは下がって立たせる。あくまでスタンド勝負を望む構えだ。遠間からのローのけん制のしあいが続いた後、ミルコの左ミドルがシウバの脇に突き刺さる。効果ありと見たか、再び左ミドルを放つミルコ。しかしシウバはこれをキャッチして押し倒す。ミルコはロープ際でクロスガードで防御。だがシウバは腕を捕まれても、振りきって強引にパンチを落とす。着実なパンチの連続に、堪らず両手で頭を被ってしまうミルコ。総合4戦目最大のピンチに、その表情は険しい。慌ててミルコが腕をつかんでパンチを食い止めたところでゴング。

<3R>
 2R守勢だったミルコが様子見のローを出すと、シウバは“待ってました”とばかりに左右のフックで襲い掛かる。クリンチで防御したミルコだが、テイクダウンを警戒してすぐ突き放す。けん制気味の打撃を続けるミルコに対し、シウバは小気味よいコンビネーションを返す。1、2Rとは逆にシウバがプレッシャーを掛けている展開だ。同じ展開でシウバのカウンターの右フックがミルコにヒット。だがミルコはこの状況でも打撃のセンスを発揮。返した左フックがシウバの鼻先をかすめ、一発でシウバのバランスを崩す。シウバはミルコに抱きつきディフェンス。体を入れ換えロープに押し込むミルコ。まもなくブレイク。距離を測りあう間に、ゴングが鳴る。

<4R>
 形勢を戻したミルコが序盤のプレッシャーを再現。左ミドルがまたもシウバのわき腹に炸裂。シウバの脇が赤く染まる。左右フックで前に出てきたシウバをかわして再び左ミドル。シウバのワンツーをかわして、ミルコは胴タックルのように抱きつく。膝を入れるシウバに対しミルコはクリンチを維持。島田レフェリーは素早くブレイクを命じる。
 シウバはショートのワンツーで飛び込み、ミルコを赤コーナーに押し込み膝を見舞う。両脇を差して一気にテイクダウンを狙う体勢だが、ミルコは顔面を両手で押しながら腰を落とし、スペースを作って右を差し返す。うっかりすればテイクダウンされかねない動きだが、リスクを犯してもきっちり目的を果たすミルコの格闘センスの高さがこんなところにも伺える。
 体を入れ換えるのに成功したミルコは、ワルツでも踊るかのようにじわじわリング中央にシウバを運ぶ。ここで島田レフェリーがブレイクを命じる。軽く左のジャブを放つシウバに対して、ミルコは動きは無く、ここでゴング。

<5R>
 シウバはリング中央のミルコの周りを逆時計方向に回る。左ハイで進路をさえぎるミルコに、シウバは右ローを返し前に出る。お見合いとなり、短いジャブで互いに牽制。シウバはワンツーで距離を詰め胴タックルを敢行。受けたミルコは素早く左を差して体を入れ換える。膝を打って突き放すと、またじわじわプレッシャーを掛けるミルコ。シウバが左ストレートを出し前に出たところ、開いた右脇に再び強烈な左ミドルがヒット。しかし、これをキャッチしたシウバは、そのまま素早く押し込んでテイクダウン。ミルコはがっちりガードして腕を取りに行く。2R同様、抜いてパンチを落とすシウバとの駆け引きが続く。島田レフェリーがスタンドからのリスタートを命じる。
 シウバはミルコの左フックに合わせて胴タックルに出る。そして足払いをこらえたミルコに離れ際のワンツーを見舞う。試合終盤になってもシウバの瞬発力はまだまだ衰えない。ハイを餌にして胴タックルでロープに押し込み、膝を打ち込み足払いを仕掛ける。腰の粘りで持ちこたえたミルコは左ミドルを打って下がる。残り秒数を意識してかすでに戦意は薄く、下がって距離をキープするだけだった。

 試合終了後ドローが宣告されると、桜庭和志の入場テーマが流れ、桜庭が放送席からリングに向かう。両選手に花束を贈呈したあと、マイクを渡され、照れくさそうに「こんばんわ、桜庭です。最後の試合、緊張感があっていい試合でしたけど、僕も早くリングに戻って試合ができればいいと思いますんで、また応援して下さい」と挨拶した。

◆シウバのコメント
「ミルコはもっとガンガンくると思った。自分はこのルールで戦ったが、引き分けとは思っていない。勝ったと思っている。(もう一度ミルコとやりたいか?)私は相手を選ぶことはない。私はミドル級のチャンピオンだが、今回は重量級の選手とやった。どんな選手とでも戦う。ミルコとは今回特別ルールで合わせたんだから、もし次に戦うとしたら純粋なPRIDEルール以外では受けるつもりはない」

◆ミルコのコメント
「私も相手も安全策を取りすぎたかもしれない。ドローだから残念だが、またシウバと戦いたい。K−1とPRIDEの試合があって、その都度、練習を変えないといけないのでそれが問題だ。この試合が決まったのが3週間前で、時間が少なかった。それからPRIDE用の練習を始めた。もっと長い時間が欲しいと思う。今年はもうPRIDEに出るつもりはない。今年は自分の力が発揮できるK−1に専念して頑張りたい。シウバとは次はK−1ルールでK−1のリングでやりたい(シウバがPRIDEルールでの再戦を要求しているが?)今回のルールとPRIDEのルールは時間が違うだけではないのか?1R10分の試合はやったことがないし、準備もしてなかった。これまでハント、藤田、シウバとチャンピオンと戦ってきたが、これまで私がしてきたトレーニングは1R3分のためのもの。1R10分の試合をいきなりやれと言われても無理な話だ」

◆森下社長のコメント
「ヴァンダレイとミルコの再戦は予定があるわけではありませんが、ファンの間で機運が高まってくれば当然組むべき試合であると思います。(次回のPRIDEではK-1×PRIDEを組むのか?)可能性はありますが、決定ではないです。そもそも僕には対抗戦という感覚がないですから。 (桜庭に関して)勝者に花束を渡してもらうようにお願いしていたんですけど。そこで(勝者に)挑戦状を叩きつけるのも自由かな、と。やっとスパーリングを再開したようですが、彼本来の柔らかい動きはできていないので復帰はまだ先になりそうですね。 」

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セミファイナル 1R10分・2,3R5分
○菊田早苗(日本/パンクラスGRABAKA)
×アレクサンダー大塚(日本/AODC)
判定3-0

 菊田×アレクの発表記者会見で、アレクは菊田を「契約体重のことでいちいち女々しい」「プロレスを馬鹿にしている」と挑発。大会でもアレクは、メキシコのエル・ソラールら3人のルチャドールを伴って入場してきた。ソラールは3月のDEEP2001名古屋大会に出場し、菊田と同じパンクラスの鈴木みのるに金的攻撃を仕掛けていた選手。いわばパンクラスの怨敵を連れこみ、菊田の神経を逆なでする考えだ。リングインしても握手をすると見せて、手を出しかけた菊田をスカすアレク。徹底した挑発モードだ。

<1R>
 パンチを振って組みついた菊田に対し、がぶったアレクは金的気味の膝を打ちながら足払いをこらえる。ロープに押し込まれて寄り倒されてしまうが、アレクは上になった菊田の額を平手でペンペンと叩いたり撫でたりする。生真面目な格闘技者の菊田を馬鹿にしたような動きに、客席から失笑が漏れる。菊田のパンチにアレクは首を振り後頭部を向け、反則を誘おうとする。菊田は振り上げた鉄槌を落とせないまま、数回空を切らす。腰を上げてガードを切ろうとする菊田の顔面を、アレクのかかとがかすめる。その足を膝で押さえ込むようにして、菊田は左足をパスガード。さらに右足を抜き、マウントを奪取する。
 パンチでアレクを制したい菊田だが、アレクはなおも下から“顔ペンペン”を続ける。一見ふざけた動きだが、合間に菊田の太腿へ肘打ちを入れ、密着してパンチの距離を作らせない。じれた様子の菊田はパンチをやめ、左足を伸ばし腕十字を仕掛ける。だがアレクはこの動きをお見通し。一度右回転しかけた菊田は、アレクの下からのパンチにさえぎられ再びマウントへもどる。ニーインザベリーにポジションを変えた菊田に、アレクは下か
らの腕十字を狙う。クラッチを切らず、きっちり両足を踏ん張った菊田は、そのまま回り込んで、アレクの頭部にサッカーボールキックを見舞う。昨年9月の美濃輪戦のフィニッシュと同じ攻撃で非情さを垣間見せる。キックの当たりは軽く、菊田はすぐサイドに回り込んで膝でアレクの胸を押さえ、顔面パンチを振っていく。アレクはこれをブリッジで切り返し、“寝技世界一”の菊田からスイープしてみせる。
 上になってもパスガードにこだわらないアレク。そのまま腰を上げボディにパンチを入れる。しかし菊田は慌てず、股間に差し込んだ足首でアレクをコントロールしてあっさり上下を入れ換える。ハーフガード、マウントと移行しても、菊田に歓声はない。後楽園ホールなら満場の拍手で迎えられる場面だが、ここは横浜アリーナ。菊田にとっては完全なアウェイ状態だ。
 マウントをキープし一息つく菊田。するとアレクはターンし自らカメに。菊田にしてみれば腕も首も狙える絶好の展開だ。しかしアレクのここからの凌ぎで“U系レスラー”としての見せ場をつくる。背中にはりついた菊田にアレクはバックハンドパンチ。菊田は無理に締め技を狙わず、胴締めのままマウントに戻す。腕を上げてガードするアレクに対し、菊田はサイドブロウのフックをヒットさせていく。アレクは再びカメに。ロデオ状態のバックマウントのまま、菊田が顔面を連打。アレクは半身に逃れたが、鼻から派手に流血している。胴締めから首を狙った菊田は、そのまま深追いせずまたマウントに戻り、得意の肩固めを仕掛ける。アレクはブリッジで抜け出すが、今度は菊田はアームロック。そしてその腕を支点に腕十字へと移行する。だがアレクは腕をフックしてこらえ、頭部への蹴りまで繰りだし、そのまま上に。さらに鉄槌と胸部への頭突きを落としていく。必殺の腕十字を凌がれた菊田の心理も考慮すると、アレクに流れが傾いてもおかしくない局面であったが、ここでゴングが鳴り、10分の攻防が終る。

<2R>
 ゴングと同時に組みに来る菊田。受け止めて膝を出すアレク。これが金的になり、菊田は悲鳴をあげる。しかしかまわず連打していくアレク。菊田が寄り倒して難を逃れると、アレクはガードポジションを取って、下から菊田の顔面へ鉄槌を叩き込み、シザースで首を挟み込もうとする。菊田は腰を上げアレクの仕掛けを防ぐ。そしてアレクの足のフックを切って脇を取り、膝の裏を蹴って注意をそらし、素早くサイドポジションに。
 巴状態で互いの頭部への膝蹴りを狙う両者。マウントに移行した菊田がアレクの腕を取ってパンチを落とす。「来いや、オラぁ」と挑発するアレクに、「うっせえよ」と菊田が返す。喧嘩マッチの生々しいパッセージをリング脇の集音マイクが拾うが、塩崎レフェリーが「喋ってるな!」と一喝。場内から笑いが漏れる。
 菊田は肩固め気味にアレクをホールドしながら、なおも側頭部にパンチを入れていく。ここで初めて場内から菊田コールが起こる。しかし、すぐに湧き上がったアレクコールが菊田コールをかき消す。パンチを落とす菊田をブリッジではね上げようとするアレクだが、菊田は腰を浮かしてバックに張り付く。ここでもスリーパーを狙わず、ひたすらパンチを入れていく。カメになって逃れようとするアレクにぴったり寄り添って、荒馬にまたがるカウボーイのようにバックマウントをキープ。側頭部のパンチに合わせ、客席から声援が飛ぶ。アレクは首を振ってノーダメージをアピール。アレクが腕を払いに来たのに逆らわず、菊田は半身に倒れこんでそのままフェイスロックへ移行するが、深追いせず側頭部を叩いたところでゴング。

<3R>
 最終ラウンド。アレクの左ローに菊田はカウンターの左フックで合わせ、そのまま組みにいく。リング中央で差しあった両者。そしてまたもアレクの膝が菊田の下半身に打ち込まれる。「金的だよ、入ってるよ!」と叫ぶ菊田。「金的気をつけろ」と注意を促す塩崎レフェリー。競技的世界観での処理を望む菊田と、3秒までの反則は折り込み済みと言わんばかりのプロレス的世界観を押し通すアレクの、異質の価値観が衝突する。
 レフェリーが反則を取って試合を止めるのはたやすい。しかしアレクの金的が故意なら、それでも彼は構わず蹴り続けるだろう。機械的にコーションを重ねて試合を止めてしまえば、確信犯の“反則やり逃げ”を許す事になる。塩崎レフェリーは、アレクに注意を促しながらも、両選手による局面の展開を粛々と見守る“立会人”であることを貫く。アレクの故意が証明できない以上、菊田も自力で展開を変えるしか身を守る術はない。喧嘩マッチになったら、最終的にはルールも審判も頼りにはできない。
 アレクのラフファイトに、菊田の危機感のサイレンが鳴ったのかもしれない。再度の足払いで何とか上になった菊田は、ハーフガードのままパンチを落としていく。結果的にアレクの足の締めが緩んでマウントになったものの、パスよりパンチを優先した菊田の姿はこの試合の中では初めて見た気がする。側頭部とボディに膝を入れる菊田。菊田はマウントから腕十字に移行しフィニッシュへ一直線。だがアレクは逆半身に体を倒して肘の極めが効かない姿勢に逃れる。菊田は膝を締めて腕を固定させたいが、背中を向けたアレクの肩のジョイントがバネになっているのと、背中の高さの分だけ腰が浮いてしまい、極めが効かない。逆にアレクのかかと蹴りが菊田の顔面を襲う。アームロック風に肘の角度を変えて強引に折りに行った菊田だが、アレクはそのまま腕を抜いてしまう。菊田はかろうじてマウントをキープ。アレクが1R序盤頭と同じ“顔ペンペン”を繰り返したところでゴング。

<試合終了後のマイクアピール合戦>
 アレクは試合終了とともに菊田を突き飛ばし、両手を上げアピールする。“寝技世界一”菊田に一本を取らせなかったことを誇示してるのだろう。しかしすぐにマットに膝をつき四方に土下座をして客席にわびたのは、プロフェッショナルとしての試合を展開できなかった(あるいは、しようとしなかった)反省もあるのだろう。
 判定負けを宣告されたアレク。試合前同様、菊田に握手を求める。再び素直に応じた菊田に、アレクはファックオフのサインを見せ、そのあと“反則王”ソラールらルチャドールをリングに上げ、DEEP2001の鈴木みのる戦を再現するかのようなバンザイポーズを披露してリングを降りた。

 しかし、ここで菊田がマイクを取って逆襲にでる。「はーい、どうもこんにちわ。えー、勝ったのは僕です。負けたものは去れ!」。乱闘を予測してか、あわててリングに飛び込み菊田をガードする郷野・佐々木・佐藤らGRABAKAセコンド陣。だがアレクはリングには登らず、下からマイクで応じる。「オイ!オイ! 確かに俺は負けたけどな、内容ではオマエの負けだ!」。
 ブーイングと歓声が入り交じる騒然とする場内。s再び菊田がマイクを持つ。「ちょっと待って、少し言いたいことがあります。試合前にアレク選手の過激な挑発がありましたが、僕はプロレスを一回入門して挫折した経験があり、そのときにプロレスへの批判をしたことがあります。しかし、今は、それから四年経ち、プロレスも格闘技もどっちも素晴らしいものだと思っております。そしてこういう下らないことをやってないで、今いるチャンピオンのノゲイラや、ヴァンダレイ・シウバみたいないい選手がいるんで、そっちのほうに勝つようにみんなで頑張っていけばいいと思います。こういう女々しい争いは僕はやりたくありません」
 あくまで格闘アスリートとしての正論を披歴し、菊田はアレクの感情的な問題提起を一蹴した。

 多くのテーマが提出された試合だった。
 格闘スポーツにおけるプロイズム、そして総合格闘技とプロレスの微妙な位置関係、もつれあいながら交錯することの無かった両者の感情とその行方。BoutReviewではしばし時間を頂いて、この試合の意味を検証したい。(井田英登)

◆菊田のコメント
「(アレクは)ヒザを急所に何回も入れてきてましたよ。レフェリーが見えないところで5、6回くらいも。それでかっときて殴りにいってしまいました。自分はプロレスラーも格闘家も尊敬しています。今日みたいな争いはもう終わりにしたいですね」

◆アレクのコメント
「(喧嘩の後に)二人ともぶっ倒れて抱き合うっていう、青春ドラマみたいなことにはなんないですね。僕が憎いのは菊田&GRABAKAと尾崎(パンクラス社長)だけですから。パンクラスに対してと言う感情ではないです。もうこれで僕の中では彼らとの接点は終わりです。寝技世界一だかなんだか知らないけど、あそこまで言っててあんなへなちょこ腕十字なんてどうなんだろ?っていう感じですかね」

◆森下社長のこの試合についてのコメント
「アレクに関してはフェアな態度ではないと思うのでDSEとしては推奨できません。プロとしては良いのかもしれないですけど、スポーツマンらしくちゃんとしてほしかった。」

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第5試合 1R10分・2,3R5分
○ムリーロ・ニンジャ(ブラジル/シュートボクセ・アカデミー)
×マリオ・スペーヒー(ブラジル/ブラジリアン・トップ・チーム)
判定3-0

 「必殺仕事人」のテーマに乗り、ニックネームどおり忍者の衣装で入場したニンジャ。開始早々のカウンターパンチ合戦ではスペーヒーをいきなりぐらつかせる。老かいなスペーヒーの柔術に対しても、ニンジャは持ち前の若々しいアグレッシブな動きで対処。スペーヒーはスタミナを消耗し、さらに左膝も痛めた様子で、動きはあるものの勢いを欠く。三角絞め、アームロック、足関節技といったチャンスをことごとく逃してしまう。3Rになると体力差がくっきりとあらわれる。スペーヒーは右眉上を出血。ニンジャは極め手に欠いたものの、後半戦はほとんどの場面で上を制し続け判定勝ちをおさめた。勝ったシュートボクセ陣営はフジマール・フェデリコ会長を抱え上げて喜びをあらわし、負けたトップ・チームのアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラが師匠の敗戦にうっすらと涙を浮かべていた。

◆ニンジャのコメント
「忍者の衣装をどうしても着たかったので、着ることができてとても嬉しい。今日は非常に攻撃的だったがチーム全体の流儀に従っただけだよ」

※スペーヒーはコメントなし

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第4試合 1R10分・2,3R5分
×ダン・ヘンダーソン(アメリカ/チーム・クエスト)
○ヒカルド・アローナ(ブラジル/ブラジリアン・トップ・チーム)
判定1-2

 リングスKOK初代王者のヘンダーソンと、リングス初代ミドル級王者のアローナがPRIDEマットで激突。試合では23歳のアローナが31歳のヘンダーソン相手にパワフルでアグレッシブな展開を見せる。開始早々右ローを叩き込み、ヘンダーソンのパンチをかいくぐると、レスラーのヘンダーソンのお株を奪うようなタックルで突進。ロープに押し込み、その反動でテイクダウンに成功し、逃げようとするヘンダーソンに食らい付きインサイドガードの体勢になる。ヘンダーソンの足のロックが外れた隙を逃さずハーフガードに移行し、上体をヘンダーソンに密着させたまま足を抜き、一瞬マウントになる。すぐにヘンダーソンはガードに戻したが、この後もアローナの柔術テクニックは冴え渡る。再びアローナがマウントになったところで、ヘンダーソンはすぐひっくり返して上になり、アローナの頭に膝を叩き込む。だがアローナも立ち上がり、開始時と同じスタンドに戻る。ハイレベルな攻防に、観客も大いに湧く。

 その後もアローナは試合を優位に運び、1R終盤にはマウントをキープ。2Rこそカウンターパンチで右眉を切り出血してしまったが、スタミナでも上回るアローナは、3Rもマウント、バックマウントのポジションから細かい動きでヘンダーソンを苦しめ続けた。
 ヘンダーソンと同じレスリング出身の小林ジャッジがヘンダーソンにポイントを付けたことで観客から疑問の声が上がったが、アローナの勝利はヘンダーソンも認めるところだった。

◆ヘンダーソンのコメント
「アローナはとても強かったよ。打撃で勝負するつもりだったんだけど、相手も警戒していたのか思うようには行かなかったね。2Rまでは互角だったが、3Rで下になってしまい、極められかけたことが判定に響いたんだと思う」

◆アローナのコメント
「とても厳しい試合だった。もっとたくさん練習してこようと思う。(スペーヒーが負けたことについて)もちろん(ニンジャを)倒してやりたい気持ちはある。私だけではなくトップチームの全員がね。自分個人としてはタイトルをかけてヴァンダレイ・シウバと戦いたい」

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第3試合 1R10分・2,3R5分
×今村雄介(日本/高田道場)
○アントニオ・ホジェリオ・ノゲイラ(ブラジル/ブラジリアン・トップ・チーム)
1R 0'35" フロントネックロック

 ヘビー級王者・ホドリゴの双子の弟・ホジェリオがPRIDEデビュー。瓜二つの兄が入場からぴったりと寄り添う。今村も同じくPRIDEデビュー戦。落ち着いた表情で試合に臨んだが、ジャブのカウンターにあわせて片足タックルで飛び込んでしまう。これは柔術家のホジェリオにしてみればおあつらえ向きの展開。ギロチンチョークにつかまえ、そのまま引き込んで今村からタップを奪った。

◆今村のコメント
「あっという間でした。タックル行ったらすぐ捕まっちゃって・・。(ギロチンが)来るぞ、って言われてたんですけどかかっちゃいましたね」

◆ホジェリオのコメント
「勝てて嬉しい。早くPRIDEで戦いたくて仕方がなかったからね」

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第2試合 1R10分・2,3R5分
×佐竹雅昭(日本/怪獣王国)
○クイントン・ランペイジ・ジャクソン(アメリカ/チーム・イハ)
1R 7'07" KO (投げ)

 ジャクソンが佐竹をコーナーに詰めての細かい膝蹴り、離れてのカウンターパンチで攻勢。片足タックルの要領で佐竹を豪快にマットに叩き付けると、そのままサイドポジションをキープし、パンチと膝の雨を降らせる。佐竹も一瞬ガードポジションに戻しそうになるが、ファビアノ・イハ仕込みの柔術でジャクソンはすぐにパスガード。豪快さだけでなく器用さも見せる。そして最後は佐竹が脱出したところでバックに周り込み、なんとバックドロップ。背中を強打した佐竹は苦しそうな表情を見せ、レフェリーがすかさず試合をストップした。

◆ジャクソンのコメント
「佐竹はただのロートルだった。俺の急所に4回もヒザを当てやがって! くそくらえだぜ。前の試合では金的で反則負けにされたのに、俺がやられた時はお構いなしかよ。PRIDEの俺に対する扱いは気に入らねぇな。俺にもプライドがあるんだぜ! これだったら公平に扱ってくれるUFCにでも出ようかと思うよ」

※佐竹はノーコメント


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第1試合 1R10分・2,3R5分
×山本憲尚(日本/高田道場)
○ボブ・サップ(アメリカ/モーリス・スミス・キックボクシングセンター)
1R 2'44" TKO (レフェリーストップ)

 NFL、アメリカンプロレスで活躍していた巨漢のサップ。山本の体重差は約60キロで、体格だけでじわじわプレッシャーをかけ、豪快なパンチで山本を苦しめる。山本もローと前蹴りで打開を見い出そうとしたが、ダメージが激しく、最後は離れ際の左右のフックでマットに沈んだ。

◆ボブ・サップのコメント
「山本はいい選手だったね。何発かいいパンチをもらったよ。俺はエキサイトしやすいから今日は感情的にならないように気を付けたよ。今日は(メイントレーナーの)モーリスをはじめたくさんの人たちがサポートしてくれたから、思ったとおりの試合ができたね」

◆山本のコメント
「(相手が)大きいので大振りしてくると思ったが、意外にコンパクトなパンチを打ってきたのが計算外でした。いくら練習しても、結果が全ての世界ですから。今日はゼロですよね、見ての通り」

Last Update : 04/29

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