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(レポ&写真) [戦極] 3.5 代々木:五味、復活勝利で涙。ジョシュ完勝

ワールドビクトリーロード "戦極 - SENGOKU - 第一陣"
2008年3月5日(水) 東京・国立代々木競技場第1体育館  観衆:15,523人(満員)

  レポート&写真:井原芳徳  コメント編集:大野ヨウイチ  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】


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【戦極公式ルールの特徴】サッカーボールキック、頭部への肘は反則。インターバルは90秒。ジャッジはラウンドごとに10点法で採点。同点の場合はどちらかに必ず優劣をつける。

第7試合 ヘビー級(+93.1kg) 5分3R
×吉田秀彦(吉田道場)
ジョシュ・バーネット(米国/フリー/パンクラス無差別級王者)
3R 3'23" ヒールホールド


 試合前からキャッチレスリング vs. 柔道を強くアピールしていたジョシュ。開始1分ほどで、吉田をバックドロップで後頭部からマットに叩き付け、場内を沸かせる。その後いったん立ち上がると再び後方への投げを狙う。吉田は潰して腕十字を狙い、あわや逆転という場面を作るが、ジョシュは危なげなく防御する。
 2Rにはジョシュがアキレス腱固めでチャンスを作り、終盤にもプロレス技のSTFやスープレックスを狙う場面があったが、これも未遂。MMAで勝ちに行くというよりも、キャッチレスリングを見せることにこだわりすぎた試合運びとなってしまう。マウントパンチも落とすが、一緒に練習したことのある友人が相手ということもあってか、若干遠慮がちのようだ。
 その後もジョシュのキャッチレスリング的な攻撃が続くが、3Rの終了時間が迫った3分過ぎ、膝十字にトライした後、ヒールに移行しきっちり一本を奪った。

 試合後マイクを持ったジョシュは日本語で「吉田さんホント心強い。でも世界の選手たち、お前はもう、死んでいる」と北斗の拳のフレーズを引用して話し、お得意の首をかっ切るポーズを見せた。
 次回5/18(日)有明コロシアム大会にはホジャー・グレイシーとケビン・ランデルマンが参戦することが発表され、主催のWVRの國保尊弘広報もヘビー級トーナメント開催に意欲を示す。ジョシュが戦極で、PRIDE無差別級GP参戦時のような、本当の殺気を見せるのはこれからとなりそうだ。
 なお、6/8(日)さいたまスーパーアリーナ大会の開催も決定。今大会は「第一陣」、5月は「第二陣」、6月は「第三陣」という、PRIDE武士道を思わせる大会名がついている。

◆ジョシュ「(吉田の印象)予想通り身体的にとてもタフで、やりたかった技もできなかったがそれも予想通りだった。(キャッチのテクニックは見せれたか?)チャンスがなくてできない技もあったが、キャッチレスリングは見せられた。(試合を楽しんでるように見えたが?)とても楽しい試合だったが、友人である吉田さんに攻撃するのはつらい。ただ、吉田さんも何度も攻撃してきたからお互い様かな。(2Rに決めるチャンスがあったのでは?)倒せるチャンスはいくつかあった。吉田さんをそんなに簡単に極められない。ただ、いままで彼を関節技で負けたことはないと思う。もう少しパウンドで攻めてもよかったが、キャッチレスリングをテーマに試合をしたからその点では満足している。
(今後について)少し休んで怪我を治してから。戦極でもどこでもチャンスがあれば戦いたい。(ホジャー、ランデルマンとの対戦について)ランデルマンも友人だが、対戦するときは本気でやらなければならない。ホジャーは若いのに実績のある選手だから簡単な相手ではないだろう」

※吉田はノーコメント

◆木下直哉WVR社長「スタッフ、関係者の気持ちが一つになったことを実感しました。当初、お客様に喜んでもらえるか不安でしたが、今日は楽しんでもらい、暖かく見守ってもらいファンには感謝しています。選手全員、最高の試合をしてくれました。今後につながる確信を持てる試合でした。今後とも、世界に羽ばたけるようにご協力お願いします」

◆國保尊弘WVR広報「当初のテーマの通り“リアル”を演出できました。紙一重の試合ばかりだったと思います。後半からは会場にも熱がでてきて一安心でした。まだまだ反省点もありますが、オギャーと生まれたイベントを大人にできるようにご協力お願いいたします。また、選手が輝けるリングを継続的に提供できるようにしていきたいと思います。
(3/15に旗揚げするDREAMに対し)お互い切磋琢磨できる状況にしていきたい。一つよりも二つ団体があったほうがいい。
(今後のスケジュールについて)5月と6月に短い間隔ですが開催し、時期を見て希望ですが、ヘビー級のトーナメントをやりたいと思っています。アメリカにも出場して欲しい選手がまだいるので、大会を重ねてまだまだいい選手がいることを分かってもらいたい」

第6試合 ライト級(70kg) 5分3R
五味隆典(久我山ラスカルジム)
×ドゥエイン・ラドウィック(米国/ハイ・アルティチュード)
1R 2'28" TKO (ドクターストップ:スタンドパンチによる鼻の上のカット)


 序盤からスタンドでのパンチ戦となり、リーチのあるラドウィックの右がやや的確だったが、打ち合いの攻防で五味のカウンターの左フックが見事炸裂。ラドウィックが尻餅をつくと、五味は一瞬両手を挙げて喜んでしまい、追い討ちのチャンスを逃してしまうが、ラドウィックは鼻の上から大出血。スタンドに戻るとドクターチェックが入り、ストップがかかった。
 マイクを持った五味は「周りが叱咤激励してくれて、ジムの後輩も育ってきた。今日集まってくれたみなさん、本当にいい人たちです」と話すと、うっすらと涙を浮かべ声を詰まらせた。
 12ヶ月ぶりの試合、14ヶ月ぶりの日本のリングでの試合だった五味は、ラップの曲に入場テーマを一新。勝利後もコーナーによじ登って喜ぶパフォーマンスを見せることが無かった。しかしリング上で切れ味鋭いパンチを見せ、涙も見せた五味は、これまでの五味よりもある意味、五味らしさにあふれているような気がした。

◆五味「ここからだってところで終わって、相手も残念そうにしてました。勝ててよかったですけど。(積極的に攻めていましたが?)相手が減量が苦しそうだったから、最初から仕掛けてくるのを警戒していましたが、互角にやれると感じて、じっくりいこうと思いました。向こうは体重をかなり落としてきているけど、あのグローブならパンチ力もあまり変わらないし。(パンチをもらっていたが?)左フックは見えなかった。打撃専門のパンチだなって。伸びてくるし、キレもあった。
(リング上での涙について)目標なく一年間すごして、だれに会っても後ろめたい、まわりもどう接したらいいか分からない状況で、それが今年に入ってすぐ目標が決まり元の状況に戻れました。国士舘(大学レスリング部)や(シューティングジム)八景に出稽古にいくとみんな喜んでくれたり、セコンドに(K'z時代の先輩の)竹内(出)さんとかにもついてもらって。団体が違っても、お互いがんばるものがあるからこそ楽しいことがあると感じました。昨日もラドウィックに負けた事のある(須藤)元気君が『タッグマッチで勝とうよ』と言ってくれて。今日もリングサイドで見てて、元気くんも『胸のつかえがとれた』と言ってくれましたね。
(今後の試合のペースについて)リズムよくやっていきたいですね。どんな大会になるかわからないプレッシャーもあったけど、これでいいスタートが切れます。(戦極のライト級には相手いないのでは?)クリーンなすばらしい大会で、選手がしっかりコンディションを作ってやっていけば、ファンも集まるし、魅力ある舞台だから選手も集まってくるでしょう。(DREAMのライト級GPについて)みんな後輩だし同じリングで戦ってた人たちだから、純粋に見にいきたい。野次りにいきたい(笑)(五味選手が一度負けているB.J.ペンがUFCで王者になったが?)定期的に試合をしていって、完璧な状態の時にやりたいですね」
※ラドウィックは病院直行のためノーコメント

第5試合 ミドル級(83kg) 5分3R
三崎和雄(GRABAKA)
×シアー・バハドゥルザダ(アフガニスタン/ゴールデン・グローリー/修斗ライトヘビー級(83kg)世界王者)
2R 2'02" フロントチョーク


 1R、右フックをもらってぐらついた三崎だが、テイクダウンに成功すると、ハーフからアームバーを仕掛ける。キャッチサインが出るが、ロープにもつれたため極めにくく、一本には及ばず。
 2R、激しく両者のストレートが交錯するが、的確さではバハドゥルザダが上。三崎の顔面が腫れてくる。だがバハドゥルザダは「総合なので色んな技を見せた方がいいと思った」といい、どちらかといえば不利な寝技に行こうと、タックルで組み付く。そして結果的にこの考えが裏目に。この時三崎が仕掛けたスタンドでのギロチンは失敗に終わったが、しつこくバハドゥルザダが組み付きテイクダウンに成功すると、再びギロチンで捕まえ、タップを奪い勝利した。
 試合後、三崎は「大晦日のマイクでさんざん叩かれたんで、マイクをするつもりが無くて、今日は何も考えてなかったんだけど」と苦笑いを浮かべるが、「言いたいこと言え!」という観客の声に促されると、「これまで苦しい道のりでしたが、俺は今、生きている。これが生きるということだと思います」等と故・尾崎豊さんのように語り出した。リングを降りるとリングサイドの長渕剛さんと握手した。

◆三崎「(左目が腫れているが?)たぶん右フックをもらった。軌道がわからなかった。試合に影響はなかった。ただ眼窩底骨折が心配だった。全然大丈夫でしたけど。(対戦相手の印象は?)勝つんだ、生き残るんだという気持ちをパンチ一発一発から感じた。(秋山選手と比べて?)生き物がちがうから。(シアー選手は何?)例えられないけど(苦笑)
(戦極の感想は?)暖かい感じがした。一試合一試合だんだん受け入れてもらっている感じ。(今後について)戦極で本物を伝えていきたい。(マイクアピールで『クソ高いチケットを買ってまた見にきて下さい』とも話していたが?)高いっすよね。まあそれ以上のものは見せていると思いますけど」

◆バハドゥルザダ「途中まで有利な展開だったが、総合格闘技を見せるためにミスをしてしまった。自分は立ち技の選手なのに、タックルにいってしまったことがミスだった。また、初めての大会場、修斗の王者として等、様々なプレッシャーがあり、時差ボケもあって3時間しか寝られなかった。(今後については?)オファーがあればいつでも。修斗と戦極がうまく話し合ってくれている」

第4試合 ヘビー級 5分3R
藤田和之(藤田事務所)
×ピーター・グラハム(オーストラリア/A・E FACTORY)
1R 1'23" ノースサウスチョーク


 開始から藤田が低空タックルのプレッシャーをかけ、3度目のタックルでテイクダウンに成功。あとは藤田の独壇場で、あっさりサイドを奪うと、マウント、サイド、上四方と移行し、あっさりとチョークで一本を奪った(※公式発表はスピニングチョークだが「スピニング」はしていなかった)。完敗のグラハムは試合前の挑発もどこへやら、勝者の藤田の手を挙げて讃えた。

◆藤田「復帰戦が無事終えることができた。いろいろあったが、自分を信じてロスに行っていた。試合前はグラハムと罵りあったが、拳を交え気持ちをぶつけ合えばノーサイド。相手は総合デビュー戦だったけど、試合前からあれだけの闘争心で、最高の相手だった。空手家の一撃は石の拳というか恐ろしい。パンチをくらって左目の上が腫れてしまった。打撃の間合いに入らないように近い距離で戦うよう意識した。(入場曲の「燃える闘魂オーケストラバージョン」について)初心にかえる意味で選んだ。(次の試合)決まっていないがトレーニングは続ける。ここは初心に戻れるリングだから」

◆グラハム「(試合前はアグレッシブだったが?)自信があったから。結局、負けてしまったからまた練習して戻ってくる。(遺恨については?)恨みなどはない。精神的にも肉体的にもトレーニングしているし、スポーツマンだからそのような気持ちはない。ただ負けてしまったのは悔しい。寝技などの力をつけて次はいい試合を見せたいと思う」

第3試合 ミドル級 5分3R
×瀧本 誠(吉田道場)
エヴァンゲリスタ・サイボーグ(ブラジル/シュートボクセ・アカデミー)
1R 4'51" アキレス腱固め


 一階級落としてきたサイボーグが、伸びのる右ハイ、右ローをヒット。特に右ローの威力は強烈で、数発もらっただけで瀧本はスリップしてしまう。サイボーグが上になった後、膠着しブレイク。スタンドに戻ると、瀧本は足のダメージの影響もあって投げに失敗し、またも下に。すると足関を仕掛けたが、足の取り合いになり一本を取ったのはサイボーグのほう。ストライカーのサイボーグに、オリンピック柔道金メダリストが寝技で一本を取られる波乱が起こった。

◆瀧本「(残念な結果でしたが?)あまり負けた気がしない。(なぜ?)言い訳になるのでいいたくない。もう一回やりたい気持ち。(ローキックは?)効きました。最初は大丈夫だと思っていた。2〜3発目からバットで殴られているようだった。組んで投げることもできなくなったし。ヒールは予想していなかったが、来たときは抜けれると思った。結局、ローの影響で足が動かなかった。(関節技を取られてショックだったか?)結果がすべてです」

◆サイボーグ「いつもの93kg(ライトヘビー級)ではなく83kg(ミドル級)で試合をして、さらに勝ててよかった。(93kgと比べて動きは?)動きは軽かった。そして、いつもの強さもあった。(ローキックについて)そのまま打ち続ければ相手は倒れると思った。(ヒールは作戦通り?)打撃でKOできると思っていったが、グラウンドもいつも練習しているから。(瀧本の印象)時間が短かったからわからない。だが、すばらしいファイターには違いはない。(最後に)83kgでチャンピオンになりたい」

第2試合 ライトヘビー級(93kg) 5分3R
川村 亮(パンクラスism/パンクラス・ライトヘビー級2位)
×アントニオ・ブラガ・ネト(ブラジル/グレイシー・フュージョン)
判定3-0 (29-28/29-28/27-26) ※木村、大橋、芹澤が採点


 1R、ネトがマウント、バックから極めを狙い、いきなりピンチに立たされた川村だが、残り30秒に脱出するとパンチラッシュで反撃。典型的なストライカー×グラップラーの構図となり、2R以降優位に立ったのは川村。寝技になっても危なげなく対処し、スタンドで左右のフックを的確に当てネトを苦しめる。川村が反撃する度に場内は盛り上がりを見せ、初めて川村を見る人にも印象を残すファイトに。だがKO勝ちのチャンスを逃したため、本人の試合後の表情は険しかった。

◆川村「ガンガン行けなかったのは自分に負けたから。相手はタックルもすごかったし、あれで20歳だと打撃を覚えたら自分も頑張らないと負けてしまう。(2R以降はペースを握れた?)覚えていない。判定でも勝てる自信はなかった。パンチの手応えはあったが打っても打っても倒れない大木のようだった。(ランボーのTシャツを手にして)まだまだランボーにはなれない。ほど遠い。新作映画が8月に公開されるから見てください」

◆ネト「満足した戦いができなかった。(対戦相手について)すばらしいファイターだった。今日は川村選手は運も良かったと思う。また近いうちに再戦して、そのときは勝ちたいと思う」

第1試合 ウェルター級(76kg) 5分3R
×ファブリシオ・“ ピットブル”・モンテイロ(ブラジル/グレイシー・フュージョン)
ニック・トンプソン(米国/フリースタイル・アカデミー/Bodogウェルター級王者)
判定0-3 (29-30/29-29○/28-30) ※和田、大橋、芹澤が採点


 各ラウンド、ピットブルがサイド、マウントを奪う等、ポジショニングでは優位に立つが、スタンドでリーチの勝るトンプソンが的確にパンチを当て、ピットブルから鼻血を誘う。優劣に大差は無かったが、ダメージ差でトンプソンに軍配が上がった。
 大会後の総括で國保WVR広報は「トンプソン選手、モンテイロ選手は日本で知名度がないので盛り上がりには欠けましたが、内容は非常にコア層が喜ぶいい試合だったと思う」と高評価。5月、6月と短いスパンで大会を開催することから、これからも彼らのような素質のある選手の参戦が期待できそうだ。

◆トンプソン「戦極に参戦できてうれしい。ここ2年間でフィニッシュに持ち込めなかったのは初めてだ。次はもっといいファイトをしたい。もっと打撃で攻めたかったが、バランスを崩された。(判定について)打撃でダメージを与えることができたから判定勝ちできた。(今後について)日本で77kg最強の桜井“マッハ”速人と試合がしたい」

◆モンテイロ「(判定に不満そうだが?)不思議に思ったが、武道家として判定に不満はない。(トンプソンは打撃でダメージを与えたから勝てたと言っていたが)5発くらい当たった程度だ。1、3Rは取ったと思った。ルールについては文句はないが、判定基準が不思議だ。(昨年死去したハイアン・グレイシーの写真を持って入場したことについて)いい友人であり師匠。一緒に戦いたかった」

Last Update : 03/06 12:09

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