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(レポ&写真) [K-1 WORLD GP] 11.19 東京D:シュルト、初の世界一

フジテレビFEG
"FieLDS K-1 WORLD GP 2005 in TOKYO 決勝戦"

2005年11月19日(土) 東京・東京ドーム
観衆:58,213人(主催者発表)

  レポート:井原芳徳  写真:井田英登
  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】
 

第1試合 準々決勝戦(1) 3分3R(延長1R)
○レミー・ボンヤスキー(オランダ/メジロジム/03&04年世界GP優勝/104.7kg)
×チェ・ホンマン(韓国/フリー/アジアGP優勝/161.0kg)
判定3-0 (シャルリー30-29/御座岡30-29/朝武30-28)


 巨体のホンマンがストレートの連打で突進してくるのに対し、ボンヤスキーは両腕でブロックしつつ距離を取ってローをコツコツと当てる。2Rにはジャンピングニーを出すが、大技はあまり使わず。ロー以外のミドルやフックも、距離を取るための手段として駆使している様子。3Rにはホンマンはローのダメージの蓄積でグラつくようになり足が止まるように。王者ボンヤスキーが3連覇向けて慎重な滑り出しを見せた。

第2試合 準々決勝戦(2) 3分3R(延長1R)
×レイ・セフォー(ニュージーランド/レイ・セフォー・ファイトアカデミー/昨年ベスト8/111.8kg)
○セーム・シュルト(オランダ/正道会館/ヨーロッパGP優勝/126.0kg)
判定0-3 (ヨシダ26-30/御座岡26-30/大成26-30)

※3R膝蹴りでセフォーに1ダウン

 長身のシュルトがセフォーの顔面まで軽々と上がる膝蹴りと、左ミドル、ハイで序盤から攻勢。セフォーは来日直後に体調を崩し3日前まで39度の熱があったといい絶不調。クリーンヒットは少ないものの、シュルトの勢いに押されっぱなしで反撃に糸口は全く見いだせない。3Rには膝の連打を浴びたところでスタンディングダウンを宣告され完敗した。

第3試合 準々決勝戦(3) 3分3R(延長1R)
×ジェロム・レ・バンナ(フランス/レ・バンナ・Xトリーム・チーム/昨年リザーバー/124.6kg)
○ピーター・アーツ(オランダ/チーム・アーツ/昨年ベスト8/111.7kg)
4R 判定0-3 (クリスチャーノ9-10/梅木9-10/和田9-10)

3R 判定0-0 (クリスチャーノ29-29/梅木29-29/和田29-29)

 序盤はサウスポーのバンナが左ミドル、オーソドックスのアーツが右ミドルを打つ展開。1R終盤から圧力で勝るバンナのパンチが当たり始め、2Rまで主導権を握る。だが3Rあたりからバンナの左足の様子がおかしくなり、出足が止まるように。終盤には逆にアーツの右のパンチを浴びマウスピースを吐き出してしまう。
 1Rまたは2Rはバンナ、3Rはアーツがポイントを取り判定はドロー。だが延長を告げられた二人の消耗は激しく、その表情には暴君と番長の面影は残っていない。クリンチの多い展開となり、アーツは力を振り絞りミドル、膝、パンチの手数で勝り準決勝への切符をもぎ取った。ところがバンナの左ミドルを多く浴びた影響か、右肋骨骨折の疑いによりドクターストップがかかってしまった。
 バンナは試合後「体力配分を考えないといけないトーナメントは俺には向いていない。来年のことはマネージャーと相談する」とコメントし、GP撤退を示唆した。来年1月にようやく腕の中のプレートを外すという。
 ホーストがGPから撤退し、アーツ、バンナ、セフォーら一時代を築いた選手達も絶不調。世代交代は既に始まりではなく、完了してしまっていることを感じさせられた大会でもあった。

第4試合 準々決勝戦(4) 3分3R(延長1R)
○武蔵(日本/正道会館/昨年2位/101.5kg)
×ルスラン・カラエフ(ロシア/マルプロジム/GP最終予選優勝/96.4kg)
4R 判定3-0 (シャルリー10-9/御座岡10-9/朝武10-9)

3R 判定1-1 (シャルリー30-29/御座岡30-30/朝武29-30)

 1Rからルスランはミドル、ハイ、前蹴り、フック等を勢い良く連発。だが体格で劣るせいもあり与えるダメージは少ない。逆に2Rからは武蔵の右ローと左ミドルを何発も浴び表情が曇るように。ローの防御の下手さも露呈してしまう。
 ところが武蔵は左ミドルを蹴りすぎたせいか、開幕戦で痛めた左膝を再び痛める。3Rは途中までオーソドックスにスイッチ。左の蹴りは打たなくなり、右ローとパンチの打ち合いに活路を見いだそうとする。
 本戦判定はドロー。2Rは武蔵のラウンドで、1Rはルスランが取っていてもおかしくは無いラウンドで、そういう採点かと思ったが、ジャッジペーパーを見るとそうでもない。10-9は1Rに朝武ジャッジがルスラン側、3Rにシャルリージャッジが武蔵側に付けただけで、2Rは3者ともドローだった。両者とも攻められている展開でもある程度攻撃を返しており、片方の選手に主導権が傾いていたというほどでは無いという見方だろう。
 延長ラウンド、武蔵は痛めている左足で手数多くミドルとローを連打。声を上げながら蹴り気力を振り絞る。ルスランの手数は減り、膝が金的、フックの後はバッティングと、反則の連続となってしまう。終盤には武蔵は殴り合いに持ち込みフックと後ろ回しを被弾するが、大きくぐらつくことはない。途中までの主導権を握ったことが評価され、マストシステム判定により準決勝進出の権利を獲得した。

第5試合 リザーブファイト(1) 3分3R(延長1R)
○グラウベ・フェイトーザ(ブラジル/極真会館/USA GP優勝/105.6kg)
×ゲーリー・グッドリッジ(トリニダード・トバゴ/フリー/インターコンチネンタルGP優勝/111.0kg)
判定3-0 (ヨシダ30-27/梅木30-28/武井30-28)


 グッドリッジがパンチを振り回して突進するのに対し、フェイトーザはミドル、ハイ、ロー、膝と蹴りを中心とした対処。1Rはペースをつかみきれなかったが、2R途中からコーナーに詰めパンチを連打するようになると主導権。グッドリッジは鼻血を出すように。フェイトーザはハイキックもクリーンヒットさせ、前蹴りを当てた際にはグッドリッジの差し歯が吹き飛び、壮絶な印象を与える。3Rもフェイトーザが終始攻勢。クリーンヒットに乏しくダウンは奪えなかったが、大きなダメージは無いまま本戦進出の機会を待つことになった。

第6試合 リザーブファイト(2) 3分3R(延長1R)
×ステファン・レコ(ドイツ/ゴールデン・グローリー/97.9kg)
○バダ・ハリ(オランダ/ショータイム/94.0kg)
2R 1'30" KO (右後ろ回し蹴り)


 レコはロー主体でパンチの連打を絡め、ハリは上下に蹴りを巧みに打ち分ける。2R途中まで距離を取って様子を伺う感じだったが、クライマックスは突然訪れる。ハリが右後ろ回し蹴りを放つと、ミドルの軌道と思ったか、レコがガードを下げると、ハリの蹴りはさらに伸びてレコのコメカミにヒット。遠心力も相まって威力も強烈で、レコはけいれんしたまま立ち上がることができなかった。地上波中継はなかったが、CSの中継では何度もフィニッシュシーンがリピート。判定決着続きの今大会前半戦に対し、KO決着続きの後半戦の扉を開くような鮮烈な勝利だった。
 オランダの超新星・ハリは通算戦績61戦57勝(48KO)3敗1分。3敗のうち1つは5月のレコ戦のバックスピンキックをもらっての敗北だったが、見事それに近いインパクトでリベンジに成功。K-1デビュー戦としては完璧以上の内容だった。逆にレコは念願のK-1復帰戦だったが地獄を見ることとなった。
 試合後の会見でもハリは大物を感じさせる言葉を連発。初めてのK-1で緊張しなかったかという質問にも「僕は10歳の頃から戦っている(現在20歳)。だから試合をするのはご飯を食べたりパーティーに行くのと一緒で、緊張することは全くない」と語り、「今年のトーナメントに僕が出なかったのはラッキーだったと思って欲しい」「オランダに自分が理想とするスタイルのファイターはいない。オランダ人のトップになる。誰でもやってやる」と豪語した。一夜明け会見ではオランダで風俗店のマネージャーをやっていることも明かし、「5人の女の子と2回ずつ練習すれば王者になれる」とジョークも冴える。ルックスも良く、来年のK-1の台風の目となることは間違いなしだ。

第7試合 準決勝戦(1) 3分3R(延長1R)
×レミー・ボンヤスキー(オランダ/メジロジム/03&04年世界GP優勝/104.7kg)
○セーム・シュルト(オランダ/正道会館/ヨーロッパGP優勝/126.0kg)
1R 2'08" KO (2ダウン:左膝蹴り)


 両者は03年7月の福岡大会で対戦。シュルトが判定勝ちをおさめている。そんなシュルト相手に苦手意識があったのかは定かではないが、ボンヤスキーは序盤からパンチと膝のラッシュを浴び、手も足も出ない状態。前蹴りをもらい力なく崩れ落ち、最後はボディへの膝蹴りでマットに沈んだ。
 試合後のインタビューに応じたボンヤスキーは「王者のプレッシャーから解放された」と笑顔を浮かべコメント。シュルト戦については「4週間ぐらい前に怪我をしたところを攻められた。精神面じゃなく肉体面が敗因だ」と釈明した。

第8試合 準決勝戦(2) 3分3R(延長1R)
○グラウベ・フェイトーザ(ブラジル/極真会館/USA GP優勝/105.6kg)
×武蔵(日本/正道会館/昨年2位/101.5kg)
2R 1'05" KO (左飛び膝蹴り)

※1R右ストレートで武蔵1ダウン

 アーツが一回戦のバンナ戦で右肋骨を骨折した疑いがあるためリタイア。第1リザーバーのフェイトーザが出場権を獲得した。武蔵とは02年3月の名古屋大会で対戦し5Rドロー。リザーブ戦でのダメージは少なく、リベンジと優勝に向けてのチャンスがWで舞い込んできた格好だ。一方の武蔵は一回戦のルスラン戦で大きく消耗。しかも相手が想定外の選手となり、精神的な動揺も小さくなかったと思われる。
 試合はそんな両者の心理を反映するかのような内容に。距離を取って様子見の武蔵に対し、フェイトーザはお構いなくミドルと膝で攻め立て、1R終盤にはガードの間を打ち抜く右ストレートでダウンを先取する。2Rもイケイケで、パンチ、前蹴り等のラッシュで武蔵をロープ際まで追いつめると、最後はジャンピングの膝蹴りを武蔵の鼻っ柱に叩き込みノックアウト。まさかのトントン拍子で決勝への切符をもぎ取った。
 武蔵は試合後、唇を切り5針縫い、麻酔を打ったためノーコメント。左前腕骨折の疑いにより病院に向かったが、打撲と診断された。

第9試合 決勝戦 3分3R(最大延長2R)
○セーム・シュルト(オランダ/正道会館/ヨーロッパGP優勝/126.0kg)
×グラウベ・フェイトーザ(ブラジル/極真会館/USA GP優勝/105.6kg)
1R 0'48" KO (左膝蹴り)

※シュルトが初優勝

 決勝は地域予選を勝ち上がり、昨年の世界大会優勝&準優勝者をKOしてきた選手同士の激突。しかも二人は9月の開幕戦で対戦したばかり。谷川貞治FEG社長の話によると「他の選手がみんな対戦を嫌がった」選手同士の対決だったが、シュルトが膝等で豪快に攻め判定ながらも圧勝している。今回は二人とも2試合を戦った後、しかもKO勝ちをした後の激突。その勢いがそのままぶつかり合うことになるが、やはりそうなれば破壊力で勝るシュルトが有利だった。開始すぐパンチと膝でラッシュ。フェイトーザも接近戦でフックを当てるがびくともせず、最後はシュルトがフェイトーザの首を抱えたまま左膝を首筋に叩き込みノックアウトした。

 フェイトーザは失神し首をロープに引っ掛け倒れ込んだまま。ギロチンで死刑されたような光景の向こうで、勝者とそのトレーナーが喜び、そのさらに向こうで見物客が喝采を送る。勝ち組・負け組という流行語と、ブームといわれる格闘技がシンクロしたこの景色は、今の時代を鏡で映したかのようだ。

 大道塾北斗旗を2度制し、無差別級キング・オブ・パンクラスで長期政権を築いたシュルト。近年総合ではヒョードルとジョシュとハリトーノフに敗れ、トップ集団との差を露呈したが、ルーツである立ち技では、212cmの巨体をうまく活かす術をほぼ完璧に習得した印象を受ける。特に準決勝、K-1の2年連続優勝者のボンヤスキーを、彼も得意とする膝で粉砕した時点で、シュルトの優勝は約束されたようなものだった。空手のK、空道(大道塾)のK、キング・オブ・パンクラスのK、膝(Knee)のK、そしてKOのK。谷川社長は「K-1史上最強のチャンピオンが出てきた感じ」とシュルトの実力を絶賛し、「これからのK-1はルスランやバダ・ハリ(写真左)やレミーといった若い選手が支えて欲しい」と新時代の到来を歓迎した。
 「今年こそ頂点を取るぞという気持ちが全面に出せた」というシュルト。一回戦は硬かったか?という問いには「やりにくかった」と答え、一回戦を突破したことでエンジンがかかったか?という質問にはイエスと答えた。4タイムスチャンピオンのホーストから大みそかのDynamite!!での対戦を希望されたといい、本人も前向き。K-1戦績12勝(7KO)1分のシュルトだが、唯一の引分は2戦目となる02年8月のDynamite!国立競技場大会でのホースト戦でのもの。来年引退を控える彼との決着をつけ、最高の年越しをしたいところだろう。


オープニングファイト 3分3R
△アレクサンダー・ピチュクノフ(ロシア/極真会館/105.8kg)
△パトリック・バリー(アメリカ/デューク・ルーファス・キックボクシング/104.6kg)
判定1-1 (クリスチャーノ27-30/黒住29-29/武井30-28)


 開幕戦大会に続きオープニングファイトに登場したピチュクノフ。2R途中まで下段と前蹴りを当て、バリーはパンチ、ローを当てるが、両者とも決め手に欠く淡々とした展開。終盤はピチュクノフがパンチの連打、バリーがミドルとハイを当てる攻防に変わったが、結局最後まで流れはどちらにも偏らず。判定は大きく割れたがドローで妥当の試合だった。

Last Update : 11/21 12:00

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