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(レポ&写真) [K-1 MAX] 2.23 有コロ:コヒ、日本代表戦2連覇

FEG "エステティックTBC K-1 WORLD MAX 2005 〜 日本代表決定トーナメント〜"
2005年2月23日(水) 東京・有明コロシアム  観衆:10,723人(超満員札止め)

  レポート:永田遼太郎(決勝戦、HAYATΦ戦)、井原芳徳(その他の試合)
  写真:井原芳徳  コメント編集:永田遼太郎  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】


◆ 日本代表決定トーナメント「コヒ&新田、決勝でまさかの再会」

第10試合 決勝 3分3R(延長1R)
○小比類巻貴之(チームドラゴン)
×新田明臣(バンゲリングベイ)
1R 0'36" KO (右上段前蹴り)

※小比類巻が優勝。5/4開催の世界一決定トーナメント開幕戦出場権を獲得

 決勝のリングに向かう花道を歩く小比類巻貴之はどこか感慨深い表情を浮かべ、先にリングインしていた新田明臣をしばらくじっと見つめていた。
 その表情はこの日の一回戦・安廣一哉戦の試合前に見せていた硬い表情とはまるっきり別物だった。

 小比類巻がそんな表情を浮かべたのには理由がある。
 7年前の97年12月21日、2人は小比類巻の古巣・J-NETWORKのリング上で顔をあわせている。小比類巻は魔裟斗戦を含め、その試合までデビュー以来5戦連続KO勝ち。だがこの6戦目で、当時NJKFミドル級王者だった新田に4RローキックでKOされ初黒星。トップファイターからの手痛い洗礼を浴びた。
 その後も小比類巻は若手のホープとして期待され、後楽園大会では毎回メインクラスを任される活躍をしていた。しかし当時のJ-NETはまだ新興団体の域を脱しておらず、抜群のセンスを見せる小比類巻だけが孤軍奮闘するような状況が続き、都心の一等地にジムを抱える状況にありながら練習パートナーには四苦八苦する状態だった。誰も練習パートナーがいない中サンドバックを一人で叩き続けていた小比類巻は「このままキック嫌いになっちゃて(キックを)辞めてしまうのかな」と深刻に悩んでいた。
 そんな小比類巻に救いの手を差し伸べたのが、敗戦をきっかけに仲を深めていった新田だった。新田は当時所属していたS.V.G.での練習に小比類巻を招き、共に練習をするようになった。このことがきっかけで小比類巻は新田を「兄貴」として慕うようになる。

 そして今日を迎えるまでの二人の似すぎている境遇。
 お互い、K-1参戦後に一度どん底の苦しみを味わっている。しかしそこから這い上がり、今、日本の中量級ナンバー1を決めるリングに並び立つことになった。この日、小比類巻の対抗馬・武田幸三が、右すねの裂傷で途中棄権したことにより、リザーバーの新田にチャンスが到来。「強い思いで信じていれば、必ず願いはかなう」。去年のIKUSA参戦からK-1 MAX目指して奮闘を続けていた新田の一念が通じた。準決勝で新田は村浜武洋を撃破。小比類巻は小次郎をKO。7年ぶりに迎えたリング上での再会は最高の舞台となった。それが小比類巻の試合前の感慨深い表情の訳だった。
 「あのときの“恩返し”をしたい」その思いが小比類巻にこの日まとわりついていた気負いを取り除いた。

 試合時間は36秒。勝負の決まり手となったのはキックの基本とも言うべき前蹴り。胸に打ち込み距離を測ろうとして出す予定だった前蹴りの軌道を咄嗟の判断で変更し、右ストレートに来る新田の顎先にカウンターであわせた。

 小比類巻が試合後明かしたところによると、敗れた新田は前日の公開計量の際、小比類巻にこう話しかけていたという。
「コヒはどん底に落ちたときもあったけど、今は優勝候補と言われる存在になっている。だからオレもそれを見て現役を続けて行こうと思った」
 2人は本当の意味で競技者としても一人間としても尊敬しあっている。そうした背景があったなら、もう少し長い時間、試合を見たかったと思う方もいるだろう。しかし、あの前蹴り一発の刹那に7年越しの再会劇が凝縮されたことは、何とも2人の戦いらしいといえなくもない。

 今大会はKIDの負傷欠場に武田のリタイア等とアクシデントが相次ぎ、消化不良を起こしたファンも多かったのではないかと思う。しかし、舞台裏ではこんな爽やかに思える出来事もあった。改めてその日出場する各選手のエピソードを紐解いて見ると、新たな観戦の楽しみも増えるというもの。最近、格闘技ファンになった方は今一度、選手の過去のエピソードを調べてみたらどうだろう。視点をちょっと変えるだけで見方は大きく変わるはずだ。

 



◆ 決勝までの戦績

オープニングファイト リザーブファイト 3分3R(延長1R)
○新田明臣(バンゲリングベイ)
×ASH-RA(TEAM X FORCE)
2R 2'10" KO (2ダウン:右ローキック)


 新田は接近戦で何発もパンチをもらってしまうが、ASH-RAの防御の甘さを突き、右ローを確実に当て効かせる。さらにパンチも交え、2Rに右ローで2連続ダウンを奪って本戦への望みをつないだ。

◆ASH-RA「今日は最悪でした。新田選手は強かったです。今日は緊張と言うより試合前から舞い上がり過ぎてました。(悔いが残る?)そうですね。またチャンスがあれば次は最高の自分を出したいと思います」
 

第1試合 一回戦Aブロック第1試合 3分3R(延長1R)
○小比類巻貴之(チームドラゴン)
×安廣一哉(正道会館)
4R 判定2-1 (黒住9.5-10/朝武10-9.5/武井10-9.5)

3R 判定0-0 (黒住30-30/朝武29.5-29/武井29.5-29)
※0.5点差の場合、本戦3Rではドロー扱いとなる

 1R、コヒがリーチを活かしてプレッシャーをかけ、カウンターで蹴りを当て続ける。だが終盤、ガードの低いコヒの隙を突き、安廣が飛び込んでの右フックをクリーンヒットに成功。ジャッジ2者の評価を得る。
 2R、コヒの右ローがローブローになってしまい、約1分間のインターバル。その後安廣の動きが落ち、コヒがハイ、ストレート、前蹴りで主導権を握るように。
 最終ラウンド、序盤に安廣がまたも右フックをクリーンヒット。だがサウスポーに切り替えてさらにパンチで突進したところ、膝蹴りを合わされてしまい劣勢に。コヒはストレート、左飛び膝、左ハイで攻勢。だがクリーンヒットはほとんど無い。
 判定はドロー。朝武・武井の両ジャッジは1R・安廣、2,3Rコヒを評価し、いずれも10-9.5に振り分けた。集計で0.5差しかつかないため、この2人の採点はドロー扱い。黒住ジャッジは3Rとも10-10だった。
 判定に納得がいかない様子のコヒ。延長R序盤は左ジャブと左ローを着実に当て、攻勢を印象づける。だが中盤過ぎ、安廣のカウンターの右ストレートがクリーンヒットし始め攻守逆転。コヒはクリンチで防御する場面が増える。終盤には安廣の胴回し蹴りが2発ともヒット。安廣の逆転勝利かとも思われた。
 しかしジャッジは1-2で割れ、コヒが勝利に。会場は大ブーイングに包まれ、安廣のセコンドの湊谷コーチは親指を下に振るジェスチャーでブーイングを煽る異様なムードとなった。

 K-1ルールでは、延長Rでも差がないと判断した場合、1Rからの全体の流れを考慮して採点し、たとえ微差でもどちらかに優劣をつける採点を取ることになっている。延長Rでコヒを10-9.5で評価した朝武・武井の両ジャッジは、本戦でも29.5-29でコヒ優位と評価していた。つまりこの2名は延長Rの前半はコヒ優勢、後半は安廣優勢で差がなかったと判断し、1Rからの全体の流れでコヒを評価したと考えられる。
 よって朝武・武井の両ジャッジは、ルールに準じてちゃんと採点していたと考えられる。確かに1R終盤のクリーンヒット数発しか無かった安廣を0.5差で評価し、延長Rは最終的に攻勢だった安廣を0.5差で評価しなかったという点で、採点のバラツキを指摘できなくもない。だがジャッジの着席していた方角によって微妙に見え方も違う場合もよくある上、この程度の差の付き方なら他団体でもよくあることで、誤審と判断を下すのは早計だろう。
 そのことよりも今回の出来事で問題なのは、このようなルールで採点されているということが、観客・選手にきちんと浸透していないことではないだろうか? そういうルールだと知っていれば、観客も安廣陣営もある程度納得できたはずだ。どんなスポーツでも、採点の方法や数値は細かに示されるのだが、K-1に限らず、格闘技は全般的にそのあたりがおそろかになっている傾向が強い。格闘技が単なるエンターテイメント・コンテンツから、真の意味でのスポーツ・コンテンツに脱皮するための課題が、この試合で浮き彫りになったような気がする。

◆安廣「僕もコヒも悪くないです。(微妙なジャッジは)仕方ないと思います。ただどこをとったら僕が負けたという結論になるのかわかりませんけど。僕も正道会館の新人戦なんかで副審、主審とやらせてもらっているのですが近くにいると見えない事も離れてみるとわかりやすいこともありますから。人間なんで間違いもあるし仕方ないと思います」
 

第2試合 一回戦Aブロック第2試合 3分3R(延長1R)
×TOMO(正道会館)
○小次郎(スクランブル渋谷)
判定0-3 (御座岡28.5-29.5/梅木29-30/大成28.5-29.5)


 1R、TOMOがリーチ差を活かし右のパンチとハイをヒット。だがローの鋭さでTOMOを凌ぐ小次郎が序々に攻勢に。接近戦では左フックも当て、2,3Rにポイントを稼ぎ判定勝ちをおさめた。

◆TOMO「どこも問題なかったと思うのですが。自分の中で1Rと2Rはとったと思ったので3Rは流しながら楽に行こうと思ったのですが、3R終わったらセコンドに延長になるから呼吸整えとけって言われて。有効打はこっちの方が多かったし感触良いパンチで相手もふらいついてましたから。いろんな方面から応援してもらっていたので、このままじゃ終われないっていうのがあります」
 

第3試合 一回戦Bブロック第1試合 3分3R(延長1R)
○武田幸三(治政館)
×宮田和幸(フリー)
3R 0'39" KO (2ダウン:右ローキック)


 大会後の谷川プロデューサーの話によると、突然のKID欠場の報を聞き、なんと2/6の全日本キック後楽園大会で佐藤嘉洋と激闘を繰り広げたばかりの山本優弥が代理出場に名乗りを上げ、広島から上京してきたという。試合の面白さとタレント性の高さでマスコミ、キックファンの間で評価の高い優弥が武田の相手に抜てきされたとしたら、一気にスターダムにのし上がっていたかもしれない。だがそれでも宮田が抜てきされた一つの大きな理由は、「元オリンピックレスラー」という経歴のわかりやすさだろう。K-1は格闘技ファンだけのものではない。お茶の間向けのエンターテイメント・コンテンツの価値基準からすれば、優弥でなく宮田が選ばれたのは妥当な線といえる。

 試合は距離を取って周りを回り続ける宮田に対し、武田が隙を突いてひたすら右ローを打ち続けるという展開に。武田は練習で右ローを蹴りすぎた影響で右すねが避け、当日はカサブタでふさがっていたが、アップの時点ではがれてしまったといいい、宮田の膝の裏が次第に血で染まるようになる。
 本来なら武田はローで下に意識を散らしておいて得意の右フックで相手を仕留めるところだが、この日は右のパンチをジャブ程度にしか出さない。フィニッシュへの呼び水となったのは3R、右ローで相手のバランスを崩してからの左のフックだった。これで宮田をふらつかせると、右ローで最初のダウンを奪取。さらにもう一度右ローでダウンを奪い、宮田を仕留めた。

 武田は平直行レフェリーから勝ち名乗りを受けた時、右肩をかばうような動きを見せた。試合後のインタビューで本人も、昨年10月にブアカーオの左ミドルで痛めた右肩をまたも壊していたことを明かしている。準決勝開始直前、武田が右すねの傷が骨まで達しているため棄権すると発表されたが、練習で右ローを蹴りすぎたのも、右腕が使えなかったことがそもそもの原因だったのだろう。そして負傷箇所は奇しくもKIDと同じ。関係者の話によると、KIDの欠場を聞いた武田は珍しく怒りを示していたというが、同じ箇所を痛めていながらも欠場を選んだことへの憤りもあったのかもしれない。

◆武田「足は本当は縫わなければいけない状態でした。ケガは骨膜炎です。ただKID君とやる一試合だけやることを楽しみにしていて、対策として蹴りを練習していたんですけど、練習中から骨膜が見えていて、1日や2日で治るものじゃないんで、いけるところまでいこうと思ったのですが、ダメでしたね。痛み自体は試合中は感じなかったです。右肩も壊しているんで、そこを痛み止め打ってなんとか乗り切ろうと。宮田選手は昨日オファーあったにも関らず出てきてくれて感謝しています。身体能力が高いなと感じましたね。今日のリングに上がってくれたことだけでも称賛に値するのに。足のケガはアップの時点で傷口が開いてしまって。こんな結果になったことがファンの人に申し訳なくって」

◆宮田「キックルールの練習はあまりしてなかったので、ローキックのカットがまるで出来ませんでしたね。最初にローもらって、なかなか中に入って行けなくなってしまいました。パンチは総合で使うパンチです。僕の階級ですとMAXが一番大きな大会なんで、総合を何戦かしたあと来年くらいは出てみたいなとは思ってましたけど、急遽話をもらって出ることになりました。ローのレベルは違いましたね。総合ではあまりキックを使う展開がないんで、いきなりでは対処できませんでした。今後はまず総合でしっかり勝つことを目標にしたいです」
 

第4試合 一回戦Bブロック第2試合 3分3R(延長1R)
○村浜武洋(大阪プロレス)
×HAYATΦ(FUTURE_TRIBE)
3R 1'15" TKO (レフェリーストップ:左ハイキック)


「イケメンとか言われるより、強いHAYATΦをアピールしたいですね」
 そうTVのインタビューで訴える彼の姿をブラウン管を通して見た。
 数年前のデビュー当時の実績ならいざ知らず、ここ最近のHAYATΦの活躍は彼の言葉どおり目を見張るものがあった。それでもなかなか払拭出来ない「イケメンファイター」と言うイメージ。HAYATΦの冒頭のコメントは「自分はタレントじゃない。有名になりたくてキックを始めたわけじゃない。女の子にもてるためにキックを続けているわけじゃない」と言いたげにも聞こえる。デビュー間もない頃、当時から女性人気が高く、筆者がそれとなくそのことを聞いてみると「そればっかりというのも何だか嫌ですよね」と答えていたのを覚えている。
 あれから4年、依然としてつきまとうそうしたイメージを拭うためにも、今回のMAXで結果を残すしかない。そう心に決めていた。

 昨年末からの連戦でハードなスケジュールが続いていたが「体調は万全だった」とHAYATΦは語る。それを証明するかのようにスピードで上回る村浜から、いきなり左ミドルから右ストレートに繋ぐコンビネーションで先にダウンを奪った。
 しかし2ラウンド以降、さらにギアを上げてきた村浜がスピードある出入りでHAYATΦを翻弄。序々に村浜の距離で戦うシーンが目立ちはじめる。距離を掌握した村浜は3R、右フックを生かしたパンチラッシュでHAYATΦの意識を上に持っていくと、ガードを固めるHAYATΦのわずかな隙を見逃さず、普段から練習していて狙っていたという左ハイを炸裂させ逆転KO勝ちを収めた。
 試合後「2R以降は距離がつかみ辛かった」と試合を振り返ったHAYATΦ。だが短期間の間でIKUSA→タイ遠征→K-1と、同じキックでもルールが大きく違う戦いを続けたことが少なからず影響し、距離感覚を乱していたようにも思えた。IKUSAは一般のリングより一回り小さいサイズのリングでひたすら打ち続けることが求められるスタイル。ムエタイはヒジ、ヒザの攻撃が有効で首相撲が認められるスタイル。K-1は逆にヒジの攻撃は一切認められず、しかも今回から首相撲によるヒザ攻撃は一回までと制限が出ている。打撃系格闘技で勝敗を左右するくらい重要なのがクリンチワークで、この点がHAYATΦの勘を鈍らせたのかもしれない。今回の結果だけで彼に実力がないと考えるのは早計。次回のMAXではこの辺りの対策を練って、今度こそ「強いHAYATΦ」をアピールしてもらいたい。

◆HAYATΦ「油断と言うかハイキックは見えなかったですね。パンチを警戒して想定していないところに来た感じです。互いのパワーの差を感じていたので。油断?油断しちゃったのかもしれませんね。調整に関しては問題なかったです。1ラウンドは作戦通り行けたと思いますが、2ラウンドは下がってしまったのがいけなかったです。蹴りの距離を間違ってしまって距離をうまく取れなかったです。体格の違いはむしろやりやすかったです」
 

第6試合 準決勝第1試合 3分3R(延長1R)
○小比類巻貴之(チームドラゴン)
×小次郎(スクランブル渋谷)
2R 1'13" KO (2ダウン:右フック)


 ガードを下げ顔を突き出す構えのコヒに対し、小次郎は右ジャブで挑発。左右のパンチを着実に当て主導権を握る。だが2R、小次郎がパンチで前進して来たのに合わせてコヒの左フックがクリーンヒット。小次郎はダウンを喫してしまう。さらにコヒはパンチの連打で突進し、最後は右フックで小次郎をマットに沈めた。序盤は危うさを見せつつも、最後はきっちり勝ちを持って行くというコヒらしい試合だった。

◆小次郎「今回は優勝できると自分では信じていたんで、1試合勝ったから『よっしゃー』とか特になかったですよね。すぐ次のことを考えていたんで。小比類巻選手は精神的に弱い選手と思っていたので挑発しました。他の選手なら乗ってこないと思うんでしませんね。そしたら案の定乗ってきたのでその瞬間勝ったと思いました。トーナメントは今回が初めてだったのですが、足がだんだん痛くなってきて2試合目は一回も蹴ってないと思います。今後はそれが課題ですかね」
 

第7試合 準決勝第2試合 3分3R(延長1R)
○新田明臣(バンゲリングベイ)
×村浜武洋(大阪プロレス)
判定3-0 (黒住29-28/朝武29-26/大成30-26.5)

※武田は右スネの裂傷が骨まで達したため棄権。第1リザーバーの新田が出場
※3R右ローキックで村浜1ダウン

 新田の本戦進出が発表された瞬間、新田の応援団だけでなく、ここまでで既に敗退していたHAYATΦ、小次郎らの応援団からも大きな歓声が上がった。日本代表決定トーナメントの会場は、外国人選手の多い他のK-1の大会と異なり、各選手の後援会やジム生といった、普段なら後楽園ホールによく足を運んでいそうな観客の比率が高い。そういった観客にとって、昔からなじみ深い存在である新田が登場する事は、うれしいハプニングといえるかもしれない。
 試合はオープニングファイトから6試合分休めた新田と、第4試合から2試合分しか休めなかった村浜の回復具合の差が影響したのか、新田のローで序盤から村浜が足元がふらつく展開。村浜もパンチの連打を当てるが踏み込みが甘いせいか威力をそれほど発揮できず、得意の細かく素早いステップもスピードが通常より劣る。2Rには右ローをもらってバランスを崩したところに、左ストレートを合わせられてしまう場面も。3Rになると倒れるのを防ぐため新田に組み付く場面が増え注意1が宣告され、終了30秒前についに右ローでダウンを喫してしまう。判定は文句無しで新田に軍配。最高のチャンスをものにし、奇跡のコヒとの再会を果たす事に。

◆村浜「一回戦は盛り上げる事出来たんですが準決勝はあかんかったですね。ハイキックのKOは初めてですね。でもパンチ→蹴り、蹴り→パンチというコンビネーションはいつも練習している事なんで、練習どおり出た感じです。でも今日は自分の悪いところが全部出た。こういう階級でやっているんであんな戦い方しちゃあかんことはわかっているんですがね。あ〜っ。これで最後だっていつも思ってやっているんですが。克服しなきゃならんことが沢山ありすぎですわ。お金払って見に来ている人にホンマ申し訳なくって。はあ〜っ」
 

第10試合 決勝 3分3R(延長1R)
○小比類巻貴之(チームドラゴン)
×新田明臣(バンゲリングベイ)
1R 0'36" KO (右上段前蹴り)

※小比類巻が優勝。5/4開催の世界一決定トーナメント開幕戦出場権を獲得

 



◆ スーパーファイト

第9試合 スーパーファイト K-1ルール 3分3R(延長1R)
×ブアカーオ・ポー・プラムック(タイ/ポー・プラムック・ジム・TEAM INOKI)
○アルバート・クラウス(オランダ/ブーリーズジム)
4R 判定1-2 (黒住9.5-10/朝武10-9/大成9.5-10)

3R 判定1-0 (黒住29-28/朝武29-28.5/大成29-28.5)
※2R右フックでブアカーオ1ダウン

 ブアカーオが左のミドル、ハイ、前蹴りを連打。クラウスもパンチを当てるが、ブアカーオの勢いに動きを封じられてしまう。だが2R、ブアカーオが左ミドルの勢いが余って一回転しバランスを崩したところに合わせ、クラウスの右フックがこめかみあたりにヒット。それほどダメージはないが、ブアカーオはまさかのダウンを喫してしまう。巻き返しを狙うブアカーオはさらに蹴りの手数と威力とスピードをアップ。その勢いはすさまじく、2Rはクラウスがダウンを取ったにも関わらず、(黒住9-9/朝武9-9.5/大成9-9.5)と採点されたほどだった。
 3Rもブアカーオが左ミドルでラッシュ。クラウスのクリンチが増える。しかしブアカーオもクリンチする場面が増え、終盤には両者にイエローカードが出された。ブアカーオは攻撃が激しすぎたせいもあってか、左足を負傷。終盤のクリンチが無ければ、逆転勝利の可能性もあったが、次第に失速してしまい、延長戦に突入。本来ならここで攻め込まないといけないブアカーオだが、蹴りの数が減り、後ろに下がるネガティブファイトが目立つように。クラウスもパンチを返すが、こちらもダメージが大きく手数ではほぼ互角。僅差の内容で判定は割れ、クラウスに軍配。現役王者が敗れる波乱が起こった。

◆クラウス「結果として今日は僕が勝ちました。ブアカーオは尊敬していますが今日は自分が勝ったという感触はありました。去年に比べたら今年は試合を少し控えめにしたいです。勝つために来日しているんで来日したら必ず勝って帰りたいです。これからもこの調子でいきたいと思います。4月に二児のパパになるんで、今日、現王者に勝ったことを生まれてくる子に報告したいです」

◆ブアカーオ「今日初めてK-1で負けていい勉強になったと思っています。勝ち続けることで自分の弱いところが見えなくなってしまいますから、負けて弱い部分を見つける事が出来てよい経験になったと思います。変更になったルールは確かにやり辛かったこともありました。出来るだけ反則しないようにレフェリーの判断とかを気にして、そこがやり辛かったですね」
 

第8試合 スーパーファイト 総合格闘技特別ルール(寝技30秒以内) 3分3R
○宇野 薫(和術慧舟會東京本部/72.3kg)
×セルカン・イルマッツ(トルコ/チーム・ソラック/72.2kg)
1R 1'59" 一本 (腕ひしぎ十字固め)


 距離を取っての様子見の後、宇野が大振りの右フックのフェイントからタックルでテイクダウンに成功する。しかしイルマッツは止まらずに暴れて脱出。宇野もなかなか押さえ込めずに手こずってしまう。イルマッツが一瞬バックを取りかける場面もあり観客をヒヤリとさせたが、最後はマウントでポジションを固め、サイドに移行し腕十字。これがガッチリと極まりイルマッツはタップした。

◆宇野「楽しかったですけど満足はしていません。(対戦相手が総合初でしたがモチベーション的な部分は)むしろ怖かったです。一発当たれば怖いと言うのは分かっていたし、一撃の怖さっていうのも。(次は打撃ルールに参戦する意志はありますか?)こんな内容じゃ次なんて考えられません」

◆イルマッツ「こういう戦いが初めてなんで。(宇野選手は)力は強いと感じませんでしたが、技術を私が身につけていないんで。こうなったらこうするってことを知らなかったからこういう結果になりました。総合ルールと聞いたのが一週間前で準備が出来ませんでした。しっかりした人に教えてもらっていれば出来ないことはないと思います」
 

第5試合 スーパーファイト K-1ルール 3分3R(延長1R)
×輝浪(日本/フリー)
○ファリッド・ヴィヨム(フランス/フェニックス・ムエタイ)
4R 判定0-3 (川上9-10/平8.5-10/武井9-10)

3R 判定0-1 (川上27.5-28.5/平28.5-28.5/武井27.5-28)
※1R左ハイキックでヴィヨム1ダウン

 ヴィヨムはムエタイの3分5ラウンドに慣れているせいもあり、1Rは様子見だったが、輝浪はそこを突くように見事な左ハイキックでダウンを先取。強豪からの金星を予感させる。だがヴィヨムは2Rからエンジンがかかり、膝蹴り、左のジャブ・アッパー・ストレートで一気に反撃。輝浪の顔が腫れ上がる。ヴィヨムは2,3Rの攻勢でポイントを奪い返し、延長ラウンドも輝浪を圧倒した。
 勝ったのはヴィヨムだが、むしろ強烈な印象を残したのは輝浪のハイの一撃とその後のタフネスぶり。輝浪は02年、松浦信次との試合で8度ものダウンを喫した末に敗れたこともある。この試合は今だに生観戦した格闘技記者の間で語り種になる試合だ。単にやられっ放しではなく、反撃の糸口を探り前に出るのが輝浪の魅力。谷川プロデューサーもこの日のファイトを高く評価しており、今後につながる黒星だったといえよう

◆輝浪「最初のダウンは足応えあったのでいけるかなと思いました。でも相手も強かったですね。でもあんなんじゃオレは倒れませんよ。(視界がふさがって見え辛くなかったか?)だんだん見え辛くはなりましたが、そんなのは関係ないですね。目が見えなくなったって戦えるんで。(急なオファーでしたが)いつでも試合できる心構えでいるんで問題なかったです。まだまだ自分の力はあんなもんじゃないと思っているのですが、見ていてどうでしたか?」

◆ヴィヨム「いつもはムエタイの3分5ラウンドに慣れているんで、なかなか馴染んできませんでした。次回はもっと綺麗な試合をしたいです。時差の関係で昨日あまり眠れなかったのも不調の原因かもしれませんね」
 

Last Update : 02/28 00:10

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