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(レポ&写真) [K-1 MAX] 10.13 代々木:KID、魔裟斗に対戦要求

FEG "エステティックTBC K-1 WORLD MAX 〜世界王者対抗戦〜"
2004年10月13日(水) 東京・国立代々木競技場第一体育館  観衆:11,800人(超満員)

  レポート:永田遼太郎(KID戦、コヒ戦、小次郎戦) 井原芳徳  写真:井原芳徳
  【→大会前のカード紹介記事】  【→掲示板スレッド】

魔裟斗へ対戦要求。KIDが込めた想いとは?

第7試合 ROMANEX(総合格闘技)ルール -70kg契約 5分3R
○山本“KID”徳郁(日本/PUREBRED東京)
×ジャダンバ・ナラントンガラグ(モンゴル/モンゴリアン・レスリング連合)
1R 1'55" KO (右フック)


 この日一番のビッグサプライズは、快勝の余韻が残るリング上で、KID自身の口から放たれた言葉ではないだろうか。
「年末、日本のみんなを盛り上げたいから、魔裟斗くん、僕と二人で試合でもして日本を盛り上げましょう」
 その瞬間、会場のボルテージはこの日最高潮に達した。
 大会前、KIDのK-1参戦を疑問視する声が一部であがっていた。そうした声を自身が知っていたかどうかは分からないが、この日の彼のアピールは、そうした声に対する一つの答えになったのではと感じた。

 試合は、結果から言えばKIDの圧勝だった。
 タックルでテイクダウンを許すと、瞬く間にパスからマウントを奪われたナラントンガラグの姿を見て、普段から総合を見慣れている人からすれば当然の結果と受け止められるだろう。実際、そこから遠くない時間で試合は決着している。
 スタンド状態に戻ったナラントンガラグだが、ハイキックがKIDの頭をかすめる様に空を切ると、躊躇なく踏み込んだKIDの右フックを顎の先端部に打ち込まれ、一発で倒れた。リングに横たわったナラントンガラグを、KIDは仕上げのパウンドで料理するだけだった。

 試合後の記者会見で、「めちゃめちゃ気持ちよかった」と素直に喜びを表現したKID。バレント戦、安廣戦、そして今日のナラントンガラグ戦。総合の試合では自分に分があることはKID自身ももちろん分かっている。だからこそ圧倒的な強さを見せつけて勝つ必要があった。
 今日の試合を振り返り、「総合用の打撃と立ち技系の打撃は違うから」と、決してスタンド状態で倒した事に慢心することはなかった。

 話が逸れるが、KIDが総合デビュー間もない頃、突然私に電話をかけてきたことがあった。私にボクシングの八王子中屋ジムと付き合いがある友人がいることを知っていた彼は、当時連続KO勝ちで話題になっていた同ジムの雄二ゴメスの練習が見たいと言ってきたのだ。「自分もあんなふうなスタイルしてみたいんすよ」そう話していたのを覚えている。
 KIDは当時から打撃指向が強かった。出稽古で日本キックの渡辺ジムに出向いていたのもちょうどこの頃だ。スパーリングでは、その打撃で相手がマットに大の字になっているのは珍しい光景じゃなかった。
 周囲はそんなKIDを見て「キックでもチャンピオンになれる」と称賛した。それは、いつしか自分の打撃がどこまで通用するかというKIDの気持ちへと昇華されていった。

 お金だけでも有名になりたいだけでもない。あまり口にしないがKIDの胸の内にはそんな思いが隠されている。自分の立ち技での技術が未熟なのはよくわかっている。しかし、自分を試すのにK-1のリングは持って来いの場だ。
 重量級に比べ、中軽量級がまだまだ報われない現在の総合格闘技を、一日も早くなんとかしたい。そんな思いも強い。
 「自分は総合代表だから」
 その言葉から、彼は今もなお共にしのぎを削った修斗の仲間たちの思いを心の中に抱え、修斗を離れた大舞台で戦っていることがうかがい知れる。
 12月31日。今からその瞬間を心待ちにしているファンも多いはず。しかし一番楽しみにしているのは他の誰でもないKIDかもしれない。
 魔娑斗、KID。現在の日本の中軽量級格闘技界を引っ張る二人がリング上に相対する時、時代は大きく動きだすだろう。

◆KIDマイクアピール(リング上)
「(父の郁栄さんを抱き寄せ)これウチの親父です。そっくりでしょ。(隣にいたアーセン君(エンセンの息子)を見つけ)オー、アーセン。(そして自分の子を抱き寄せ)パパかっこよかったでしょ。世界一強いパパでしょ。
 まあ今回は調子もよかったし、なかなか倒れてくれなかったから、やばい、モンゴル相撲はやっぱ強い、腰が強いと思ったけど、パンチで勝ててよかった。ありがとうございました。
 年末、日本のみんな、景気よくないし、ちょっとあれでしょ。年末オレが盛り上げたいから、魔裟斗くん、二人で試合でもして日本を盛り上げましょう。んで盛り上げたら、二人で渋谷でも行って、お酒でも飲みましょう」

◆KIDコメント
「めちゃめちゃ気持ちよかったです。前の試合がちょっと情けなかったので、今回は綺麗な勝ち方をして強いところを見せることが出来たので。(ナラントンガラグは)圧力と組んだ時の腰が強くってタックル入ってもね。ただ、全部が強いわけじゃないし、いくらデカくても顎はみんな一緒なんで。
(魔裟斗戦は)やっぱ年末だから魔裟斗くんとやったら、興行も盛り上がるでしょ。どんぐらい盛り上がるのか見てみたい。総合だったら絶対やってくれないんで、彼の得意なルールで。(勝算は)これからのコンディション作りと立ち技をもう少し練習したいなと。今日立ち技で勝ったけど、総合の立ち技で勝って、立ち技の立ち技で勝ったわけじゃないんで。今日は日本一かっこいいパパを見せることが出来た。
(魔裟斗戦でKの目標は達成できるのか、)チャンピオンって言うよりも、それで負けたらあれだし、相性ってのもあるし、その時の調子もある。トーナメントでみんな上の方まで行った人たちだから、トーナメントに勝ったら世界王者って感じですね。
(じゃあ来年はK-1が主になるのか)来年はまだ両方ですね。もっと中量級の総合を盛り上げないと。俺は総合代表だから、俺くらいのやつらは一杯いるから、やっぱ自分が希望となって他の人にも、ドンドン出てきてほしい。
その為には、総合も頑張るだろうし、見た人たちに総合も好きになってもらいたいし。
(総合ルールで戦いたい相手は)誰でもあててくれればやります。」




第8試合 ダブルメインイベント(1) K-1ルール -70kg契約 3分3R(最大延長2R)
○ブアカーオ・ポー・プラムック(タイ/ポー・プラムックジム)
×武田幸三(日本/治政館ジム)
5R 判定0-3 (御座岡7-10/黒住7-10/朝武7-10)

4R 判定0-1 (御座岡10-10/黒住10-10/朝武9-10)
3R 判定0-0 (御座岡30-30/黒住30-30/朝武30-30)
※武田は5Rに左ストレートで2ダウン

 武田は右ローで下に意識を行かせて、得意の右パンチを打つ作戦。だがブアカーオは強烈な左ミドルで武田の右腕とレバーを攻撃。大量にもらった武田は、2Rからはあえて相手を挑発するような仕草を見せ痛みをごまかすようになる。主導権と相手に与えたダメージではブアカーオの方が上のように思えたが、ジャッジは武田のローのクリーンヒット数も評価したようで、判定はドローに。延長第1ラウンドも変わらない展開で、一層武田の攻め手が無くなってきたように思えたが、ジャッジはそれでもブアカーオを評価しない。

 そうすればと延長第2ラウンドにブアカーオが出した奥の手は、それまで使わなかった左ストレート。それほど威力は無く、顔をかすめるような当りだったが、武田は真後ろにフラフラと尻餅を付きダウン。緒形戦、コヒ戦同様、頭部の攻撃に対する打たれ弱さを露呈する。ブアカーオはさらにもう1度左ストレートでダウンを奪いダメ押し。「あれ以上やると僕への応援が無くなると思って攻撃を止めた」とブアカーオが皮肉ったほど、終ってみれば王者の完勝だった。試合後のブアカーオは「いつ何時、誰とでも戦う」と猪木事務所の選手らしくアピールし、魔裟斗との再戦にも前向きな姿勢を示した。

◆武田「パワー差は感じなかったが、特に組際や離れ際のテクニックでは今まで戦ったタイ人の中で一番だった。ブアカーオは試合後足を引きずってたので、インローでダメージは与えられたと思う。そこからパンチを打ちたかったけど、打たせてもらえなかった。一発ぐらいいいのを当てたと思いますが、あとはダメでした。ダウンのダメージはなかった。右腕が腫れたので病院でレントゲン撮ってもらわないと。(11月のTITANSの試合は?)たぶん無理。今は考えたくないです。9月と連戦で、慣れてはいるけど、デカい試合だったんでちょっとキツかった。」

第3試合 K-1ルール -70kg契約 3分3R(最大延長2R)
×アルバート・クラウス(オランダ/ブーリーズジム)
○小比類巻貴之(日本/チームドラゴン)
3R 判定0-3 (御座岡28-30/後川28-30/大成28-29)

※クラウスは1Rに右飛び膝蹴りで1ダウン

 クラウスのパンチを警戒し、序盤はローを小刻みに放っていく小比類巻。本当は「ローで倒したかった」小比類巻だがクラウスのパンチが強い。終了間際、クラウスの左のパンチに飛びヒザをカウンターで合わせダウンを奪う。
 2R、パンチで前に出るクラウス。それに、小比類巻はヒザで対抗。パンチで鼻付近を切ったクラウスは出血。距離が開くと小比類巻は右ローをコツコツと当てて試合の流れを完全に握った。
 3R、距離をとって無駄に打ち合わず、カウンターでヒザを狙う小比類巻。それを警戒するあまりクラウスのパンチが完全に鳴りを潜める。このまま試合の流れを変えることが出来ず試合は判定に。小比類巻が判定勝ちを収めた。

◆小比類巻「作戦通り。まあまあ動けた。本当はローキックで倒したかったけど。やっぱりパンチが強くて。今回、自分のチームで初めて試合ができて。コヒ・チームのスタートっていうか。今後、まだまだ強くなるな、っていう、自分の中で確信が持てた。 まだ今の自分が何パーセントかはっきり言えないけど、まだまだ…。パンチだってまだ全然使えていない状態で(勝てたので)その辺をみんなに理解して欲しい。」

◆クラウス「1Rのダウンが効いた。膝蹴りは見えていない。(S-CUPの怪我の影響は?)全く無かった。今日は積極性が足りなかったのが反省点だ。(小比類巻の印象は?)前から強い選手と思っていたので印象は変わっていない。(今後は?)ちょっとこの何カ月間は運が無い。人生は山あり谷ありだが、谷の方を感じている」

第9試合 ダブルメインイベント(2) K-1ルール -70kg契約 3分3R(最大延長2R)
○須藤元気(日本/ビバリーヒルズ柔術クラブ)
×マイケル・ラーマ(アメリカ/アイアンホース・ボクシングクラブ)
2R 2'09" TKO (ドクターストップ:右眉上のカット)


 須藤の入場パフォーマンスはメタリカのヒット曲「エンター・サンドマン」に合わせ、ヘビメタをイメージしたものに。序盤、ラーマのパンチラッシュに捕まるが、奇襲のバックハンドブローでダウンを先取する。その後、右ローを連打し攻勢をキープ。しかし逆にパンチを浴び、序々に苦しい展開に。そして2R、左ボディブローをもろにもらった須藤は一気に劣勢に。クリンチや胴回し蹴りでダメージをごまかす。もう一発ラーマの左ボディをもらうも、須藤はラーマを首相撲に捕まえ膝蹴りの連打。これでラーマの右眉毛の上を深く切ることに成功し、かろうじて勝利をものにした。

◆須藤「3週間前の練習中に右足首を怪我して、今日も2回麻酔を打った。たぶん骨にヒビが入っていると思う。ラーマのボディは効いた。今までK-1で戦った選手で一番プレッシャーがあったと思う。今日はとにかく円を描いて攻撃を当てる作戦だったけど、距離を詰められて、GTサイドキックは無理でしたね」
(写真:試合後バックステージで移動中の須藤。右足首に氷のうを巻き、手押し車で運ばれていた)

第1試合 K-1ルール -70kg契約 3分3R(最大延長2R)
×小次郎(日本/スクランブル渋谷)
○マイク・ザンビディス(ギリシャ/メガジム)
1R 2'21" KO (3ダウン:右ストレート)


 一年ぶり、久々のK-1参戦となった小次郎。今回は本人にとって待ちに待ったK-1復帰の舞台となるはずだった。
 しかし、そんな小次郎に待っていたのは生まれて始めて経験した屈辱だった。ザンビディスにパンチで徐々にプレッシャーをかけられるとロープ際に追い詰められ、まさかの飛び膝蹴りとパンチの連続攻撃で人生初めてのダウンを喫する。なんとかカウント8で立ち上がるが、練習でも経験したことのない出来事に完全に我を失った小次郎は、さらに飛び膝と左右のフックを喰らい二度目のダウン。完全に試合を掌握したザンビディスは、左右のフックで止めを刺し小次郎は無念のKO負けを喫した。

◆小次郎「ザンビディス選手がインローを蹴ってから右のフックを打つので、それに合わせてストレートっていう作戦でした。跳びひざ蹴りがあごに入って、グラグラってなったのは覚えているんですけど。そこからもう記憶がないので。 KO負け、初めて。人に倒されたの初めてなんですよ。練習でも倒されたことないんで。初めて世界の、この倒されるっていう、この記憶が飛ぶっていう感覚を生まれて初めて味わったんで。だから、もっと経験積まないといけないと。今後、練習内容もさることながら、格闘技の種類とか、格闘技人生、ま、打撃で本当に色々やってきたんで。それでダメだったんで、一から。色んな意味で色んなことを考えて。今後、格闘技やってくなら考えていかないとダメだなと思います」

◆ザンビディス「HAYATφと同じように小次郎とも、男と男の戦いができたので、とても尊敬している。 今まで2回MAXの世界大会に出るチャンスがあったが、ナンバーワンになれなかった。残念ながら、これまではちゃんとした準備ができなかった。今度は何でもして、準備して、優勝できるように頑張る。」

第6試合 K-1ルール -70kg契約 3分3R(最大延長2R)
×ジョン・ウェイン・パー(オーストラリア/ブンチュウジム)
○アースラン・マゴメドフ(ロシア/チヌックジム)
4R 判定0-2 (御座岡9-10/朝武9-10/大成10-10)

3R 判定0-1 (御座岡30-30/朝武29-30/大成30-30)

 ウェインは何度もマゴメドフをコーナーに追い詰めるが、クリーンヒットが出ず。逆にリーチのあるマゴメドフのストレートをもらい、2Rあたりから鼻を何度も気にするようになる。試合は全体的に淡々とした展開。延長戦も同様になり、会場にはイライラムードがつのるが、後半に差し掛かったところでウェインがパンチの連打を当て攻勢に。しかしマゴメドフもパンチの連打ですぐ反撃。勝ち名乗りを受ける時に苦しそうだったのはマゴメドフの方だが、最後の攻めが評価され、マゴメドフが金星を奪取した。
 ウェインはブアカーオ戦に続きK-1二連敗。強豪相手の連敗ではあるが、ポテンシャルを十分発揮できているようには思えない。“裏K-1王者”の逆襲に期待したい。

第5試合 K-1ルール -70kg契約 3分3R(最大延長2R)
○安廣一哉(日本/正道会館)
×サミール・ベルバーチ(フランス/エクストリーム・チーム・レ・バンナ)
3R 判定2-0 (御座岡29-28/朝武29-29/武井30-28)


 ベルバーチは基本はサウスポーなのだが、時おり構えを変えて安廣をかく乱し、左ハイ、左ストレートを当てる。安廣は3Rになってようやく右ストレートをきっかけにベルバーチを追い詰め、かろうじて勝利をものにしたが、「倒すパターンを体に覚えさせないと。来年に向けての課題ができた」と反省。ベルバーチは「判定に納得できない。ぜひ再戦したい」と話した。

第4試合 K-1ルール -70kg契約 3分3R(最大延長2R)
○ドゥエイン・ラドウィック(アメリカ/3-Dマーシャルアーツ)
×ウィリアム・ディンダー(オランダ/キックボクシング・アーネム)
4R 判定3-0 (黒住10-9/朝武10-9/大成10-9)

3R 判定1-0 (黒住28-28/朝武29-29/大成29-28)
※ラドウィックは1Rに右ストレートで1ダウン

 開始30秒、ディンダーがワンツーからの右ストレートをヒット。ラドウィックの腰が沈み、倒れなかったもののダウンが宣告される。その後ラドウィックはストレート主体の攻めで反撃。延長戦に持ち込んでも、手数で上回り白星をもぎ取った。

第2試合 K-1ルール -70kg契約 3分3R(最大延長2R)
×大野 崇(日本/inspirit)
○マルフィオ・カノレッティ(ブラジル/シッチ・マスター・ロニー)
3R 判定0-3 (朝武26-29/武井27-29/大成26-29)

※大野は1Rに右フックで、3Rに左ストレートで各1ダウン

 大野はカノレッティの勢いのあるファイトに押され気味で、1R、右フックでダウンを喫する。2Rになるとカノレッティの突進力が落ち、大野も下がって距離を取って左のハイ、ロー、ミドル、さらにストレートも当て反撃。しかし3R序盤、左ストレートをもらい、ややスリップ気味ではあったが立ち上がるのが遅くダウンを取られる。ダメージは少なく、大野はジャンピングの左ハイを何度か当てるなど反撃するが、ダウンを奪うには至らなかった。

Last Update : 10/17

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