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(レポ) [修斗] 7.13 後楽園:植松復活!芸人魂 VS モデル魂 遺恨勃発?

サステイン "プロフェッショナル修斗公式戦" 2003年7月13日(日) 東京・後楽園ホール

  レポート:石動龍(第4,5,6,8試合),古谷わか(他の試合)  【→大会前のカード紹介記事】  [→掲示板スレッド]


第8試合 メインイベント ミドル級 5分3R
○中尾受太郎(シューティングジム大阪/1位)
×サウリ・ヘイリモ(フィンランド/チーム・スカンジナビア)
2R 0'39" 横三角絞め


 ヘイリモがタックルを仕掛け、中尾ががぶってヘイリモが引き込む、という展開が繰り返される。タックルを切った後、横三角を狙うそぶりを見せる中尾だが、仕掛けるには至らない。1R終了間際、タックルを切られたヘイリモは中尾の腕を巻き込んで上を取ろうとするが、中尾は腕を引き抜いて上に乗り、そのままマウントポジションを奪取。上からパンチを連打し、腕十字を仕掛けて極めかけるが、1R終了のゴング。
 2R開始直後、ハイキックからタックルをヘイリモが仕掛ける。完璧にがぶった中尾は、ついに横三角締めへ。がっちりと極まり、ヘイリモはすぐさまタップアウト。中尾が“トライアングルキング”の本領を発揮し、五連続となる一本勝ちを飾った。


第7試合 セミファイナル ウェルター級 5分3R
○マーシオ・クロマド(ブラジル/RFT/7位)
×村浜天晴(WILD PHOENIX/9位)
1R 4'09" TKO (レフェリーストップ:パンチによる出血)

芸人魂 VS モデル魂 遺恨勃発? 明暗を分けた9秒


 着実な基礎に裏づけされたトリッキーなスタイルで勝ち組ロードを進む村浜。本人が切望して実現した国際戦。クロマドの瞬殺ギロチンから逃れることはできるのか? 大阪プロレス、DEEP、K-1、NOAH、新日本プロレスとボーダレスに暴れまわる弟・村浜武洋から譲り受けた入場ガウンで、芸人魂ギラギラにリングイン。仕上がりは上々のようである。対するクロマドはシンプル&スタイリッシュに入場。ちなみに、二人は同い年、30歳同士の対決である。

 1R、差し合いから足をかけて上手く村浜がテイクダウンを奪う。しかし、マウントを取ったからといって安心はできない。下からのフロントチョークを警戒しながら、確実にコツコツとパンチを入れていく村浜。当然、下から首を狙い、またパンチを入れてくるクロマド。しかし村浜の対策は万全だったようである。膠着気味になりながらもバランスを上手く取り、サイドまでついにたどりついてみせる。

 しかしこの後に運命の瞬間がおとずれた。クロマドのバネに跳ね返された村浜はスタンドになり猪木アリ状態に。そこで村浜の放ったキックがクロマドのテンプルにヒット。グラウンド状態の相手の頭部への蹴りは反則のため、レフェリーが試合を止める。瞬間『しまった!』という表情で手を合わせて詫びる村浜。かなりのダメージを受けた様子のクロマドはマットに横たわり動くことができない。リングドクターとレフェリーによるケア&チェックが続く。ニュートラルコーナーで待ち続ける村浜。緊張の糸を張り続けるのに必死だ。だれがどう見ても戦闘不能な様子のクロマド。しかし、なんとか起き上がりフラフラとファイティングポーズをとってみせる。そんなクロマドに対して、会場からは暖かい拍手が湧き起こる。時間にして10分ほど経ったであろうか。コーナーで待つ村浜にとっては数時間にも感じられたに違いない。レフェリー&ドクターが再三チェックをし、村浜にはマイナス2ポイントが科せられ、4分00秒から試合再開に。

 だが、ストップウォッチが再び動き始めた瞬間、クロマドはダメージを感じさせないほど別人と化し、猛烈なパンチのラッシュで村浜をロープ際へ押し込む。村浜の左眉尻から鮮血がしたたり、再びレフェリーがストップ。ドクターによるチェックが行われる。その間も興奮が収まらないクロマド。村浜の傷は救急で縫合が必要なほど深く、ここで試合続行不可能と判断したレフェリーは無情のゴングを宣告した。観客は、たった9秒間のまさかの逆転に呆気にとられる。そしてその喪失感はクロマドへのブーイングと変わっていく。たまらず、リングから走り去る村浜に対して、完全に興奮しきってリング上でダンスを踊ってみせるクロマド。

 もしも、あのとき村浜のキックが顔面に入っていなければ・・・。もしも村浜が出血していなければ・・・。そんな「たら、れば」の余韻を残す、センセーショナルな試合となった。お互いにとって再戦は必至だろう。

◆クロマド「(村浜選手がカットをした直接原因は?)怒りをこめてパンチを叩き込んだからさ。(これまでの村浜選手に対するイメージは?)彼が自分との試合を望んで実現した1戦なのに、こんなことするなんて信じられない。怒りでいっぱいだ。(また日本に?)必ず来る。村浜と再び戦うために。今度はクリーンなファイトで彼に勝利をしたい。」

※インタビュースペースでクロマドは記者団に対して自分のもう一つの姿をお披露目。世界中にネットワークを持つモデル事務所の最大手「Elite:エリート」に所属し、甘いマスクと筋肉美を武器にモデルとして活躍していることをアピールした。自分の宣材チラシを記者のみんなに配りまくっていたほどで、商売道具である顔面にキックが入ったため怒り爆発? 真相は謎であるが・・・。(村浜はノーコメント)


第6試合 ライト級 5分3R
○植松直哉(SHOOTO GYM K'z FACTORY/7位)
×風田 陣(ピロクテテス新潟)
1R 1'38" 腕ひしぎ十字固め

「見出しは決まり。“植松復活”です!」


 腸炎での離脱からの復帰後は2連敗と精彩を欠く植松と、南部陽平をKOしてクラスA昇格を決めた風田。倒されずに打撃を叩き込む風田のスタイルはミルコ・クロコップとも共通する流行の戦法だ。
 かつて朝日昇を破り、打倒ノゲイラの最右翼と目された植松はかつての輝きを取り戻せるか。タイでムエタイに出場するなど特訓を積んできた打撃は元MAキックランカーの風田に通用するか。
 両者ともキックパンツにモンコンというスタイルで入場。植松の「打ち合う」という意思が伺える。

 風田のロー・ミドル・ハイと続くキックの波状攻撃を植松は完璧にガード。強烈なローを返し、打撃への対応力を見せる。植松はパンチから組み付いて外掛けでテイクダウンすると、一瞬でヒールホールドへ。極まりかかるが風田は足を引き抜いて何とか脱出。植松のスピーディな動きに観客席から感嘆の声が上がる。
 スタンドに戻り、再び組み付いた植松は外掛けでテイクダウン。素早い動きであっさりバックにつき、腕十字へ。完全に腕が伸び、しばらく耐えた風田も為すすべなくタップアウト。日の出の勢いの風田に、植松が実力の違いを見せ付けた。

 試合後、植松はマイクを取ると客席に向かって「見たか!オラ!」と絶叫。連敗時の不評を吹き飛ばし、タイトル戦線に名乗りを挙げた。
 インタビューには開口一番「見出しは決まり。“植松復活”です」と答えたが、この日の植松は二年前以上の輝きを放ったように見えた。
 ライト級王座に最も近い日本人はKIDだと思われていたが、ルミナの階級変更と植松の復活で、混戦模様となってきた。8月10日のペケーニョ×パーリングのタイトル戦も含め、今後のライト級戦線はいっそう熱くなりそうだ。
◆植松「見出しは決まりです。“植松復活”で。ランバーの元で打撃の特訓を積んできたおかげで、今日は打撃に対応できました。相手の攻撃は全部ガードできたし、パンチも打てたので。キックのルールでやったら絶対勝てないと思いますけどね(笑)。最後の腕十字はヤバイ角度で極まってました。風田さんは気持ちが強いですね。
 二年ぶりに全部出せた、内容の濃い90秒でした。今日は初めての下から上がってきた日本人との対戦で、『そんなこと気にしない』って表向きは言ってましたけど本音は『気にしないわけ無いだろ!』って感じで(笑)。
 今日は初めて自分だけでなく、自分以外のために戦えた。みんなが喜んでくれるのがとても嬉しいですね。(連敗中は)周りも気を使ってたと思う。指導している生徒も肩身が狭かっただろうし。非常に大きい一勝です。今日は久しぶりにぐっすり眠れそう。」


第5試合 ウェルター級 5分2R
△石田光洋(TEAM TOPS)
△松下直揮(ALIVE)
判定1-0 (19-18,19-19,19-19)


 開始直後、松下の右ストレートがヒットして石田がぐらつく。石田は体勢を立て直して飛び込み松下の顔面にワンツーを当てるが、松下は右フックで反撃。石田のアゴをきれいに捕らえ、先制のダウンを奪う。
 再開後、石田は打撃を避けてタックルを仕掛け、コーナー際の外掛けで松下をテイクダウン。下になった松下は石田を蹴り上げ、タックルを仕掛けながら立ち上がろうとするが、石田はタックルを切って首を取り、ギロチンを仕掛ける。嫌がる松下は再びガードに戻り、下からのタックルを繰り返すが、石田は全て切ってパンチを落とす。石田が上からボディへ膝蹴りを連打したところで1R終了。

 2Rは開始直後に石田がタックルでテイクダウン。パンチを連打し、松下は防戦一方となる。何度も立ち上がることを試みる松下だが、石田はことごとくそれをつぶす。石田は試合終了まで立たせず、このラウンドは松下を完封。コーナー際で石田が強烈なパンチを連続して落とし、試合終了。後半は石田が圧倒したが、1Rのダウンが響いて判定はドロー。発表と同時に客席からは「え〜」というため息が漏れ、石田はリングにへたりこんだ。


第4試合 フェザー級 5分2R
○小松 寛(総合格闘技道場コブラ会)
×アリタノ・バルボーザ(ブラジル/RFT)
1R 3'31" スリーパーホールド


 リングに上がったバルボーザだがファールカップを忘れるハプニング。慌てて装着した後四方にお詫びの礼をすると、観客から大きな拍手を受ける。
 片足タックルでテイクダウンしたバルボーザは、上から首を取ってギロチンを仕掛ける。小松は落ち着いて逃れるとトップを取り、パス狙いからハーフガードの体勢に。
 ガードに戻し、後転して立ち上がろうとしたバルボーザだが、小松は回転について行き、腹固めのようにバルボーザの腕を固める。さらにそこからスリーパーをガッチリと極め、初の国際戦を嬉しい一本勝ちで飾った。


第3試合 03年度新人王トーナメント ライト級2回戦 5分2R
×日沖 発(ALIVE)
○高谷裕之(格闘結社田中塾)
判定0-3 (13-20,15-20,14-20)


 19歳にして、プロ戦績3戦全勝中(しかも2試合一本、1試合KO)の日沖。対するは1回戦を鮮やかなKOで勝ち上がった田中塾の新鋭・高谷。試合はお互いの持ち味、関節VS打撃の展開になるかと思われたが・・・。
 1R、得意の打撃で先制をしかける高谷が日沖から早々にダウンを奪う。それに触発されたのか日沖はハイキックで応戦。胴タックルでテイクダウンを狙うも差し合いとなり、離れ際にまたしても日沖がダウンを喫してしまう。やっとの思いで片足タックルからテイクダウン、マウントを奪うもポジションが上手く取れない。足関節を試みるがほどけて再びスタンドの状態へ。なんとか投げたい日沖に対して、強い腰でねばる高谷。離れ際に的確なパンチを叩き込み、3度目のダウンを奪う。甦生後なんとかテイクダウンに成功し、マウントをポジションを取るも、ここでゴング。高谷の応援団のボルテージは最高潮。明らかに日沖に動揺が見られる。
 2R、なんと4度目のダウンに倒れる日沖。甦生後のタックルも潰され、猪木アリ状態に。カモン!カモン!とスタンドでの攻防を挑発する高谷。会場は怒号にも似た声援が渦巻く。完全に波に乗った高谷のコンビネーションパンチが冴える。なんとか高谷の足をキャッチしテイクダウンを奪った日沖だが、スタミナ切れと焦燥感からかポジションキープに戸惑い、足関節を狙うもスルリとかわされる。ポジションが入れ替わり、高谷が上、日沖が下になったところで非情のゴング。明らかに得意の打撃戦法を貫いた高谷の勝利である。
 全身で喜びを表現をする高谷は大きな自信を背負って決勝戦へと駒を進める。一方、これまで負け知らずで来た若い日沖にとって、長い目で見れば非常に意味深い試合になるに違いない。今回の敗戦から“一本勝ちの若武者”がどのように這い上がるかが楽しみだ。


第2試合 フェザー級 5分2R
○外薗昌敏(総合格闘技道場コブラ会)
×喜多浩樹(パレストラ東京)
1R 3'07" TKO (レフェリーストップ:バックマウントからパンチの連打)


 外薗は当初の対戦相手、きんぞ〜(ピロクテテス新潟)の負傷欠場により、フェザー級新人王戦準決勝をスキップし、一気に決勝まで駒を進めた。決勝戦を前に負ける訳にはいかない。一方遅咲きながらも着実に戦績を積む喜多にとっては実力をアピールしたいところだ。
 1R開始早々、外薗のパンチで喜多がダウン。甦生後コーナーでの差し合いから外薗がテイクダウン。喜多の足首を掴み、上手くコントロールしながら中腰の位置からパンチの雨を降らせる。たまらぬ喜多は脱出を試みるも、外薗が逃がさない。バックマウントを取りパンチの連打。ここでレフェリーがゴングを要請。外薗は決勝戦に向けて幸先の良い勝ち星をゲット。一方でリングに崩れ落ち、エプロンをたたいて悔しがる喜多の姿が印象的であった。


第1試合 フェザー級 5分2R
○小塚誠司(PUREBRED大宮)
×ルシアーノ・アゼベド(ブラジル/RFT)
判定3-0 (20-17,20-18,20-17)


 2003年アマ修斗ブラジル大会ライト級優勝、ルタ・リーブレ軽量級での華麗なる戦績、ADCCブラジル予選でデラヒーバを下す、と計測不能な強豪アゼベドが日本修斗マットに殴りこみ。そのすらりと伸びた手足に未知数の期待を感じる。
 1Rは、小塚のヒザ蹴りをキャッチし上手くバックマウントをとったアゼベドが執拗にチョークを狙う。しかし小塚は後方のアゼベドの顔面に的確なパンチを入れ続け1Rをしのいだ。
 2R、小塚のアグレッシブな打撃が光る。小塚の打撃を嫌うアゼベドは得意のポジション取りに難航、小塚がサイドポジションからパンチのラッシュを入れる。ラスト、アゼベドは上四方に逃れるも、ここでゴング。
 圧倒的に打撃の手数とポジショニングで上回った小塚がブラジルからの刺客に“ニッポン修斗”の強さを見せつけた。だがアゼベドもポテンシャルの高さを感じさせ、打撃を修得すれば今後面白い存在となりそうだ。

Last Update : 07/23

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