99･4･25 K-1 REVENGE'99 (2) フィリポビッチ vs ノルキヤ

99.4.25 K-1 REVENGE '99 横浜アリ－ナ

第２試合　K-1ル－ル３分５Ｒ　

○

ミルコ”クロ・コップ”フィリポビッチ

４Ｒ1：58

左フックKO

ヤン”ザ・ジャイアント”ノルキヤ

[188cm96.2kg]

[211cm131.6kg]

クロアチア/レオナルドジム

南アフリカ/スティーブズ・ジム

新勢力の台頭

　ミルコ・"プロ・コップ"・フィリポビッチ。この名前に馴染みのある人は居ないだろうが、ミルコ・タイガーと聞けば「ああ、あの選手か」と思い当たる。96年のK-1G Pでジェロム・レ・バンナからダウンを奪って判定勝ちした、「ブランコ・シカティックの一番弟子」というふれ込みの若い選手だ。その後3年間K-1の舞台に現れることの無かったミルコが捲土重来を期して登場する。

　一方のヤン・"ザ・ジャイアント"・ノルキヤはK-1Japanの対長井満也戦などで日本ではお馴染みの選手だ。その最大の武器は211cm130kgという巨躯である。逆に洗練された技術やこれはという攻撃スタイルを持っているわけではないが、その長いリーチから繰り出されるパンチはたとえ軽いジャブでも丸太棒が突っ込まれるような破壊力を持っている。

　フィリポビッチはこの3年間ボクシングの経験をつんできたというが、この圧倒的な体格差を果たしてどのくらい克服できるかがこの試合のキーポイントであった。

　両者共にサウスポーで構える。体格差を利して相手を掴まえて膝蹴りを狙っているノルキヤに対し、フィリポビッチは首相撲の時に上体を押し下げられ顔の位置がノルキヤの膝がヒットする位置まで下がってしまうのが気になる。「ノルキヤくらいの身長の選手とは試合やスパーで闘ったことがある」とは言うものの、やはり「同体格の相手と比べてやりやすいかやりにくいかと問われれば、やりにくいのは確かだ」というフィリポビッチ。彼自身3年前からは10kg近く増量して肉体的な完成度はぐっと上がっているとはいえ、身長で20cm以上体重で30kgを越す体格差をどのように克服するか、このラウンドは考えあぐねているような印象があった。それでも一発を狙ったハイキックがあわやというところでノルキヤの首をかすめ、噂通り技の多彩さにも磨きがかかっていることを感じさせた。

　ただラウンド全体を通してみると、やはり流れを支配していたのはノルキヤのプレッシャーだったように見えた。

（フィリポビッチ-ノルキヤで10-10、10-10、10-10）

　このラウンドからフィリポビッチはステップワークを多用し、イン-アウトの出入りを激しくするようになる。ノルキヤは巨躯の選手にありがちなスタミナの問題を抱えているようで、このラウンドに入って早くも息が上がりはじめたように見受けられた。長期戦になるとノルキヤには不利だ。それにしてもそのパンチの重さはやはり対戦相手には脅威。フィリポビッチがステップインしようとする瞬間、アウトボックスして距離を保とうとする時々にズドンと伸びてくるリードブローは、フィリポビッチになかなか試合の主導権を握らせない。フィリポビッチは今度は踵落としのような大業の足技を見せて会場を沸かせる。

　ポイントに顕れる以前の微妙な試合の呼吸という点から見てもこのラウンドは両者イーブン。

（フィリポビッチ-ノルキヤで10-10、10-10、10-10）

　フィリポビッチがノルキヤのパンチの距離を読めるようになってきたため、ノルキヤのパンチがフィリポビッチに当たらなくなってくる。このあたりの技術的な確かさは前評判通り、フィリポビッチは間違いなく一流選手と呼ぶに足るセンスと技量を兼ね備えた逸材だ。だが既に書いたとおりノルキヤのパンチとて一発で相手を沈める破壊力を持っている。なまじフィリポビッチが距離を読んでこれを避けられる位置にポジショニングするようになったことで、試合は硬直状態に陥り始める。互いに有効打の出ないまま、このラウンドはゴングまでコンスタントなリズムが続いた。

（フィリポビッチ-ノルキヤで10-10、10-10、10-10）

　Ｒ３の後半あたりから、突進してくるノルキヤをスルッとかわして、フィリポビッチがノルキヤの背後にまで回り込む展開が目に付くようになった。スタミナが切れかけているノルキヤの巨躯を逆に弱点にしてしまうような巧みな動きである。一連の動きはフィリポビッチの距離やタイミングが対戦相手に合わせて照準を絞り込んできたことの顕れであった。そうして遂にパンチの交錯の瞬間、フィリポビッチのカウンターの左フックが綺麗にノルキヤの顎を捉えた。見事な10カウントKO勝利だった。

　レイ・セフォー、ステファン・レコといった本格派の実力者が次々と名乗りを上げている最近のK-1だが、先日のK-1Japanでサム・グレコと互角の闘いを見せたサミール・ベナゾーズといい、このミルコ・フィリポビッチといい、次代を担う可能性を感じさせる確かな実力を備えた新人が続々現れ始めている。今大会には"Revenge"と共に「新世代の台頭」というテーマを見ることが出来るが、こうしたフレッシュな選手層がアーツ、フグ、ベルナルド、ホーストをはじめとするトップ選手と世代闘争の様相を呈する生き残り合戦を始めると、K-1に新たなドラマが生まれていくことになるだろう。

（高田敏洋）

［第1試合］アーツ vs スケルトン→→

［第3試合］グッドリッジ vs 武蔵→→

［第4試合］フグ vs セフォー→→

［第5試合］ベルナルド vs 佐竹→→

［第6試合］ホースト vs フィリョ→→

＜大会総評＞

＜全試合結果＞

取材：高田敏洋、薮本直美　カメラ：大場和正　HTML編集：井原芳徳