Report, Interview & Camera: 矢作祐輔

 「ブルシット!ブルシット!(くそったれ)」
 オクタゴンにビールの入ったコップが次々に投げ込まれる。試合中からずっと上がっていたブーイングは、終了のブザーとともにこんな怒号に変わった。客席は総立ちだ。拳を振り上げ、立てた親指を床に振り下ろすしぐさをしている男が何人もいる。後ろで大きな金属音がしたので驚いて振り返ると、eYada.com(SEGが提供しているNHB情報満載のインターネットラジオ番組)のDJエディ・ゴールドマンが客席に向かって怒鳴っている。「こんなもの投げ込みやがって、ここはプロレス会場じゃないぞ!」足下を見ると、折畳みのイスが転がっている。興奮した客がオクタゴンに投げ込もうとしたそれを、エディが阻止したらしい。
まさに暴動状態だった。

 本来ならこれは3月に起きているはずの光景だった。そう、悪夢のメインイベント中止事件が発生した、レイクチャールズでのUFC24。控室でTVケーブルに足をとられてケビン・ランデルマンが失神した事件の会場である。あの時、僕は正直いって暴動の発生を覚悟した。実際、一部では喧嘩もや小競り合いも発生し、場内は異様な空気に包まれてはいたが、結局、事情を理解したファン達は素直に会場を後にしたものだった。

 あれから3カ月。
 満を持して実現したチャンピオンシップ。

 ケビン・ランデルマンVSぺドロ・ヒーゾとの一戦がついに実現した。歴代UFCでも5本の指に入るような屈指のカードだ。抜群の瞬発力を持ち、弾丸の様なタックルとバズーカのようなパンチで瞬く間に王座まで駆けのぼった天才グラップラーとヴァーリトゥード31戦無敗、ピーター・アーツ譲りの破壊的なローキックでオクタゴンにKOの山を築いて来た怪童ストライカーとの頂点対決。またこれは未だ実現したことの無いマーク・コールマンとマルコ・ファスとの代理対決という側面もある。僕にとっては、この不幸な3カ月間の延期すらも、逆に楽しみを先延ばしにするための待ち時間であったように思えて来るほど、楽しみなカードだったのである。


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TABLE OF CONTENTS
ランデルマン vs ヒーゾ戦 レポート&写真
<ケビン・ランデルマン王座防衛インタビュウ>
「奴はキックボクサー、俺はレスラー。顔が腫れ上がったのはどっちだ?」
<失意のペドロ・ヒーゾ翌日インタビュウ>
「僕にとって人生最悪の日だ!」
「This is not "VALETUDO" 」- 岐路に立つブラジリアンファイター達


 

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