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ringsWORLD MEGA-BATTLE OPEN TOURNAMENT2000
KING of KINGS 〜GRAND-FINAL〜

2001.2.24 両国国技館

「ノゲイラ、危なげなく最強の王者に」

 レポート:山名尚志

<トーナメント組合せ>

金原弘光(リングス・ジャパン)━━━━━━━━━━━━━┓
                         (1)┗─┐
デイブ・メネー(アメリカ)───────────────┘ │
                              ┏━┓
ヴォルク・ハン(リングス・ロシア)───────────┐ ┃ ┃
                         (2)┏━┛ ┃
アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ(ブラジル)━━━━━━━┛   ┃ 優勝
                                ┗━ノゲイラ
高阪 剛(リングス・ジャパン)─────────────┐   │
                         (3)┏─┐ │
ランディ・クートゥア(アメリカ)━━━━━━━━━━━━┛ │ │
                              ┏─┘
山本憲尚(宜久改め)(リングス・ジャパン)───────┐ ┃
                         (4)┏━┛
ヴァレンタイン・オーフレイム(リングス・オランダ)━━━┛


第1試合 KOKトーナメント準々決勝(5分2R) 
金原弘光
(リングス・ジャパン)
延長 1R 3'24"

KO
デイブ・メネー
(アメリカ)
×
本戦判定/ジョン・ブルーミン19-19,藤原敏男18-19(金原),西良典19-19

 準々決勝のマッチメイクは、旧リングス・ネットワークvsNHB勢という図式に加え、体格的にほぼ互角の選手をぶつけるものとなっている。この第一試合も、その例にもれず、身長は双方とも178cm。体重は、金原が92.5k g、メネーは88.8kgと、金原の方が若干重い。ヒカルド・モラエス戦やレナート・ババル戦など、体重差のある相手に苦しめられてきた金原にとっては願ってもない展開だろう。

 とはいえ、メネーも、決して楽な相手というわけではない。
 レスリングのしっかりした基礎を持ち、修斗でランキング2位にまでかけあがり、そしてWEFではクルーザー級チャンピオンになるなど、バーリ・トゥーダーとしての実力は折り紙つきである。グラウンドでの顔面打撃を禁止しているKOKルールにおいても、対坂田戦でスリーパーにトライし、対トラヴェン戦では、スタンドのパンチでポイントをもぎ取るなど、きっちりとした対応をしてきている。

 試合はメネーの優位で始まった。
 打ち合いは互角。組み合ってからは、メネーが差して優位な体勢を取り、金原を倒していく。金原も、フロント・スープレックス気味に投げようとするが、逆に潰されてしまい、どうしてもガードを取る展開に押し込まれてしまう。
 ポイントとしてはメネーが取っている。
 このままいくかと思われた1ラウンド後半、スタンドで金原が数発有効打をお見舞いする。メネーの動きが悪くなる。表情がみるみる苦しくなる。
 流れが変わった。

 2ラウンドは金原のラウンドとなった。
 差してからうまくひねって返し、そこからしつこくアームロックや十字を狙う。逃げられてもバックをとってパンチを振り下ろし、サイドに回ってまた腕を狙う。スタンドではハイキックをお見舞いする。
 ラウンド終了後の判定は金原の1-0。あと少し足りない。

 そして延長。スタンドでの金原の優位は明らかだ。
 パンチと膝のラッシュ。一回目はメネーがしのいだ。しかし、2回目のパンチ・ラッシュで遂に膝をつくメネー。一瞬ではあったが、くずおれてしまった以上、KO判定は免れない。
 メネーが頼りにしていたスタンドでのパンチ。
 そこを、逆に、金原の打撃がうち破った試合だった。

第2試合 KOKトーナメント準々決勝(5分2R) 
× ヴォルク・ハン
(リングス・ロシア)
判定0-3

藤18-20,西18-20,ブ19-20
アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ
(ブラジル)

 今大会、ぶっちぎりの優勝候補といえば、やはりノゲイラだろう。
 正直、第一回KOKでも、ダン・ヘンダーソン戦での「微妙な」判定がなければ優勝をかっさらっていた可能性が高い。
 おまけに、ノゲイラは、その苦い体験をバネに、この一年極めの技術を徹底的に磨いて来たという。判定に持ち込まれる前に勝ってしまおうというのだ。コンディションも万全。前は、どちらかと言えば、ナチュラルな体型だったものが、随分とビルドアップされて来ている。
 「旧」リングス勢の代表格とも言うべきハンにとっては非常に厳しい相手である。

 善戦・・・と言っていいのかもしれない。
 アッという間にタックルで入ってきてテイクダウンを奪ってしまうノゲイラ。しかし、下になったハンは、ハーフガード、ガードでノゲイラに絡みつき、極めのチャンスを与えない。それも膠着させてしまうのではない。ノゲイラがパスを狙い、あるいは極めにかかろうというムーブを見せるのにきっちりと反応して動いていく。第一ラウンドの間、ブレイクはただの一度もない。
 かつてのハン・マジックを思い起こさせる流れるような動きだ。ただ重要な違いが二つある。一つは、流れのモチーフがサブミッションではなくポジショニングとなっていること。もう一つは、残念ながら、イニシアティヴを取っているのが、ハンではなく、ノゲイラだということだ。

 しかし、ハンもただで終わるわけにはいかない。
 第二ラウンド中盤、タックルに来たノゲイラを抱え込むようにして足を取ってコントロール。ついにグラウンドで上を奪う。
 遂に反撃か・・・
 と思われた次の瞬間。ノゲイラが、なんと、足関節を狙う。あっという間に最大のピンチに陥るハン。どうにかここは回転して逃げていくが、もはや情勢をひっくり返すだけの時間は残っていなかった。

 それでも、敢えて言うが、それでもハンは強い。
 既に40歳である。サンビストとして一旦峠を超えてから、これで、二つ目のプロ格闘技である。しかも、最初のプロ格闘技である原リングス・ルールでは長らくトップに君臨していた。今でも、前田が引退する前後のハンの強さをリアルに思い出すことができる。
 おそらくは引退もそう遠い話ではないだろう選手が、40の手習いで新たなルールを覚え、にも関わらず、トップ中のトップの選手と互角に渡りあう。ノゲイラが、今回の大会で、判定に持ち込まれたのは、実に、ハンただ一人。田村も、金原も、オーフレイムもできなかったことをハンはやってのけたのだ。
 世代交代を言うことは容易い。
 しかし、KOKリングスは、ハン程の才能を手に入れているのだろうか。

第3試合 KOKトーナメント準々決勝(5分2R) 
× 高阪 剛
(リングス・ジャパン)
判定0-3

藤19-20,西19-20,ブ19-20
ランディ・クートゥア
(アメリカ)

 ペドロ・ヒーゾという壁にぶちあたり、UFCヘビー級チャンピオンへの挑戦権を取ることができなかったTK。その高阪にとって、これほどおいしいマッチメイクはない。UFC王者として返り咲きに成功したクートゥアといきなり当たることができるのだ。
 これに勝てば、アメリカでのTKのポジションも、急上昇することは間違いない。
 だが、そんな展望も、クートゥアの左腕の前に砕け散ってしまった。

 今さらいうまでもないことだが、レスリング出身のNHB選手の闘い方も、現在では、大きく変化してきている。かつての、闇雲にタックルにいって、とにもかくにも倒してしまい、あとは相手がガードを取ろうがどうしようがグラウンド・パンチの連打で終わらせてしまう。もし、パンチが打てる体勢にならずとも、上を制していれば、判定で負けることはない。こうした戦略は、既に、下からのサブミッションやポジション返しの技術が発達した現状のNHBシーンでは、時代遅れとなりつつある。
 その代わりに出てきたのがスタンドでのパンチだ。
 勿論、ボクシングのようなパンチではない。非常に近い間合いで、組み合い、あるいはコーナーに押しつけながらコツコツとパンチを打ち込んでいく。倒されることへの恐怖がなく、また、スタンド・レスリングの基盤があるからこそ使える打撃攻撃。
 勿論、クートゥアーも、この戦略をきっちりと身につけている。
 KOK一回戦、二回戦の大差の判定勝ちはスタンドでのパンチがもたらしたものだ。

 スタンドでの打ち合いに出る両者。
 だが、スウェイを多用する「オーソドックスな」高阪の戦法に対し、クートゥアーはひと味違う。左手が伸び、高阪の首を押さえ込んでしまうのだ。
 当然のことながら、片手で押さえてのパンチでは、なかなかKOするようなパワーは出ない。しかしダメージは蓄積する。高阪の顔面が紅潮し、流血。最初は眉間、ついで鼻血。何度もドクターチェックが入る。
 何とかグラウンドに持ち込みたい高阪。内股でテイクダウンを奪い、腕を狙っていくが、極めきれない。二回目以降はクートゥアーも警戒し、逆に潰されてしまう。とはいえ、例え下になったとしても、実のところ高阪的には問題はない。マウントであろうと、サイドであろうと、少しの隙さえあればTKシザースでリヴァースしてしまえるからだ。
 だからクートゥアーがもう少しグラウンドに踏み込んでくれたら、どこかで捉えられただろう。しかし、当然のことながら、クートゥアーも、TKのフィールドで闘いたくはない。シザースを喰らう度にすぐさま逃げだし、スタンドに戻ってしまう。
 そうして左腕を出し、高阪の首をホールドし、パンチを当てる。
 コーナーに押し込んで、またもやパンチを出し、流血に追い込む。更には膝も出る。

 クートゥアーのシュアな戦略がはまった試合だった。
 ヒーゾにしろ、アイブルにしろ、高阪は打撃系の選手には星を落とすことが多い。流血のしやすさというところも含め、抜本的な対策が必要なのかもしれない。

第4試合 KOKトーナメント準々決勝(5分2R) 
× 山本憲尚
(リングス・ジャパン)
1R 0'45"

腕ひしぎ十字固め
ヴァレンタイン・オーフレイム
(リングス・オランダ)

 一年を経て、KOKも、番狂わせ的な試合が大分減ってきた。
 無論、一回戦のように、「未だ見ぬ強豪」がずらずらと出てくる場合には意外な展開も起こるが、それも一旦わかってしまえばそうそうハプニング的なものは出てこない。実力の物差しがはっきりしてきたといっていいだろう。
 そんな中で、今回のKOKで最も衝撃的だったのが、オーフレイムvsババル戦である。いくらオーフレイムのグラウンドが伸びて来ているといっても、ババル相手では荷が重い。それが戦前の大方の評価だったハズだ。
 ところが結果はオーフレイムのサブミッションでの一本勝ち。
 それもオーフレイムからタックルにいくというおまけ付きだ。

 この試合もそうだった。
 開始早々こそ、派手な飛び膝蹴りで場内を沸かせたオーフレイムだったが、山本がタックルに来るとかっちりと潰してしまう。フロント・チョークは逃げられるが、亀になった山本のバックに入り、そこから腕を取ってそのまま腕十字。
 完璧である。
 ヴァレンタイン・オーフレイムについては、打撃の選手というイメージを捨て去らなければならない。グラウンドでも、彼は、既にトップ選手である。
 そう、リングス・ジャパンの選手が目標にしなければならない程の。


※第4試合後の休憩後、3月のディファ有明大会のメインイベントで復帰する成瀬昌由がリングに登場し、トーナメント21のベルトを返上。ミドル級選手との争いで改めてベルトを奪取することを誓った。

第5試合 スペシャルマッチ リングスルール1R10分・2R5分
アリスター・オーフレイム
(リングス・オランダ)
1R 1'06"

裸絞め
ウラジミール・チャントゥーリア
(グルジア/シドニー五輪ボクシングヘビー級銅メダリスト)
×

 リングスにアマチュア格闘技のチャンピオン・クラスが出場することは珍しくない。今回の大会にしても、ハンは全ソ連のサンボのチャンピオンであり、クートゥアはグレコローマンの世界選手権のチャンピオン。競技人口は少ないものの、ノゲイラも、ブラジリアン柔術のチャンピオンである。記憶を辿れば、柔道のハハレイシビリ・ダヴィドなど、オリンピック・クラスの選手は、言い方は悪いが、掃いて捨てるほどいる。
 だが、それでも、メダルをとってわずか半年という「活きの良さ」は珍しい。チャントゥーリアへの興味はそこに尽きる。

 そして試合開始。
 アリスターは、チャントゥーリアの都合などお構いなしにテイクダウンにいく。一回目はなんとかブレイクになったものの、またすぐにタックル。サイドからマウントに回るアリスター。そこから腕を狙い、チャントゥーリアが嫌がると、流れに逆らわずにバックに回ってスリーパー。
 まるでエギジビションのような試合になってしまった。
 リングスを嫌いになったりしないでくれればいいのだが。

第6試合 KOKトーナメント準決勝(5分2R) 
× 金原弘光
(リングス・ジャパン)
2R 0'27"

裸絞め
アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ
(ブラジル)

 準々決勝は同じ体格の相手と闘うことができた金原。
 しかし、この準決勝では、いきなり身長差12cmになってしまう。

 体重差ということがよく格闘技で言われる。
 それは無論そうなのだが、この試合に限って言えば、身長差が相当に響いてしまっていた。相変わらず出足の早いタックルで来るノゲイラ。そのままテイクダウン。しかし、金原、そのまま下にいることなく、腰を立てていって押し込んだり、あるいは横に回っていったりして次々とひっくり返し上にのる。
 実に素晴らしいムーブである。
 だが、そうやって努力してひっくり返しても、ノゲイラの長い、長い手足をコントロール仕切れず、また戻されてしまう。それも、腕を回してよっこらしょっという感じでゴロっと返されてしまうのである。
 これではやっていけない。
 ポジションの取り合いという点では互角だが、そのためにかけている労力が違い過ぎる。

 そうして第二ラウンド。
 ノゲイラのタックルを受け止め、両肩を抱えてしまう金原。またひっくり返しにいこうというのだろう。
 だが、ここで不意にノゲイラが意外な動きをした。
 自分の方から回転し、肩をぐるんと回して金原の腕を切ってしまったのだ。
 虚をつかれた金原のバックにそのままのってスリーパー。
 ハン戦の足関節狙いといい、ノゲイラのムーブの引き出しは思いのほか豊かなようだ。

第7試合 KOKトーナメント準決勝(5分2R) 
× ランディ・クートゥア
(アメリカ)
1R 0'56"

フロントチョーク
ヴァレンタイン・オーフレイム
(リングス・オランダ)

 高阪を打撃で下したクートゥア。
 だが、オーフレイムに対しては、打ち合いを挑まずにいきなり思い切ったタックルにいった。おそらくはオーフレイムの打撃を警戒したのだろう。確かにこれは怖い。ちょっとした間合いでも膝が、顎どころか、頭の上までとんで来るし、まさかという方角からハイが出現する。
 しかし、結局は、この判断が大きな間違いだった。

 タックルから上に乗り、サイドに回るクートゥア。
 普通ならこれでコントロールできるはずなのだが、オーフレイムの長い手足は打撃にだけ力を発揮するわけではない。腕はクートゥアの首をがぶり、脚が胴体に絡みついていく。
 フロントスリーパー。
 またもや秒殺。それもUFC現役王者を、である。

 旧いリングスが好きだったファンからすれば、これほど頼もしい選手はいないだろう。彼の活躍は、すなわち、前KOK時代のリングスの「正しさ」を証明するものでもあるのだから。

第8試合 スペシャルマッチ リングスルール1R10分・2R5分 
× 坂田 亘
(リングス・ジャパン)
判定1-2

ブ20-19,藤19-20,西19-20
柳澤龍志
(チームドラゴン)

 柳澤のリングス参戦はこれで二興行目。
 まだまだ新鮮。しかも、相手は、リングス生え抜きの日本人選手。今となっては「旧聞」でしかないが、かつてのリングスとパンクラス間のトラブルで先頭に立っていたこともある坂田だ。
 ちょっと前までなら「すわ」ということになるのだろうが、会場の雰囲気はそこまでは高まらない。トーナメントに意識が集中していることもある。だが、それよりも、UWFという枠組が風化しきっているという事実の方が大きい。わずか一年前、田村がヘンゾ戦で流したUWFのテーマ曲が引き起こした騒ぎを思えば隔世の感があるとしかいいようがない。
 前世紀の因縁は終わってしまった。
 今、KOKの前に立ちはだかっているのは、PANCRASEではなくPRIDEである。

 試合は単調な展開となった。
 柳澤は打撃でいきたいわけだが、16cmという身長の差がある以上、坂田がそれに付き合うわけもない。当然グラウンドに持っていこうとする。
 だが、間合いが遠く、柳澤に簡単に切られてしまう。そのままガード・ポジションに。最初のガードこそ、あわやというところまで十字を極めかけたが、その後は柳澤も警戒するため、極めにいけなくなる。
 さっさと立ってしまいたい柳澤。柳澤の手首をコントロールしてどうにか下から攻めたい坂田。両者の思惑が動きを止め、ブレイクの山を築く。
 本来なら、どこかで流れを変えなければならなかった。
 そうして、その役目は、タックルを繰り返し、さらには引き込みまでやって下からの攻めを狙っていた坂田の側にあったろう。不調とは言え、試合の流れを作ろうとしていたのは坂田だったのだから。
 しかし、結局、最後まで同じ繰り返しが続いた。
 判定は柳澤。ただし、坂田のイエロー(序盤にミドルが柳澤の金的をかすったため)の減点によるもので、実質的には膠着ドローである。

 試合後、会場に向かい、マイクで体調不良を詫びた坂田。
 そうであるなら、きっちり仕切直しをしてもらいたい。

第9試合 セミファイナル スペシャルマッチ リングスルール1R10分・2R5分 
× 田村潔司
(リングス・ジャパン)
判定0-2

ブ19-20,藤20-20,西19-20
レナート・ババル
(アメリカ)

 一年前、第一回KOKの準決勝で田村はババルと相まみえた。
 ヘンゾ戦を終えたばかりの田村は、その場で、ババルに判定負けを喫している。従って、今日は、一年ぶりの雪辱戦ということになる。

 見ている側の思いこみとしては、「一年あったのだから、田村はどうにかしてくれるだろう」という気持ちがある。あの時は、未だ、KOKルールに慣れていなかったわけだし、それに、ヘンゾ戦の直後でもあったし、と。
 だから、今度は田村はババルという壁をうち破ってくれるのではないか、と。
 しかし思いこみは思いこみに過ぎない。
 田村がKOKルールに習熟するのと同様に、ババルもKOKというものに慣れていく。おまけにババルの方が若く、格闘家としても伸び盛りである。
 田村が成長するのなら、ババルはそれ以上に成長していてもおかしくないのだ。

 案の定、両者の差は縮まっていなかった。
 得意の左ミドル、左ローで牽制する田村だが、組み合ってしまうとババルのペース。1ラウンド前半から亀の状態に押し込まれてしまう。一回は、それでも、ポジションを返して上に乗ることに成功するが、そのまま攻めきれず、また下になる。
 ババルの優勢は第二ラウンドさらに顕著になっていく。
 もはや田村の左ミドル、左ローは完全に見切られている。簡単に取られ、軸足を蹴られてしまう。さらに組み付いて裏投げ気味に田村を投げ捨てる。次第にババルのワンマンショー化していく試合展開。正直、「リングスのエース」であったはずの田村の試合としてはかなり厳しいものとなってしまった。

 KOKで参戦した強豪たち。その多くは、実のところ、「これからもっと伸びる」選手たちである。ババル、ノゲイラ、ヒカルド・アローナ、ジェレミー・ホーンなどなど。だから、放っておけば、彼らとの差はどんどんと広がっていってしまう。
 それでも、ファンは、期待しないわけにはいかない。
 いつかはジャパンの選手が追いつき、追い越してくれるだろう、と。中でも「エース」田村は何かしてくれるんじゃないか、と。なぜなら、そういう奇跡を見せてくれる者こそ、エースであり、ヒーローなのだから。
 刮目して待ちたい。

第10試合 KOKトーナメント決勝(5分2R) 
アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ
(ブラジル)
1R 1'20"

肩固め
ヴァレンタイン・オーフレイム
(リングス・オランダ)
×
※ノゲイラが優勝

 第一回KOKトーナメントで田村はベスト4に残った。残りの3人は、ノゲイラ、ダン・ヘンダーソン、ババル。つまり、旧リングスとしても、ジャパンとしても、ベスト4どまりだったわけだ。
 だが、今回は、オーフレイムが決勝に残った。
 ジャパンとしては金原のベスト4が最高位だが、旧リングスという分け方でいくと、一段階上に上ったことになる。もしかしたら優勝も・・・という雰囲気が会場に流れる。何せ、UWF現役王者を秒殺したわけだから。

 開始早々ノゲイラがタックルを仕掛ける。お馴染みの戦法である。一方のオーフレイムは、それをがぶって受け止める。これもまたいつものやり方だ。
 ポイントは、そこからオーフレイムが脚を利かすことができるかにかかっている。何とかノゲイラの胴体に脚を回そうとするオーフレイム。上手く回せればギロチンを極めてしまうことができるし、そこまでいかなくともガードから他の展開を伺うことが可能だ。
 しかし、ノゲイラはそれを許さない。
 着実なパスガード技術でサイドに回る。首が抜ける。
 完全にフリーだ。
 ノゲイラの優勢は動かない。一旦は抵抗したオーフレイムだが、肩固めをがっちり極められてしまうと、もはや逃げ道は残されていなかった。

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99.10.28 KOKトーナメントAブロック1回戦(代々木第二) ノゲイラ×オーフレイム

レポート:山名尚志

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