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(レポ&写真) [PRIDE武士道] 9.25 有コロ:ライト決勝は五味×マッハ

ドリームステージエンターテインメント "PRIDE武士道 - 其の九 - 〜PRIDE GRAND PRIX 2005 ライト級トーナメント〜 〜PRIDE GRAND PRIX 2005 ウェルター級トーナメント〜"
2005年9月25日(日) 東京・有明コロシアム

  レポート&写真:井原芳徳  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】


■PRIDE GRAND PRIX 2005 ライト級(-73kg)トーナメント (ウェルター級は別ページに掲載)
 

第7試合 一回戦 1R10分・2R5分
○桜井“マッハ”速人(日本/マッハ道場/元修斗ミドル級王者/72.7kg)
×ジェンス・パルバー(アメリカ/チーム・エクストリーム/元UFCライト級王者/72.0kg)
1R 8'56" KO (左ボディ→パウンド)


絞りきったマッハ、若さ取り戻し好発進

 マッハがかつて王座を獲った修斗ミドル級は76kgがリミット。近年は無理に体重を増やし不調だったが、5月の武士道8月の修斗では75kg契約で戦い、好調ぶりを見せていた。73kgだと落とし過ぎで逆に動きが悪くなるのではという心配もあったが、むしろこの体重がベストなのではと思わせる動きで観客を驚かせる。
 開始早々、マッハは鋭いローキックを連続ヒット。パルバーは早くも膝が崩れる。さらにマッハは相手が打つ前にハイ、ミドル、ストレートをバンバン当て、試合のペースを握る。
 だが接近戦になると、ガードが下がった隙を突き、パルバーの左フックが炸裂。この攻撃でマッハは試合中2度ぐらつく場面があった。それでもマッハは攻め込まれることなく、すぐに持ち直し反撃。右の強烈なパンチも当て、元々の体重の軽いパルバーにじわじわとダメージを与える。
 こうなるとパルバーは大みそかの五味戦と同じような泥沼に。最後はマッハが右ストレート、左ボディ華麗なコンビネーションを炸裂。膝蹴りを放ちながら組み倒すと、鉄槌と踏み付けの連打で追い打ちをかけ、レフェリーが試合を止めた。
 

第8試合 一回戦 1R10分・2R5分
○ヨアキム・ハンセン(ノルウェー/チーム・スカンジナビア/元修斗世界ウェルター級王者・現1位/72.9kg)
×イーブス・エドワーズ(アメリカ/サード・コラム/UFC代表/71.9kg)
判定2-1 (大城=ハンセン/小林=エドワーズ/足立=ハンセン)


修斗元王者ハンセン、UFC代表との接戦制す

 1R前半、上になったハンセンがパスガードに成功し、バックを奪うなど主導権。後半戦は互いに上になるが、攻め手のないままラウンドが終了する。ヤマ場がなく、外国人対決ということもあり、会場はシーンとしたまま。2Rも同様の展開が続く。最後残り1分、ハンセンが踏み付けとバックドロップ気味の投げで本領を発揮したが時間切れ。小林ジャッジがエドワーズにポイントをつけたのは疑問だが、他の2名のジャッジは当然ハンセンを支持し、ハンセンが準決勝進出を果たした。
 

第9試合 一回戦 1R10分・2R5分
○五味隆典(日本/木口道場レスリング教室/元修斗ウェルター級王者/72.9kg)
×川尻達也(日本/チームTOPS/修斗世界ウェルター級王者/72.9kg)
1R 7'42" ギブアップ (チョークスリーパー)


武士道のエース、修斗王者を粉砕

 事実上のメインイベントともいえるこのカード。会場は試合前から盛り上がり、試合が進むにつれ大熱狂の渦へと化す。
 大振りの右フックを放ちタックルで組み付く川尻を、五味は突き放し打撃勝負。サウスポーのボクシング式の構えのため、右ローを何発ももらってしまうが、パンチの回転の早さは以前よりアップ。前後のステップと両手の細かい動きも柔らかくなり、タックルへの対処も機敏だ。さらに時折構えもスイッチして川尻をかく乱し、左右のフック、ストレート、右ボディをクリーンヒット。試合のペースを握り続ける。

 最初のうちはパンチをもらうと舌を出して余裕の素振りも見せ川尻だが、もらい続けるうちに次第に顔色が笑顔から焦りへ、焦りから疲れへと変わっていく。2度もらったバッティング、普段70kgの体重から73kgに上げたことも不利な材料に。それでも驚異的な打たれ強さを発揮し、観客を熱狂させるが、五味の圧力に押され、反撃の糸口は見つからないまま防戦が続く。
 最後は五味が右フックを当て、川尻が苦しそうに組み付いたところ、ショートのパンチの連打と右膝蹴りがクリーンヒット。川尻がダウン状態で倒れると、五味はバックを取りパンチを落とす。グロッキー状態の川尻を心配し、五味はレフェリーの表情を見るが、川尻の目が死んでいないのを確認していたレフェリーは試合続行。五味はそのまま後ろに倒してスリーパーを極め、川尻の息の根を止めた。

 自ら五味に挑戦を表明した川尻だったが、右ロー以外まともに当てさせてもらえないまま完敗。だが修斗ウェルター級(70kg)より3kg重い試合にチャレンジしての敗戦で、修斗世界王者の価値が落ちたとは思えない。もしこの試合で川尻を初めて見て、そのタフネスに驚いた方は、ぜひ近々プロ修斗で実施されるであろう1位のハンセンとの防衛戦を見て欲しい。川尻がベスト体重でいっそう輝く姿が見られるはずだ。
 そして本人も試合後のインタビューで語ったとおり、「負けてもリベンジする。それが僕の格闘技人生」。PRIDE初参戦発表のニュースでも記したが、節目となる試合で、以前勝てなかった相手にリベンジしてきたのが、川尻の修斗人生だった。川尻は大会後、五味のところに挨拶にいき、「自分より強い人がいることに驚いた」と話し、五味をア然とさせた。この強心臓がある限り、川尻は殴れても絞められても這い上がってくる。
 

第10試合 一回戦 1R10分・2R5分
×小谷直之(日本/ロデオスタイル/72.8kg)
○ルイス・アゼレード(ブラジル/シュートボクセ・アカデミー/72.7kg)
1R 0'11" KO (右フック→サッカーボールキック)


ZSTのエース、11秒で消える

 五味×川尻の熱狂の冷めやらぬ中、「アキバ系ファンタジスタ」というキャラ付けで紹介され、PRIDEのリングに初登場したZSTのエース・小谷だったが、その試合はわずか11秒。サウスポーの構えで右パンチで前に出たところ、アゼレードの右フック一発でダウン。さらに踏み付けと膝蹴りの連打を浴びあっけなく敗退してしまった。
 

第13試合 準決勝 1R10分・2R5分
○桜井“マッハ”速人(日本/マッハ道場/元修斗ミドル級王者/72.7kg)
×ヨアキム・ハンセン(ノルウェー/チーム・スカンジナビア/元修斗世界ウェルター級王者・現1位/71.9kg)
判定3-0 (三宅=桜井/足立=桜井/小林=桜井)


若さだけじゃない。老かいさも兼ね備えたマッハが決勝へ

 マッハは何度か下になり、ハンセンの伸びのあるパウンドを浴びてしまったが、ずっと下になりっぱなしにはならず、スタンドに戻すと左フックでハンセンをダウンさせる等攻勢。寝技でもアキレスを狙ったりと、多彩な動きをみせる。
 若々しい動きに見え、実は「飛行機の乗り過ぎで、腰が悪くなっていた」というが、「打撃系の選手相手で、ごまかしながら戦えた」といい、ベテランならではの老かいさも動きのスパイスとなる。決定打はなかったものの、2R終了間際には得意の右ローでハンセンをぐらつかせて上に。その後ひっくり返されてしまったが、この攻めで勝利を決定づけた。
 

第14試合 準決勝 1R10分・2R5分
○五味隆典(日本/木口道場レスリング教室/元修斗ウェルター級王者/72.9kg)
×ルイス・アゼレード(ブラジル/シュートボクセ・アカデミー/72.7kg)
判定3-0 (三宅=五味/足立=五味/ヒューム=五味)


決勝はマッハ×五味に。HERO'S須藤元気もエール送る

 川尻戦ではサウスポー中心でたびたび構えをスイッチした五味だが、この試合はオーソドックス主体。序盤からワンツーパンチを当て、アゼレードのラッシュを封じる。とはいえ一回戦、準決勝とローを受け続けた影響で、パンチの踏み込みが弱くやや手打ちに。何度も連打でアゼレードを追い詰めるが、倒すまでには至らない。
 1Rには2回倒され、そのたびに足を組むか上体で組み付くかで防御。膠着を誘発する動きとみなされ、グリーンカード2枚をもらう。試合後シュートボクセのフジマール会長は、膠着のグリーンカードが採点に影響しないことに不満を示した。たしかに正論だが、シュートボクセ勢もこの戦法をよく使うため、自分たちに都合のいいだけの意見のように聞こえる。
 とはいえ仮に減点があったとしても、五味の勝利に揺るぎは無かっただろう。2Rには時折サウスポーにもスイッチし、1R同様打撃で攻勢。ローに対してもカウンターのパンチを合わせるようになり、アゼレードにチャンスを与えないまま15分を戦い抜き完勝した。

 これで大みそかの決勝戦は、五味とマッハの木口道場の兄弟弟子対決に。リングに上がったマッハは五味の健闘を讃えた後マイクを持ち、「実現しなかったけど、シュートボクセのシウバとショーグンが戦うような感じで、すごくうれしいです。木口(宣昭)先生のおかげです。ありがとうございます」と語った。続いて五味もマイクでファンに感謝の言葉を述べると、「僕のユニークな友人を紹介します」と話し、須藤元気をリングに招き入れた。五味×マッハと同じ大みそか、Dynamite!!でKIDとHERO'S初代ミドル級(70kg)王座を賭けて戦うことが決まっている須藤は、「出ている大会は違いますけど、大みそかはお互いみんないい試合をして、格闘技全体を盛り上げて行ければと思っているので、応援よろしくお願いします」と挨拶。ファンの喝采を浴びた。

 会場は超満員札止めで、5時間近い長時間興行ながらも最初から最後まで熱狂が絶えず。榊原信行DSE代表は大会後の総括で「前日会見でも話した通り、武士道を続けていけるか、今日が審判の日だと位置づけていましたが、私の中では審判が下りました。1年、2年後にはミドル級、ヘビー級を凌駕するかもしれません」「五味という選手の奥深さ、凄みを見ました。川尻が五味の良さを引き出したと思います」、高田延彦PRIDE統括本部長は一夜明け会見で「PRIDE史上ベスト5か10に入るような試合が1つ、2つあった」と話し、特にライト級の五味・マッハ・川尻の新旧修斗勢の活躍を褒め讃えた。

五味はなぜ、重量級に負けない輝きを放ったのか?

 五味は一回戦で、かつて自分が持っていた修斗ウェルター級王座を現在保持する川尻を粉砕。この勝利は修斗ウェルター級時代の殻から完全に脱皮することに成功し、正真正銘のPRIDEライト級戦士に生まれ変わったターニングポイントとして位置づけることができるだろう。
 70kgの最強から、73kgの最強へ。さらに五味は無差別級最強に羽ばたく事を夢見ている。93kgのヴァンダレイ・シウバとの対戦を希望する言葉を口にした時は、無謀との声が飛んだ。大半の報道ではシウバの3文字が先走りし誤解を生んだが、別にシウバと対戦することが目的ではない。五味は愛するプロボクシングの世界でオスカー・デ・ラ・ホーヤが6階級制覇を成し遂げたように、一個一個階級の階段を登っていき、ゆくゆくはシウバ、あるいはヒョードルと戦うことを夢見ている。シウバという名前を出したのも、それだけ高い志を持っているということの一表現にすぎない。一夜明け会見で五味は、大みそかでライト級王座を獲った先の目標として、UFCウェルター級(77kg)王者のマット・ヒューズや、PRIDEウェルター級(83kg)GPの決勝に勝ち残ったダン・ヘンダーソンとの対戦を掲げた。まずは73kg、次は77kg。さらに上に羽ばたこうとする五味の格闘家として純粋でポジティブな意志があるからこそ、ヘビー級・ミドル級に負けない存在感を五味は放つことができるのだと思う。

 だがその前に76kgで一時は世界最強とも言われたマッハが壁として立ちふさがる。五味に敗れた川尻に対してマッハは「まだまだ修行が足りない」と言い放ち、「修斗のウェルターとミドルの選手が中間の73kgで戦えば、ミドルの選手が勝つに決まってる」と事も無げに語る。五味もこの日のマッハについて「トリッグとやった頃(プロ修斗00年12月NK大会)の動きに戻っていた」と警戒。「(マッハは)ローが得意だから、ローの対処もやらないといけない」とも話しており、川尻戦、アゼレード戦でもらいすぎたロー対策がどれだけできるか、また、本来の体格差をどれだけ埋められるかが勝敗の分かれ目となるだろう。


第6試合 リザーブマッチ 1R10分・2R5分
○三島★ド根性ノ助(日本/総合格闘技道場コブラ会/DEEPライト級王者/72.9kg)
×チャールズ・“クレイジーホース”・ベネット(アメリカ/フリー/68.5kg)
1R 4'04" ギブアップ (アンクルホールド)


寝技のファンタジスタ、リザーブマッチでも光る

 この日のリザーブファイトは時間短縮のため両選手同時入場。入場が命の三島は、そんな状態でも派手な格好で入場し、フェイントを加えての月面宙返りでリングインする。
 試合も本戦に劣らぬ華麗な内容。序盤から豪快にテイクダウンに成功すると、パスガード、マウント、バックと、余裕の試合運び。いったん脱出を許し、右フックを浴びるが、約5kgも体重差もあるため、それもどこか余裕を感じさせる。ギロチンに捕まえると、ベネットが豪快に持ち上げる叩き付けるが、三島は受け身を取りつつ対処。最後は上になったベネットを、下からの速攻のアンクルで仕留めた。打撃主体の試合が多かった今大会で、華麗な寝技で総合格闘技というスポーツのポテンシャルを感じさせてくれた三島。今回はリザーバーの立場だったが、まだまだチャンスはあるはずだ。

Last Update : 10/05 23:35

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