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(レポ&写真) [修斗] 8.20 横文:ルミナTKO負け。マッハ&ハンセン辛勝

サステイン "クリムゾン・プレゼンツ プロフェッショナル修斗公式戦 - ALIVE ROAD -"
2005年8月20日(土) 神奈川・横浜文化体育館
認定:インターナショナル修斗コミッション

  レポート:井原芳徳  写真:小林秀貴  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】
 

第7試合 メインイベント ライト級 5分3R
○ギルバート・メレンデス(アメリカ/シーザー・グレイシー柔術/世界1位&環太平洋1位)
×佐藤ルミナ(K'zファクトリー/世界3位&環太平洋王者)
1R 1'32" TKO (レフェリーストップ:膝蹴りによる額のカット)


ルミナ、額を切られまさかのTKO負け。心の傷は…?

 序盤から右ロー、右フックでリズムよく攻めるルミナ。いったん組み付いた後離れ、左ボディをもらってしまうが、すぐさま左フックをお返し。さっそくメレンデスをぐらつかせる。
 しかしこのルミナの調子の良さが逆にメレンデスの危機感に火をつけてしまったか? メレンデスは首相撲でルミナを捕まえると、そのままジャンプしながら鋭い膝蹴りを連打。そのうち一発がルミナの額を5センチほど切り裂いてしまい、ドクターチェックの後、レフェリーストップが試合を止めた。

 ルミナは5年前の横文大会の桑原卓也戦でもバッティングで額をカット。04年5月のペトライティス戦でも左眉尻を切る等、顔の皮膚が切れやすいようだ。傷は深さもあるため、中と表面を2重で縫うほどだったという。
 ファンのほとんどが世界王者ペケーニョへの挑戦権をルミナが奪取することを願っていた試合だけに、ドクターチェックが入った瞬間の会場の空気の沈みようは尋常では無かった。直前にマッハ、ハンセンがスキッとした勝ち方ができなかったこと、開始の遅れ等もあり大会時間が長引いていたことも、観客の落胆に拍車をかけていたようにも思えた。

 約20針の手術を終えたルミナは「練習通り動けていたし、相手の動きも見切れていた。今までで一番調子が良かった。3Rまで行くつもりでしたけど、左フックで相手の顔色が変わってたんで、今までどおり一気に行くべきでしたね」と反省のコメント。フィニッシュの膝蹴りで脳にダメージは無かったというが、「バッティングじゃないんで、負けは負けです」「頭を下げる癖が怪我につながったので、改善しないと」と話していた。
 またも王座直前の挫折。額の傷よりも心の傷の方が深いかにも思われたが、ベテランのハートはタフだった。「今迄何度も挫折を経験してるんでね。こんなところでクヨクヨしている場合じゃない。短い試合時間だったけど、落ち着いてローを打てたし、精神的にも大人になったかな、と思います。メレンデスにはペケーニョに勝ってもらって、自分もそれまで連勝してれば、そんなに遠くはないでしょう。俺がメレンデスに挑戦して、KOしてチャンピオンになると」
 

第6試合 セミファイナル 75kg契約 5分3R
×青木真也(パレストラ東京/ミドル級世界6位・環太平洋4位)
○桜井“マッハ”速人(マッハ道場/元第4代ミドル級王者)
判定0-3 (横山28-30/菅野29-30/鈴木29-30)


5年後の「This is SHOOTO」

 マッハの打撃を警戒する青木は、開始早々大振りのパンチで組み付いて密着戦へ。アブダビ予選でも使った、立ったままのスピニングチョーク、通称「青木絞め」でいきなりマッハを苦境に陥れる。苦しい表情を見せつつもマッハはなんとか脱出。以降は青木が寝てのガードの攻防と猪木アリ状態の繰り返しに。青木の防御も光るが、マッハはPRIDEルールとの違いにも戸惑ったといい、約3年の“ブランク”の影響が出て攻めきれない。
 だが2R序盤、マッハは組み付かれる前に右ミドルと右膝をクリーンヒット。グラウンドでもコツコツとパンチを当て、決定打は少ないものの青木の体力をじわじわと消耗させる。青木は準備期間が短かったことも災いしたのだろう。マッハはシアトルのマット・ヒュームの元で「5R戦えるぐらいのスタミナトレーニングをやっている」といい、終盤バテてきた青木を尻目に、底力を発揮する。

 それでもテイクダウンとポジショニングで上回ったのは青木。1Rにはマッハの踏みつけ攻撃を捕まえて上になったり、3Rにはテイクダウンからそのままマウントを奪ったりと、寝技で優位に試合を運ぶ。

 結局互いに決め手のないまま試合終了。青木は立っているのがやっとという状態でロープにもたれこみ、「これが修斗、修斗、修斗…」と独り言をつぶやき、マッハは背筋を張って自ら敵陣営に挨拶に行き健闘を讃えた。修斗のジャッジは与えたダメージの差を評価し、マッハに軍配を上げた。観客はやや騒然としたが、マッハは試合後、「ダメージを取ったと思う。柔術じゃないんで」と採点について語っていた。

 とはいえ、元王者らしからぬ辛勝だったことに変わりはない。リングアナからコメントを求められても、「すいませーん!以上です」とあっさりと切り上げた。共同インタビューでは青木について「凄いいい選手だった。粘っこい。まだ若いしこれからが楽しみ」と評し、「KOしたかったけど、最近は誰も打ち合ってくれないんでね。もっと楽しい試合をしたいけど、これももっと上に行くための試練だからしょうがないです」と話し、「面白い試合、やりてーな!」とも叫んでいた。

 簡単に勝たせてもらえない。ある程度競技が成熟すると技術が普及し、選手の全体のレベルが上がり、なおかつトップ選手は試合を重ねるごとに敵への研究材料を多く与えることになる。下位の選手にすれば大物食いはオイシイから、徹底的に相手の弱点を研究し、逆に自分の弱点には踏み込ませないようにする。
 マッハ戦の直前の試合での元ウェルター級王者・ヨアキム・ハンセンも、環太平洋ランカーの冨樫健一郎のボクシングと柔術に持ち味を封殺され、大方の予想に反する苦戦を強いられた。前座の新人王決定トーナメントの試合でも、クラスA顔負けのハイレベルな攻防が繰り広げられ、技術の普及を感じさせられた。ルミナの試合を含め、シビアな結果の試合の多い大会となったが、青木流に言えば、「これが修斗、修斗、修斗」なのかもしれない。ルミナが「This is SHOOTO!」と叫んだハワイのイーブス・エドワーズ戦も、もう5年以上も前の出来事になる。
 

第5試合 ウェルター級 5分3R
○ヨアキム・ハンセン(ノルウェー/チーム・スカンジナビア/世界2位・欧州3位)
×冨樫健一郎 (パレストラ広島/環太平洋6位)
判定3-0 (横山30-28/菅野30-27/鈴木30-27)


柔術&アウトボクシングを前に、大砲不発

 開始早々、互いのパンチがクロスし、冨樫の右フックがヒット。少しダメージがあり、打撃戦を警戒したハンセンは、組み付いてグラウンドに持ち込む。だが、柔術茶帯の冨樫の下からのガードのプレッシャーが厳しく、攻めあぐねてブレイクがかかる。
 以降も同様の展開の繰り返し。スタンドでは冨樫のアウトボクシング、寝技では富樫の柔術が活き、ハンセンお得意の膝蹴りと伸びのあるパウンドが出せない。それでもじわじわと冨樫を痛めつけ、2Rには鼻血、3Rには左耳の出血を誘うが、粉砕パターンに持ち込めないまま終盤に。互いに体力ロスは大きかったが、終了間際に富樫がボディブローの連打でハンセンを苦しめる。惜しくも敗れたものの最後に底力を見せつけた。
 

第4試合 ライト級 5分3R
○アントニオ・カルバーリョ(カナダ/シャオ・フランコ・マーシャルアーツ/米大陸1位)
×リオン武(シューティングジム横浜/環太平洋9位)
判定2-0 (横山30-29/鈴木30-28/若林29-29)


無敗ホープ対決はリオンの惜敗

 カルバーリョが素早い左右のハイと右ローで主導権。事前の情報の少ない選手だったが、開始すぐに実力の高さを観客に印象付ける。リーチがあり、差し合いの攻防でも顔まで膝蹴りが伸びる。リオンもハイをブロックしつつ、右ストレートを当て応戦。2Rもカルバーリョのタックルを切る等、一歩も引かない緊張感あふれるファイトを繰り広げる。
 だが2R中盤からスタミナロスが目立ち始め、右ストレートをもらってマウスピースを吐き出す場面も。3Rはパウンドでカルバーリョの右まぶたを切り大出血を誘うが、ドクターストップはかからず。逆転勝利にはならなかった。
 

第3試合 ウェルター級 5分3R
○石田光洋(チームTOPS/世界4位・環太平洋1位)
×中蔵隆志(シューティングジム大阪/世界5位・環太平洋2位)
3R 1'31" TKO (レフェリーストップ:右まぶたのカット)


石田完勝。朴光哲の王座にリーチ

 石田が持ち前のレスリングで中蔵の下からの攻めを封殺。いずれのラウンドも開始早々から上になり、1Rにはバックを2度、2Rはキープこそできなかったもののマウントを奪う。3R、ハーフからパウンドを落としていると、中蔵が右まぶたから出血。ドクターチェックの時も目がふさがった状態で、レフェリーのストップがかかった。
 完勝の石田は、環太平洋王者・朴への挑戦権を事実上獲得。両者の対決の早期実現を期待したい。
 

第2試合 ライトヘビー級(新人王決定トーナメント決勝) 5分2R
○余膳正志(シューティングジム大阪)
×佐藤隆平(R-GYM)
判定2-0 (鈴木20-18/横山20-19/若林20-20)

※余膳が優勝

これでも“新人”王? ハイレベルな好勝負

 開始早々テイクダウンに成功したのは佐藤。だがパスガードのカウンターで余膳がリバーサルに成功。パスガード、マウントと優位なポジションを奪っていく。
 2Rも佐藤が先に上になり、今度はマウントまで行く。下になっても三角でチャンスを得るが、脱出されると1R同様マウントを取られてしまう。風邪のせいもあり、ややバテ気味の佐藤は果敢に三角を狙い逆転を試みるが、時間切れ。2回戦離れしたハイレベルな攻防の末、余膳が優勝をもぎ取ることに成功した。
 

第1試合 ライト級(新人王決定トーナメント準決勝) 5分2R
×中尾享太郎(シューティングジム横浜)
○西岡 裕(パレストラ千葉)
判定0-3 (菅野17-20/横山19-20/鈴木18-20)


千葉の新鋭、花のライト級新人王に前進

 1R、テイクダウンに成功したのは享太郎だが、西岡が下からの三角や腕十字でチャンスを作り攻勢。2Rもスタンドで左ジャブで主導権を握り、テイクダウンを奪った後もバックを奪い鉄槌で享太郎を痛めつけて完勝した。リーチを活かした寝技と立ち技に今後の可能性を感じさせる選手だ。
 

Last Update : 08/24 23:47

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