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(レポ&写真) [全日本キック] 4.17 後楽園:前田尚紀、MA大高を粉砕

全日本キックボクシング連盟 "NEVER GIVE UP"
2005年4月17日(日) 東京・後楽園ホール  観衆:1,810人(超満員)

  レポート:永田遼太郎(前田戦、小宮戦)&井原芳徳  写真:井原芳徳
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第4試合 58kg契約 3分5R
○前田尚紀(藤原ジム/全日本フェザー級1位)
×大高一郎(山木ジム/MA日本フェザー級王者)
2R 1'57" KO (パンチ連打)


 この日の休憩明けのリング上、IKUSAの小澤進剛代表が、6月の-60kgトーナメントに出場するTURBΦから預かってきたという手紙を読みあげた。全日本の石川直生がTURBΦに対戦要求のアピールをしているが、TURBΦは「3位の石川君に対戦する資格があるのか」「対戦を承諾する条件として、僕が勝ったら全日本フェザー級王者の山本元気との対戦を確約してほしい。全日本キックのみなさん、及びファンのみなさん、かかってこい」と、日本ではあまり見られない欧米のボクシングにも似た挑発を繰り広げた。
 これを聞きながら僕は、さすがTURBΦと彼のプロ意識に感心してしまったが、小澤氏の隣で当の石川はどのような思いで聞いていただろう。「全日本のフェザー級3位は他団体の王者よりも強いんだという事を証明したい」とこの日は言葉を残したが、さらにその思いを強くしたに違いない。
 そんな石川の思いに代わるかのように、この日は全日本フェザー級1位前田尚紀が、1月にTURBΦと熱戦を演じた大高一郎と対戦した。大高は現在、MAのフェザー級王者でありながら「まだまだ王者だからどうとか、考えられる立場なんかじゃない」と謙遜している。結果、好勝負を演じながらTURBΦに判定負けを喫した。だからと言う訳じゃないが、全日本フェザー級王者山本元気に比べまだ王者としての実績が不足している。フェザー級1位の前田とのマッチメークもその辺りにあるのではないか。ましてや前田は大高とTURBΦが激闘を繰り広げた同じ日に、J-NETWORKフェザー級王者砂田将祈をTKOで下している。石川でなくても前田とて同じ思いだったに違いない。

 その石川の言葉を前田がしっかり証明してみせた。積極的に前に出るのが信条の大高にカウンターの右を合わせ、さらに見るからに効いてきそうな左右のローを当ててペースを握る。雪国生まれで色白の大高の顔面はいつも以上に赤く染まり、左右の足は内出血で青く変色していた。王者であるはずの大高が押されランキング1位の前田に対し誰もが「強い」と感じた2R終盤、赤コーナー付近で体を入れ替え大高をコーナーに詰めると、パンチラッシュからの鮮烈な右ストレートをヒットさせ大高をマットに沈めた。
 その大高がその後、リング上に倒れ込んだまま一時は危険な状態だった事も、前田の強さをさらにかき立てた。「完勝」そう言っていいだろう。この日の大会パンフレットの大見出しにはこう書かれている『王者より1位の方が強い現実』と。前田はこの一勝を機にこれ以上ない形で山本元気への王座挑戦をアピール出来ただろう。そしてこの勝利は石川の気持ちを代弁する形にもなった。これにどうTURBΦはどう答える。キック界全体を巻き込んだフェザー級の頂点を争う戦い。かつて「黄金のフェザー」と言われたあの頃の熱気がまた戻ってきた。

第3試合 ライト級 サドンデスマッチ(3分3R・延長2R)
×凱斗亮羽(S.V.G./全日本ライト級5位)
○小宮由紀博(レグルス池袋/J-NETWORKライト級2位)
1R 3'00" TKO (ドクターストップ:肘による右頬のカット)


 J-NETWORK小宮由紀博の勢いが止まらない。昨秋の「J-FIGHT2」でグライガンワーンにTKO勝ちを収めると、今年一月には全日本のホープ村山トモキにKO勝ち。今や単なる若手選手じゃ片付けられない急成長を遂げている。彼が師と仰ぐJ-NETWORKの先輩、増田博正については「まだまだ僕なんて足元にも及ばない」と謙遜するが、全日本ライト級5位の凱斗亮羽との対戦は、その偉大なる先輩に近づくまたとないチャンス。これを生かさずにはいられない。
 対する凱斗は昨年11月に現全日本ライト級王者白鳥忍との王座決定トーナメントに破れて以来のリングとなるが、ここでつまずいてなどいられない。両選手にとっては今後の浮上を狙う意味で大きなテーマを抱えた一戦とも言えるだろう。テコンドー出身の凱斗だが変にそれを感じさせないだけの技の切れ及びパンチの破壊力を持つ。この日もオーソドックスにワンツーからローにつなぐコンビネーションでリズムを作る。対する小宮は前述したグライガンワーン戦以降、恐らく本人も自信を持っている首相撲を果敢に仕掛けていく。テコンドー出身の凱斗には効果的な攻撃とも言える。
 1ラウンド終盤、その首相撲が凱斗を捕らえた。そこから空間を作って右肘を連打し凱斗の右頬はパックリと口を開いた。ドクターチェックの後試合は再開するが、さらに首相撲で捕らえ追撃する小宮。その強さは本物だ。なんとか1ラウンドは凌ぎきった凱斗だったが、ラウンド開始を告げるゴングを聞くことはなかった。右頬の他にも左耳にも裂傷が見られ出血もひどく、試合続行不可能と見なされたからだ。
 恐るべし小宮由紀博。前回の試合後、「特に対抗戦という意識はないです」と話していたが、ランキング5位の選手がやられたとあっては全日本側も放ってはおくまい。このところ対抗戦で強さを見せるJ-NET勢。弱小団体なんてもう言わせない。


第7試合 62.5kg契約 サドンデスマッチ(3分3R・延長2R)
○小林 聡(藤原ジム/WKA世界ムエタイ・ライト級王者)
×ジョナータ・ザルボ(イタリア/プロファイティング・イモラ/WPKC世界ムエタイ・ライト級3位・WPKCイタリア同級王者)
1R 2'32" KO (3ダウン:左ボディブロー)


 小林が低い構えから気迫の右ローでじわじわとプレッシャーをかけ、コーナーに詰めての左ボディ、右ストレート等の連打でダウンを奪取。早くも戦意喪失状態のザルボからさらに右ストレート、左ボディで連続ダウンを奪い、余裕のKO勝ちをおさめた。
 勝った小林は高く両手を上げてザルボを見下ろすポーズ。その後マイクを持つことなく、さっさとリングを降りた。バックステージで小林は「面白くねぇなあ。相手から気が全然伝わって来なかったから。マイクを持って威勢のいいことを言おうとも思ったけど、空回りしそうだったんで」と不満な様子。さらに余ったエネルギーの矛先を、試合数の少ない大月晴明や、離脱した佐藤嘉洋に向け「やる気の無い奴は試合しないし、出て行きたい奴は出て行くし…。Kなんとかがナンボのもんじゃい。出てけ出てけ!俺は一人になっても全日本キックで試合をしてやるよ」と言い放った。
 最後に「まあ、一人じゃ試合はできないけど」とオチを付けたのが小林らしいが、どうやらこの日、単に勝つだけじゃなく、観客の心を揺さぶる試合をし、全日本のメインイベンターとしての誇りを示した上で、大月や嘉洋ら後輩にこのメッセージを発したかったようだ。

第6試合 66kg契約 サドンデスマッチ(3分3R・延長2R)
○白鳥 忍(高橋道場/全日本ライト級王者)
×湟川満正(AJジム/全日本ウェルター級3位)
5R 判定3-0 (和田10-8/大成10-8/豊永10-8)

4R 判定0-1 (和田10-10/大成10-10/豊永9-10)
3R 判定0-0 (和田28-29/大成29-29/豊永30-30)
※5Rに湟川がパンチで1ダウン

 ライト級(61.23kg)王者・白鳥がウェルター級(66.68kg)に近い66kg契約の試合にチャレンジしたが、動きの鈍さは隠せず。湟川に完全にペースを握らせることは無いものの、パンチを当ててもパワー差があり、湟川の動きをなかなか止めることができない。延長ラウンドに突入しても接戦が続く。5R目に白鳥がパンチラッシュでダウンを奪うことに成功し、かろうじて白星をもぎ取ったが、目標のK-1 MAX参戦はまだまだ先の話となりそうだ。

第5試合 70kg契約 サドンデスマッチ(3分3R・延長2R)
○山本優弥(大誠塾/全日本ウェルター級1位)
×ミルコ・カーン(スイス/ファイトクラブ・チューリヒ/WKNスイス・ムエタイ・ウェルター級王者)
3R 1'25" KO (3ダウン:右ハイキック)


 優弥は腰痛の影響でほとんど練習ができなかったが、いち早く大会出場メンバーに名を連ねたことに責任を感じ、出場を決意。しかしそうとはいっさい感じさせない好ファイトで観客を湧かせる。威力のあるパンチとローを当ててくるカーンに対し、優弥は序盤様子見。だがじわじわとローキックを効かせ、3Rにようやくダウンを奪うことに成功する。さらにローで2度目のダウンを奪取。最後もローでいくと思いきや、華麗な右ハイでカーンをマットに沈めた。

第2試合 ミドル級 3分3R
×白川裕規(S.V.G.)
○TATSUJI(アイアンアックス)
2R 2'36" KO (3ダウン:左ストレート)


 TATSUJIが左ボディ、左フック等、高いボクシングテクニックで攻勢。2R、左ボディを効かせての右フックでダウンを奪うと、さらにパンチの連打で2度目のダウンを奪取。最後は白川が起死回生のバックハンドを放った直後、左ストレートを合わせてKO勝ちをおさめた。5月大会からスタートするミドル級王者決定トーナメントでの活躍が期待される。

第1試合 69kg契約 3分3R
○伊藤崇文(パンクラスism)
×ジョン・ジュンヒョク(韓国/正武ジム)
1R 2'45" KO (3ダウン:パンチ連打)


 クロスカウンターによる両者ダブルノックダウンという異例の場面もあったが、伊藤がパンチの連打で攻め込み、3ダウンを奪ってキック初戦を白星で飾った。

オープニングファイト第2試合 フェザー級 3分3R
×清水英樹(月心会)
○木村敬明(レグルス池袋)
判定0-3 (27-29/27-30/27-29)

オープニングファイト第1試合 ライト級 3分3R
△濱島康大(はまっこムエタイジム)
△宮田裕司(シルバーアックス)
判定1-0 (29-29/30-29/30-30)

Last Update : 04/17 23:15

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