BoutReview
記事検索 by google
news

(レポ&写真) [全日本キック] 6.20 後楽園:佐藤嘉洋、オランダ強豪下しガオラン戦直訴

全日本キックボクシング連盟 "ALL JAPAN KICKBOXING 2003 DEAD HEAT"
2003年6月20日(金) 東京・後楽園ホール

  レポート:新小田哲  写真&第2試合以前レポ:井原芳徳  【→大会前のカード紹介記事】  [→掲示板スレッド]

メインイベント 69kg契約 3分5R
○佐藤嘉洋(名古屋J・Kファクトリー/WKA世界ムエタイ・ウェルター級王者)
×クリス・ファン・ベンローイ(オランダ/WMCインターコンチネンタル・ウェルター級王者)
判定3-0 (50-46,50-47,50-46)

※ベンローイは5R、首相撲の際に自ら倒れたとしてダウン1

 海外遠征2試合を経て、8ヶ月ぶりの国内での試合となった佐藤嘉洋の“凱旋試合”はオランダ人選手を終始圧倒しながら、倒し切るまでには至らず本人にとって課題の残る、ややほろ苦いものになった。
 対戦相手のベンローイはジュニア・ウェルターからミドルクラスで活動しており、2年前の2001年3月にアンディ・サワーに5R判定勝ちしたのを皮切りに、モハメド・オワリ(判定勝ち)やジェラルド・ママデウス(1RKO勝ち)にも勝利しているという、若干20歳ながらヨーロッパトップクラスの実績の持ち主。マニアックなところで言うと、往年のムエタイ王者ヂョームホード・ギアッアディサッグと昨年対戦、判定負けしたもののパンチで鼻の骨を折るなどして追い込んでいる。

 今回の試合でもベンローイは、1Rには身長差をものともせず力強いロングフックや鋭いワン・ツーを繰り出し、あるいは足払い気味のローキックで佐藤のバランスを崩すなどして、確かにその実力の片鱗は見せていた。
 ところが、2Rになると佐藤のローが効いてきたのか圧力に押されたのかいきなり失速、バックステップしながら時折単発のパンチを出すだけになってしまう。佐藤が左右のフックからロー、テンカオとつないで首相撲からのヒザ蹴りと彼の必勝パターンに持ち込むと、ベンローイはクリンチでロープに押し込んでこれを回避する。
 回を追うごとに佐藤がパンチやロー、ヒザで追い込む一方的な内容になっていき、3R辺りから勝敗の行方よりもいつ佐藤が倒して試合を終わらせるかに観客の興味は移っていったのだが、ガードを固めて逃げ回り、時折単発のパンチを放つばかりのベンローイを佐藤は捕らえきることが出来ない。さらにKOを意識したのかコンビネーションがぎこちなくなり、攻撃がことごとく単発で終わってしまう。最終ラウンド、逃げ腰のベンローイに苛立ちを見せる佐藤が首相撲で崩して消耗させようとすると、これをいやがったベンローイは自分からマットに倒れ込むような行為を見せ、レフェリーにダウンを宣告されてしまう。

 当然、判定は大差で佐藤の勝利となったが、リング上でマイクを握った佐藤は開口一番「すみませんでした。久しぶりの後楽園で、お客さん帰っちゃいましたけど、後楽園のスポットライトとお客さんの声援は最高です。面白くなかったけど強さは分かってもらえたと思います」とやや自虐的にやや平板だった試合内容を謝罪した。続けて「(7.20後楽園大会に参戦が決定した)ガオランと試合を組んで下さい。ガオランの相手は僕しかいないでしょう」とムエタイ3冠王にして昨年のK-1WORLD MAX準優勝者・ガオランとの対戦をアピールした。
 試合後に佐藤は「予想していたより相手がガンガン来なかった。」と語ったが、そういう「ガンガン来ない」相手に対してどう闘うかが、現時点での佐藤の課題なのではないかと思う。極論かもしれないがアグレッシブな相手であれば、自分が逃げさえしなければ観客を沸かせる試合をする事は出来るだろう。実績を見る限り、相当な実力者だったベンローイに何もさせずに勝ったのだから、佐藤の強さは相当なレベルにある事は伺える。ただ、金沢戦、清水戦もそうだったのだが、相手の光を消す事で、その日の対戦相手よりは強かったという“相対的な強さ”は伝えられても、対戦相手を問わない“絶対的な強さ”については分かり辛いものにしている気がする。今後もメインイベンターとしての登場が期待される佐藤だけに、「強さは見せられた」と満足するのではなく、より高いレベルを目指して欲しい。
 ガオラン戦は佐藤本人が希望しているのみで正式決定したわけではないが、もし実現すれば佐藤にとってもターニングポイントとなることだろう。佐藤の実力ならガオランといえど互角以上の勝負が期待できるし、そうなれば自分のスタイルにやや迷いの見える彼にとっても大きな自信となって今後進む道が見えてくるのではないか。彼が試合後語ったように、「今まで地道に根を張ってきたものが、一気に花を咲かせる」ことになるだろう。
 佐藤の戦績はこれで20戦18勝(9KO)2敗。「長旅で体調があまりよくなかった」というものの実力差は明らかだったベンローイはこれで26戦20勝(8KO)5敗1分。

セミファイナル 57kg契約 3分5R
○前田尚紀(藤原ジム/全日本フェザー級王者)
×浦林 幹(AJパブリックジム/前J-NETWORKバンタム級王者)
2R 2'39" KO (3ダウン:パンチ連打)


 3月大会でJ−NET王者増田博正に屈辱のワンパンチKO負けを喫した全日本フェザー級王者・前田尚紀が、全日本に移籍してきた前J−NETバンタム級王者・浦林に苦戦を強いられながらも一気のパンチラッシュで逆転KO勝ちを演じて見せた。
 首相撲からのヒザ蹴りを仕掛ける浦林に対し前田は強引に左右のフック、アッパーを強打。しかしあくまで密着戦に持ち込みたい浦林はしつこく首相撲からヒジ、ヒザで勝負。前田はパンチを上下に散らしながら飛びヒザなどでゆさぶるが、1R終了間際に頭が当たったのか鼻出血を見せる。これで動きの鈍くなった前田に、2R浦林がラッシュ。テンカオから首相撲に持ち込み、突き放そうとする前田にミドル、さらにワンツーからの右ストレートを当て、首相撲でコーナーへ押し込み、ヒジ、ヒザのラッシュ。このヒジで前田は左眉の辺りをカットし、2R残り1分の時点でドクターのチェックを受ける。追い詰められた前田だがここから脅威の猛反撃を開始。左右のフックで猛然とラッシュし、右→左のフックをクリーンヒットさせダウンを奪って形勢逆転に成功。なおも前田はパンチの連打でラッシュし、2度のダウンを追加してKO勝ちを収めた。
 試合後の前田はノーコメント。診察したドクターによると鼻の軟骨が骨折した可能性があるが、それほど重傷ではないという。前田はこれで17戦12勝(8KO)5敗。新天地での第1戦を勝利で飾る事は出来なかったが、その実力の一端を示した浦林、これからフェザー級戦線にどう絡んでいくのか楽しみだ。戦績はこれで14戦8勝(1KO)4敗2分。

第5試合 全日本バンタム級王座決定トーナメント・準決勝 3分5R
×YUTAKA(月心会/2位)
○藤原あらし(S.V.G./3位)
3R 1'36" KO (ヒザ蹴り)


 突然引退を表明したバンタム級王者・安川賢(S.V.G.)の王座返上により、上位ランカー4選手によって争われる王座決定トーナメントは、安川のジムの後輩で、デビュー以来無敗の快進撃を続ける藤原あらしがYUTAKAにパーフェクトな試合運びで快勝、王座決定戦へコマを進めた。
 左フックから右ミドル、さらに飛びヒザと動きのよさを見せるYUTAKA、右ストレートで藤原の左目を痛打。しかし藤原は冷静に左ミドルを連打しYUTAKAを消耗させ、2Rに入ると首相撲で面白いようにYUTAKAを転がし試合を支配する。そして3R、藤原は左ミドルから首相撲に捕らえると、ヒザ蹴りを連打。これを嫌がって背を向けるYUTAKAのボディになおもヒザを打ち込むと、たまらずYUTAKAダウン。このまま10カウント以内に立ち上がる事が出来ず、藤原が圧勝で念願のバンタム級王座に王手をかけた。藤原はこれで9戦8勝(6KO)1分と無敗記録のテープを9に伸ばしている。2年ぶりのタイトルマッチのチャンスを失ったYUTAKA、これで14戦9勝(4KO)3敗2分。

第4試合 全日本バンタム級王座決定トーナメント・準決勝 3分5R
×割澤 誠(AJパブリックジム/1位)
○平谷法之(空修会館/4位)
3R 2'50" KO (右ストレート)


 昨年の安川とのタイトルマッチで敗れて以来、11ヶ月ぶりの登場となった割澤。一回り以上年齢の離れた平谷に対し得意のスピードを生かしたフットワークからローを飛ばす。が、平谷がローの打ち終わりにカウンターのパンチを合わせる戦法で、かつそのパンチの威力が強いせいか、割澤の踏み込みが甘くなってローが効果的に使えず、最大の武器であるヒットアンドアウェイも今ひとつ。今年5月の全日本新空手軽量級で2連覇を果たした“驚異の17歳”平谷は落ち着いて割澤の動きを見極め、次第に平谷のパンチを当てる場面が増えていく。2Rに早くもパンチで主導権を握ると3R、割澤のローに左フックから右フックを強打。一瞬動きの止まった割澤にパンチでラッシュし左フックで最初のダウンを奪う。ダメージの残る割澤に容赦なく襲い掛かり、左ストレートから左右フック、右アッパー、右ストレートと畳み込むと割澤はロープ際で棒立ち、一瞬立ったまま気絶したような危険な状態に陥り、その様子を見たレフェリーが即座に試合をストップした。
 現在高校3年生の平谷はこれで6戦5勝(4KO)1敗。唯一の黒星の相手は次戦、決定戦で対戦する藤原あらし。平谷自身も藤原とのリベンジ戦を切望していた。今は1日3時間を週6日のペースで練習しているという。割澤は15戦8勝(2KO)6敗1分。それにしても、割澤といいYUTAKAといい前王者安川とタイトルマッチで激闘を繰り広げたトップランカーが相次いでKOされるのを見るにつけ、世代交代のサイクルの早さを実感せずにはいられない。

第3試合 フェザー級ランキング戦 サドンデスマッチ 3分3R(延長最大2R)
○サトルヴァシコバ(勇心館/4位)
×ラスカル・タカ(月心会/6位)
判定3-0 (30-25,30-26,29-26)
※ラスカルは1、2Rにそれぞれ左フックによるダウン1ずつあり


 試合開始早々にヴァシコバがローから右→左フックでダウンを奪う。その後ヴァシコバは必要以上に深追いせず、互いにローの交換に終始する意外と静かな展開となる。2Rも開始15秒、打ち合いから左フックでまたもラスカルダウン。ポイント的にはセーフティリードを得たヴァシコバは、必死に前進するラスカルをバックステップでかわす作戦でポイントアウト。結局そのまま試合は終了し、やや物足りない内容ながらヴァシコバが判定で勝利した。ヴァシコバはこれで8戦6勝(2KO)2敗。ラスカルは13戦6勝(4KO)6敗1分。

第2試合 ライト級ランキング戦 サドンデスマッチ 3分3R(延長最大2R)
×関 博司(名古屋J・Kファクトリー/9位)
○吉本光志(AJパブリックジム/前J-NETWORKライト級5位)
延長1R 判定0-2 (9-10,10-10,9-10)
※本戦 判定0-0 (29-29,30-30,30-30)


 ボディへの連打を何発も受ける吉本だが、全くひるむことなく受けるだけ受けきって、鋭い左ミドルと右ストレートで反撃。J-NET時代から応援団の多かった吉本に、AJパブリック勢の応援も加わり、後楽園ホールは吉本カラーに染まる。本戦は一進一退の攻防が続き、延長にもつれこむと、吉本は声援に押されるように手数で優勢。移籍初戦を白星で飾り、通算戦績10戦5勝3敗2分。ランキング入りも確実で、花のライト級戦線にもう一人面白い男が加わることになる。関は復帰後2戦2敗だが、まだ衰えてはいない。念願の白星奪取もそう遠くはないはずだ。通算戦績は14戦9勝(6KO)5敗。

第1試合 フェザー級ランキング戦 サドンデスマッチ 3分3R(延長最大2R)
○山本元気(REX JAPAN/3位)
×阿部圭祐(はまっこムエタイジム)
2R 2'20" KO (パンチ連打)


 1Rから山本が的確で素早い右ストレートとボディを何発も当て続け、2Rに右ストレートでダウンを奪取。最後はコーナーに詰めて右ストレート等のパンチを連打し阿部をマットに沈めた。
 山本は昨年9月の復帰戦から3連勝で11戦7勝(2KO)2敗2分。そろそろタイトル戦線に絡んでもおかしくはない。阿部は4連敗で8戦4勝(4KO)4敗の五分になってしまった。

フレッシュマンファイト第3試合 ウェルター級 3分3R
×丸山浩紀(名古屋JKF)
○渡邊嘉也(勇心館)
1R 1'04" KO

 渡邊は昨年新空手全日本中量級優勝者で、1月のデビュー戦に続き2連続1R1分台でのKO勝ち。丸山を担架送りにした。豪快なパンチが武器で、7月で33歳になるが今後が楽しみな選手だ。

フレッシュマンファイト第2試合 ライト級 3分3R
×桜井哲也(サンライクジム)
○梶村政綱(藤原ジム)
判定0-3 (27-30,27-30,27-30)

フレッシュマンファイト第1試合 ライト級 3分3R
○高屋敷哲明(月心会)
×笠原誠人(S.V.G.)
判定3-0 (30-27,30-28,30-28)

Last Update : 06/22

[ Back (前の画面に戻る)]



TOPPAGE | NEWS | REPORT | CALENDAR | REVIEW | XX | EXpress | BBS | POLL | TOP10 | SHOP | STAFF

Copyright(c) 1997-2003 MuscleBrain's. All right reserved
BoutReviewに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はマッスルブレインズに属します。

編集部メールアドレス: ed@boutreview.com