BoutReview
記事検索 by google
news

(レポ&写真) [パンクラス] 12.21 有明:郷野が爆弾発言。國奥×マーコート決着

パンクラス "Sammy Presents PANCRASE 2002 SPIRIT TOUR" 2002年12月21日(土) 東京・ディファ有明

  レポート&写真:井原芳徳

  【→大会前のカード紹介記事】 [→掲示板・パンクラススレッド]

第6試合 ライトヘビー級 5分3ラウンド
○郷野聡寛(パンクラスGRABAKA/10位)
×KEI山宮(パンクラスism/2位)
3R 3'49" レフェリーストップ (パンチ)

郷野、“鈴木×ライガー景気”に警鐘

 試合前から郷野は山宮に近付いてにらみ付け、胸を突き飛ばすなど気合い満点。鋭いミドルとローを放ち、山宮のパンチをかいくぐっては組み付いてコーナーに押し込むという展開を繰り返す。主導権を握りながらもなかなか決定打の出なかった郷野だが、3R終盤に右ストレートをクリーンヒット。ダウンした山宮の上からさらにパンチを浴びせた所でレフェリーが試合をストップした。
 マイクを持った郷野は、一週間前の記者会見での予告どおり、11月の横浜文体大会への不満を爆発させる。会見では「今は言えない」と秘密にしていたその標的は、メインの鈴木みのると獣神サンダー・ライガーの一戦だった。「あれがメインで客が入って一番おいしいところ持って行かれて何が10周年だよ」「全盛期過ぎた年寄りと総合初心者との試合がメインなんて俺は認めたくない」「純粋に格闘技やってる選手として、あんな試合を上回ることができなかった自分が悔しくて情けなくて」「今のパンクラスは馬鹿ばっかりだ!」と痛烈な言葉が飛び出す。

 だが郷野の目的は鈴木 vs. ライガー自体を非難することではない。実力主義だけでは客を呼べないパンクラスの現状に警鐘を鳴らすことが、このアピールの第一の目的だった。たまたまアピールの時は背後にGRABAKAのメンバーが並んでいたが、郷野はこの件について誰にも相談していない。GRABAKAの中でも共通の意識があったかもしれないが、郷野はあくまでも一個人・一選手としてGRABAKAを含めたパンクラス全体に対して警鐘を発した。あるいは本人は口にしていないが格闘技業界全体に対する警鐘とも受け取ることができるかもしれない。さらにこのアピールは郷野自身のファイトに対する警鐘でもある。郷野は「自分で茨の道を作ってしまった」と語ったが、口だけでなく、現実に鈴木 vs. ライガーを越える客を呼べる試合ができないことには、目標は達成されない。
 パンクラスのスローガン「ハイブリッド・レスリング」のハイブリッドとは「雑種」という意味である。パンクラス旗揚げ10周年記念イヤーを直前に、本来外部の血の郷野が、パンクラスの“ism”に改めて疑問を投げかけた意義は大きい。2003年のパンクラスマットで、各選手がどういう返答を見せてくれるかが楽しみである。

◆郷野のリング上でのマイクアピール
「この頃テレビでばっかり喋っているんで、今日はリング上でご清聴いただきたいと思います。前の横浜のメイン(鈴木×ライガー)、何だあれ? 俺はあの時、純粋に格闘技やってる選手として、あんな試合を上回ることができなかった自分が悔しくて情けなくて。全然喜ぶ気になれなかったのに、パンクラスのスタッフ、選手、ヘラヘラ笑いやがって、バカかお前ら? あれがメインで客が入って一番おいしいところ持って行かれて、何が10周年だよ。この1年怪我ばかりして休んでた俺が言うのは間違ってる。けど、言ってることは間違ってないとと信じてるし、これで周りから非難されようと、パンクラスのリングで使われなくなろうと、俺は自分の考えは曲げない。あんな全盛期過ぎた年寄りと総合格闘技初心者との試合がメインなんて俺は認めたくない。だから今日の俺もクビ覚悟で言うために頑張って、でも途中までしょっぱい試合しちゃって。それでも、こういう気持ち持ってるだけマシだと思う。今のパンクラスは馬鹿ばっかりだ!」

◆郷野のバックステージでの共同インタビュー
「まずやっぱ、気に入らなかったのは(鈴木×ライガーを)みんな喜んでいたことで。最近K-1でボブ・サップが活躍して『K-1の危機』とか言われてるけど、あれはホーストって立派な選手が格闘技初めて間もないデカい選手にやられている、高いレベルの危機だったのに、こないだのメインは、総合格闘技としてはっきり言ってレベルが低いじゃないですか? それで一番客が入って喜んで。俺から見ればパンクラスの方が沈没しかかった船みたいにヤバいんじゃないかって。ismの若い奴は『面白くない』と思ってても言えないと思いますけど、一番言えるのは俺じゃないですか? キャラ的にも(笑)。社長もまたああいう試合を組むとか言って。そういうのを言わせてる時点でなんか、“正規軍”(注:ism、GRABAKAに関わらずランキングの最前線で戦っている選手全てのことを指していると思われる)って言うんですかね?(そういう立場の)俺らがリングの中で強さを競うだけの勝負で客が呼べていないというのが如実に現れているんで、その辺でちょっと違うんじゃないかということがどうしても言いたくて。1本かKOで勝てたら言おうと思ってました。
(波紋を呼ぶと思うが?)呼ばせるために言ったんで。それでみんながいい試合するように頑張ればいいんじゃないですかね? 別にクビになっても構わないんで。
(パンクラスマットを純粋に強さを競う舞台にしたい?)だって、鈴木さん、船木さんが作った頃のパンクラスって、従来のプロレスのような“格”とかがない、強い者が上に行けるというのをやりたかったはずなんですよ。なのに歳取って来たらそれを忘れてるんじゃないかってのがあって。『強い奴が上に行く』という理念なら、あれがメインなはずないし。別にやってもいいと思うんですけど、メインでやることじゃないと思うんですよ。(鈴木は)俺が仕切るとか言ってるし。でも俺一人では仕切る力はないし、客沸かせられないし、いつも一本極められる試合ばかりできるわけじゃないんで、気がついた人間が集まってその仕切りを阻止すればいいかなと。
(そのことについて尾崎社長や鈴木選手と話すことは?)ないです。僕は一石を投じただけだと思っているんで。議論するつもりもないし、クビ切るなら切ってもらって構わないです。
(パンクラスに上がる気が無くなったというわけでは?)ではないです。まあ、パンクラス以外も団体はあるし、パンクラスで嫌われてもそこで使ってくれるかもしれないし。使ってもらえなければ、この1年でだいぶ脳にダメージもらってるんで、ズルズル続けて廃人になるよりは、(引退する)いいきっかけになるかなってくらいに割り切って。
(今回の話を菊田選手や誰かに相談した?)してないです。(あくまで自分の考えだけ?)はい。でも迷惑かけたくなかったんで、本当はGRABAKAのみんなに先に帰ってもらってから言おうと思ってたけど、みんなに言うの忘れちゃって(笑)。いやー悪いことしたなって。(菊田選手は何か言ってました?)僕が『客が引いてたね〜』と言ったら『まあ、大丈夫だよ』って、そんな感じでした。(逆に拍手や歓声も多かったのでは?)お客さんの反応は考えなかったですけどね。“俺が言ってること”自体は間違ってないですよ。“俺が”言うのは間違ってるかもしれないけどね(笑)。
(この発言がパンクラスの選手の発奮材料になれば?)いいんじゃないですかね。実際、今日山宮が意気込んで来てくれてうれしい部分もあったし。俺と戦いたいと思ってくれることや、発奮材料になってくれたことは、『俺はここにいるんだ。生きてるんだ』という気持ちになれますし。
(この発言で発奮して欲しい選手は?)それはやっぱ近藤が一番強いから近藤に。こんな時まで“不動心”でいるなよな、みたいな。でも渋谷だって、横浜であいつアルメイダに負けて、ライガー戦やってる時に見に行かないで控え室で悔しがって泣いてたんですよ。それ見て『たぶん渋谷はあのメインを面白くないと思ってるんだろうな』と思ったんで。(若い選手では?)名前が浮かんで来ないですね。近藤と渋谷ですね。(その二人相手ならいい試合ができる?)わかんないですけどね。純粋な格闘技の強さの部分だけでプロレスラー絡みのカードを超えられるかと言われれば厳しいと思いますよ。だからといって(鈴木が勝って)両手を上げて喜んでいる場合ではないと思いますけどね。
何よりこないだのメイン見ててすげえ悔しくて。情けなくて。ああいうカードじゃないとお客さん呼べないというのが。ライガーが強くなってメインはるというんならいいんですよ。
(来年の展望は?)今日、大口を叩いた分、見せないといけないんで。自分で茨の道を作ってしまったなと(笑)。」


◆鈴木みのる「(郷野選手のマイクアピールは聞きましたか?)聞きました。(率直な感想は?)答えるんですか? まあ、『全盛期を過ぎた年寄り』なんでしょうがないんで。がんばりますよ。今、あんまり言いたくないですよ。(来年どっちが仕切るかということで間接的にも戦いになると思いますけど?)どうなんですかね?(影響は?)あんまりそこまで考えてないんで。僕とライガーの試合は何らかの形で影響があると思ってたので、その一つが郷野で、その一つが入場の時の國奥の顔だったりとか。これ、と僕が口で言うことではないんで。…面白くねえ答えですけどね(苦笑)。(いろいろな思いが混ざっている?)それとも違いますね。僕が言うことじゃないんで。もういいですか?」


◆尾崎社長「(郷野発言について)うーん、いいと思いますよ。口は悪いけど、本人もわざと悪く言ってるところもあるし。自己主張すべきだと思うし、パンクラスの中がもっと盛り上がるためにはああいうのがあってもいいと思います。クビにはしません(笑)。これは船木も言ってましたけど、横浜の興行のセミまでとメインの後がガラッと違って、それがいいのか悪いのかという。お客さんメインに食われましたよね? 郷野はその悔しさと、自分達はもうちょっと違う物がやりたいんだという気持ちと、その2つが合わさってああいう発言になったと思うんで。口は悪いけど(笑)。
(郷野から前からそういう話はあった?)いや。郷野に限らずね、うちの選手ってみんな突然なんですよ。船木誠勝からそうでしたから(笑)。ただ、横浜でお客さんがメインに集中したというので悔しい思いをしているのは、GRABAKAに限らずismの選手もだと思うのね。そこで『何でメインがあんなに湧いたか?お客さんをあんなに惹き付けたか?』ということも(選手達に)考えて欲しいなあと思いますね。結局プロですからね。二通りのパンクラスがあれば、どっちがお客さんに受けるかが勝負だと思いますからね。競えばいいと思います。
 ちょっと僕の中にももう1つ面白いアイディアが出て来たかな? 来年のためにいくつか考えていた玉があったんですけど、もう一つ違う玉ができたかなと思いますね。良くも悪くもいつも郷野は何か投げかけてくれるから、クビにはできないですね(笑)。
(郷野と直接話し合いを設ける?)いや、言いたいことわかりますもん(笑)。もう郷野は試合で見せるしかないですからね。郷野が言ってるようなマッチメークもしたいし、鈴木が言うようなマッチメークもしたい。面白いんじゃないですかね? だってパンクラスが総合格闘技とプロレスを両方名乗ってる意味がここにあるじゃないですか。
(今年を総括すると?)2000年に船木引退という大きな節目があって、正直(収益的に)辛かったんですね、今年の頭まで。でも面白いパンクラスになるきっかけが今年あったなあと思います。パンクラスは一種類じゃなくていいと思うんですよ。近藤とか郷野とか菊田が目指す物があれば、鈴木とか、もしかしたら美濃輪が目指すものがあったりとか。前の大会が終って『来年は玉手箱にしたい』と言いましたけど、『いい玉手箱』ができますよ。」



メインイベント ミドル級タイトルマッチ 5分3ラウンド
×國奥麒樹真(パンクラスism/王者)
○ネイサン・マーコート(アメリカ/コロラド・スターズ/3位)
3R 4'36" KO (膝蹴り)
※マーコートが新王者に

 マーコートのパンチに合わせて國奥が素早いタックルでテイクダウンに成功すると、マーコートは國奥をギロチンでつかまえ、國奥はそれを外すという、序盤からスリリングな展開となる。1R終盤、マーコートのストレートで一瞬國奥の膝が沈むが、なんとか終了まで耐えきる。
 2、3Rもスタンドでのカウンターの打ち合いと、コーナーかグラウンドでの膠着が繰り返される。試合の緊張感は途切れなかったものの、このまま今回の試合も判定決着だろうと多くの観衆はタカを括っていたかもしれない。だが残り1分、マーコートが残りの力を振り絞るようなストレートとミドルで攻め、最後は國奥のガードが空いたところに飛び膝蹴りが吸い込まれるようにクリーンヒット。國奥は大の字に倒れ、4度目の対決にしてついに完全決着がついた。

セミファイナル ミドル級王座次期挑戦者決定戦 5分3ラウンド
×クリス・ライトル(アメリカ/I.F.アカデミー/1位)
○竹内 出(SKアブソリュート/2位)
判定0-2 (29-29,28-30,28-29)
※竹内がマーコートへの挑戦権を獲得

 1Rはライトルがジャーマン気味の投げを放ち、バックマウントからスリーパーを狙うなど優勢に試合を進めたが、2R・3Rは竹内が的確なテイクダウンとポジショニングで優位なポジションをキープ。ポイント僅差ながらもタイトル挑戦権をもぎ取った。

第5試合 ヘビー級(ノンタイトル戦) 5分2ラウンド
×高橋義生(パンクラスism/王者)
○小澤 強(禅道会)
判定0-3 (19-20,19-20,19-20)

 高橋が重いパンチで小澤をひるませ、前方からギロチンの格好で豪快に組みついてテイクダウン。高橋が余裕の勝利かと思われたが、良かったのはここまで。ギロチンで極めきれずサイドに移行したところで小澤にひっくり返され、背後からパンチの連打を浴びる。1R終盤には逆にカウンターパンチを浴びダウン気味に倒れ、ギロチンを狙われるという劣勢に。
 2Rは互いにカウンターパンチを当てるもののその先の攻め手に欠き、結局1Rに見事形勢を逆転してみせた小澤が勝利。ヘビー級王者から金星を奪うのに成功したが、試合中に記憶が飛んでいたことが発覚。共同インタビューの後、救急車で病院に運ばれていった。

第4試合 ライトヘビー級 5分2ラウンド
○近藤有己(パンクラスism/1位)
×栗原 強(チームRoken)
1R 4'49" ギブアップ (チョークスリーパー)

 序盤から栗原がスープレックス気味の投げを連発するなど飛ばしまくるが、近藤は余裕の表情で受けきる。テイクダウンに成功すると、ハーフガードから的確で重い掌底とパンチを振り落とす。そしてバックを取りスリーパーを狙うが、栗原がしばらくディフェンスすると、マウントに戻しパンチで栗原を弱らせて、再びバックを取りスリーパー。近藤が横綱相撲と呼べる内容で復帰戦を飾った。

第3試合 無差別級 5分2ラウンド
×謙吾(パンクラスism/10位)
○石井 淳(超人クラブ)
判定0-3 (19-20,19-20,18-20)

 両選手の固定ファンの応援合戦で開始前から盛り上がりを見せたが、試合も派手なパンチ合戦となり、会場全体を巻き込んでヒートアップ。1R後半には、体格に勝る石井が謙吾を豪快に投げ、マウントパンチを浴びせる一方的な展開に。2Rも打ち合いが続いたが、両者スタミナ切れを見せる。結局パンクラス初参戦の石井が判定勝ち。連敗の謙吾はついに無差別級ランキングの圏外に落ちてしまった。

第2試合 ウェルター級 5分2ラウンド
○アライケンジ(パンクラスism)
×熊谷真尚(禅道会)
判定3-0 (20-17,20-18,20-18)

 10月の後楽園大会でベストバウトと呼べる試合を繰り広げたアライが、今回も爆発。ゴングと同時に飛び膝蹴りで奇襲を仕掛け、バックを取る。熊谷のディフェンスに攻め手を欠いたが、スタンドに戻るとパンチ、ハイキック、フロントスープレックスと多彩な攻めで観衆を魅了する。2Rの足関節の取り合いでも優位を保ち、禅道会の実力者から嬉しい勝ち星を奪った。

第1試合 ライト級 5分2ラウンド
○大場裕司(P'sLAB東京)
×西野 聡(和術慧舟會東京本部)
判定3-0 (20-19,20-19,20-19)

 大場がスタンドの打撃でプレッシャーをかけ続け、グラウンドでも上から的確にパンチを落とし続け勝利。西野は2R残り1分に浴びせ蹴りを放つが逆転できず。

パンクラスゲート フェザー級 5分2ラウンド
×小平 亮(P'sLAB東京)
○梅木繁之(SKアブソリュート)
1R 1'29" レフェリーストップ (チキンウィングアームロック)

Last Update : 01/22

[ Back (前の画面に戻る)]



TOPPAGE | NEWS | REPORT | CALENDAR | REVIEW | XX | EXpress | BBS | POLL | TOP10 | SHOP | STAFF

Copyright(c) 1997-2003 MuscleBrain's. All right reserved
BoutReviewに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はマッスルブレインズに属します。

編集部メールアドレス: ed@boutreview.com