[File 0003] 大宮司進「がんばろー、の法則」
−−約1年ぶりの復帰戦が、ニューヨークの「Combat at The Capitale」という大会でということになります。海外の試合は初めてなんですよね? 大宮司「いや、俺デビュー戦がタイなんですよ。ラジャダムナンで。19歳の頃ですね」
−−どうしてラジャだったんですか? 大宮司「まだあの頃は正道会館所属だったんで、軽い階級のキックの試合のチャンスがあんまり無かったんですよ。当時アンディ(・フグ)のトレーナーだったタイ人のゴーンに紹介されて」
−−タイ以外で海外の試合は? 大宮司「初めてです」
−−復帰戦の場所がニューヨークと聞いた時どう思いました? 大宮司「ニューヨーク自体は遊びに1回行ったことあるんですよ。アメリカで試合をやってみたいというのもありましたけど、ちょうど復帰戦をやりたいなあと思ってた時期に重なったんで、やってみようと思いました」
−−ちょっと変わったシチュエーションの試合になりますけど、気をつけることは? 大宮司「ニューヨーク自体、結構寒いんで、防寒をしっかりして。あとはアウェーなんで、判定まで行かないで、倒してKO勝ちするつもりで行きます」
−−ルールが2分5R、肘無し、顔面膝無しと、日本式とは少し違いますが? 大宮司「2分自体は問題ないし、肘も無いほうがいいんで。顔面膝でダウンを奪ったことはあっても、KO勝ちしたことは無いんで、問題ないですね」
−−相手の情報とか、会場の雰囲気とかの映像は? 大宮司「相手の試合のビデオは見せてもらって。ちょっと自分より大きくて、パンチの選手というイメージですね。ローはカットしないんで、ローキックかな」
−−アメリカ人はローが苦手な選手が多いですね。 大宮司「1年ぶりの試合なんで、とりあえずは動けるかが不安もちょっとあるんですけど」
−−練習の方は? 大宮司「順調ですね。モチベーションも戻ったし。去年の1月の試合(MAキック・武藤孝之戦)が終わってから、やりたくねえなって思って休んでたけど、それも戻って」
−−引退も考えていたそうですが、どうしてモチベーションが下がっていたのでしょう? 大宮司「去年の試合の前から『次負けたら辞めよう』と思ってたんですよ。それだけ気持ちを賭けてやってたというのもあったんですけど、これは気持ちが続かねえなぁ、ってのがあって」
−−武藤戦は3R肘で切られてTKO負けに終わってしまいましたね。負けて辞めるのと、勝って辞めるのとは気持ちとしては違うと思いますが? 大宮司「でも、去年休んでみて思ったんですけど、たぶん他の選手でもみんな、勝っても負けても、『これで辞めだな』というスッキリした最後ってなかなか無いと思うんですよね。でもまあ、またやりたくなってきて、どれくらい続くかわかんないですけど、『期間限定』じゃないですけど、やりたいときにはやっておこうかな、って」
−−1年前の武藤選手の試合の前から、負けた場合のこととかを考えていたんですか? 大宮司「武藤戦より前の、一昨年(2003年)の全日本キックのライト級トーナメントの大月戦で負けて、それぐらいからですね」
−−武藤選手に負けてからは、ぜんぜん体は動かしていなかったんですか? 大宮司「魔裟斗君の練習に付き合ったりとか、そこそこはやってましたけど。体動かすの自体は好きなんで。たぶん引退しても動かしたりとはしてるんで。ただちゃんとしたトレーニングをし始めたのは、ニューヨークの試合が決まった年末からですね」
−−暮れは魔裟斗選手の大みそかの試合もあって、『仮想KID』としてスパーリングパートナーもされていましたね。 大宮司「あれはあれでサウスポーでやってみて、色々気がつくことがあって」
−−練習を再開してみたことで色々わかったこととかは? 大宮司「再開してというより、辞めて一回格闘家じゃ無くなって、周りから見てわかったことの方が多いですね」
−−どういうことですか? 大宮司「そうですね。たとえば色々自分で決めつけちゃってた部分があって。『次負けたら辞める』って考え自体も、そういうものと決めつけちゃって自分でダメな方向に持って行ってしまったら、それで終わりじゃないですか。でも、挑戦すれば可能性なんていくらでもあるんですよ、絶対。俺はダメだと決めつけちゃって、ダメにしちゃってるのは自分だなって。全部自分次第だなってことに気づきましたね」
−−それは何か人の話とか映画とか音楽とかから影響を受けて? 大宮司「結構、本を読んだりしますね」
−−どういう本ですか? 大宮司「休んでる時に読んでたのは、『「原因」と「結果」の法則』っていう本ですね(ジェームズ・アレン著:サンマーク出版)。去年結構売れた本で。今言ったようなこともその本に書いていたことですけど、例えば自分が会社の上司だとして、『部下が全然使えない』『全部部下のせいだ』と愚痴をこぼすけど、実は自分さえ優れていればそれを良くすることもできる、とか。他人のせいにしがちだけど、本当は全部自分次第で、自分が変われば周りも変わり、環境というのは周りが作り出しているんじゃなくて、全部自分が作り出しているんだという考え方ですね」
−−他に影響を受けたものは? 大宮司「いっぱいあります。魔裟斗君の試合だったり、いろんな人の試合だったり。試合じゃなくても絶えずいろんな所から影響は受けてますね」
−−魔裟斗選手も引退のことを口にしますが、彼の考え方で影響を受ける部分や共感する部分とかはありますか? 大宮司「そうですね。自分へのプレッシャーの掛け方とかですね。ただ、一つ言えるのは、魔裟斗君にしかできないことを彼はやっているし、俺は彼じゃないし、俺は俺でしかないから。俺にしかできないことを俺はやっていくというのが一番大事だと思いますね。さっきも言いましたけど、結局全部自分次第ですね」
−−人それぞれですよね。立場も違いますし、生まれ育ってきた背景も違いますから。そして、今回ニューヨークで復帰してから先のことですけど、さっきは『期間限定』という話もありましたが?
大宮司「まあ別に、気持ちがノらなかったらやらないし、自分がやりたい時にやるというぐらいの思いじゃないとダメかなと思いますね。ただ、今年はたくさん試合してみようかな、と思ってますね。あまり重く考えず」
−−1年休んだことで吹っ切れた? 大宮司「そうですね。余計な事を考えなくなりました。がんばろー、って感じですね(笑)」
−−簡単に言えばそれに尽きると(笑) 大宮司「ほんと、がんばろー、って感じですよ(笑)。それだけですよ。そんなドラマティックなもんじゃないですよ。やりたいからやろう、って」
−−今年たくさん試合をしたいという話ですが、ウルフレボリューションもありますし、あと、IKUSAの-60kgのグランプリにも興味はありますか? 大宮司「そうですね。やれるんだったらやってみたいですね」
−−あと戦いたい選手とかは? 大宮司「今はとりあえず復帰してみて、一個一個クリアして、今の時点で誰とやりたいどうこうというのは無いですね」
−−体重的には? 大宮司「ちょっと増えたぐらいで。60か61ですね」
−−全日本キックのトーナメントの時は、正直ちょっと軽いかな、という印象がありましたが。 大宮司「下半身が凄く太いんですよ。トランクスで太ももは隠れてるから、見た目的には人より凄く小さく見えるんですけど。上半身の力は強いほうじゃないんですけど、下半身の踏み込みが武器なんで」
−−昔からそういう長所の認識はありました? 大宮司「いや、ぜんぜんしてなかったです。それも辞めてみてそうだなとわかって」
−−単純に誰と戦うとか以外、復帰して何かやりたいことはありますか? 大宮司「やるからにはやっぱり、自分たちの階級の戦いをK-1みたいな大きな舞台にしたいですね。この階級・この体重の日本人がやっぱり一番多いですから、人気は出ると思うんですよ。そういう舞台を後の世代のために作り上げて、名を残してから辞められたら最高ですね」◆◆◆
聞き手:井原芳徳:2005年1月24日(月)昼、東京・代官山にて 写真:井原芳徳、井田英登 ※大宮司選手が復帰戦を行うニューヨークの「Combat at The Capitale」の詳細はこちら
Last Update : 02/04 14:16
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