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'99 フリー世界選手権大特集
トルコ大遠足日記


第五弾・川合達夫、ベスト8確定


 観客でいっぱいの会場

■地獄から天国へ

▼バイキング形式の朝食をとる食堂で、初めて日本人観光客の団体と遭遇。アンカラで一泊して朝食後すぐにバスに乗り、カッパドキア方面へ観光に行くのだそうだ。このイチュカーレというホテルは、日本人ツアー客がよく利用するホテルらしい。昨夜のネガティブな気持ちをまだ引きずっているために、日本語で何か尋ねられても景気の好いことが言えない。こちらの気分を反映してか、アンカラの今日の天気は、昨日までの暑さが嘘のように朝から雨降り、そして寒い。

▼日本チーム最後ののぞみ、川合の予選リーグ三回戦。ここでフォール勝ちをすれば、決勝トーナメントへ進める。うつろな目でカメラのファインダーから川合の試合をのぞく。低い姿勢からの速いタックル、牛殺しでフォールへ。首の皮一枚が繋がったぞ(^-^)。やったぁ!と思って川合やコーチ陣に「おめでとうございます」と声をかけるが、みんな心配そうな顔。同じフォール勝ちで予選リーグの勝ち点が並んだ場合、その試合内容で順位を決められるらしいのだが、1分ちょっとでフォールを決めた川合は、テクニカルポイントが少ないから不利かもしれないというのだ。

川合のフォール
▼「変なルールですよねえ。5分過ぎのフォールより、早くフォールを取りに行くことの方が評価されるべきですよねえ。」プレスルームの入り口でT新聞のTさんに思わず愚痴。学生時代レスリングをやっていたTさんも、それに異論はないみたい。どうなるんだか、とやきもきしていたところ、決勝トーナメント進出が決まったらしいとスタンドにいるコーチ陣の動きで察知する。

▼なんでスタンドの日本チームの動きから察知しなくちゃならないのかといえば、オンタイムのリザルトはプレスルームにはまわってこないから。それでも大会は進行しているわけで、じゃあ即時の進行はどうやって回しているのかといえば、会場の一階にあるアップ場に手書きの進行表があって、それが随時更新されているらしい。そこは、プレスパスではいれてもらえないけど、レスラーとかその関係者のパスならOK。

▼川合の決勝トーナメント一回戦。相手はコートジボアールの選手。コートジボアール、て地理の時間にコーヒーの産地として習ったところだっけ?なんだけど、この選手、実は7月にフリーチームが遠征したカナダカップにはフランスの所属で出場していたとか。川合は怪我をしていたのでその遠征には行かず、代わりに横山武典(国士舘大助手)が出場、勝利している。じゃあ川合なら楽勝じゃない、と言ったら「それでも決勝出てくるし、さっきの試合けっこう良かったんだよね。」と安易に楽観しないようにと釘をさされる。

川合のタックル▼いざ川合の決勝トーナメント一回戦。川合が得意とする低い姿勢の中間距離からタン!と入る高速のタックル、アンクル、そして、腰が痛いし外人だとかからないから、と敬遠していたローリングも。するすると勝利。やったぁ!思わず頬が緩む。あんまりマット脇でぎゃあぎゃあ言っていたせいか?ジャッジに「おめでと!」てな具合にぽんと肩を叩かれる。どこの国の取材者を見ても、こんな分かりやすい人間はいないさ(^-^;


■遅刻魔その2と雨漏り

勝ち名乗りを受ける川合▼ベスト8が一人出たことだけでもう上機嫌。大会前だったら「え〜?たったひとりぃ?」と不機嫌だったかもしれないが、昨日の負け負け日本チームの様子から落ち込んでいたところだったので砂漠で出会ったオアシスみたいに嬉しい。うかれぽんちな状態のため、結果をファックスして、近所の売店でとても甘そうなケーキをいくつか買ってから選手の宿舎へ。試合が終わっている小幡と和田のコメントをもらいに。昨夜、明日のお昼に、と約束した(はず)の和田がいないので、小幡から。

▼甘党で、ホテルのレストランで出てくる大きすぎるプリンも「うまいよ。」と平らげる小幡にケーキのお土産。ご飯を炊くのを待ちながら「今度の国体は東京都の監督で行くんですよ。」とすでに指導側にも回り始めている話を聞く。そこに買い物から帰ってきた石嶋が戦利品を見せに登場。スポーツショップで35ドルで買ったとダウンを着てみせてくれる。和田も一緒だったかと聞けば「小柴とご飯食べに行っちゃったよ。」なんですってぇ?お昼にコメントもらう約束だったのに〜。あと一時間は帰ってこないじゃん。とがっかりすると「和田が憶えてるわけないだろ?」と小幡。ええ、ちょっと予感はしてたんですけどね。(^-^;

▼待ち伏せしないと、いつ捕まえられるか分からないので、小幡と石嶋がカレーを食べるのを横目に待機。小幡と石嶋がにんにくをたっぷり入れたカレーを食べ終わったころにようやく和田と小柴が戻ってくる。さすがに腹が立っていたので、忘れてたでしょ、と詰ると「いや、小柴がどうしても、ていうから。」「え?オレのせい?」なんなの、あんたたちは!小学生かい!

▼とりあえず一通りコメントをもらう。もっと意地悪なことを聞いてやろうかと企んでいたけど、寒気がし始め、具合が悪くなってきて頓挫。コメント後、ご飯を食べる前にスポーツショップで買った戦利品を、石嶋と同じようにさっそく包みを開いて皆に見せる和田。しかし、「**も持ってたよな」「**も同じの着てなかったか?」と決して誉めてやろうとしない小柴と矢山。「いい色だろ?」といくら和田が言っても効果なし。しまいには「**で揃えてんだよ。」と開き直る和田。

▼フリーチームには3人のお父さんがいる。インタビューで子供とのツーショットを披露している小柴、計量会場で写真を見せてくれた田南部、そしてもう一人は矢山。矢山もしっかり子供の写真を持ってきている。どこかのプールへ遊びに行ったときの写真を2枚重ねて裏表にし、パウチに。浮き輪につかまっているその子、めがくりっくりしててかわいー。女の子かと聞けば「男の子。」との返事。名前は「青空」とかいて「そら」と読む。その写真にうつっている子供の手首の括れをさして「輪ゴム輪ゴム」と喜ぶ小柴。どこから見ても健康優良児な小柴家のご長男、亮太君。いまは10キロあるそうで、手首足首の関節部分が埋まっていて輪ゴムを巻いているようになっているとか。「歩き始めると痩せるよ」とあまり心配せずとも大丈夫だとお父さんとしては1年先輩の矢山からアドバイス。ちなみに、小柴亮太君の生年月日は1999年4月30日です。

雨漏り防止のビニールシートをかけている会場▼「あれ、屋根直してるよ。雨漏り防ぐのに、屋根にビニールシートしいてるよ。写真撮らなきゃ。」とベランダに出ていた和田から言われる。13階にあるその部屋のベランダから大会会場の建物を見ると、本当に屋根にビニールシートをかぶせている。午前中、マット脇で川合の写真を撮りながら、頭に冷たいものがあたるなあ、雨漏りしてるよ、と思っていたら、こんな応急措置をしていた。

▼3位決定戦と決勝の順位を、ビール一杯を賭けて和田と小柴で予想を始める。ほとんどの階級が二人とも同じ予想になってしまい、これでは賭けにならない。最後の130kg級を二人ともロシアと予想した後、一生懸命自分と違う予想に変えさせようとする小柴。「アメリカすごいぞぉ。あのタックル、(川合)達夫と同じ。」などと扇動する小柴。尻馬に乗って、確かにあれはすごい、一回戦の対戦相手が吹っ飛ばされて担架で運ばれていたと私も相づちを打つ。「う〜〜ん。」と悩む和田。しかしその直後に「でもタックルだけだけどね。」と付け加えたところ「やっぱりシュミリン(ロシア)のままでいいや。」と変更を思い直す。余計な事言っちゃだめだよぉ、という顔でこちらを見る小柴。それでもアメリカいけると思うよ、と重ねて力説したところ、130kgだけ私も賭けに参加することに。(^-^;



 

さらに続く… サイキエフ vs レイポルドに魅了!go

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レポート&写真:横森綾