特集記事

'99 フリー世界選手権大特集
トルコ大遠足日記


第四弾・大会二日目、どうした!? 日本チーム


■親日家のグルジアコーチと味噌ラーメン

▼ホテルで朝食を摂っていたら、グルジアチームのコーチに食堂で「おはようございます。」と日本語で話し掛けられる。日本人だと確認されると、今度は英語で話しかけられる。ロシア語を少し話せると言ったら、今度はロシア語に。日本に数回来たことがあるという彼は、前田日明とは友達で、藤原喜明を師匠と慕っいてるそうだ。「今日はそこの選手が日本の和田と試合だよ。」とグルジアの69kg級の選手を紹介される。強そーじゃないか。(^-^;

▼会場へ移動するバスへ乗る前に、ホテルのフロントでハガキを出そうとすると「そういうサービスないんですよ。切手もないし。」といわれる。え〜?!部屋のサービス案内には、切手はあるようなこと書いてあったけどなあ。ちぇっ。フロント係りのにーちゃんに「アンカラでこんな風景は見たことが無い。」と絵葉書を見て言われる。でも、このハガキ、「ANKARA」てかいてあるんだけど?

旗
▼会場に到着してプレスセンターで進行表を見ると、和田の第一試合の相手がなぜか台湾に変更されている。どうなってるの?とうろうろ。スタンドでコーチと組み合わせ表を見ている選手たちも神妙な顔。なんだか緊張してるなあ。今日も写真とるからよろしく、と挨拶してプレスセンターへ行けばまた組み合わせが変更。やっぱり和田の第一試合はグルジアだった。今日は一番試合数が多い日。長丁場になりそう。

▼そして朝から日本チームは負け負けの試合が続く。(;_;)田南部は競り負け、矢山は一度は勝ったのにプロテストでひっくり返される。和田もギクシャクしたまま負けちゃったし。なんだか疲れてきちゃった。プレスルームのサービスが、コーヒーとコーラだけでなくクッキーなどのお茶菓子も出るようになっているのだけれど食べる気にもなれない。

石嶋ピンチ田南部 対ブルガリア戦
▼昼食後、矢山のプロテストについて高田強化委員長にホテルの部屋で話をきく。「プロテストのプロテストは出来ないからね。」しゃがんでインスタントの味噌ラーメンをすする高田さん。アテネ(ギリシャ)で9月末にやっていたグレコの世界選手権からずーっと日本に帰らず遠征しっぱなし。「あ〜あ、日本に帰れないよ。」とぼやく高田いいんちょ。私もなんと言っていいのか分からない。一番キツいのは矢山本人なんだろうなあ。今夜コメントをとることになるだろうけど、喋ってもらえるだろうか?

■遅刻魔と日本からの電話

▼試合が終了した小柴と小菅のコメントをとるために、試合開始30分前に会場で待ち合わせる。が、案の定来ない。15分後れで到着。「バッチリ時間通り」と開き直って登場する小柴。シリアチームのコーチも一緒。この人、元自衛隊体育学校所属で、現在は青年海外協力隊の派遣でシリアにいる。もちろん日本人。シリアは遠征のお金を工面するのが難しく、トルコへもバスでトコトコやってきたそうだ。そりゃ、陸続きだからやってこれるけどいったい何時間かかったんだろう?試合前の客席で小柴のコメントを何とかとり終え、小菅のコメントもとりたかったのだが、タイムアップ。試合に備えてアップする選手のパートナーとして駆り出されてしまったのだ。小菅のコメントは夜に宿舎で聞くことにする。

▼マット脇へ移動して撮影準備に取り掛かっていると、会場係のおっかない顔をしたおじさんがにっこり笑いながらピンバッジをくれた。たぶんトルコのレスリング協会の人なんだろう。ありがとう、と受け取ってよく見ると、フリースタイル世界選手権の大会記念のピンバッジ。たぶん、お返しに日本のバッジをあげるのが普通なんだろうけど、何も持ってないなあ、どーしよー。と思っていたら、おじさんはにっこり笑いながらどこかへ行ってしまった。これでは私はただのバッジ好きの子供だ。(^-^;

▼日本チームは負け負けが続く。見ているこっちがなぜかぐったり。私が体を動かしているわけじゃないんだけどね。和田は三連敗。和田が三つ目も負けた直後、セコンドについていた赤石コーチがマット脇にいた私の肩をぽんと叩いていった。いったい、どんな顔をしてよいのかわからなくて、変な作り笑いをしていたと思う。

和田 予選リーグ3回戦 ▼試合終了後、プレスルームからFAXを送ろうとすると、係りのおねーさんに「運営委員会で決められた表書きをつけなくちいけないから、あなたの持ってきた紙をそのまま使おうとすると倍のお金がかかる。縮小コピーで表書きの空欄に貼り付ければ半額ですむからそうしたほうがいい。」とすすめられ、おまかせする。そのFAXを送ったら、日本にいるHさんからすかさず国際電話が。「和田が三連敗なの〜?!」とショックを隠せない様子。川合が明日午前中の試合でフォール勝ちすると決勝トーナメントに出られるのだが、気分はもう全敗なのでどうにも元気な受け答えが出来ず。矢山のプロテストについても説明する。なるべく理性的に物事を説明しようとするのだが、暗い気分はどうにもかわらない。


■屁とともにある生活((c)小幡弘之)

▼小菅の「夜9時半頃ならみんな落ち着いていますよ。」との言葉をたよりに、日本チーム宿舎へ試合が終わった選手のコメントを取りに行く。エレベーターに乗ろうと思ったら和田と小柴がでかけるところ。部屋でくさくさしててもしょうがないからねえ。気晴らしもしたいだろうし、と和田のコメントは明日のお昼に取らせてもらう約束をする。が、これがあとで仇になる。(^-^;

▼日本チーム、まだ明日、川合と小幡の試合が残っているとはいえ、川合はフォール勝ちでなければ決勝トーナメントに出場できず、小幡も強豪相手。決勝トーナメント一回戦で敗退した田南部、矢山のコメントをとっていたら、こちらの気分も沈んできてしまった。田南部のコメントをとっていたら富山コーチが登場。「田南部くんのことをぼくは信じていたんだけどなあ。君のことはこれからタコと呼ぶ。」と北関東訛りで声を掛けてきた。明るい口調なだけに、なおさら富山さんの落胆している様子がうかがえる。田南部、その言葉に低いトーンのまま「まったくそのとおり」とつぶやく。

▼炊飯器がもくもく湯気を立て始めるころ、小幡登場。イスを動かしてご飯をたべる場所を作りながら、「おれもう(コメントしても)いいっすよぉ。」と小幡。明日まだ試合あるでしょ、と続ければ「目標2ポイント!」と叫ぶ。確かに、日本の重量級、殊に130kg級は海外で勝つの難しいけどねえ。

▼大半の選手が炊飯器部屋(日本から持ってきた炊飯器でご飯を炊いている部屋)にあつまってくるため、そこでコメントをとる。後ろではカレーを食べる小幡。その食事中に「あー、屁してえ!」と叫び出す。(^-^;さすがに食事中におならの話をするのに驚いたのが分かったのか「もう、それ日常ふつうなんで」と説明を入れる石嶋。そして、屁についてのうんちくを傾け始める小幡。「日常会話の中に屁を取り込んでるんで。なかなか女性が聞けるもんじゃないですよ。」

▼カレーを食べながら話し続ける小幡と石嶋。

石嶋「そういえば、カザフかどっか、オレ、アジア大会でやったヤツ、63(に階級を)上げて、入ったらしいじゃん。オレと泥仕合やったやつでさ。」
小幡「キルギス(キルギスタン)だよ。63キルギスはいった?」
――リザルトあったかな?あ、ホントだ、キルギス、イタリアとやってる。1−7で勝ってる。
小幡「イタリア、シラチとかいて強いんだよ。和田とやって勝ってる。(アトランタ五輪での3位決定戦)スキラッチてみんないうけど、ホントはシラチていうんだ。……どっちでもいいや。」
▼最後に、ご飯部屋に来ないで一人でテレビを見ていた小菅のコメントを取りに行く。試合が終わった人から順にコメントをもらっていて、今日は小菅が最後で明日の昼に和田、川合と小幡は明日の結果次第という話をしたところ「小幡先輩、明日も試合あるんだ。いいなあ、まだ試合あって。」せっかく世界選手権に出たのだから、一つでもたくさん試合がしたかったね。

▼コメントをとり終えて外へ出たらタクシーがちょうど1台ホテルの前に。これで帰れるから、とタクシーに乗り込んで自分の宿泊先のホテルへ。タクシー代はお釣をチップとして渡すのが慣習なのだが、ちょっと大き目の額のお札しか持っておらずかなり余分に払う羽目に。それでも1円=4000トルコリラくらいなんだけどね。部屋へ戻ると隣近所のキューバチームの部屋からはあいも変わらず賑やかこの上ない騒ぎが聞こえてくる。部屋の中でバスタブにお湯を溜めながら、明日の準備。明日の午前中で、日本チームの試合は全部終わってしまうかもしれない。川合が勝てばいいけど、フォール以外だめというのはちょっと希望が薄いなあ。どうしてもポジティブなことが頭をかすりもしない。それでもまあ、明日は76kg級の決勝がある。サイキエフの試合を楽しみにしよう。楽しみの順位を一生懸命すりかえてゆっくり眠ることにする。



 

大会三日目 ついに川合達夫が…go

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レポート&写真:横森綾