特集記事

'99 フリー世界選手権大特集
トルコ大遠足日記


第三弾・10月7日 試合初日


■陽気なカリビアンと熱烈なイラン

▼また朝4時に目が覚める。どうしようもないのでテレビを点ける。朝6時前後くらいからだろうか。隣の部屋が妙にうるさい。大音響で曲をかけて歌っている。ドアを叩く音も凄まじい。さらに踊っているらしい。そういえば、このフロアはほとんどがキューバチームの部屋だったっけ。歌って踊るのはカリビアンの本能か?

▼またバスに乗ってホテルから会場へ。今度もモンゴルチームと一緒。ロシア語と英語をちゃんぽんにしてやり取り。プレスセンターに着くと、本日の試合進行表がある。が、取材者の数に足りない。早く頂戴と催促すると、係のお姉さんが申し訳なさそうにコピー機が故障したので暫く待って欲しいといわれる。たぶん、紙詰まり程度だから横を開いて紙を取り除けば、と思うがお姉さんは手も足も出ない様子。メガネをかけたおじさんがやってきて、ちょいちょいと直してようやく進行表を調達できることに。

試合会場の様子
▼楕円形の会場には三つのマットが敷かれ、入り口に遠い方からA、B、Cマット。Aマットの奥にはモニタが積まれて試合の様子が大写しになるようにディスプレイされている。すり鉢状に客席はしつらえられていて、縦長に割って入り口から右半分は観客席。左半分は基本的にレスラーなどの関係者席なのだが、その中でも中央、一番見やすい前方はFILA役員席、その役員席の後ろが取材者席。カメラマンが立ち入りを許されるマット脇は観客席側のマット脇のみ。そこで写真撮影をするためには、IDカードを首からぶら下げるのとは別に「PRESS」と書かれたゼッケンを被らなければならない。これが身分証明書と引き換え。その日はパスポート以外の身分証明書を持っていなかったので、IDカードと引き換えにゼッケンを貸してもらう。「明日はちゃんと持ってこないとだめだよ。」と卵型の頭が特徴的なおじさんに言われる。

田南部の飛行機投げ ▼いよいよ試合が始まる。どこからともなく集まるイラン応援団におどろく。なんでも、周辺三百キロ以内にすんでいるイラン人はレスリングの大会があると応援に来なくてはならないのだそうだ。イランの国旗を振りまわして大騒ぎ。午前中は予選リーグ第1ラウンドと第2ラウンド中盤まで。日本チームの結果は、まあまあかなあ。全勝とは行かないけど、そこそこ勝ってるし。田南部の飛行機投げカッコよかったし。(*^-^*)


■川合マニアのTさんと仮面ライダー

▼お昼ご飯の後、午後5時近くの試合開始までの時間がホテルに戻るには中途半端。なので選手宿舎になっているホテル・スタッドのロビーでコーヒーを飲みながら時間をつぶす。ロビーで今朝もモンゴルチームと一緒のバスに乗ってきたと日本チームに話していたら「仲良くしちゃいけません。」と矢山に怒られる。(^-^;絵ハガキを売っているので、矢野倍達に頼まれていた絵ハガキを数枚見繕う。なるべくアンカラの風景が入っているらしきものを選ぶ。矢野の趣味は外国の絵ハガキ集めなのだそうだ。トルコへ行くと話したとたんに「絵ハガキ買ってきてくださいね」と即メールが来たくらいだ。矢野と仲のよい田南部も遠征するたび頼まれているらしい。

▼主に選手が皮膚病にかかっていないかをチェックするメディカルチェックが始まるより30分も前にスポーツバッグを持ってエレベーターをひとり降りてきた川合達夫。T新聞のTさんと私を見つけると、つかつかと寄ってきて開口一番「すっごい調子いいんすよ。」どうしたんだ?川合?君の方から話し掛けてくるなんて?!「川合マニアの俺としては、ちょっとさびしい。」とはTさんの弁。実はTさん、松田優作に似ている(とTさんだけが主張するらしい)川合達夫のファン。普段の川合は何か質問をしてもなかなか言葉が返ってこない、質疑応答の難しい選手で向こうから話し掛けてくることなどまずない。最終合宿のときもその饒舌に驚いたけどトルコへ来ても収まっていない。腰が痛くて3ヶ月以上練習できてないし、一番コンディションが悪いはずなんだけど案外いけるかも。そういえば、自衛隊の大久保コーチが「川合が行けそうな気がするんだよ。」なんていってたっけ。

石嶋の仮面ライダーな様子 ▼昨日と同じテコンドーの練習場で3時半から計量。今日は58,69,85,130kg級の計量。「だるい〜」と計量の順番待ちの間、横になって待つ石嶋。「こんなになってること無いから、写真撮って。」と完璧に仮面ライダーのようになった腹部を誇示。はい、とるよぉ、とパチリ。69kg級の計量の列、和田はその中でも頭が飛び出ている。一階級上げても背が高い方に入る。春先に比べると大きくなってきているとはいえ、やはりまだ69に混ざるとその細さが目に付くなあ。

▼計量と抽選が終わり、抽選結果の数字と国名を並べ替えてコーチ陣が組み合わせ表をつくる。正式なものは明日の朝、配られるのだがそれを待っていては遅すぎる。計量が終わってみんながいなくなった会場の隅で紙に書いて並べ替え。69kg和田は最終組、4人の組だから3試合。あたるのはグルジア、トルコ、ベラルーシ。「いけるんじゃないの?」とコーチ陣。なぜかトルコの選手は最終組が多い。インチキは出来ない……と思うけどねえ。


■民族舞踊とトルコ国旗

踊るお姉さんたち
▼4時からオープニングセレモニー。民族音楽をアレンジした曲が会場内に響き渡る。気がついたら会場は満員。当然、お客さん=有料入場者で満員。場内アナウンスの一言一言に反応して大騒ぎ。セレモニーが始まると鼓笛隊の太鼓のように腰に太鼓をぶら提げたお兄さんたちが入場。マットの上で太鼓を叩きながら踊っている。続いて、民族衣装を着たおねえさんたちが登場。なにやら音楽にのって踊ってみせてくれる。その後、トイレに入ったら、そこでお姉ちゃんたちがストッキングをはいたりして着替えていた。(^-^;

トルコ国旗を配るおじいさん▼満員のお客さんたちが応援グッズを持ってきている。赤地にTURKIEと染め抜かれた鉢巻きに、国旗のミニ旗。おじいさんがトルコの国旗をたくさん持ってきてみなに配り始める。われもわれもと取り合いに。日本で日の丸が欲しくてみなで取り合いをするなんて見たこと無いなあ。でも、そんなにして奪い合ったトルコの旗、帰りに見てみれば会場のあちこちに落とされていたりしたぞ。そんなもんか。

▼プレスルームに飲み物サービス登場。コーヒー(Nescafeのインスタント)とコーラ。日本でコーラを飲むことなんてほとんど無いのだが、乾燥しているせいか無性に喉が渇くし、他の飲み物は癖が強すぎて飲みづらいしでコーラを飲もうとする。でなきゃ水だな。給仕をしてくれるおじさん(ひょっとしたら「おにいさん」と呼ぶべきなのかもしれない)が飲み物を入れてくれる。コーラが欲しいと言うと「申し訳ない、もうなくなってしまった。」がっかりしたのがわかったのか「スプライトならあるよ」と薦めてくれる。コーラだろうがスプライトだろうが自分にとっては大差無いので「スプライトちょうだい」珍しく大きなコップになみなみと注がれた炭酸飲料を一気に飲む。

▼初日の全試合終了してみれば日本人選手は小柴と小菅が全敗ですでに試合終了。でも、田南部と矢山が明日の午前中に決勝トーナメント。あと一つ勝てばベスト8。グレコがベスト8ゼロで、フリーもか?なんて言われてたけど、初日でこの結果ならまあまあいいじゃん。夕方、ホテルのエレベーターに入っていく田南部はいつもと同じような感じ。手を振ったらにっこりしていたし。明日の相手は、去年やって負けている相手らしいけど大丈夫、いけるよ。

▼9時前には自分の宿泊先のホテルに戻り、表に出てそばの売店で大きなペットボトルで水を買う。飲料用+コンタクト洗浄用。どうやら、水のことを「スースー」と言うらしいことを把握する。ホテルの部屋に戻ってテレビを点けると世界選手権の様子が流れている。もちろんまだ予選リーグだからトルコの選手の試合ばかりだが。隣近所の部屋がまた賑やかになってきた。キューバチームは本当に元気だ。明日は二階級で五輪出場権がかかっている。二人とも勝てるといいなあ。



 

大会二日目 どうした!? 日本チームgo

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レポート&写真:横森綾