特集記事

'99 フリー世界選手権大特集
トルコ大遠足日記


第二弾・日本チームと遭遇、計量へ


■トルコ語で喋るゼペットじいさん

■ ▼到着翌日。朝4時に目が覚める。これが時差ぼけ?それとも飛行機の中で眠りすぎたせい?やることが無いのでテレビを点ける。ぼけーっとテレビを見ていたらハウス名作劇場『母をたずねて三千里』。マルコもゼペットじいさんもトルコ語、歌も全部トルコ語。朝ご飯開始時刻の7時を過ぎたのでレストランへ。目の前にはジャージをきたでっかい人が。背中にはCUBAと書かれている。え?このホテルも宿舎になってるの?レストラン内を見るとルーマニアのジャージを着た人も。スタッドに泊まりきれなかった国の選手がいるようだ。

アンカラの地図
▼世界選手権の会場、アタチュルク・スポーツ・サロン(地図中上118)の道路を挟んで向かいにスタッド(16)というホテルがある。会場まで徒歩5分という最高の立地だ。トルコの宿を手配するとき、旅行会社がそこを狙ってくれたのだがなんと満室。仕方が無いのでそこから直線距離で1キロほど離れたイチュカーレ(左下14)に泊まることにした。1キロ離れているとはいえ、複数の国の選手団が宿泊しているので事務局の出張所のようなものがエントランスホールにしつらえられている。おかげでずいぶん便利。

▼9時になったのでホテルの向かいの両替屋へ行き、日本の銀行でかえてきたドルの一部をトルコリラに両替。お札をたくさん出してくれたのだが、その単位がすごい。500万トルコリラ札。1枚で500万。インフレがひどくて一週間もいれば通貨価値がかなり変化すると聞いていたがこれほどとは。こんなにゼロの数が多いお札ばかりでよくトルコ人は平気だなあ。フロントの女性に「着替えを買いたいんだけど、服を買えるところどこかない?」と尋ねるとキズレイという地域を教えてもらう。地図のコピーを出してくれて印をつけてくれる。太陽が燦燦と降り注ぐいい天気。10月のアンカラは寒いくらいに涼しいと聞いていたけれど、朝から暑くてたまらない。道々、靴磨きやパン(ベーグルみたいな形でごまのようなものがふってある。甘そう)売りのオヤジを山ほど見る。ちょうど出勤時間らしく、通勤途中の人たちもたくさん見かける。イスラム教ではあるけれど開放的なこの国の首都は、一部の戒律が厳しい人たちを除いて女性でも日本と変わらない服装。そして彫りの深いエキゾチックな顔立ちのお姉さんたちはみんなきれいだ。(*^-^*)

▼20分くらい歩くと商店が多い地域に到着。歩いていたらすっかり暑くなり袖を捲り上げる。買う服も身軽なものが欲しかったのだが、売っているのは秋・冬物ばかり。なんとか綿のシャツを見つけてそれを1枚、半袖のニットを1枚。まだ10時くらいなのでそのあたりをぶらぶらする。閑散としてはいるがパソコンショップやインターネットカフェも数件ある。そしてやたらと目に付く家電屋。売っているものはなぜか圧倒的に洗濯機が多いみたいだ。

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■モンゴルチームと定期バス

▼買い物を済ませてホテルに戻り、荷物を部屋において今度は会場にある事務局へ。IDカードを発行してもらうのだ。入り口でドアボーイのお兄ちゃんに「アタチュルク・スポーツ・サロンまではタクシーでどのくらいかかる?」と尋ねる。トルコリラで教えてくれるが、0の数が多すぎて訳が分からん。(^-^;ぽけらっとしているとUSドルで言い直してくれる。大体2,3ドルくらいだそうだ。ふーん、と暫く考えていたら、そのドアボーイの兄ちゃんが大会係員のお姉ちゃんに、会場への定期バスに乗ってもよいか聞いてくれた。するとOKと言われる。ラッキー(^-^)

▼ホテルの前にバスがやってきた。バスは三菱のバス。乗るとモンゴルのジャージを着た人たちが。Hさんにモンゴルの選手とジャーナリストおのおのにお土産を渡してほしいと頼まれていたので、名前を書いたメモをその人たちに見せる。と「それぼくだよ。」と名乗り出る人あり。待ってましたとばかりにきいてくる。「レスリングシューズを預かってるんだよね?」そのとおりと答えると「どこ?」と畳み掛ける。部屋においてきたと言うと「持ってこれる?」と続く。そんなに早く欲しいのか?「私は行ってこれるけど、バス、待っててくれるかなあ?」するとすぐさまモンゴルチームに帯同している通訳(トルコ語を喋る通訳をモンゴルチームは連れていた)にバスの運転手と交渉させOKをもらう。走って部屋からアシックスのレスリングシューズを持ってくる。受け取るとすぐさま取り出し、紐を通し始める。片足紐を通し終わったところで「あれ?もう片方は?どこ?」ときょろきょろ。するとすぐ後ろに座っている選手が「はい、これ。」羨ましそうにシューズをためつすがめつ見ていたからな。

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■日本チームとようやく遭遇

▼アタチュルク・スポーツサロンのゲートをくぐり、脇に幾つか並んでいる小さな体育館のうちの一つに到着。モンゴルチームはバスから自分たちに割り当てられた練習場の体育館へ。さて、プレスセンターは今日から開いているはずだから、IDカードを発行してもらおうかな、とたぶんプレスセンターがあるであろう一番大きな建物、要するにメイン会場らしき大きな体育館のほうへ移動しようとしたら偶然、高田裕司強化委員長に遭遇。「こっちで練習してるよ。」との話なのでついていけば「ひろってきたよぉ〜」と練習場に案内してもらう。

減量中の田南部▼小さな体育館の中は半分がレスリングマット、もう半分にはボクシングのリング。大半の選手が体重を落とすためにちょっと厚着で練習。それぞれ個人の体調に合わせて動いている。減量のために着込んでいる田南部に応援メールをもらったことを伝える。だれ?女の子?ときくから、どちらかわからないと答える。実際、フルネーム書いてないメールだからわからないし。横にいた小柴が「ねえ、俺には?」ときくので「子供おおきい、ていうのは来た。」ちょっとがっかりしていたみたい。


減量中の石嶋石嶋、減量がキツそう。赤石コーチがつききり。体育館の中を走っては水を口に含み、吐き出す。石嶋にも応援メールが来た旨を伝えると、側についている赤石コーチから「女ですか?」と質問。男か女かわからないと答えると「絶対女だな。いま、何人か頭に浮かんでるだろ。だれかな?て。」と冷やかす赤石コーチ。いつもならすぐに軽口を叩く石嶋だが、さすがに減量疲れがあるのか苦笑いするのみ。伊藤トレーナーからは「ホモですか?」と単刀直入にきかれる。そんな、あからさまな。「いや、結構多いんですよ。」(^-^;


不調の和田▼和田はアンカラについてから胃の具合がおかしくなって、ほとんど食事が採れないままだとか。ちょっと質問しても、いつもなら歯切れのよい返事が来るのになんだか上の空。「勝てると思ってませんから。悩みないですよ。」なんてずーっと夏くらいまでは言っていたのに、日にちが迫ってくるにつれてその周辺の話題になかなか触れようとしなくなってたもんなあ。

 小幡と小菅小幡と小菅でスパーリング。小幡が小菅をフォールしかかったのでカメラを向ける。すると必死で顔を隠そうとする小菅。ばっちり写真を撮ってもらおうと顔を隠す小菅の腕を払いのける小幡。「やめてください〜」と情けない声を出す小菅。

▼一通りの練習が終わったので日本チームと別れてプレスセンターへ。会場の中にあるのだが、まだ内装工事中。あちらこちらにやぐらが組まれたまま。ほんとうに明日から大会は開催できるのか?受付で8月末にFAXしたものと同じ用紙を出してプレスIDの発行許可証をもらい、発行所でIDを発行してもらう。IBMのパソコンにデータを入れてHPのプリンタから出てきた紙に持参の証明写真を貼りつけ、ビデオ屋の会員証みたいにパウチして首にぶら下げるチェーンをつけて出来上がり。これで会場や宿舎に怪しまれずに入れる。


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■計量あとのバナナはおいしい

計量の会場▼午後6時からテコンドーの練習場で計量。今日の計量は54,63,76,97の四階級。日本は下から田南部、矢山、小柴、小菅。皮膚病にかかってないか確認するメディカルチェックも終わり計量と抽選が始まる。計量とともにくじをひき、これで明日から始まる試合の組み合わせが決まる。どんな国の選手と同じブロックになるのかな?

▼田南部に子供の写真を持ってきているかと聞く。最終合宿のときに「忘れなければ持って行く。」なんて頼りないことを言っていたが、即座に「うん、持ってる。」やっぱり忘れないんだね、そういうことは。見せてもらおうと思いその旨を伝えると横においていたバッグからすかさず取り出す。まさかこの場で出てくるとは。ホテルに戻ってからだと思っていたのに。田南部に顔の輪郭がそっくり。「この写真はね、ちょうど2ヶ月のとき。」名前はと問えば「夢が叶うと書いて『夢叶(ゆめか)』。」田南部の夢も、夢叶ちゃんの夢も叶うといいね。「ホテルにおいてきちゃった。」は小柴。

▼大声で騒いでいる人がいる。イランチームのコーチらしい。「まただよ。」と佐川コーチ。どうやら、まだ体重のリミットをクリアできていない選手がいるらしい。慌てて体育館内のサウナに走っていく。63kg級か?計量会場にいたFILA公式レフェリーの村本さんがイランの役員の人に「だいじょうぶ?」ときけば「No Problem!!」と堂々としたもの。イランは、毎年こんな騒ぎをする選手が必ず一人はいるそうだ。強いのに自己管理が甘い選手が多いのだとか。

 小菅と田南部▼計量後、これ以上はないという幸せそうな顔でバナナを食べる小菅。「炊飯器持ってきてるんで、ホテルに戻ってからご飯食べます。」水を飲んで、バナナをもう一本。何本食べるの?「計量後に飲む水がおいしくてねえ。これがあるからレスリングやめられないんだよなあ。」とは村本さんの言葉。計量も終わって一段落。明日から試合が始まる。おいしいご飯を食べてください。だからってその後4kgの増量は極端だけど>小菅。



 

10月7日 ついに大会スタート!go

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レポート&写真:横森綾