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シドニー五輪フリー最終予選&アジア選手権

中国桂林遠足日記−2


■象のお守りと熱烈歓迎の4月25日(火)

▼朝から中華のバイキング。食事は三食とも食券をもらっているので、レストランで食べ放題。まだ二食目で全メニュー制覇にほど遠いのと、中華料理で食べやすいものだから食欲もりもり。食後にコーヒーをもらってくつろいでいたら、コーヒーカップのソーサーに、焦げ茶色の縁取りと見慣れたロゴマークが。コーヒーの無制限おかわりができるファミレス、D****sのコーヒーカップじゃないですか。ここの食器、日本からの払い下げ?

象鼻山▼食後、散歩を兼ねて富山さん、朝倉さんと一緒に象鼻(ぞうび)山へ。桂林は水墨画のように岩や山が突然ボコボコと重なって見える景勝がウリの観光地。象鼻山というのも、象の鼻に似ている山ということらしいが、実際には象の鼻というよりは象の胴体だよなあ。観光地らしくツアー客が山をバックに記念撮影。その様子をビデオで撮る富山さん。呼び込みのおばちゃんに誘われて、3人で竹の筏舟に乗って向かいの岸へ。民族衣装を着たお姉さんたちが出迎え、婚礼の儀式のまねごとで歓迎される。朝倉さんにその場はすべてお任せして逃げ出す。記念写真を撮るための民族衣装をすすめられたり土産物を押しつけてきたりしてやかましいから。歓迎されて象の飾り物をもらった朝倉さん、その真っ赤な象を私にくれる。「和田に言っといてください。お守りだって。」何を考えているのか分からないことがよくある不思議な朝倉さんだけど、教え子のことはやっぱり気がかりみたい。

蝋筆小新▼象鼻山の祠を見に行く途中にお土産やさんが。なぜかその土産物の中にクレヨンしんちゃんがいる。確か、香港ではクレヨンしんちゃんのことを「蝋筆小新」 といってずいぶんな人気だとか。中国でもそうなのかな。ここで売っているお土産のしんのすけは、お湯をかけられるとおしっこをするという代物。あまりのアホさに店先でげらげら笑う。

▼ホテルに戻り、メールを送信しようとビジネスセンターへ行く。ネットに接続したいから回線を貸してくれと言うと、ビジネスセンターに設備がないから、部屋でやって欲しいと返事。でも、部屋の電話はモジュラージャックの差込口がないんだよねえ、どうすりゃいいの?と困っていることをアピール。すると、フロントにジャックの口を出すように頼んでくれるとな。よし、これで部屋からメール速報だ!

▼体育館へ行けば、ちょうど練習が始まったところ。宮田、減量がきつくて苦笑いの連続。「いいねえ、宮田スマイルが出たよ!」と富山さん。和田が佐川コーチとスパーリング。佐川コーチが「写真!写真!」と叫ぶので近寄ると、グランドでパーテルを取り和田をニアフォールしているところ。カメラをもって走っていけば、和田が全力で立ち上がりエスケープ。あ〜、ごめん、撮れなかったよ〜。すみません載一遇のチャンスを、と言えば「そうだよ、もう二度とないよ。」と赤石コーチが横からにやにやしながら口を出す。「大丈夫、またある。」と佐川コーチは意地を張る。

▼体重を調整するための練習時間なので、疲れすぎないように、汗をかくように心がけている様子。小菅、小幡邦彦はちょっときつそう。減量幅が小さい和田は終始リラックスムード。おい、笑ってるぞ。世界選手権のときとずいぶん違うじゃない。

▼昼食後、部屋からメールを出そうとする。部屋に戻ったらモジュラージャックの口が引っぱり出してあったので、ジャックをPCに差し込みログインを試みるが、回線が反応しない。外線発信番号が違うのかなあ、といろいろ試すがダメ。どうにもならないのでPCを抱えてフロントへ直談判。すると、部屋の電話は内線と市内通話しかかけられない設定になっていることが分かる。部屋の電話から外線の市外局番、国際電話をかけられるようにするためには、前もって300元払って回線を切り替えてもらわねばならないのだそうだ。ちなみに、1元は13円ほど。 高いなあ。

300元前払いしてメール送信▼@NiftyのローミングサービスGRICで広州のアクセスポイントに電話するが、何度電話してもつながらない。ローミングサービスは回線が細くて繋がりにくいとの評判は耳にしていたが、これほどとは。何十回リダイヤルしても繋がらないので、国際電話で東京のアクセスポイントへ接続を試みる。一回で繋がる。電話代 がちょっと勿体ないが、やむをえない。

▼午後5時から計量。夕方の体育館に入ると、階級の数ぶん、8カ所にレフェリー が座っている受付とその隣に体重計。各々のレフェリー後ろの壁にはエントリー 選手の一覧表が貼ってあり、表の右端の列には抽選結果の番号が書き込めるよう になっている。計量と抽選を受け付ける時間はルールに則って午後5時から5時 半までの30分間。この間に計量&抽選を済ませなければ失格になる。

▼ほとんどの階級ですべての選手の計量が終わる中、69kg級のクペエフ(ウズベキスタン)がなかなか計量に来ない。体重計の横にいる審判に「これで全部か?」と尋ねると「フィニッシュ」との言葉。え?クペエフ棄権?本当に?昨年のアジア王者が?怪我のために五輪二次予選に出場できず、この最終予選に賭けている と聞いていたのに。

▼クペエフ抜きの69kg級の抽選の結果を見ると、和田のブロックには韓国もインドもおらず、かなりくじ運はよい。体育館の隅ではクペエフが死にものぐるいの形相で走り、体重を落としている。減量がかなりキツイらしい。終了時間ぎりぎりにやってきてようやく計量をパス。抽選結果は、和田と別のブロックへ。

対策会議中▼抽選結果を書き写した紙を見ながら計量会場で車座になり、各階級のトーナメントがどのように組み合わされるのかを書き出す。58関川は決勝まで行って北朝 鮮とあたることになりそう。63宮田はいけそう。69の和田は今までが嘘のように くじ運がよい。76、97、130は……厳しいなあ。

▼計量会場からホテルへ戻り、エレベーターホールの前で日本チームと一緒にな る。抽選が終わったばかりの選手に、気の利いたことでも言えればよいのかもし れないけど、何を口にしても気持ちにぴったりあてはまらないように思えて唇が 動かない。大丈夫、これだけ落ち着いて集中しているのなら、絶対に勝てるよ。 とにっこり笑ってみせる。苦労しているのをずっと見てきたけれど、ここでもやっ ぱり見ていることしかできないんだなあ。彼らを見る喜びと、それを見ることし かできないもどかしさ。何を取材するにしても、この矛盾した気持ちにはずっと 悩まされ続けるんだろうなあ。

▼夕食後、体育館前にある中央公園の特設舞台で開会式が始まる。電光照明がビカビカいっているステージの両脇には巨大なオーロラビジョンが一つずつ。暇なのか、たくさんの見物人。選手などの大会関係者はステージ前に並べられた椅子に着席。

▼入場式は、まるで紅白歌合戦か宝塚のように階段の上から旗をもって降りてく る。日本チーム、選手はクレペリン検査を実施するからとの理由で開会式欠席。 代わりにコーチ陣が旗をもって登場。旗を持つ富山さんの後ろでは、実は佐川コー チがビデオを撮っている。

旗手の富山さんの後ろはビデオカメラマンの佐川さん はではで開会式

▼FILA役員の祝辞などがひととおり終了した後、熱烈歓迎のアトラクションが始 まる。中国雑伎団もかくやという剣舞などがてんこもり。これでもかと続いて止 まらない。しかし、途中から雨が降り出す。ポツポツ落ちる程度だったのがだん だん洒落にならない激しさに。歓迎されているのは十分に分かったのでカメラが 大事だからホテルへ逃げ帰る。

▼部屋に戻り、抽選結果をメールで送信。明日は五輪最終予選。泣いても笑って も、たとえ空が落ちてきてもそれは変わらない。明日の夕方には、4年間の皆の 思いが結実しますように。


→3 「薄暗い体育館と泣き疲れる4月26日(水)」

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レポート&写真:横森綾