第６試合　国別対抗戦決勝（10分１本勝負勝抜き戦）

○グルジア（先鋒/ザザ・中堅/アミラン・大将/タリエル）

×オランダ（先鋒/フライ・中堅/カステル・大将/ナイマン）

（３−２）

　団体戦での二人抜きは難しい。

　ここまでの試合で、二人抜きを達成したのが、チャンピオンであるタリエル一人だけ、ということがその困難さを象徴している。ということは、先勝を上げたチームが、あからさまに有利になるということでもある。

　しかるが故に、先鋒の配置は、大きな意味を持つ。

　今回発表された先鋒は、オランダのフライに対し、グルジアのザザという組み合わせだった。ランカーではないが、モラエス戦を始め、実力者ぶりは際だっているザザと、ランキングは高いものの、昔日の影はないフライ。

　明らかにチーム編成的にはグルジアの戦略勝ちである。

　試合も、結局、予想通りの展開になった。

　つっこんではタックルで倒し、アキレスを極めるザザ。フライは、あと１点となってからラッシュで１ダウンを奪い返したが、殆どなすすべもなく敗退。

　優勝戦第一試合は、グルジア有利でスタートした。

　ここで二人抜きをされてはもはや取り返しのつかないオランダ。逆に、ともかくカステルを疲れさせればいいグルジア。

　心理的にはザザの優位は動かない。

　勢いだけの踵落としと張り手でつっこむザザ。タックルをがぶられるが、それでも思いっきりひっくりかえし、真ん中にもってくる。ルールを間違えたカステルが下から殴ってしまい、イエロー。

　またもやパンチでつっこむザザ。組み合ってから張り手、張り手。ねじりたおし、上からがぶってネックロックでまたもやエスケープを奪う。

　ザザ、絶対的優位である。

　二人抜きの期待がかかったが、ここからカステルがスパート。まず、思いきりのいいロー一発でダウンを奪う。ザザが、また、張り手乱れうちでコーナーに押しつけるが、そこでボディにパンチを入れて、またもやダウンを奪取。ポイントで並ぶ。

　必死のザザはともかく倒しにでるが、落ちついてしまえば、カステルもグラウンドは下手ではない。ザザの後ろに回って、じっくりと亀を崩し、首をとって、スリーパーでギブアップ勝ち。

　オランダが瀬戸際で踏ん張った。

　セオリー的に言えば、既に一試合を消化しているカステルに対し、これが初戦のアミランは優位に立っている。ともに同じコンディションで闘うシングル戦とは違い、地力の差が、勝敗には直結しない。

　これが団体戦の妙味でもある。

　プレッシャーをかけ、前にでていくアミラン。正拳、さらにはコーナーにおしつけて膝蹴りのラッシュにいくが、倒されてしまう。カステルは落ちついてアームロック狙いからスリーパーにいき、アミラン、エスケープ。

　上着をつかまれたのが倒された原因と上半身裸になるアミラン。アミランの回し蹴り、カステルの裏拳と大技が交錯する。掌底を警戒してがちがちに顔面のガードを固めるカステル。しかし、そのガードの上から脳天をハンマーのように掌底で殴りつけるアミラン。カステルダウン。

　スタミナ切れからか、守りに入ったカステル。

　こうなれば、アミランの打撃攻勢が試合を決するのは時間の問題かと思われた。

　だが、ここでアミランに魔が差す。

　胴回し回転蹴り失敗。すかさずカステルがバックに回ってスリーパーでギブアップを奪う。

　カステル、まさかの二人抜き。

　状況は逆転した。後は、ナイマンに繋ぐ前に、できるだけタリエルを疲れさせればいいのだ。あわよくば引き分けに持ち込んでしまえば、その時点で優勝が決まる。

　既にふらふらのカステル。コーナーにつめていくタリエル。

　だが、ここでボディ・パンチのラッシュが顔面をかすり、イエローをもらう。

　しかし、勝敗は動かない。カステルの右ミドルをとって掌底でダウンを奪い、さらにはコーナーにつめてボディへの正拳のラッシュでＫＯ勝ち。スタミナを温存しようとしてか、ゆっくりと立ちあがったカステルは、ＫＯではない、とアピールしたが、既にあとの祭り。ぎりぎりまで粘ってタリエルのスタミナを消耗させることはできなかった。

　しかし、ともかく、これでタリエルに一戦消化させた。

　打撃戦に出ようとするタリエルだが、いきなりナイマンがタリエルの中段蹴りをとって倒し、サイドからバックに回ってスリーパー。エスケープを奪う。

　さらに、打撃をかいくぐり、またもや右中段蹴りをとって倒し、サイドに回って袈裟固め。あっというまにタリエルを追いつめる。

　下手に打撃戦に出るよりも、確実にとれるグラウンドで勝負。この頃、グラウンドの進境著しいナイマンならではのよく考えられた戦法である。

　しかし、ここからのタリエルが強かった。

　べたっという感じで左掌底をナイマンの顔面に入れ、たった一発でナイマン、ダウン。続いて左掌底からボディへの右正拳で、連続してダウンを奪う。

　組み付いて倒しにいこうと必死になるナイマン。

　だが、相撲の喉輪の要領で、タリエルのぶっとい腕がナイマンを押しのけ、決して倒れない。あのタリエルが「倒されない」やり方を身につけたのだから、始末に終えない。

　そして、喉輪、喉輪で隙間があいたところに膝蹴り。ナイマン、たまらずダウンしてＴＫＯ負け。

　初代ＦＮＲカップはグルジア・チームの手に渡った。

　今回のトーナメントで、タリエルは、一人でなんと６勝もあげている（二人抜き３回）。チャンピオン強し。

　モンスターである。

（山名尚志）

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取材：山名尚志　岩田貴宏　　カメラ：井田英登
HTML編集：井原芳徳