本戦30-30･28-30･29-29

延長30-29･30-30･30-30

　ここのところ後輩の窪田・美濃輪に敗れたり、先月の後楽園では近藤に掌底で秒殺TKOを喫するなど、元気のない長谷川。この日はランカーで１周り半は大きく見える、パンクラスではもはやベテランの部類に入る、柳澤との対戦。その柳澤は９９年の闘い始め。髪の毛を金髪に染め、トランクスも兄弟のように仲のいいと言われる國奥とお揃いのモノに新調。年末にいいところなく、タナーに敗れた流れを断ち切るのを願ったかの様な、新しいいでたちだ。表情も、充実しきっている。

　しかし、試合が始まって勢いよく飛び出したのは、けだるい雰囲気を漂わせてリングに現れた長谷川だった。つい先月TKO負けを喫したのが嘘のように、自分の目線より上にある柳澤の顔をめがけて、猛然と掌底を繰り出す。打撃には自信を持っている柳澤も、すぐにそれに応じる。激しい打ち合いの中、お互いのローが交錯したところで長谷川がスリップ。それを見逃さず柳澤はバックから覆い被さる。が、その長谷川の背中に一筋の赤い筋。柳澤の鼻からの出血が認められ、ドクターチェックのため試合は一旦ブレイク。これだけをとっても、長谷川の勢いが分かるだろう。チェック後、異常が認められなかったため、試合再開。再び打撃戦となり、どんどん前に出ていく長谷川だが、コンビネーションがワン・ツーまでしか出ない。そのため、どうしても柳澤を追いつめることが出来ず、反撃を喰らう。また、どうしようもない体格差から、柳澤の大振りの掌底フック一発で一瞬動きが止まってしまう。しかし、そこで長谷川は一旦下がってもう一発を撃ってくる柳澤の懐に入り込み、テイクダウンを奪う。柳澤、ハーフガードに捕らえるも、簡単に脚を抜いた長谷川はマウントを奪取。自らサイドに回り込み、素早い動きで腕十字へ。何とかこれを凌ぐ柳澤だが、そこでも長谷川が先回りした動きで、バックマウントを奪う。が、圧倒的な体格差を利した柳澤はそのまま立ち上がる。しかし、長谷川は構わずチョークへ。長谷川が柳澤におんぶされたような状態が少し続くが、きっちりと極める前に動かれた長谷川は柳澤を締め上げきれず。凌がれたところで、ブレイク。

　ブレイク後も長谷川の勢いは衰えない。掌底の他にも、左のローを出していく。しかし、これも手と脚のコンビネーションが断絶されているため、どうしても柳澤を攻めきれず、一発のビッグ・ショットで動きを止められる。だが、スタンドでの形勢が悪くなればすぐさまシュート。腕を極めながらマウントを奪い、ギロチン・チョークに移行。これを起きあがるようにして外した柳澤は、上のポジションをゲット。脚が目前に来ると、得意の足首固めへ。受ける長谷川も、そうそう簡単には極めさせない。脚の極め合いとなるが、両者ロープ際へもつれ込みアウトサイドでブレイク。もう試合時間の残りがなくなり、危機感を感じた柳澤は、どんどん圧力を掛けて長谷川を詰めていく。体を入れ替えられ、首投げを仕掛けられるも粘って潰す。上のポジションを取るが、打撃に掛ける柳澤は自ら離れる。そして、膝を何発も叩き込んでいく。が、冷静な長谷川は首相撲をといて、再びローを繰り出していく。押される柳澤はたまらず引き込む。ここでも長谷川優位の印象を与えながら、試合終了のゴングを聞く。

　ところが判定は、大方の予想を覆すように「ドロー」。判定結果にざわめく観客をよそに、試合は延長戦へ。

　延長に入っても、長谷川は執拗に右脚を狙っていく。しかし、長期戦に持ち込まれると体格差がモノをいう。膝を連発して圧力を掛けていく柳澤は、極めてはないものの、ブレイクを挟んでの２回のグラウンドできっちり上のポジションを取っていく。そして、柳澤が上になったまま延長戦は終了。本戦とは逆に、少し ばかり優位に立った柳澤だったが、アドバンテージを付けたジャッジは一人。結果、1-0のドローで試合は終了。両者共に、攻めの単調さに課題を残した試合だったが、体格差と前回の打撃での負けの影響を感じさせなかった長谷川は、復調に向けて手応えを感じさせた。

（眞砂嘉明）

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