98・12・19
Tour "ADVANCE" 最終戦
東京ベイNKホール

 

第5試合(15分1本勝負) ノールール系スペシャルマッチ
 
山宮 恵一郎
P's LAB
15'00"
時間切れドロー
 
ジェレミー・ホーン
アメリカ

・大会前の山宮恵一郎インタビュー(11.27 修斗後楽園大会会場にて収録)

 念すべきパンクラスにおけるVT、そのオープニングマッチ。しかし、立ちあがりはなんとも普通のパンクラスルールと、大差のない展開。山宮がボクシンングで仕掛ければ、ホーンは距離を取ってのローで返す。それにじれたホーンがタックルに行くと、『待ってました』とばかりに山宮はがぶってカット。ホーンは最悪の事態を避けるべく、山宮を引きこんでのガードポジション。


 の長いホーンが、足首を膝裏にフックするクロスガードの中で、山宮はパンチと頭突きを狙う。対するホーンは山宮の頭を適度に離しての肘狙い。これが実にうまい。ホーンはもともとパンクラス・ルールで招聘されたのが、1ヶ月前にVTにスライドされた選手。おそらくその1ヶ月を肘の研究にあてたのではないだろうか。

 山宮の頭突きとホーンの肘。有効打はホーンの方が多かったようだが、山宮もコツコツとパンチと頭突きを入れて行く。


 合が動いたのは10分過ぎ。山宮が距離を取ってインサイドガードからパンチの連打。それを嫌がったホーンの、ガードのクロスが甘くなり、山宮は立って脱出することに成功する。再び得意なボクシングの展開に持って行く山宮。しかし、ラッシュをかけるまえにホーンは組み付いたり、膝で反撃に出たり、なかなか山宮の思い通りにはならない。最終的にはまたホーンが引き込んでのガードポジション。そのまま組みついて時間を稼ぎ、山宮も成す術なく試合終了。時間切れはそのままドローになる。


 この試合結果のドローは、いろいろ評価の分かれるところだろうが、ホーンの良さも山宮のV・トゥーダーとしての資質も多少は測れたと言う意味で、楽しめた試合だった。しかし、試合に動きや綺麗なフィニッシュを求めると、かなり評価の低い試合だっただろう。

 つ、この試合で興味深かったのは、選手がこのルールを『現在最もルールの少ないVT』として闘ったのではなく、『よくあるVT+肘+頭突き』として闘ったことである。微妙な違いだが、これは確実に違う。選手が極めて積極的に肘と頭突きを使うのだ。山宮などパンチを疎かにしてまで、頭突きを狙っていたフシがある。今後、このルールでやって行く過程で、『肘+頭突き』は洗練されて行くのだろうか?それとも有効な使い手が現れずに、廃れて行くのだろうか?私には、1ヶ月でホーンがここまで肘を勉強したことを考えると、近々もっと危険な使い方をする選手が現れるように思えてならない。


(誉田徹也)

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(取材:誉田徹也・岩瀬俊・川島智治 カメラ:大場和正)