98・11・29
パンクラス
Neo Blood Challenge
大阪・梅田ステラホール

 

第4試合10分1本勝負
(3分間の延長戦有り/1ロストポイント制)
横浜
國奥麒樹真
 
10分判定3-0
(30-28,30-28,30-28)
石井に1イエローカード
東京
石井大輔
 
×
 

 日の後楽園大会(10/26)でとうとう船木を破り、第1世代の向こう側に足を踏み入れる事になった國奥。その第一歩は壁として、その次の世代の前に立ちはだかることだった。立ちはだからなければならない相手は、石井大輔。カード的に今回と似たようなシチュエーションだった6月の道場対抗戦(vs伊藤戦)では、先輩の伊藤へ臆することなくグラウンド掌打を振り落としていた、突貫ファイター。トランクスのバックに刻まれた"No Mercy"の文字は伊達ではない。


 合開始。猛然と掌底を繰り出す石井だが、まったく付き合う様子無くシュートする國奥。石井にがっちりと受け止められ、がぶられると、あっさりと後方に倒れ込みオープン・ガードの体勢を取る。誘いに乗らない石井が離れて、両者スタンドへ。はなから打ち合う気のない國奥、マットを叩きながら石井に歩み寄り、タックル。これもきっちりとがぶっていく石井だが、ここでも國奥は刈り込むことなく引き込み。そしてあっさりとリバーサルし、体勢を入れ替える。石井からすれば、正に「柳に風」「暖簾に腕押し」で、ことごとくすかされていく。


 のような光景は、この日の試合中、ずっと最後まで見られた。基本的に受けから攻める選手ではある國奥だが、少し体調を崩してあまり声が出ないほど扁桃腺を腫らしていたこの日は、それが徹底していた。マットを叩くというか、手を置きながら、膝をついての摺り足で石井ににじり寄るのは、3点以上がマットについていれば打撃を加えられないというルールを活用した頭脳的な攻めではあるが、あまり積極的なムーブメントとは言えない。

 になった國奥は足を越えサイドにつく。そこからアーム・ロック、腕十字ともう一息あれば極まりそうな攻めを見せるが、攻勢に回っても脱力しきった感じというか、メリハリ無く、また体格差もあって最後の圧力を掛けきれずに逃げられる。対する石井は何もさせてくれないながらも、揺らぎ続ける柳に、心途切れることなく圧力をかけ続ける。國奥には到底テクニックでは及ばない分、出来ること、主に打撃、を有利な体勢であろうが、不利な体勢であろうが仕掛けていく。しかし、ここではその意気込みがたたり、下から上の國奥を蹴り上げイエローカードの提示を受ける。そして試合は一旦ブレイク。スタンドで中央から再開となる。

 たもや三点をマットに付ける前記のムーブメントから組みついて石井を捕らえた國奥、今度は三角締めへ。いい形になっていき、次第に顔も赤くなっていく石井だが、絶対に腕を引き込むことはさせず、なんとか脱出に成功しスタンドに展開を戻そうとする。しかし國奥の闘い方はまったく変わらず、しばらくしてまたもや引き込まれてのリバーサルで下になる。石井の上で回転し、ハーフ・ガードに絡まれた脚を素早く取って膝十字にいく國奥、いい展開になるもロープ際だったためアウトサイドでブレイク。


 開後も、國奥の動きは変わらず、試合自体も同じ流れ。だが試合を完全にコントロールし、常に有利なポジションを奪って、石井にまったく有効な攻めを許さないものの、次第に体格差からくる体力の消耗でだんだん攻めが淡泊になっていく。どうしても攻めきれない。最後も同じ展開で腕を極めに掛かっている場面で試合終了のゴング。


 果は3-0の判定で國奥の勝利。大差のある技術力で石井を完封したが、“船木を破った男”としては、自身「今日は一本勝ちしたかった」と語る様に、すっきりとした勝ち方を見せておきたかった。



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文章:眞砂嘉明 カメラ:井田英登 HTML:井原芳徳