北斗旗軽量級最強の男，小川英樹。シャープな打撃と絶対に勝負を諦めない不屈の闘志で，93年から5年間に渡って北斗旗軽量級の王者となっている。この大道塾屈指のファイターと修斗勢の対決は，かねてから格闘技ファンの間で熱望されていたが，いよいよそのカードが実現するときが来た。相手は元修斗ライト級チャンピオンの田中健一。かつては朝日昇と死闘を繰り広げた田中だが，最近は修斗のリングから遠ざかっており，現在では指導者としての印象が強い。戦前は小川の打撃と田中の寝技のぶつかり合いになると思われたこの試合だったが…。

　少し堅い表情で入場する小川。セコンドの加藤清尚が軽くビンタして気合を入れる。対する田中もかなり気合の入った表情。ガウンの「真剣勝負」の刺繍がまぶしい。

　ゴングが鳴ると，まずは打撃でお互いを牽制する両者。軽いフットワークからジャブ，ローキックを出していく小川だが，それ以上に田中の動きがいい。スタンドの打撃戦で小川と真っ向から打ち合う。この田中の打撃の鋭さは計算外だったのか，小川はなかなか自分のペースに持ちこめない。勢いに乗る田中は，2Rには強烈な右フックで小川からダウンを奪う。ダウンを奪った後も，田中はさらにスタンドで勝負をかける。北斗旗王者にあえて打撃で勝負を挑んでいく田中に観客席が沸く。

　しかし，小川も3Rに入ると完全に田中の動きを見切るようになり，田中のパンチが空を切る場面が目立つようになる。そこをカウンターで迎撃する小川。こうなると一転して小川の一方的なペースだ。田中の渾身の右フックもスウェーでかわされ，逆に小川の強烈な左ミドルで田中の腰が一瞬落ちる。この状況でも決して寝技にいこうとしないのは田中の意地か。しかし小川のパンチ→ローキックのコンビネーションは的確に田中をとらえ，ついにスタンディングダウンが宣告される。そのまま勝負をかける小川だったが，田中も必死の粘りを見せて3Rが終了。規定によって両者引き分けとなった。寝技の攻防が1回もないというのはこのルールではきわめて珍しいことだが，小川の技術，そして田中の意地が真っ向からぶつかりあった好試合であった。

（中村宜夫）

第10試合：山崎×美濃輪　→
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