パンクラスVS大道塾の意外な顔合わせが話題を呼んだこの試合。背負うものの重さを感じているのか，それとも初めてのノールールマッチの緊張のためか，入場式でも美濃輪の表情は固いままだった。対する山崎は終始リラックスムード。選手宣誓でも観客の笑いをとろうとする余裕を見せる。しかし，前回のWARSでメインを努めた秋山賢治が大道塾を去ったいまでは，山崎が名実ともに大道塾のエースである。エースが「期待の新鋭」に負けるわけにはいかない。会場を埋めた大道塾生たちの声援にも熱がこもる。

　ゴングが鳴ると，美濃輪はボクシングスタイルの小刻みなフットワークからすぐにタックル，上を制すことに成功する。山崎はここで定石どおりにクロスガードをとるが，美濃輪はためらうことなく山崎の顔面に強烈な頭突きを一撃。「ゴン！」という鈍い打撃音に会場が沸く。美濃輪はさらに2発，3発と頭突きを連打して山崎を追い込む。攻撃した美濃輪の額が切れるほどの強烈な頭突き攻撃に山崎は防戦一方。苦しい展開が続く。美濃輪は打撃を嫌がって突き放してきた山崎の足を取って膝十字固め，そしてヒールホールドに移行して勝負を決めにかかる。完全に極まったかと思われたが，山崎はこれを体を捻って辛くもクリア。美濃輪の額の出血で，両者の体は血みどろになっている。このあたりから観客席のムードもかなりヒートアップしてきて，これまでの試合とはまったく違う異様なムードが漂い始める。

　なんとか抑え込みから抜けた山崎だったが，美濃輪はすぐにタックル，山崎に主導権を渡さない。ロープ際だったこともありブレイクがかかるが，スタンドに戻ると，美濃輪は再びタックルで山崎の上を制することに成功。つねに先に攻撃を仕掛けていく姿勢は素晴らしい。山崎も下から攻撃をかけたいところだが，このルールではどうしても上になっている方が攻勢をとりやすい。試合時間が残り少なくなると，美濃輪はインサイドガードから大振りのパンチを連打，山崎は防戦一方のままだ。

　結局そのまま試合終了のゴング。時間切れとなり，規定によって両者引き分けとなった。しかし，判定があれば美濃輪有利は明らか。改めてノールール戦におけるポジション取りの大切さを思い知らされる結果となった。エースの思わぬ苦戦は，他団体のルールとはいえ，大道塾内にショックを与えたことは想像に難くない。2001年に開催が予定されている北斗旗世界大会において，今回のWARSの結果はどのような影響を与えるのであろうか。北斗の戦士たちに残された時間は短い。

（中村宜夫）

全試合結果に戻る　↑