98・10・25
VALE TUDE JAPAN '98
東京ベイNKホール
 

第7試合(72キロ契約)

× 修斗ウェルター級1位
1R4分20秒
T.K.O.
 
佐藤ルミナ アンドレ・ペデネイラス
K'z FACTORY
  ルイス&ペデネイラス柔術

 日が引き分け、桜井が勝利と、ここまで修斗四天王の成績は一勝一分。また全試合を振り返ってみれば、日本勢の二勝二敗一分である。

 前の試合で桜井が見事に一本勝ちを修め、良い雰囲気を作ってくれた。そしていよいよルミナの登場である。ステージにルミナが現れ、花火があがり、会場は大歓声である。ルミナの勝利に対する期待がいかに大きいか、よく分かるというものだ。

 合は一気にルミナのペースで進む。右のハイキック、左のローキックで攻め、蹴り足を取りに来たペデネイラスに対し、下から右腕を取り腕ひしぎを極めにかかる。一瞬、ペデネイラスの右腕が延びきったかのように見えた。この瞬間、ほとんどの観客がルミナの一本勝ちを期待しただろう。が、ここでペデネイラスが柔術家としての巧さを見せる。素早く腕ひしぎに反応して体を回転し、逆に上になる。だがルミナはもちろんガードポジションへ移行する。息のつまる攻防である。両者のテクニックを堪能した観客から拍手が起こる。


 デネイラスがスタンドになり、ルミナが仰向けの状態、いわゆる「猪木アリ状態」になる。この時点でもルミナの勝利を期待していた観客は多かったろう。私も、スタンドの状態でいるペデネイラスの方が、攻めあぐねるのでは無いかと思っていた。


 ところが、ペデネイラスは一瞬で会場の期待を打ち消してしまった。右のローをルミナの左足に見せたあと、なんと左のローがルミナの顔面を捕らえる。こんなシーンは初めて観た。反射的にルミナは蹴りを受けた後両腕で顔面をブロックするが、完全に動きが止まってしまった。おそらく意識が飛んでいたに違いない。チャンスとみるやペデネイラスは一気に顔面パンチの嵐。抵抗できないルミナの状態を察知したレフリーがストップをかけ、わずか1R4分20秒で試合は終了した。


 昨年、ポテーリョに勝利した後、「ブラジリアン柔術にはVTで勝たないと意味がない」と言っていたルミナが、T.K.O.で敗れてしまった。四天王一勝一敗一分、日本勢二勝三敗一分である。日本勢の勝ち越しは無くなってしまった。観客の期待は、「エンセンが現UFCチャンプに勝つこと」へと委ねられた。

 
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取材:岩瀬俊  カメラ:井田英登