がんばれ!タカハシ君タイトル 第2回 出会い編:突然携帯でマッチメーク希望!

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●会社員、タカハシくん●

 タカハシくんは「会社員」だ。私たちと同じように、日々の生活の糧を得るために働く必要がある。男子でも女子でも、プロレス以外の格闘技の選手は、よほどメジャーにならないかぎり、食えない。実力を持ちながら、生活の為に引退せざるを得ない選手もいる。
 市場がせまい上に競技人口の少ない女子選手の場合はなおさらの事だ。
 でも彼ら、彼女らは、「闘いたい」という気持ちを常に持ちながら毎日の仕事をこなし、身体を作って明日に備えている。そこには悲壮感はなく「前向きな意志」だけがある。だらだらと日常生活を送っている私なんかに比べて、なんと潔い生き方だろうか。

 そこらへんの事情を高橋くんに聞いてみた。

「修斗の公式ジムに入るとかは考えないの?アマ修斗だったら、女子も試合に出てるよ。道場の中で女子選手とも闘えるし」
高橋「そういうのがあるんですかっ!?」
「いろんなジムあるし、スパーリングの相手もいるじゃない?」
高橋「・・・でも、試合いつあるかわかんないし、ほんとに試合あるかわかんないし」
「う〜ん、そうだねぇ」
高橋「例えば年に2回でも1回でもいいから、確実に試合がある!ならば私はそれに向かって練習のスケジュールを組んで、やれるんです。会社にも、練習のための時間を取らせてくれ、って言えるし。今はそれがないから、会社にも強く言えないんですよ」

 

 

ワープロを打つタカハシくん。じつは一本指打法。

 道場でのスパーリングでは嫌だ、と高橋くんは言う。

「どうして?」
高橋「本気でできないでしょう?相手を倒す、まいったさせる、という度合いが全然違うから、スパーリングでは私は満足できないんです」


●だって楽しいんですもん、試合●

 現在修斗は女子のプロはいない。組まれるかどうかもわからない試合を待って、修斗のジムに通いつづける、という選択肢を彼女は選びきれない。アマチュアでいいのなら、とっくに彼女はアマチュアの格闘家になっているだろう。空手でも、合気道でもいいなら、すでにそこに道はある。プロに劣ることのない強い女子選手も、そこにはちゃんと存在している。
 でも、彼女はあくまで「プロのリングの上で、格闘技の試合がしたいのだ」と言う。
 オファーが来る可能性が高いのも、Jd’に在籍する理由の一つだ。
 そして自分から「試合がやりたいのです」というアクションを起こしている。

「何がそんなにあなたを駆り立てるんだろう?」

高橋「だって、楽しいんですもん、試合」

 彼女は最初恵まれすぎた、というのはある。たまたまプロレス団体にいたから、素人なのに大物選手と試合をすることができた。
 体格があり、テクニックがあり、知名度のある選手と試合をすることで、「他の人には出来ない体験」を最初にしてしまったことで、何かが彼女に取り憑いてしまったのだ。

 観客の前で闘う快感。
 未知の世界の対戦相手への興味。
 怪我さえありうる、格闘技の迫力。

 私はリングにもオクタゴンにも入ったことがないから、その“何か”は想像するしかない。だがリング上のタカハシくんが変身してしまうのも事実だ。
 一見のほほ〜んとしている背の高い女の子は、腹の底に大きなカタマリを持っている。
 人前で勝ち負けを競うことに、大きな価値を見出している。そのためならバーリトゥードという危険にも見える競技にも怖じ気を感じない。
 ただ、その道筋を見つけれられなくてウロウロしているのだな、とそのとき感じた。

高橋「試合が出来れば、私はどこへでも行きます」

 この熱意が、私たちに突然“対戦相手募集”の電話をかけさせ、熊谷直子との対戦にも繋がったのだ。
どんどん自分からアクションを起こそうとしている高橋くんを見ているうちになんだかすっかりペースに巻き込まれてしまった。肩ヒジはらず、でも確固たる意志を持って目標に向かって進んでいく。しかも自然体で。
 私はできるかな、こういうこと。
 野望を持つ身として自分に照らしてみたら「なんかすげえなあ」と感心してしまったのである。

 熊谷直子との対戦後も、淡々と闘志を燃やし続けているタカハシくんは、4月29日に後楽園ホール(Jd' 4rd Anniversary)で、風智美(全日本キック藤ジム)とのキックボクシングマッチが決まっている。
 ちょうど1年前、キックを始めて間もなかったタカハシくんは、この風智美戦で「キック魂」に火をつけられたのだ。これは「因縁のリベンジマッチ」になるぞ! と、鼻息を荒くしてタカハシくんに抱負を聞いてみたところ、

高橋「また10Kgぐらいの減量ですよぉ。たいへんですぅ。えへへー(笑)」

 という、まったくもって気の抜けた答えが返ってきた...。はぁ。

 まあ、めらめらと闘志を燃やすのではなく、あくまでも「淡々と」闘志を燃やすのがタカハシくんのキャラクターである。そこが彼女の面白いところだ。

 実にマイペース、でも、自分の力で未来を切り開こうとしている彼女に、今回はこう言おう。

すごいぜ!タカハシくん!(ヒューヒュー)

・・・第3回は、「タカハシくん、不動館へ武者修行の巻」です。お楽しみに!

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