バーリ・トゥード・ジャパンでノゲーラと引き分けた巽。
ただ、本人も認めているように、その引き分けは、決着がつかなければ全て引き分けというVTJのルールに助けられたもので、内容的には負けといっていいものであった。
雪辱を期す巽は、それまで殆ど手を染めることのなかったウェイト・トレーニングを本格的に開始する。競技特性、負傷箇所を勘案しての科学的トレーニング。地力を上げ、今や日本人シューターへの壁となりつつあるノゲーラからの王位奪取を狙う。
準備は万端である。
しかし、ノゲーラの壁は高かった。
打撃の探り合いの後、組みに行き、両腕を差した巽。そのまま相手の腰を伸ばして倒そうとするが、ノゲーラが何とか堪え、コーナーを背にしてふんばる。
直後。
巽が気を抜いたわけではないのだろうが・・・
左右に身体を振って巽をふりほどき、至近距離から右パンチを浴びせるノゲーラ。この試合前、ノゲーラは、ボクシングの特訓を受けていたという。その成果がぴたっとはまる展開。思わずぐらつく巽。
右膝、右ハイ、そしてパンチ連打とノゲーラが畳みかける。
巽ダウン。
カウント中途で立ち上がった巽だが、ダメージはありあり。身体がふらつき、目が飛びかけている。
再開後、倒れ込むようにタックル。
こんな甘いタックルを見逃すノゲーラではない。
そのまま首をがぶって引き込み、伝家の宝刀、フロント・スリーパーに極める。一回立ち上がって振り払おうとした巽だが、再び座り込むと力なくタップ。
ギブアップ負けを許すことなく、それを誇りにしてきた巽の、最初で最後のタップアウト負けであった。
東大生。院卒業後は、森永に入社し、ウィダー事業のマーケッターとして勤務。
リング上だけではなく、リングの外の生き方でも異彩を放っていた巽は、会社のウェブサイトで、有言実行、負けたら引退を示唆していた。
その後、同ウェブサイトで、引退を宣言。
「東大卒シューター」は、21世紀を待たずして、我々の前から姿を消すことになった。

結果一覧に戻る
← 前の試合 / 大会総評 →