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MILLENNIUM COMBINE III 8月23日 大阪府立体育会館

第5試合 リングスルール 1R10分/2R5分
高阪 剛
(リングス・ジャパン)
2R 判定

ドロー
アントニオ・ロドリゴ・ノゲイラ
(ブラジル)

 ード・ポジションという発明は、「下になれば不利」というそれまでの通念を揺り動かした。勿論、ガードは万全のポジションではない。それは、インサイド・ガードからの顔面パンチの嵐によって血の海に沈められた幾多の柔術家が証明していることでもある。
 だが、それを上回る数のレスラーが、ガードからの十字や三角、あるいは引き込んでのフロント・スリーパーによってNHBのマットに散っている。上を取られたからと言って不利になるとは限らない。それどころか、技術さえ身につければ、逆に最大のチャンスともなりうる。これはブラジリアン柔術による一つの革命というべきだろう。

 高阪のTKシザースに始まる各種のムーブは、このガード革命に続くもう一つの革命とも言うべき道を辿っている。
 NHBにおける絶対有利なポジショニングとしてのマウント。当初は神話的にまで恐怖されたそのポジションを敢えて取らせ、直後に鮮やかにひっくり返す。最大の恐怖が、逆に、最高のチャンスに転換されるというカタルシス。
 「スイープなんてブラジリアン柔術には昔からあった概念だ」という意見もあろう。だが、顔面パンチが飛び交うバーリ・トゥードのリングで、それをあたり前のようにこなし、「マウントなんか怖くない」ということを満天下に知らしめたのは、誰がなんといおうと、TKだった。

 この試合でも、TKはその革命を淡々と進めて見せた。
 開始早々、意外にあっさりとマウントを許す高阪。そのまま、ノゲイラの動きを下から観察する。そうしておいて、下にずり下がると、ノゲイラの膝に組み付き、十字狙いに。
 これは極まらなかったものの、その後も高阪は何度もノゲイラのポジションをひっくり返して見せる。タックルにきたノゲイラを抱え込むようにして回す。マウントを取られた状態から、今度は身体を回転させて足を取り、ひっくり返す。
 極めにはいけないものの、ラウンド終盤になると、今度は高阪が上になってパスガードを伺う展開が続くようになっていく。

 だが、好事魔多し。
 2R開始早々、ノゲイラのタックルを堪えた高阪の顔がいきなり歪み、そのまま崩されてしまう。膝を痛めたのだ。下から数分間防戦一方となる高阪。ようやく、中盤に体勢を建て直し、逆にインサイド・ガードに入る高阪。しかし、そこからパスにいくことはできなかった。
 結果は判定ドロー。
 だが、高阪は、この試合を通じ、ブラジリアン柔術重量級の最強選手に対しても、自分のスイープの技術が十分に通用することを示して見せた。
 TK革命の完成は近い。

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レポート:山名尚志

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