BoutReview Logo menu shop   Fighting Forum
Report

pridePRIDE.13 2001年3月25日(日) 埼玉/さいたまスーパーアリーナ

第5試合  
<コールマン×ゴエス 感想掲示板:Your Imprssion>
マーク・コールマン
(米国/ハンマーハウス)
1R1分19秒

レフェリーストップ(グラウンドでのヒザ蹴り)
アラン・ゴエス
(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム)
×

「リアルファイターの威厳」

レポート:井田英登  写真:飯島美奈子

 この試合に賭けるものへの違いが明確に出た試合になった。
 コールマンは昨年のGP優勝以来、11カ月ぶりのPRIDE復帰である。途中、年末の猪木祭りに出場し、周囲のお祭りムードを他所に殺気立った試合ぶりで異彩を放ったのが記憶にまだ新しい。

 もともとヒザの故障でUFCの戦線を離れたこの人にWCWからかなりの好条件でプロレスラー転向のオファーがあった事は有名だが、アメリカンプロレスのショーマンシップには馴染まない一本気な気性でにそのオファーを断り、PRIDEを復帰の舞台に選んだという。昨年のGP制覇は古傷を癒すだけの時間と経済的余裕をコールマンに与えたようだ。もともと筋肉の美しさでは定評のあったコールマンだが、今回は以前にも増して良くシェイプされた、実戦的な身体を作ってきているのが印象的だ。この一戦に賭けるディフェンディングチャンピオンとしての並々ならぬ気迫が、この肉体を作ったと言っても過言ではあるまい。

 年末の猪木祭りでのガチガチなスタイルでの戦いぶりが、逆に昨今のプロレスファンには新鮮に映ったのか、現在コールマン周辺にはやたら新日マット登場を取りざたする噂が絶えない。実際、我々が昨年GP制覇前にインタビュウしたときにも「いずれは家族のためにプロレス転向を考えなければならないかもしれない」と寂しそうに語っていた彼だが、当時と現在では環境も条件も違う。今やシュートファイト一本でも十分金の取れるポジションに居るだけに、安易なプロレス転向は踏みとどまって欲しいものだ。アメリカ本国でも、ディレクTVを通じて全米放送されているPRIDEを舞台にシュートファイターとして活躍する彼を支持する声は高いのだから。

 実際、試合はそんな気迫に満ちたコールマンの一方的な攻撃だけが目立つ試合となった。開始早々、ゴエスはカポエラもどきの奇妙な跳び蹴りや、スピードの乗らない中途半端なバックスピンキックやかかと落としを出して、気迫十分のコールマンを侮辱したような動きを見せる。しかし、タックルに来たゴエスを押しつぶしてからのコールマンは、容赦がなかった。がぶったままボディに火花の散るようなハンマーパンチを落とし、引き倒してボディにまたパンチ、そのまま首を引き釣り上げるようにしてうつむけにさせると、そのまま頭部に必殺のヒザをぶち込んでいったのである。これはかつてPRIDE-GPでボブチャンチンを沈めた必殺兵器でもある。既に二発目でぐったりとなったゴエスに、三度四度とその蹴りを浴びせたのは、レフェリーのストップのタイミングミスとしか思えないオーバーヴァイオレンスなシーンであったが、下半身を投げ出してマットに横たわるゴエスの姿は逆に、このチャンピオンの圧倒的な強さを見せ付けるには十分な姿だったのかもしれない。この直後意識を取り戻したゴエスが試合終了にも気づかず、目の前にあったコールマンの足に再度しがみついてテイクダウンをうばおうとする珍シーンも見られたが、それ自体コールマンが加えた攻めの非情さ、強力さを物語るものだった。(試合が終わればどこまでもナイスガイであるコールマンは、このゴエスの行為を戸惑った表情で受け止め、最後には抱擁で試合終了後のノーサイドを伝えたあたりも、彼の人柄を伝えておりほほえましい。)

 短期決戦で勝利を決め、四方に雄たけびを上げるその姿はやはりリアルファイターだからこそ生み出せる威厳と迫力に満ちていた。

 この試合にはプロデューサーアントニオ猪木氏から、氏が現役時代に異種格闘技戦で巻いていたという「世界マーシャルアーツヘビー級王者」のベルト授与されたコールマン。試合後には「どこのプロレス団体にだって行くよ」と、吹っ切れたコメントを出していたというが、どこまでそれが本心なのだろうか?今回見せたアスリートとしての彼の強さを思うならば、まだまだその時期は先延ばしにしてもらいたいというのが、リアルスポーツ競技としての格闘技を愛する本誌からの希望ではある。

 この日、猪木プロデューサーはリング上で、コールマンにこのベルトを与えた他に、初代IWGPのベルトを藤田和之に与えたうえでビンタを見舞ったり、石沢vsハイアンの再戦をリング上で発表したりと、自らのプロレス世界と PRIDEワールドを縦横に行き来するパフォーマンスを繰り広げて見せた。そもそもプロレスファン層を母体に現在の広がりを見せているPRIDEシリーズだけに、こうしたリング上の味付けもファンサービスとして許容されるべきであろう。しかし事、コールマンに関していうのならば、彼本来のもつ強さ、威厳、そして人間的な厚みと言ったものを十全に表現できるのは、プロレスというフィギュア競技の領域ではなく、UFC、PRIDEといった競技格闘技の世界であると僕は感じる。できれば、PRIDEファイターとしての道をこのまままっすぐ歩むことで、彼がアスリートとして十分な称賛と収入を得られる世界が実現せんことを切に祈りたい。

<コールマン×ゴエス 感想掲示板:Your Imprssion>

結果一覧に戻る
← 前の試合  / 次の試合 →

レポート井田英登  写真:飯島美奈子

TOP | REPORT | NEWS | CALENDAR | REVIEW | BACKNUMBER | STAFF | SHOP | FORUM


Copyright(c) MuscleBrain's All right reserved
BoutReviewに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はマッスルブレインズに属します。

編集部メールアドレス: ed@boutreview.com