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Report
pride 2000.1.30 PRIDE-GP 一回戦 東京ドーム
 第9試合 
× 高田延彦
フルタイム
判定0−3
ホイス・グレイシ−

高田、グレイシ−マジックにまたも沈む


トーナメント1回戦の最終戦となる第8試合。初めに青コーナーからホイス・グレイシーの入場。いつものようにエリオを先頭にグレイシートレインが一丸となってリングへと近づいていく。
その後ロッキー4のテーマ曲に合わせ、割れんばかりの声援と共に赤コーナーから高田延彦が入場。グレイシー族への3度目の挑戦の瞬間である。4万8千人の大観衆は今、まさに皆シーンの中で、同じ音を聞いている。

開始直後、スタンドからの両者はお互いに引き込もうと差し合いに。ヒザを出し、引き込まれまいとする高田をよそに、ホイスがグラウンドへの引き込みに成功。高田はガ−ドポジションに捕らえられる。高田は上からホイスの道着の奥襟を締め、押えこみにいく。しかし、道着の裾を使って高田の腕を巻き込み、そのまま顔面を覆い上からパンチを浴びせるなど、ホイスの道着を使った多彩な攻撃に対し、高田が次第に無抵抗になっていく。

両者の空間は三角締め、腕十字の雰囲気が感じられる。ホイスは高田の右腕をしっかりと左脇に捕らえ、高田の右腕の自由を奪った状態。そのまま釘付けの高田に対して、観客からは「高田立てよー」の声が響く。結局、この状態のまま高田はホイスのパンチを浴び続けることになり、そのまま終了のゴング。判定3-0によるホイスの勝利に終わり、3度に及ぶ打倒グレイシーへの挑戦は、一度も達成することなく高田の三連敗という結果で幕を閉じた。


 
人々は高田をラッキーな格闘家だと言う。確かに、プライドのリングでは一度敗れたヒクソンとのリベンジマッチを実現し、さらにマーク・クァー、マーク・コールマン、そしてホイス・グレイシーとの戦いを繰り広げるなど、これ程までに誰もが認める世界屈指の総合格闘家と戦いの場を持つに至った格闘家は、高田以外に存在しない。

しかし、である。

かつてのプロレスラーは確かに最強であるというイメージを漂わせていた。どんな格闘家が現れようとも、結局最強なのはプロレスなのではないのか?プロレスの持つカリスマ性と、その圧倒的な存在感に人々は少なからずそう信じていた。しかし、その漠然としたイメージを払拭してしまうかのようにして現れたのが、グレイシー一族であり、最強を自負する各スタイルの格闘家だったのである。果たしてプロレスラーは最強なのか、異種格闘技の中でも圧倒的な強さとテクニックが発揮できるのだろうか…。高田延彦は、このシンプルすぎる問いかけに真正面から立ち向かっていったパイオニアに他ならないのである。それならば、これまでの華々しい相手との対戦の数々も高田個人の戦いであったと同時に、プロレスラーの群像を背負った戦いであったに違いない。その意味でも、三度目となるグレイシーへのチャレンジは高田にとって今までの集大成と言うべき戦いであったはず。ラストチャンスを賭けた戦いのはもろくも崩れ去った結果となったが、高田延彦はプロレスラーの群像を物語る何かを、確実に格闘技の歴史の中に刻み込んだのである。戦績を超越した戦い、そしてそれぞれが背負ったものをぶつけ合う土壌、それがプライドのリングなのかもしれない。

(藤間敦子)



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取材:藤間敦子・山口龍・横森綾  写真:井田英登

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