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PANCRASE 1999 BREAKTHROUGH TOUR 99.9.4 仙台市泉総合体育館
第3試合(10分1本勝負)
○ 石井大輔  vs  金宗王 ×
(東京)       (韓国)
5分15秒 TKO

「小さな一歩」
 井の面構えは格闘技選手として素晴らしい。負けん気そうな表情が板についていて、彼がデビュ−したときは結構おもしろそうな選手が出てきたなと期待させられたものだ。感情がギラギラしたタイプでは決してないが、頑固そうな気性は表情から十分見て取れた。こういう選手はブルファイタ−タイプに多い。小さくまとまった選手の多いパンクラスにはない、破天荒な選手になるのではという感じがしたわけだ。

 しかし実際の石井のこれまでの試合を振り返ってみると、イメ−ジとの格差に唖然とさせられてしまう。伊藤に続いて数字から見た戦況分析をしてみよう。石井はデビュー以来16戦4勝10敗2分。内14試合が判定。そのうえ4つの勝ちも全てが判定勝ちである。一度も相手を極めていないし、ダウンも奪っていないという、驚くべき事実が浮かび上がってくる。試合を見ても、「どうやって勝ちたいのか」がまるで伝わってこない、悲しい選手になってしまった。

 石井の闘いぶりを見るかぎり、一番の武器は打撃のはずだ。結構シュアで強力そうなブロ−をしているのだが、どの試合でもそれで勝負を決めにいった形跡はない。いつも2,3発掌打を入れるとなぜか組みにいってしまう。

 ではタックルで組み付いた後に戦略があるかというとさにあらず。テイクダウンを奪って関節技に行くわけでもなく、ただコーナーに押し込んで密着。ボディーにパンチを打ってブレイク待ちといった展開が続くのが常である。

 技術が無いのではない。勝つために、自分が持っている武器を使って何かを「仕掛ける」あるいは「これで試合を終らせる」という意志が欠落しているとしか言い様がない。

 この日も、打撃を放ってくる金に対し、一切打ちあわずにタックルへいくいつもの石井だった。投げられて下のポジションになったシ−ンで、珍しく下から関節技を狙いにいくシ−ンが見られたのは僥倖であった。このとき金のディフェンスは甘かったが、やはり慣れないのか仕掛けが悪く逃げられてしまう。それどころか逆に上からアームロックで切り返されているのだから始末に負えない。

 大きく展開もないまま5分が経過するが、ここで金が古傷の右手首に痛みを訴えて試合が中断する。ドクタ−がリングにあげられ、診察した結果、骨折の疑いでドクターストップがかかり、試合はあえなく終了。

 試合後「本当は最後までやりたかった。普段はグラウンドで下になったりはしないのだけれど、今日は相手の投げを無理に踏ん張らないで、とりあえず投げられておいて下から攻めようという作戦だった。打ち合いにも行こうと思っていたのだが、警戒していけなかったのが反省点。下のポジションから色々試すことができたので、いつもよりは良かったと思う。」と語った所からすると、なんとか「決め手のなさ」という課題解決のために小さな一歩を踏みだしたかもしれない試合であったのかもしれないのだが。


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次の試合 :4. 山田×韓泰潤

レポート:慈村弓太