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パンクラス 2000.2.27 PANCRASE 2000 TRANS TOUR 梅田ステラホール大会

セミ・ファイナル 10分1本勝負 
無差別級2位
國奥麒樹真
本戦判定0-0
(30-30,30-30,30-30)
延長3分判定3-0
(30-28,30-29,30-29)
(須藤にイエロー1)
須藤元気 ×

photo 今年はパンクラス旗揚げ以来7年目を迎える年である。7年という歳月が選手層の厚さという結果をもたらしたことは言うまでもないが、同時に、ここまで来て団体を支える選手層の構造が大きく変化した。パンクラスが「U系」と言われる所以でもある藤原組からの流れを汲む選手群と、いわゆる「外様組」と呼ばれる、比較的最近になって入団した選手群。それ以外に、選手カラーの違いこそあるものの、以前にも増してプロレス色の強く表れる選手と格闘家然とした選手との違いも見逃せない。一方でストイックな環境でのトレーニングを好む選手もいれば、比較的自由な環境でのびのびとトレーニングに励む選手もいる。まさに選手層までが「ハイブリッド(雑多の)」と呼ばれるに相応しい環境が整ったと言える。

 多様な選手層の中でも、今回のカードは典型的なまでに対極をなす両者の対決となった。藤原組時代からパンクラス立ち上げに加わり、その経験の豊富さと共に、着実に格闘技キャリアを積んだ生え抜きのパンクラシスト國奥。対するは、98年に単身渡米し、ビバリーヒルズ柔術クラブに所属後、バス・ルッテンの愛弟子として格闘技の実力を着実に伸ばしつつ、リング上では限りなくプロレスラー色の強い試合展開で人気の異端児、須藤。意外にも初戦対決というカードだけに注目が集まった。


photo 定番となった須藤のコスプレ入場は、白の着流し姿に京劇風の仮面という姿で登場。花道の途中ではなんと花吹雪をまいてジャンプするというパフォーマンスを見せた。
 本戦の10分間は実に動きの素早い試合展開となった。終始トリッキーな動きを見せる須藤は、猫だましやバックハンドブローなどの多彩な技で場内を沸かせた。一方の國奥も須藤のトリッキーな技に惑わされることなく、冷静な対応を見せる。前半の5分が過ぎた辺りからグランドでの展開となり、下になった須藤がパンチの連打を浴びせる。当たってはいるが決め手とはならず、両者互角のままタイムアウト。ジャッジの判定はドローとなり、3分の延長となった。
 延長戦開始直後、スタンドでの攻防戦からブレイクへ。その後レガースを着けていない須藤がキックを放ってしまったことに対して反則のイエローカードが。たまらず「あ〜やっちゃった」と叫び、悔しがる須藤に対してその後も淡々と試合を展開する國奥。が、決定的なキメがないままに時間切れとなった。反則によるイエローカードが響き、結果3-0による判定で國奥が須藤を下した。

 須藤の試合展開は、ある種今までのパンクラスにないエンターテインメント性がある。それは、負けた須藤に対する声援の多さが証明しているように、観客が求めていたものに違いない。確かに須藤は、エンターテインメント性で観客を魅了するだけの器用さがある。しかし同時に、生え抜きのパンクラシストとして背負うものがなく、リングでも自由に自己表現できる立場にあることもまた事実である。一方の國奥は、生え抜きのパンクラシストとしてのストイックなまでの追い込みと、背負っている何かを感じさせる選手である。國奥にとっての格闘技はパンクラスのリングに上がることであり、例え、それ以外のリングに上がるとしてもパンクラシストとしてのプライドが付きまとうはず。このように対極をなす両者は、今のパンクラスの構造を物語る典型的な象徴であると言えるかもしれない。

(藤間敦子)

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取材:藤間敦子  写真:井田英登

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