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第2試合 スペシャルマッチ 58kg契約5回戦 | ||||||||||||||
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途上の輝き
J-NETWORKの選手と正道会館所属のK-1フェザー級の選手が全日本のリングで激突。
大宮司は昨年のK-1グランプリ大阪大会のフレッシュマン・クラスでデビューした若干21歳。しかしその新人離れした試合度胸と技術的完成度の高さで注目を集めた。戦績は9戦4勝(3KO)4敗1分と一見恵まれないが、その内5戦はタイのラジャダムナン・スタジオでの戦歴であり、本場で2勝1KOの勝ち星を上げている。
蔵満誠はローキックを得意技とする昨年2月28日デビューの24歳。戦績は7戦3勝(1KO)2敗2分で、もっとも最近ではJ-NETWORK後楽園大会で前原靖雄(藤)と対戦、2RKO勝利を納めている。
フェザー級としては必ずしも上背に恵まれている方ではないが、それだけ筋肉が引き締まっている大宮司。スピードで蔵満を上回る。特に見合った距離からのリードブローとしての左ミドルや、左フックから右ローへ繋げる正道会館流の対角線のコンビネーションが目を引く。
対して蔵満は手数の点でやや大宮司を下回った。仕掛けの速い大宮司に対してスピード的に押されたか、なかなか先手で手を出すことが出来ない。また攻撃が単発になってしまい、コンビネーションで攻めてくる大宮司に対応するのに手一杯といった状態。
ラウンド開始早々に大宮司が仕掛けた。蔵満の左ローにまず右ストレートボディを合わせ、続いて同じ軌跡から今度は顔面への右ストレート。これで体勢の崩れた蔵満にパンチとローのコンビネーションを次々と畳み込み、最後は右ローでダウンを奪う。このあたりの大宮司の技術はやはり大したもの。
その後もこのラウンドは常に大宮司ペースで終始した。蔵満にとっては厳しい状況で、時折大宮司の攻撃に顔を歪ませながら、クリンチやステップを使って必死で凌ぐ。大宮司は「習ったことを出せればあそこで倒せてたはず」と試合後反省のコメントをしているが、ディフェンスに徹する選手を沈めるのは難しい。ここは蔵満の方が粘り抜いたといった印象だ。
2Rと同様に、蔵満のローに右ストレート・ボディを合わせる大宮司。蔵満の身体は後方に飛ばされサードロープにもたれ掛かるような体勢になったが、ここですかさずレフェリーが間に入り、ダウンとはならず。
大宮司のプレッシャーを受けている蔵満は、自分の方から攻めを出すことが出来ない。先に大宮司が仕掛け、距離が詰まると蔵満がクリンチして凌ぐという展開が続く。しかし大宮司の方にもリズムの変化が無いため、守りに入った蔵満をあと一歩攻め崩すことが出来ない。
K-1フレッシュマン・クラスにおけるここ2戦の闘いでも、大宮司は1〜2R押しながら決定打を欠いて後半対戦相手の粘りにてこずるような展開が続いている。「1Rから倒しに行って狙ってたんで、力みすぎてスタミナが...。タイでの試合が多いんで、タイでは1〜2Rは見て闘う(お互い仕掛けない)んで、(日本では)その3Rがいきなり1Rに来ちゃう感じで闘っちゃうんで。1Rは見ていこうと思うんですけど(相手に)来られるとそれに合わせて(自分からも)行っちゃうんで...。もうちょっといなせれば保つと思うんですけど...。」
左右のフック、右ロー、左ミドルと、大宮司の攻撃が鈍った様子は無いのだが、徐々に蔵満の身体がその衝撃に馴れ始めているように思われる。体格で上回る蔵満は大宮司の攻撃を受けてもとにかく前に前に進んで首相撲に持ち込み、膝蹴りで大宮司の体力消耗を図る。大宮司の悪い試合パターンがここでも顕著になり始めた。蔵満としてはチャンスだ。体力勝負でガス欠の近い大宮司のスタミナを奪い去り、スピードと手数を殺してしまえばまだ試合をひっくり返せるだけの可能性は残されている。
蔵満が大宮司をクリンチしながらコーナーポストまで押し込み、両腕で大宮司の顔を天井までのけぞらせる。首相撲で顎を引ききれないというのも、スタミナ切れの一つの兆候だ。形勢逆転とまではいかないが、この状態で5Rに入れば、大宮司はKO勝利どころか、蔵満の最後の一踏ん張りを凌ぎきるだけで精一杯になりそうだ。
疲れている筈だが、大宮司のパンチや蹴りの切れ味は決してあからさまに衰えているわけではない。しかし蔵満は前に踏み出して徹底的に組み付く作戦を続ける。いや作戦というより、技術やスピードで相手の方が上回っている以上これ以外に蔵満に残された闘い方は無かったというべきか。
突き蹴りの洗練に比べて、組まれると一転苦しそうな表情になる大宮司。よく格闘技に使われる筋肉には「押し」(パンチや蹴りなど)の筋肉と「引き」(投げ技や寝技など)の筋肉があると言われるが、ことによると打撃技術に特化した鍛錬を続けた大宮司は、押しに比べて引きの筋肉のバランスに難点があるのかもしれない。
残り試合時間30秒というところに来て、蔵満が大宮司をコーナーに詰めて膝と肘でラッシュをかける。顔を押し上げ、上体が仰け反ったところでボディに膝。大宮司の身体がガクッと折れ曲がる。僅かでも距離が開けばパンチや肘で相手を押し戻そうとする大宮司だが、蔵満も懸命に大宮司を掴まえに行く。こうして最後の乱打戦が繰り広げられる中、蔵満にとっては無情な試合終了のゴングが響いた。
結果は48-49、46-50、46-50で問題無く大宮司の勝利となった。蔵満にとっては、異団体交流を通してキック界の底知れなさを味あわされたといった形だろうか。だが同年代のライバルが存在するのは、ある意味幸せなことだ。蔵満は今日拳をあわせたことでさらに強くなる足がかりを掴んだことになる。
その一方、大宮司はこの試合でも卓越した技術という長所と、試合後半の首相撲でのスタミナ切れという短所の両面を見せた。可能性の輝きが感じられるだけに、何としてでも弱点を克服しもう一つ上の世界をファンに見せて欲しい選手である。
(高田 敏洋)
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レポート:高田敏洋 カメラ:薮本直美 バックステージ:石渡知子 |
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