BoutReview Logo menu shop   Fighting Forum
[会員登録]
[atclub-top]
Report

ニュージャパンキックボクシング連盟 "CHALLENGE TO MUAYTHAI 6"
2001年5月25日(金)東京・後楽園ホール

「ヨーデーチャー強し!ウェルター級王者松浦、為す術なくKO負け」

レポート:新小田哲

メインイベント 147lbs契約/5回戦 
ルンピニースタジアムウェルター級2位
ヨーデーチャー・シットヨートン
(タイ)
3R2分25秒

KO
NJKFウェルター級王者
松浦信次
(東京北星)
×

前回2月大会でノーランカー、コンパタピーの膝蹴り地獄に陥り一方的な3RKO負けを喫したウェルター級王者松浦信次。今回の相手はそれをはるかに上回る強豪との対戦となった。対戦相手のルンピニー現役トップランカー、ヨーデーチャー・シットヨートンはムエタイ重量級のトップ中のトップ。その完成された筋肉質の肉体とムエタイには珍しいパンチとローキック主体の猛烈なファイタースタイルで、ラモハメド・オワリ、ライアン・シムソンといった世界のトップクラスを撃破している。ここまでの戦績は82戦65勝12敗2分の24歳。

試合開始早々に放ったヨーデーチャーの右ハイキックの鋭さに場内からはどよめきが。上背はこのクラスにしてはそれほどでもない(169cm。ちなみに松浦は178cm)ヨーデーチャー。しかしそれを全く感じさせないほどその攻撃はパワフルで鋭い。手数は多くないが、サイドキックでふっ飛ばし、タイ人には珍しいパンチからのローキックのコンビネーション、素晴らしいハイキックの連打(最高で5連打を数えた!)で確実に松浦にダメージを与えていくプロセスを、我々はただ呆然として見守るのみだった。なんとかヨーデーチャーの前進を止めたい松浦だが、攻撃が全く通用しないため、次第に手数が減っていく。
そして3R。松浦の右に合わせてヨーデーチャーが右ハイを合わせると、松浦のガードのガードの上から巻きつくような感じで後頭部をかする。これでダメージを受け動きの止まった松浦に、ヨーデーチャーは左ロー、右ボディストレート、ローから左ハイ。ガードしたかのように見えた松浦だが、数瞬後腰から砕け落ちるようにダウン。立ち上がった松浦だがすでに表情に生気はなく棒立ち。ヨーデチャーが容赦なく繰り出した右ハイキックを受けて再度ダウンしたところで、セコンドからギブアップのタオルが投入された。

試合後のヨーデーチャーはさしたるダメージを受けた様子もなく元気そのもの。「松浦は特に怖くはなかった。2ヶ月前に試合(タヴィーサップ・シットセーンアルンに判定負け)から、この試合の為に1ヶ月間練習してきた。また日本にきて試合をしたい。日本人選手?同じジムで練習している山上健吾(花澤/MAミドル級王者)は知ってる」。今年になってラジャダムナンに活躍場所を移したソンチャイ・プロモーター傘下の選手だが、彼自身は今後もルンピニーのリングに上がる予定だという。
一方の松浦は、ダメージやショックを感じているというよりもむしろそれを通り越して呆然といった様子。「ダウンは覚えていない。ローもハイもパンチも全ての攻撃が重くてガードの上からでも効いた。ヨーデチャーのハイは思いがけない距離から飛んできて見えなかった。自分の距離で戦えなかった・・・」。
松浦の成績は29戦14勝(9KO)13敗3分。

NJKFの打倒ムエタイにかける意気込みは感じるし、高いレベルのムエタイ選手を呼んできてチャレンジさせようという心意気は買いたい。ただ、今年になって感じるのはそのあまりにも高いムエタイの壁と、日本人選手との実力差。ここまでトップ選手の惨敗続きで、このままではファンに見放されるのではないかという危惧さえ抱いてしまう。現に今回の興行はヨーデチャーという超一流選手を呼んだにもかかわらず、客入りは惨憺たる状況だった。それはキックにそれほど詳しくない観客にはヨーデーチャーという名前だけでは食指は全く動かないし、逆にちょっとでもムエタイについて知識のある観客だったら、(松浦には申し訳ないが)実力差がありすぎて勝敗が見えていたからだ。
最初から高いハードルを設定して飛べたら儲けもの、ではなくもっと段階を踏んで、実力的に拮抗した者同士の対戦で勝敗に興味がもてて、なおかつスリリングな勝負を提供、その上で勝ち残った選手にはステップアップした対戦相手を用意するべきではないかと思うのだが。

第7試合 135lbs契約/5回戦 
タイ国ライト級 
カノックラット・シンウボン
(タイ)
判定3-0

50-49,50-49,50-48
NJKFライト級5位
ソムチャーイ高津
(小国)
×

一時期の不調を脱し3連勝と波にのるベテランランカー、ソムチャーイ高津が国内では久しぶりとなるタイ人選手との対戦に臨んだが、肘で流血させられた末、判定で完敗した。高津はこれで31戦13勝(6KO)12敗6分。
対戦相手のカノックラット・シンウボンは最近までルンピニーのウェルター級ランカーだった経歴があり、現在は地方の王座を保持しているらしい。
序盤は互いに探りあいに終始。パンチから首相撲に持ち込もうとする高津にかノックラットはしきりと肘を合わせようとする。そして3R、カノックラットのその肘が高津の右目の上のあたりを切裂き高津流血。ドクターチェックとなるがここは再開。危機感を感じた高津はパンチと肘を振るい前進するが老獪なカノックラットが一枚上手。バック肘などトリッキーな技をおりまぜつつ的確に肘をあてていき、日本屈指の首相撲巧者である高津を逆に首相撲で投げ捨てていく。最終ラウンドには勝利確信したのかニヤニヤ笑いながら高津の攻撃を受け流し、観客のヒートを煽ったがそのまま終了。僅差ではあったが誰の目にもタイ人の勝利は明らかだった。

第6試合 68kg契約/5回戦 
NJKFウェルター級5位
中村篤史
(北流会君津)
2R1分52秒

TKO (肘によるカット)
NJKFミドル級
發田隆治
(ウィラサクレック)
×

ウェルター級のベテランランカー中村篤史が、5回戦初試合となる發田隆治の挑戦を受けたこの試合は、1階級下の中村がパワーで圧倒した。独特な薄ら笑いを浮かべながらラフな右ストレートと肘を強引に当て、發田の額を2度に渡りカットに成功。大流血で顔面血塗れになった發田のドクターストップを呼び込み、あっさりとTKO勝利した。
ランカーの意地を見せた(?)中村はこれで13戦8勝(4KO)4敗1分。一方の發田は8戦4勝(2KO)3敗1分。

第5試合 ライト級/5回戦 
NJKFライト級
飯田誠一
(町田金子)
1R1分19秒

KO
NJKFライト級
山中貴仁
(大和)
×

前回1月大会で実に9年ぶりのカムバック戦で勝利した飯田誠一が、大和ジムの山中貴仁に鮮やかなKO勝利。復帰2連勝を飾った。
飯田は17歳でキックを始め、92年には現NJKFウェルター級王者松浦信次と対戦している(3RTKO負け)。同年11月の試合(相手は現NJKFレフェリーの高木修二氏!)を最後に国際式に転向。4勝2敗の成績で6回戦まで昇格したが、そこで国際式から身を引き、古巣町田金子ジムに戻りトレーナーへ。しかし現役への魅力は絶ち難く今年1月に復帰していた。
いつものようにワンツーローで突進する山中に対し、飯田は開始1分、鮮やかな右クロスでダウンを奪う。立ち上がったがダメージの明らかな山中に対し飯田が襲い掛かり、またもボディ、アッパーを絡めた見事なパンチ連打でラッシュすると、たまらずセコンドがタオルを投入した。

これで飯田は戦績を8戦6勝(3KO)2敗とし、ランキング入りを確実にした。思えばNJKFのランカーには個性派が多い。キャリア10年にして10戦のキャリアでブレイクした"ショットガン"笛吹丈太郎。派手なマイクアピールとは裏腹に地味な試合展開の"天空蝶"AVIS01。首相撲は天下一品の"和製タイ人"ソムチャーイ高津。"戦う編集者"野崎勇治。そんな中で王者佐藤孝也が名古屋JKFの連盟離脱により手放したライト級王座に、飯田がこれからどれだけ肉薄できるか、楽しみだ。
ランク入りを目の前にして一歩後退となった山中はこれで8戦5勝(2KO)2敗2分。

第4試合 フライ級/5回戦 
× NJKFフライ級
押川童子丸
(キング)
1R0分44秒

TKO(肘によるカット)
NJKFフライ級
佐藤友則
(小国)

フライ級の新鋭対決は、開始すぐにダウンを奪われた佐藤が直後に肘で押川を切裂き、鮮やかな逆転勝利を飾った。
両者は昨年9月大会で対戦予定だったが、押川が試合直前にドクターストップがかかり、佐藤の不戦勝(TKO)となった経緯がある。
入場から気合の入った表情だった押川、試合開始のゴングからものの10秒でいきなり左ハイキックでダウンを奪う。押川ここで決めようと一気にラッシュ。しかし佐藤、これを下がりながらうまく捌いて右肘を一振りするとこれが見事に押川の左目の上のあたりにヒットし押川流血。これで試合続行不可能の判断が下され、僅か44秒で佐藤が大逆転勝利を収めた。

勝った佐藤はこれで5戦5勝(3KO)。層の薄いフライ級で新星が誕生したと言っていいだろう。一方ショックの色がありありの押川はこれで8戦4勝(4KO)2敗2分。3回戦時代から将来を嘱望された大器だけに、長い目で見守りたい。かつてのライバル、杉浦磨がいなくなった今、新しい目標が出来たと思えばいい。

第3試合 56.5kg契約/3回戦 
NJKFバンタム級
藤原国崇
(拳之会)
判定3-0

29-28,29-28,29-28
NJKFフェザー級
外山繁幸
(上州松井)
×

新空手やグローブ空手といったアマチュアでの実績、プロ入りしてからも他の選手とはレベルの違う戦いぶりで昨年の新人王に輝いたNJKF最大のホープ藤原国崇が、一階級上の外山繁幸からダウンを奪った末に判定で勝利したが、その内容はあまり褒められたものではなかった。
初回から藤原は精度の高い左フックをカウンター気味に何度か決めて見せ、動きのよさをアピール。そして2R開始直後、左ストレートをカウンターで合わせると外山尻餅をつくようにダウン。しかし外山、立ち上がった後もまったく怯む様子を見せず得意の左フックを振るって前進。
これに対し藤原は左ボディからアッパーにつなげるコンビネーションやローで対抗するが段々と押され始める。そして3R、外山の空手式の膝蹴りの連打にずるずると後退。ダウン寸前にまで追い込まれてしまう。結局、外山の単調な攻めもあってなんとか逃げ切り、最終回終了のゴングを聞いた。
判定は2Rのダウンがものを言って3者とも藤原を支持したが、リングを降りる藤原の表情は勝者のそれではなかった。
まだまだ課題の多いホープだが、これで戦績を7戦6勝(1KO)1敗とし5回戦昇格。次回は7月大会でいきなりタイ人選手と対戦することが決定している。
敗れた外山の戦績はこれで7戦3勝(1KO)4敗。



第2試合 フェザー級/3回戦
NJKFフェザー級         NJKFフェザー級
河原塚武(ウィラサクレック) 対 岩井伸洋(小国)
勝者:岩井伸洋 判定0-2[29-30,29-29,28-30]

第1試合 フライ級/3回戦
NJKFフライ級    NJKFフライ級
稲田陽一(小国) 対 高橋拓也(拳之会)
勝者:高橋拓也 判定1-2[28-29,30-29,28-29]

レポート:新小田哲  写真:薮本直美

TOP | REPORT | NEWS | CALENDAR | REVIEW | BACKNUMBER | STAFF | SHOP | FORUM


Copyright(c) MuscleBrain's All right reserved
BoutReviewに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はマッスルブレインズに属します。

編集部メールアドレス: ed@boutreview.com